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BIMに関する国土交通省ガイドラインのまとめ

BIM(Building Information Modeling)とは、コンピュータ上に作成した3次元の形状情報に加え、室などの名称・面積、材料・部材の使用、仕上げなど、建築物の属性情報を併せ持つ建築物情報モデルです。

BIMを用いたワークフローでは、あらゆる建築物に関する属性情報が登録された3次元建築物のデジタルモデルが、設計・施工・維持管理に至るまでのすべての工程で活用されます。
BIMの活用により、建築の品質・制度や生産性の向上、ビッグデータ化、インフラプラットフォームとの連携などを通じた、社会資産としての建築物の価値の拡大が期待されています。

建築分野におけるBIMの活用は、日本国内では必ずしも十分には進んでいない状況があります。
そこで国土交通省は、官民一体となってBIMの活用を推進すべく、学識経験者や関係団体からなる「建築BIM推進会議」(委員長:東京大学・松村秀一特任教授)を設置し、BIMに関する検討会を開催しました。
そして、令和2年3月付で「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」(以下「本ガイドライン」といいます。)を公表しました。

この記事は、本ガイドラインの内容を独自にまとめたダイジェスト版です。
日本国内におけるBIM活用の展望を理解するための参考にしていただければと思います。

1.本ガイドラインの趣旨・目的・対象について

1-1.本ガイドラインの趣旨

本ガイドラインは、建築分野においてBIMを活用する場合の、

・関係者間で標準的に想定されるワークフロー(役割・責任分担)
・ワークフローの活用の方策

について整理した内容になっています。

なお、本ガイドラインはあくまで作成時点での関係団体等の知見を踏まえたものであり、今後継続的に見直しを行うことが前提とされています。

また、ワークフローの内容はあくまでも標準的なものであり、個々のプロジェクトの諸条件やBIMの活用に対する目標設定および業務内容に応じて、個別にBIMの活用方策について判断することが重要です。

1-2.本ガイドラインの目的

本ガイドラインは、建築物の設計・施工、維持管理・運用等を含めた建築物のライフサイクルを通じてBIMが活用されることを想定し、BIMを活用する上で標準的に設定されるワークフロー(以下「標準ワークフロー」といいます。)とその活用に当たっての基本的な考え方を関係者間で共有することを目的としています。

(出典:本ガイドライン10頁)
日本におけるBIMの現状として、「設計だけ」「施工だけ」などのプロセスごとにBIMが活用される例は見られるものの、企画・設計・施工・維持管理の全プロセスを通じた横断的な活用は進んでいません。

今後プロセス横断型のBIM活用が浸透すれば、以下のようなメリットが期待できるとされています。

・プロセスごとに重複していた情報入力・加工作業等の省略化
・関係者間での情報伝達の円滑化
・建築物の効率的な維持管理、運用
・工期の短縮やコスト低減

1-3.本ガイドラインの対象

本ガイドラインの標準ワークフローは、以下の条件のプロジェクトを主に想定して策定されています。

・建築物を新築する際の生産および維持管理・運用プロセス
・概ね延べ面積5,000㎡~10,000㎡の建築物
・用途は特に限定しない
<本ガイドラインの趣旨・目的・対象について-まとめ->
・本ガイドラインは、建築分野においてBIMを活用する場合の標準ワークフローとその活用方法をまとめたものである。
・関係者間で標準ワークフローやその活用にあたっての基本的な考え方を共有することにより、日本の建築分野でのBIM活用の浸透を目指す。
・本ガイドラインは、延べ面積5,000㎡~10,000㎡の新築建築物が対象。

2.BIMの標準ワークフローの5つのパターン

BIMの活用は、プロセス間の連携のレベルに応じて、様々なパターンが想定されます。
本ガイドラインでは、標準的なパターンとして以下の5つが想定されています。

パターン①:設計・施工段階で連携しBIMを活用する
パターン②:設計・施工・維持管理段階で連携しBIMを活用する
パターン③:設計・施工・維持管理段階で連携しBIMを活用する
+施工の技術検討をフロントローディング(設計に反映)
(※ 工事請負契約を前提としない施工技術コンサルティング)
パターン④:設計・施工・維持管理段階で連携しBIMを活用する
+施工の技術検討に加え、施工図の作成等をフロントローディング(設計に反映)
(※ 工事請負契約を前提とした施工技術コンサルティングを、設計契約と同時
に契約(例:設計施工一貫方式))
パターン⑤:設計・施工・維持管理段階で連携しBIMを活用する
+施工の技術検討に加え、施工図の作成等をフロントローディング(設計に反映)
(※ 工事請負契約を前提とした施工技術コンサルティングを、設計段階の途中(例えば実施設計段階)から契約)

本ガイドラインは、これらの5つのパターンにおいて想定されるワークフローについて、

・各業務の内容
・各業務の担い手

などの観点から詳細にまとめています。

<BIMの標準ワークフローの5つのパターン-まとめ->
・BIM活用に関する典型的なワークフローは5パターン(具体的な案件によっては他のパターンもあり得る)
・本ガイドラインは、各パターンにおけるワークフローについて、各業務の内容や担い手の観点から詳細にまとめている。

2-1.パターン①のワークフロー

(出典:本ガイドライン21頁)

パターン①は、設計・施工段階でBIMを共有・連携するワークフローとなっています。
パターン①のワークフローの大まかな流れは以下のとおりです。

①発注者が設計者との間で、基本設計・実施設計業務委託契約を締結
-同契約に基づき、設計者はBIMによる建築物の設計を行います。
-設計の進捗に合わせて、設計者は発注者に対して、BIMを活用して設計内容を説明し、順次承認を得ます(予算面でのチェックを含む)。
-BIMによる設計の成果物(2D加筆、特記仕様書の文書を含むデータ)は、設計者から施工者に対して引き渡されます。②基本設計・実施設計業務委託契約に基づき、設計者が設計を実施
・基本設計段階では、設計者と発注者がBIMを活用して設計内容を協議し、発注者の承認を得ます。
・実施設計段階では、BIMにより設計意図をより詳細に具体化し、設計者・発注者間の協議によって設計内容を確定します。
・設計者は、設計成果図書(2D)とBIMによる設計の成果物を作成し、発注者へ引き渡します(引き渡しはこの段階で行わないこともあります)。
③発注者が、関係者との間で以下の契約を締結。関係者は契約に基づき、BIMを活用・参照して業務を実施
-工事発注・契約支援業者(※)との間のコンサルティング業務契約
※設計者と同じ場合も想定されるが、建設コンサルタント、PM/CM会社、発注者支援機関なども想定
-工事監理者との間の工事監理業務委託契約
-設計者との間の設計意図伝達業務委託契約(設計者から施工者に対する設計意図の伝達を目的とする)
④発注者は、設計成果図書(2D)を基に、入札等を経て、施工者と工事請負契約を締結
-施工者は、設計成果図書(2D)に基づきBIMを活用した施工を行い、竣工した建物を発注者に引き渡します。
-施工者は、設計者から設計意図の説明を受けた上で、設計者から引き渡されたBIMを活用または参照して施工図等を作成します。
-施工者は、竣工後に完成図(2D)を作成し、工事監理者に確認の上、発注者に納品します。
⑤施工者は、工事請負契約に基づき、BIMを活用または参照した施工・現場管理等を実施
<施工・現場管理等の効率化のためのBIM活用例>
-干渉チェック、納まりの確認(鉄筋等の部材、設備、躯体と建具、杭と埋設物等)
-施工シミュレーションによる施工性の検討(仮設、掘削、躯体工事等)
-日割り・部分的な施工手順等を3D化した施工計画の作成(仮設工事、搬入作業、揚重機配置等)、施工状況や施工出来高の進捗管理(工事進捗やコンクリート等の施工数量の把握・管理等)
-工事関係者(元請、サブコン等)間の施工性、施工手順やスケジュール等の確認・合意形成
-鉄骨等の部材、エレベーター・設備等の発注・情報連携、必要数量の算出
-現場作業者への3Dモデル等を活用した施工計画や手順の指示等の現場管理
-現場作業者の現地での施工計画や手順の確認や、施工状況等の情報入力(工事進捗やコンクリート等の施工数量の入力等)
⑥施工者は、工事請負契約に基づき、竣工後に発注者に建築物を引き渡すとともに、作成した完成図(2D)を工事監理者に確認の上、発注者に納入

2-2.パターン②のワークフロー

(出典:本ガイドライン27頁)
※筆者注:「パターン①と異なる部分に下線」とは、本ガイドラインの本文中に付されたものです。

パターン②のワークフローでは、パターン①の場合と比較して、維持管理段階での連携・BIMの活用に関する事項が加わります。

パターン①の場合と比較して追加となるワークフローは、おおまかに以下のとおりです。

①発注者が、事業コンサルティング業者(※)との間で事業コンサルティング契約を締結
※PM/CM会社、建設コンサルタント、建築士事務所、建設会社FM担当部署、不動産鑑定士事務所など
-事業コンサルティング業者は、事業の企画段階で、たとえば以下のように発注者の専門的な知識または技術を補い、事業の構想を検討・提案します。
(事業コンサルティング業務の例)
・事業計画の内容と予算枠、事業の採算性の検討
・事業スケジュールの検討
・事業性の検証のための基礎調査の実施
・許認可等に係る事前協議
・BIMの活用計画(BIMの受け渡しルールや活用範囲、各事業者の役割分担等)や契約内容の検討・提案
②発注者が、ライフサイクルコンサルティング業者(※)との間でライフサイクルコンサルティング業務契約を締結
※PM/CM会社、資産・施設・不動産の管理会社、建設コンサルタント、FMコンサルタント、建築士事務所、建設会社FM担当部署、不動産鑑定士事務所、設備施工会社など
-ライフサイクルコンサルティング業者は、発注者と維持管理段階のBIM活用方法について協議したのち、維持管理・運用で必要と想定されるBIMおよびそのモデリング・入力ルールを、設計者との契約前に検討します。その上で、維持管理BIMに求めるモデリング・入力ルールを設計者・維持管理BIM作成者に対して共有します。
③設計者が、維持管理に関する事項をBIMへ入力
-設計者は、ライフサイクルコンサルティング業者と協議しつつ、ライフサイクルコンサルティング業者から示された、維持管理BIMに求めるモデリング・入力ルールに基づいた適切なBIMの入力を行います。
④発注者が、維持管理BIM作成者(※)との間で、維持管理BIM作成業務委託契約を締結
※建築士事務所、建設業者、BIMコンサルタントなど
-維持管理BIM作成者は、ライフサイクルコンサルティング業者から示された、施工段階で確定する維持管理・運用に必要な情報を施工者に対して提示します。
-施工者が当該情報を確定し、維持管理BIM作成者に提供した場合には、維持管理BIM作成者は、ライフサイクルコンサルティング業者と協議しつつ、維持管理BIMに求めるモデリング・入力ルールに基づくデータ入力を行い、維持管理・運用に必要なBIMの成果物(維持管理BIM)を作成します。
-維持管理BIMは、作成完了後に発注者に対して納品されます。
⑤発注者が、維持管理者との間で維持管理業務委託契約を締結
-維持管理者は、維持管理BIMを活用して、効率的な維持管理を行います。
<維持管理BIMの活用例>
・施設管理台帳(メーカー・型番・能力・容量・耐用年数等)としての活用
・日常的なマネジメント業務(日常清掃、空調・照明等の設備の日常点検等、防災・セキュリティ管理等)での3Dモデル活用や、点検結果等のデータ入力・蓄積
・部材・仕上・数量等のデータからの中長期の保全・修繕計画の検討・提案と、適切
な維持修繕等の実施
・他の所有物件とのデータ連携・一括管理

2-3.パターン③のワークフロー


(出典:本ガイドライン37頁)
※筆者注:「パターン②と異なる部分に二重下線」とは、本ガイドラインの本文中に付されたものです。

パターン③では、パターン②の場合と比較して、施工技術コンサルティング業者から設計者に対する生産性向上のためのフィードバックのフローが追加されています(施工技術協力・提案)。
(なおパターン③では、施工技術コンサルティング業者は実際の施工者とは一致しません。)

これに伴い、パターン②の場合と比較して追加となるワークフローは、おおまかに以下のとおりです。

①設計者が、施工技術コンサルティング業者(※)との間で、技術協力業務に関するコンサルティング業務契約を締結
※建設業者、専門工事業者、施工コンサルタントなど
-施工技術コンサルティング業者は、施工者としての知見をもとに技術協力を行い、設計内容に関する提案を行います。
-設計者は、施工技術コンサルティング業者からの提案に基づき、BIMの修正を行います。

2-4.パターン④のワークフロー


(出典:本ガイドライン48頁)
※筆者注:「パターン③と異なる部分に波線」とは、本ガイドラインの本文中に付されたものです。

パターン④では、パターン③の場合とは異なり、施工技術コンサルティング業者が実際の施工も担当します。
これにより、情報伝達のさらなる効率化や、より迅速な工事への着手が可能となります。
パターン③の場合と比較して追加・変更となるワークフローは、おおまかに以下のとおりです。

①施工技術コンサルティング業者と技術協力業務に関するコンサルティング業務契約を締結するのは、設計者ではなく発注者となります。
-施工技術コンサルティング業者は、施工者として工事請負契約を今後結ぶことを前提として、施工者としての知見をもとに技術協力を行い、設計内容に関する提案を行います。
-施工技術コンサルティング業者は、設計業務と並行して実際の工事に向けた準備を行い、工事請負契約締結後、速やかに資材の発注や工事の着手を行えるようにします。
②発注者は、工事請負契約の締結を前提とした施工技術コンサルティング業者を施工者として、工事請負契約を締結します。

2-5.パターン⑤のワークフロー


(出典:本ガイドライン59頁)
※筆者注:「パターン④と異なる部分に破線」とは、本ガイドラインの本文中に付されたものです。

パターン⑤では、パターン④と同様に、施工技術コンサルティング業者が実際の施工も担当します。
ただし、パターン④では設計契約締結と同時に施工技術コンサルティング契約を締結するのに対して、パターン⑤では設計段階の途中(たとえば実施設計段階)で施工技術コンサルティング契約を締結します。

これに伴い、ワークフローでは設計段階を基本設計段階と実施設計段階の2段階に分けて考えることになります。

パターン④の場合と比較して追加・変更となるワークフローは、おおまかに以下のとおりです。

①発注者は設計者との間で、基本設計業務委託契約と実施設計業務委託契約をそれぞれ締結します。
-基本設計・実施設計は、対応する契約の規定に基づいて行われます。
-実施設計の段階で、施工技術コンサルティング業者による技術協力と、設計内容に関する提案が行われます。

3.BIMの標準ワークフローの活用に当たっての留意事項・解説

標準ワークフローの各パターンにおける留意事項を解説します。

3-1.「設計・施工段階で連携しBIMを活用する」手法について(特にパターン①関係)

現状では、設計BIMのデータが施工段階でそのまま活用されるには至っていません。その要因としては、以下のようなものが挙げられます。

①意匠、構造、設備の設計BIMでの整合性が担保されない場合が多いこと
②設計BIMの中で確定している範囲とそれ以外とが明示されていないこと
③設計BIMのモデリング・入力ルールが開示されないことなどにより、施工段階で設計BIMを理解するのに時間がかかること
④工事請負契約図書と設計BIMが乖離している場合があること

これらの作業を極力なくし生産性を向上させるためには、設計から施工へ受け渡すデジタル情報を整理することが重要です。
たとえば、以下のような前作業が必要となります。

①意匠、構造、設備の設計BIMでの整合性の確認
②設計BIMの中で確定している範囲の明示
③設計BIMのモデリング・入力ルールの説明
④工事請負契約図書と設計BIMの整合性の確保

また、情報伝達の方法としては、3Dモデルの情報伝達にこだわらず、CADで作成した2D図書、表計算ソフトウェア等による仕様書、プレゼンテーションソフトウェアによる説明書等、適した形式を組み合わせることが重要です。

<「設計・施工段階で連携しBIMを活用する」手法について-まとめ->
・設計BIMを施工段階でもそのまま活用できるようにするには、施工者にとって親切となるような前準備が必要。
・情報伝達の方法は3Dモデルに限らず、既存の方法を含めて適した形式を組み合わせることが重要。

3-2.「設計・施工・維持管理段階で連携しBIMを活用する」手法について(特にパターン②関係)

維持管理段階でもBIMの活用が図られる場合に必要となる特有の業務として、以下の2つの業務があります。

・維持管理BIM作成業務
・ライフサイクルコンサルティング業務

これらの業務の概要について解説します。

<維持管理BIM作成業務の概要>
施工段階において、設計BIMをベースとして維持管理BIMの入力・情報管理を行い、竣工後、発注者(維持管理者)に内容を適切に説明し、受け渡す業務です。
具体的には、維持管理BIM作成者は、まず施工者に対して、ライフサイクルコンサルティング業務の実施者から提示された施工段階で確定する維持管理・運用に必要な情報(※)を提示します。
※施工段階で決まる設備施工情報、設備機器の品番、耐用年数など
その上で、施工者が当該情報を確定し、維持管理BIM作成者に提供した場合には、維持管理BIM作成者は、ライフサイクルコンサルティング業務の実施者と協議しつつ、ライフサイクルコンサルティング業務の実施者から示されたBIMのモデリング・入力ルールに基づき、設計者から引き渡されたBIMによる設計の成果物に入力して維持管理BIMを作成します。
維持管理BIMは、竣工後に発注者に対して納品されます。
情報伝達の方法については、3D情報モデルに限らず、設計意図説明書や現場説明書なども利用しながら効率的に行うことが必要です。
維持管理BIM作成業務の担い手としては、建築士事務所(設計事務所、建設会社の設計部等)、建設業者(建設会社、工務店)、BIMコンサルタントなどが考えられます。
<ライフサイクルコンサルティング業務の概要>
ライフサイクルコンサルティング業者の主な役割は、維持管理・運用で必要と想定されるBIM及びそのモデリング・入力ルールを、設計者との契約前に検討し、設計者・維持管理BIM作成者と、維持管理BIMに求めるモデリング・入力ルールを共有することです。
そのほか、たとえば以下のように、建築物のライフサイクルを通じたBIMに関する様々なプロセスでの関与が考えられます。
つまり、ライフサイクルコンサルティング業務は、実情に応じて複数の主体がそれぞれのプロセスで適時適切に担っていくことが想定されます。
・企画段階におけるコストの合理化や、他の物件又は発注者工事による什器や機器との一括管理、手法等の提案等
・設計段階における維持管理・運用の指針等の検討や、設計内容への維持管理・運用の観点でのアドバイス
・施工段階における維持管理BIM作成の進捗確認や、必要な情報が受け渡されるタイミングの調整
・引渡し段階における維持管理BIMと維持管理のシステムが適切に連携することの確認、連携の不都合が生じた場合には、問題解決に向けた調整やアドバイス
・発注者の維持管理者の選定に当たり、発注者による維持管理・運用の方針に基づいた業務仕様書の策定を支援。
・維持管理業務段階における、維持管理者に対するBIMを活用した業務遂行についてのアドバイス
ライフサイクルコンサルティング業務の担い手としては、PM(プロジェクトマネジメント)/CM(コンストラクションマネジメント)会社、建築士事務所(設計事務所、建設会社設計部等)、不動産鑑定士事務所、建設会社LCM(ライフサイクルマネジメント)/FM(ファシリティマネジメント)推進部、建設コンサルタント、FMコンサルタント、資産・施設・不動産の管理会社、設備施工会社などが考えられます。
<「設計・施工・維持管理段階で連携しBIMを活用する」手法について-まとめ->
・設計、施工、維持管理段階をBIMで効率的に繋げるためには、「維持管理BIM作成業務」と「ライフサイクルコンサルティング業務」を明確化し、組み合わせることが重要。

3-3.多様な発注方式(施工技術コンサルティングと工事請負契約を前提とするか否か等)について(パターン③~⑤関係)

設計段階であっても施工の観点から、設計意図に対して具体的な提案と情報の提供を行うことで、合理的な設計の選択肢が得られることになります。
また設計段階から施工段階に持ち越される未決事項や不確定要素を減少させることができます。
標準ワークフローでは、この業務を「施工技術コンサルティング業務」と位置付けています。

設計段階での施工技術コンサルティング業務については、施工者などが確定しているかどうかで実施できる範囲・内容が異なります。
たとえば、施工技術コンサルティング業者が施工者を兼ねることが事前に決定しているのであれば、施工段階の作業を設計段階から行うなどの前倒しが可能となり、工期の短縮やコスト低減等を図ることができるでしょう。
このような施工の効果的な事前検討を、施工の「フロントローディング」と呼ぶことがあります。

フロントローディングを行う際には、「決めるべきことが何か」を明確に意識し、それぞれ「いつまでに」決めれば間に合うかを協議の上、意思決定の計画を発注者・設計者・施工者の間で共有することが重要です。
その計画を協議するために、BIMを活用することは有用です。

<多様な発注方式(施工技術コンサルティングと工事請負契約を前提とするか否か等)について-まとめ->
・施工の観点からの提案や情報を設計に反映させることを、標準ワークフローでは「施工技術コンサルティング業務」と位置付けている。
・施工者が事前に決定していれば、施工のフロントローディングが可能。
・フロントローディングを行う際には、何をいつまでに決めれば良いかについて、発注者・設計者・施工者の間で認識の共有が必要。

3-4.事業の企画段階で、発注者が事業コンサルティング業者と契約し、BIMの活用を検討する場合について

標準ワークフローの各パターンの前段階として、企画段階で事業コンサルティング業者(※)から発注者がBIMの活用を提案され、それをきっかけとして発注者がBIMの活用を検討する場合もあります。
※PM/CM会社、建設コンサルタント、建築士事務所、建設会社FM担当部署、不動産鑑定士事務所など

事業コンサルティング業者は、発注者に対して、BIMの活用に関して以下の提案を行うことが考えられます。

・BIMの具体的な活用メリットを提示し、設計段階からBIMを活用することを提案する。
・今後、多数の類似仕様の建築物の発注が考えられている場合、標準的なBIMモデルを作成することで、今後の生産期間の短縮などの合理化を図ることを提案する。

建築生産においてBIMを効率的に活用するためには、最終的には発注者の判断が重要になります。
発注者がBIMによる建築物のライフサイクル全体でのメリットを事前によく把握した上で、企画・基本計画段階からBIMの活用を検討することで、円滑に設計・施工・維持管理段階まで一貫したBIMの活用が進みます。
また、発注者が段階的にBIMによる成果の承認を行うことも重要です。

BIMの活用には、発注者にとっても以下のようなメリットがあります。

・コストマネジメントの容易化
・作業の省力化
・データ蓄積効果
・維持管理・運用の品質の向上

事業コンサルティング業者によるBIM活用の提案は、こうしたメリットを発注者が理解するきっかけとなる場合があります。

BIM活用のメリットは、現状ではあくまで設計者・施工者などを中心に認識・享受されています。
しかし、建築生産においてBIMの活用を判断するのは発注者です。
そのため、BIMの導入に関する費用対効果、つまりBIMの導入コストをプロジェクトのどのプロセスで回収するかという観点は非常に重要となります。

現在現れるメリット 〇設計・施工のコストの合理化や作業の効率化は最終的に発注者に還元される。
・設計内容が3D等で示されるため、的確に理解しやすくなり、早期に合意することで設  計変更が減る可能性がある。これは一義的には設計者、施工者のメリット(手戻り防止であるが、最終的に発注者に還元される。
〇各部材等のデータを効率的に集計することが可能となるため、概算・詳細コストの算出が容易となり、設計段階や施工発注段階等でのコスト管理が効率化する。
〇光熱水費のコスト管理に活かせる。
・BIMを活用した運用エネルギーのシミュレーションが可能となり、長期的な光熱水費の予測可能性が高まる。
〇適切な入力ルールの下、設備台帳を作成し、設備機器台数、清掃面積等の算出が効率化、省力化できる。
〇複数の施設を所有する場合は、データ蓄積効果が生じて、上記のメリットが大きくなる。
〇将来的に増改築等を行う際に、BIMでーたを活用して設計者へ発注することで、BIMデータを活用した様々なシミュレーション等に基づく意思決定が可能となり、またBIMデータを継続して活用することができる。
将来現れると考えられるメリット 〇今後BIMの活用が進み、類似案件データからさらに細かくコストデータの蓄積と体系化が行われ、各BIMの部品等との連携が進むことで企画・基本計画段階でのコスト検証が効率化・精緻化し、コスト計画が立てやすくなる。
〇事業へのBIM活用、事業性評価、設備更新や改修等の投資・実施判断等が期待できる。
〇モバイル端末の利用による対応の迅速化等維持管理サービスが向上する。
・例えば現地対応を行う業者が施設のBIMモデルをモバイル端末で参照できるようになれば、漏水等の場合に経路情報が可視化され、バルブ位の特定が迅速化し、復旧を早めることが可能になる等、維持管理コストが有利になり、サービスレベルの向上につながる。
〇災害時のBCP、避難、家具転倒等のシミュレーション等が充実化する。
・BIMをBCP、避難、家具転倒等のシミュレーションに活用することは実験段階として行われており、将来実用化されサービスとして提供されるとともに、シミュレーション検証の結果、賃料設定も有利になる。
留意点 〇建築物のライフサイクル全体で見た場合、BIM導入等のコストの投資回収期が長期にわたる場合があるが、便益の向上も含めた総合的な判断が必要。
〇既存ストックでのBIMの活用や既存ストックのデータ管理との連携。

(出典:本ガイドライン87頁)

4.そのほかの留意事項について

4-1.業務区分(ステージ)の考え方

BIMモデル上には、以下の理由から、詳細度の異なる情報や、確定情報と検討中の情報が混在することになります。

・大きな階層の情報から小さな階層の情報まで、さまざまな情報を入力できる
・企画・設計・施工・維持管理・運用・解体まで一貫して用いられる

よって、BIMの活用においては情報・データの管理が非常に重要となります。
情報・データの管理上重要なことは、「いつ誰がどこまで何を入力するのか」というデータ作成のルールを関係者全員で共有するということです。
本ガイドラインでは、形状と情報の詳細度が変わる段階でワークフローを区分し、管理していく方法が提案されています。

(参考:本ガイドライン88頁)

本ガイドラインでは、上記図のとおり、S0からS7までの業務区分が設定されています。

S0:事業計画の検討・立案
S1:条件整理のための建築計画の検討・立案
S2:基本的な機能・性能の設定
S3:機能・性能に基づいた一般図(平面、立面、断面)の確定
S4:工事を的確に行うことが可能な設計図書の作成
S5:施工等、維持管理BIM作成
S6:建築物の性能・仕様の完成確認と引渡し
S7:維持管理・運用

このように業務区分を従来から見直すメリットとして、本ガイドラインでは以下の3つが挙げられています。

①適切な形状と情報の詳細度の管理がしやすくなる
工程が進み、形状と情報の詳細度を変える段階では、データの整理などの準備作業が必要となります。
業務区分を形状と情報の詳細度が変わる段階で区分することによって、必要となる準備作業を適切なタイミングで行うことができます。
②コスト管理がしやすくなる
形状と情報の詳細度が変わるとコスト精度も変わるため、制度を変える段階ごとにコストを確認しながら次の段階へ進むという合理的なワークフローで進めることができます。
③協働しやすくなる(多様な発注方式に対応しやすくなる)
細分化された業務区分の各部分で確定したモデルをマネジメントしておけば、現在のモデルがどのような形状と情報の詳細度にあるかを理解することが可能になります。
また、業務区分を細分化して整理することで、色々なタイミングで契約を分けることが可能になり、多様な発注方式の選択の幅も広がります。
<業務区分(ステージ)の考え方-まとめ->
・BIMモデル上には、詳細度の異なる情報や、確定情報と検討中の情報が混在することになるため、情報やデータの管理が重要。
・情報・データの管理上重要なのは、「いつ誰がどこまで何を入力するのか」というデータ作成のルールを関係者全員で共有するということ。
・従来の業務区分を見直し、形状と情報の詳細度が変わる段階ごとに細分化された業務区分をもとにワークフローを考える。

4-2.デジタル情報の受渡し等について

効果的にBIMを活用するためには、設計・施工・維持管理の各段階で適切にデジタル情報を受け渡すことが重要です。
受渡しの方法として3Dモデルを用いるのか、テキストデータなどを用いるのかについては、情報の性質によって適切な方法を見極めなければなりません。
BIMを使うこと自体が目的なのではなく、情報を受け渡す手段としてBIMの特性を有効に活用するという視点が肝心です。

<デジタル情報の受渡し等について-まとめ->
・BIMの効果的な活用には、情報の性質に応じて適切な手段を用いたデジタル情報の受渡しが重要。
・3Dモデルやテキストデータなどを併用する。

4-3.ライフサイクルで管理するBIM
BIMは維持管理・運用で活用され、また維持管理・運用に関する情報を備えることで、建築物の価値を向上させるものとして期待されています。
そのためには、設計段階や施工段階での、発注者・受注者間の適切なコミュニケーションが行われることが重要です。

また、BIMは建築物のライフサイクルの情報を一元的に管理する情報基盤(データベース、プラットフォーム)になる可能性があります。

そのためには、発注者と設計者・施工者はそれぞれ以下の役割を担う必要があります。

発注者:
維持管理・運用時の活用を前提としたBIM活用の全体像を企画段階で想定し、設計と施工段階で発注者として必要な情報を収集する
設計者・施工者:
BIMを通じた情報の一元化を発注者の立場に立って行う
<ライフサイクルで管理するBIM-まとめ->
・BIMは建築物のライフサイクルに関する一元的なデータベースになり得る。
・そのためには関係者間で適切にコミュニケーションを取り、それぞれの役割を果たすことが重要。

4-4.多様な関係者の協働のあり方
BIMには、様々な関係者間の作業内容の整合性を確保でき、協働がしやすいというメリットがあります。
多様な関係者が協働を行うためには、たとえば以下の点に留意する必要があります。

①「誰が、いつ、どこで、どうやって、何を行うのか」のルールの徹底
関係者間で作業内容の整合性を確保するためには、データの共有方法、リンク方法、重ね合わせの方法などのルールをプロジェクトごとに決定し、関係者が事前にそのルールを共有しておく必要があります。

②情報管理・データ管理
従来の図面に比べて、BIMに含まれる情報量ははるかに多く、またデータのアップデートも各工程で有機的に行われることから、情報管理・データ管理を適切に行うことが非常に重要です。

③適切な契約の必要性
BIMに関するルールを関係者に遵守させるため、関係者間で締結される契約にルールの内容を盛り込むことが求められます。
また、BIMの安易な二次利用等を防止するため、データ利用や秘密保持等の必要な契約を交わすことも重要です。
さらに、BIMの活用に特有の契約内容を追加すべきことに留意する必要があります。
(例:履行期間、BIMを含む成果物、必要となる確定情報、品質、検収の方法、契約不適合責任、権利の帰属と利用許諾等)

④設計段階での専門工事会社(メーカー)の技術協力
設備メーカー等が設計段階からBIMによるワークフローに関与できる環境が整えば、BIM活用の可能性がさらに広がります。

<多様な関係者の協働のあり方-まとめ->
・多様な関係者が協働を行うためには、情報共有などに関するルールの徹底が重要。
・BIMに関するルールの内容などは契約書に盛り込む。

4-5.BIMと国際標準

本ガイドラインによる標準ワークフローは、日本国内の建築・建設業界の商慣習をベースにしながらも、国際規格であるISOを参照しています。
各国のBIMガイドラインにおいても、ISOを参照しながらも、各国の事情に応じたカスタマイズが行われています。

ISOの基準によると、情報管理に関する成熟段階の観点から、標準ワークフローはステージ1とステージ2の間にあると考えられます。

(出典:本ガイドライン100頁)

<BIMと国際標準-まとめ->
・標準ワークフローは、日本国内の建築・建設業界の商慣習をベースにしながらも、国際規格であるISOを参照して作成されている。

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