1. TOP
  2. ブログ
  3. 誰でも無料は本当か?Unreal engineのライセンス戦略を徹底解説

誰でも無料は本当か?Unreal engineのライセンス戦略を徹底解説

かつて、コンピューターゲームといえば8bitや16bitのドット絵が基本で、お世辞にも美しい映像とは言いがたいものでした。
しかし、その後ゲーム機の性能が上がるにつれてリッチなCG表現も増え、今ではそれが当たり前の物となっています。
そんな美しい映像を支えているのが、様々なブランドのゲームエンジンです。
今回は、そんなゲームエンジンの1つUnreal engineについて、入門者の方向けにライセンスの仕組みを解説したいと思います。

この記事では次の事がわかります
・Unreal engineとは何か?
・Unreal engineのライセンス事情
・Unreal engine無料化がもつ意味

Unreal engineとは?

本題に入る前に、まずはUnreal engineとは何かについて、簡単にご紹介しておきましょう。

元々はCGを活用したゲームを作る為のゲームエンジン

Unreal engineは、元々はコンピューターゲーム制作を効率化する為、さまざまな道具を1つに統合したツールとして開発されました。
普段私達がスマホ等を使い遊んでいるゲームは、簡単に言ってしまえばプログラムの塊です。
例えば、自機のキャラがパンチを繰り出すという操作1つにしても、その裏には、コントローラーの信号を読み取り、その信号を操作内容(パンチ)に読み替え、パンチ状態のキャラの絵をデータから探し出し、立ち状態のそれと入れ替え……といった具合に、数え切れない程多くの処理が発生しています。
こうした処理の1つ1つに対してコードを打ってプログラムを作るのは、いかにも非効率。そこで考え出されたのが、Unreal engineのようなゲームエンジンという訳です。
ゲームエンジンをうまく使えば、開発者がプログラムを打つ範囲は大幅に削減されるので、その分少ない人数で開発したり、ゲームの内容を充実させるといった事に時間を割く事が可能となります。
また、Unreal engineの場合、出来上がったゲームをiOS・Androidなど各OS向けに変換してくれるので、1つのソースコードで複数の環境に対応することが出来る(OSを跨いだ移植をしやすい)のも大きな魅力です。

今ではゲームに限らず広く利用されるエンジンに

Unreal engineは現在でもゲームエンジンとして開発されていますが、実はゲーム以外の分野でも活用が拡がっています。
特に相性が良いのが映像分野で、最近の例では映画「ローグ・ワン / スター・ウォーズ・ストーリー」や「ガールズ&パンツァー最終章」など人気作品の一部シーンで、Unreal engineの活用が公にされているのです。*1 *2
Unreal engineは昨今のCGを多用したゲームも効率良く開発できるよう作られているので、それを上手く利用している訳ですね。
同じ蕎麦でも掛け蕎麦から焼酎まで色々な使い方があるように、ゲームエンジンも応用次第で活用範囲が拡がる好例と言えるでしょう。

Unreal engineを使うには?〜気になるライセンスの仕組みを解説〜

ここまでUnreal engineの役割や活用範囲について解説しましたが、これだけ便利な道具ですから、使用料(ライセンス)もやはり気になるところです。
次は、この点についてご紹介したいと思います。

基本は無料・サポートや売上次第では有料

Unreal engineの驚くべきところは、全ての機能を無料で利用出来る事です。
その道のプロが仕事で使っている物と同じツールを無料で使えるというのは、特にこれから使い始める入門者の方には嬉しいポイントと言えるでしょう。
ただし、一部の条件を満たす場合には、有料となるので注意が必要です。

Unreal engineで制作したゲーム等が一定の売上を超えた時

無料で利用しているUnreal engineで制作したゲーム等の売り上げが一定ラインを超えた場合、売上の一部をロイヤリティとして支払う必要があります。
2020年1月下旬時点では、3,000米ドルを超える売上を得た際に、5パーセントの支払いが必要です。3
なお、対象となる製作物はゲームまたはその他のインタラクティプロダクトとなっていますが、後者に関しては製作物のエンドユーザーライセンス等により判断が分かれる場合もあるとのこと。
4
心配であれば、事前にサポートへ確認してみた方が良いでしょう。

有料プランの場合

Unreal engineでは、ユーザーの希望に応じて利用料等を調整できるカスタムプラン(有料)も用意されています。*3
メーカー側からしっかりとしたサポートを受けたいなども、こちらのプランを契約する事となります。

どうして無料で使えるのか?

プロと同じ道具を無料で使えると聞くと、そんなうまい話があるはずないと警戒してしまう方もいらっしゃると思います(私もそうです)。
この点、Unreal engineはどのようにマネタイズしているのでしょうか?
また、何故わざわざ機能制限なしの無料版まで用意しているのでしょうか?

開発元はゲーム制作会社

Unreal engineの開発元は、ゲーム制作会社「Epic Games」です。
同社は既にFortnightなどの人気ゲームを抱えていますから、仮にUnreal engineから売上を得られずとも、会社全体の売上が0になる訳ではありません。

ロイヤリティや有料プランで利益を得られる

先に触れたように、Unreal engineは有料のカスタムプランが用意されており、そちらからの売上を得る事が出来ます。
元々Unreal engineは有料プランしか用意されておらず、ゲーム・映像業界向けの業務用ツールという色合いが強いものでした。
当然、その時代から有料プランを使い続けているユーザーも一定数居るでしょうから、Unreal engine部門単体で見ても、売上が0になるということは考えづらいでしょう。
このように、きちんとした実績のある企業の提供するツールですから、フリーソフトだからといって変に警戒する必要はないかと思います。

なぜフル機能の無料版が用意されているのか?

アプリやサービスで有料版と無料版双方を用意する際、多くのケースでは無料版に何かしらの機能制限を加えています。
そして、この制限された部分に便利な機能を割り当てることで、無料版を試したユーザーに有料版への移行を促すという戦略を採っているのです。
しかし、Unreal engineの場合は有料版と無料版でツールそのものの機能差はなく、サポートやロイヤリティ支払い条件といった付加的な部分で差を付ける仕組みを採用しました。
その理由は色々と考えられますが、他のゲームエンジンとの競争で優位に立つためという部分が大きいというのが筆者の予測です。
現在、Unreal engineには、Unityなどライバルとなるゲームエンジンが複数存在します。
この競争の中で安定して利益を出せる有料プランの顧客を増やす為には、フル機能を無料で提供することで、気軽に比較的長い期間Unreal engineを試せる状態にするのが最も簡単です。
また、フル機能の無料版が常時提供されていれば、下請けの開発者にもUnreal engineが広まり、結果としてデファクトスタンダードの位置に付ける可能性もあります。
現実には、Unreal engineの無料化後にライバルも追従する形になりましたが、対応が遅れて先を越されるよりは遙かにマシです。
加えて、ライバル各社が本来予定になかった無料化をせざるを得なくなった事を考えれば、競争戦略的には成功と言えるでしょう。

まとめ

今回は「誰でも無料は本当か?Unreal engineのライセンス戦略を徹底解説」と題して、人気ゲームエンジンのラインセンスの仕組みと、そこから読み取れる競争戦略について解説しました。
2020年度はいよいよ小学校でプログラミング教育もスタートし、今後はコンピューターを使ったクリエイティブな作業がますます身近になっていきます。
近い将来、子供達にとってゲームは「”遊ぶ”ものではなく、”作る”もの」になっているのかもしれませんね。

参考

*1
https://www.gamebusiness.jp/article/2017/07/19/13235.html
*2
https://cgworld.jp/feature/201911-255-ue4gp.html
*3
https://www.unrealengine.com/ja/faq
*4
https://automaton-media.com/articles/interviewsjp/unreal-engine-4-epic-games-japan/

建設・土木業界向け 5分でわかるCAD・BIM・CIMの ホワイトペーパー配布中!

CAD・BIM・CIMの
❶データ活用方法
❷主要ソフトウェア
❸カスタマイズ
❹プログラミング
についてまとめたホワイトペーパーを配布中


▼キャパの公式Twitter・FacebookではITに関する情報を随時更新しています!

    ホワイトペーパーフォームバナー

    【DL可能な資料タイトル】

    • ・プログラムによる建築/土木設計のQCD(品質/コスト/期間)向上
    • ・BIM/CIMの導入から活用までの手引書
    • ・大手ゼネコンBIM活用事例と建設業界のDXについて
    • ・デジタルツイン白書
    • ・建設業/製造業におけるデジタルツインの実現性と施設管理への応用

    詳細はこちら>>>

    PAGE TOP