西武建設の補修材吹き付けドローンの役割とは?その意義を解説
西武建設は自社開発の建設ドローンの研究、および活用を進めている組織の一つで、建設業界におけるICT活用の推進に力を入れています。
特に2019年に同社が発表した補修材吹き付けドローンは、その有用性から多くの注目を集めました。今回は西武建設が実践的に活用している自社開発の構造物への補修材吹き付けドローンについて、ご紹介します。
①西武建設の補修材吹き付けドローンについて
②西武建設の補修材吹き付けドローンの役割
③補修材吹き付けドローンから得られるメリット
④西武建設によるドローン開発の意義と課題
西武建設の補修材吹き付けドローンについて
西武建設は2019年に開催された「第5回国際ドローン展」において、業界初となる構造物への補修材吹き付けドローンを発表し、その性能を公開しました*1。
構造物への補修材吹き付けを担う
発表されたドローンは「スプレードローンSera(セラ)プロトタイプ4号機(SCSD-004)」と名付けられており、有線でドローンへの給電、および吹き付けが行える仕組みを搭載していました。
以前発表された3号機は無線操作ができ、吹き付け材もタンクを用いたハイテク仕様でしたが、今回はより実用性を重視したモデルに仕上がっています。人間が直接作業を行うことが困難な場所での補修材吹き付け作業を代行できるドローンとして、その実力に注目が集まりました。
施工実績の蓄積も進む
この補修材吹き付けドローンはまだプロトタイプの段階ですが、すでに施工実績の蓄積も進んでいます。トンネルのコンクリート含浸材を吹き付ける承認工事や、個人農家のビニールハウスへの遮熱材の吹き付けなどで採用されており、実践において価値あるパフォーマンスを発揮できる存在であることを証明しています。
西武建設では今後さらなるドローン活用が見込まれており、実績の蓄積に従い、バージョンアップや導入プロジェクトの増加も期待できるでしょう。
西武建設の補修材吹き付けドローンの役割
このように、実用性に重視して開発された今回のドローンですが、具体的にどのようなタスクをこなすことに注力しているのでしょうか。使い方としては、以下の二つのタスクの遂行が期待されています。
粘性の低い液体の散布
西武建設の補修材吹き付けドローンは、粘性の低い液体を使った作業を行うことができます。通常の補修材の場合、ある程度の粘性を有していることが一般的で、水に近い液体を扱う場合には異なるアプローチが求められます。
一方の西武建設のドローンは、粘性のない液体でも利用が可能です。含浸材、水性塗料、遮熱材、水と、液体であればなんでも使える強みを持っているため、補修剤の吹き付け以外の業務にも応用が可能です。塗料の吹き付けや殺虫剤の散布など、ドローン一台で幅広い業務に応用できるのはこの機体の強みと言えます。
高所や危険箇所での液体・薬剤散布
西武建設のドローンの強みは、人間が現場まで足を運ばなくとも、ドローンを向かわせるだけで業務ができる点にあります。例えば高所での作業や、工事中のトンネルなど、危険の伴う作業もドローンを飛行させるだけで実施できます。
作業員は低所からドローンを飛行させ、電源の給電と吹き付け剤の管理だけをすれば良いので、あとは肉眼やカメラ映像を確認しながら、現場で作業をするのと変わらないパフォーマンスを発揮できます。吹き付け剤を散布する現場から離れて作業を行えるので、人間が薬剤の健康被害を受ける心配がないのも強みです。
構造物への補修材吹き付けドローンから得られるメリット
西武建設が構造物への補修剤吹き付けを、ドローンで行えるような仕組みを整備することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
業務の効率化
一つは、業務の効率化です。これまでは人力で全ての作業を行っていたところを、ドローンを飛行させて行えるようになることで、クレーンなどの重機を使わなくても高所作業を実施できるようになります。大きな機材を搬入できない現場などでも役に立つので、スピーディに現場へ直行し、迅速に作業を進められます。
作業員の安全確保
もう一つは、作業員の安全確保です。危険が伴う作業を実施する際、あらかじめ二重三重に安全確保を行わなければならないため、効率の低下につながります。また、安全対策をどれだけ実施しても、危険性がゼロになるわけではないため、ある程度のリスクは常に存在していました。
ドローンによって危険な作業を代行できるようになれば、作業員の安全性が高まるだけでなく、身体的な負担も小さくなり、怪我などのリスクを小さくできます。1日あたりに可能な作業効率も高まり、最大限リソースを活かせるでしょう。
西武建設によるドローン開発の意義と課題
このように、ドローンの運用には魅力的なメリットが並びます。西武建設の補修剤吹き付けドローンは、どのような意義と課題意識をもたらしたのでしょうか。
建設業界の人材不足解消に貢献
ドローン運用の意義として大きいのは、建設業界における人材不足の解消です。業務を効率化して、必要な人の手を少なくしているだけでなく、業務負担そのものを軽減し、建設業界のブラックなイメージをクリーンにすることに成功しています。
建設業界がハイテク化することで、業界はより最先端のイメージを展開でき、建設業界が求めるDX人材やハイテクに明るい人物の参入を招けるようにもなります。
積極的にドローンを活用することは、現場作業員の仕事を無くしてしまうのでは、という懸念もあります。しかしドローンの運用は、ハイテク教育の必要性を現場に訴えるとともに、新しい人材も招き入れられるため、長期的にはプラスに働くでしょう。
ドローンの性能向上に期待
多くのメリットをもたらしてくれるドローン活用ですが、課題も残ります。一つはドローン本体の性能向上で、今回のプロトタイプも有線での利用を前提としており、連続運転時間は60分、最高飛行高度は10メートルと、運用の限界も見られます。
前世代モデルのように、無線で同様のパフォーマンスを発揮できるようになれば、その運用範囲はグンと向上しますし、たとえ有線でも性能がアップグレードできれば、活用範囲は広がります。
もう一つがドローン運用ができる人材の育成、あるいはドローンの操作そのものの利便性向上です。ドローンは精密機械であるために、シンプルな操作ですぐに意のままに動かせるようになるにはやや複雑すぎる点も見られます。簡単なマニュアルを読むだけで扱えるドローンの登場や、ドローン人材の獲得が求められるでしょう。
おわりに
西武建設の補修剤吹き付けドローンは、実用性の高い機体として、建設業界でも注目の存在となっています。
現在はプロトタイプとしての運用にとどまっているものの、今後実用性が高まれば、会社の垣根を越え、様々なプロジェクトで活躍することとなるでしょう。
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*1 BUILT「構造物への補修材吹き付けドローン4号機を初公開、芝浦工大と共同開発」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1904/26/news042.html