点群処理に最適なパソコンスペックとは?初心者でも失敗しない選び方ガイド
1. はじめに:点群処理とPCスペックの重要性
点群処理とは、3DスキャナーやLiDAR(ライダー)などを使って取得した大量の点データを整理・解析・可視化する技術です。建設や土木、製造、さらには文化財のデジタル保存など、さまざまな分野で注目を集めています。
しかしこの点群処理、実はパソコンに大きな負荷がかかる作業でもあります。データは数千万~数億点に及ぶこともあり、一般的な事務用パソコンでは処理しきれず、動作が遅くなったり、ソフトが強制終了してしまうことさえあります。
そのため、点群処理を快適に行うには、パソコンのスペック選びが非常に重要になります。具体的には、処理能力の高いCPU、大容量のメモリ(RAM)、高性能なグラフィック機能(GPU)、そして高速なストレージ(SSD)など、複数の要素をバランスよく備えた構成が求められます。
とはいえ、「とりあえず高性能なパソコンを買えばいい」というわけではありません。作業内容や扱うデータ量、予算によって、最適なスペックは異なります。たとえば、土木・建築分野で本格的なBIM/CIM対応の解析を行う場合と、3Dスキャンを始めたばかりの入門者では、必要なスペックは大きく違ってきます。
この記事では、初心者の方にもわかりやすい言葉で、点群処理に必要なパソコンスペックの基本を解説していきます。Windows 10や11などのOS環境に触れつつ、実際にパソコンを選ぶ際のチェックポイントや注意点も丁寧に紹介します。
点群処理は今後ますます需要が高まる分野です。だからこそ、最初の段階でパソコン選びに失敗しないことが、快適で効率的な作業環境をつくる第一歩になります。この記事を通じて、ご自身に合った“最適な1台”を見つけるヒントをつかんでいただければ幸いです。
2. 点群処理の基礎知識
点群処理に本格的に取り組む前に、まずは「点群データとは何か」、そして「どんな場面で活用されているのか」といった基本を理解しておくことが大切です。こうした知識は、あとでパソコンのスペックを検討する際にも非常に役立ちます。
点群データは、大量の三次元座標情報を含んでおり、データ容量が想像以上に大きくなるのが特徴です。そのため、処理するには相応のパソコン性能が求められます。ここでは、点群データの概要や、実際にどのような用途で活用されているかを、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
また、点群データの性質を理解することで、たとえば「データの粒度」や「スキャン範囲の広さ」によって必要なメモリやGPU性能が変わる理由も見えてきます。知識ゼロからのスタートでも大丈夫ですので、まずは「点群とは何か」という基本から、一緒に学んでいきましょう。
2.1. 点群データとは?
点群データとは、X・Y・Zの三次元座標に加えて、色情報や反射強度などの属性をもつ「点」の集合体です。3DスキャナーやLiDAR(レーザー計測機器)を使って、地形・建物・構造物などの形状を精密にスキャンすることで取得されます。
この点群は、写真や動画と異なり、撮影角度や視点に左右されにくいという大きな特徴があります。つまり、任意の方向から立体的に確認することができるため、正確な寸法や位置情報を把握しやすいのです。また、1点ごとに非常に細かな位置情報を持つため、数千万~数億点規模のデータになることも珍しくありません。これが、点群処理に高いパソコンスペックが必要とされる主な理由です。
たとえば建築分野では、建物の壁や柱のスキャンをもとにBIM/CIMデータを作成したり、土木では橋や道路の形状を把握するために点群を活用します。点の密度が高ければ高いほど精密な解析が可能になり、リアルな3D空間の再現や測量結果の信頼性も向上します。点群データはまさに“3次元の点の塊”であり、それを扱うためには専用のソフトウェアと相応のパソコン環境が欠かせません。
2.2. 点群処理の一般的な用途
点群処理は、建設や土木の現場で最も多く利用されています。たとえば、地形の測量データを3Dで可視化したり、施工前後の比較に使ったりと、現場の正確な状況把握に活用されます。また、建物やインフラの維持管理、老朽化チェックといった用途でも広く利用されています。
近年では、3Dスキャン技術の進化により、点群データの応用範囲がさらに広がっています。たとえば、文化財のデジタルアーカイブや、製造業における製品の寸法精度を確認するための「リバースエンジニアリング」にも使われています。これにより、実物を壊さずに形状をデジタルで再現し、再設計や部品製作に役立てることができます。
さらに、点群データは仮想現実(VR)や拡張現実(AR)と組み合わせることで、バーチャル空間の構築にも活用されつつあります。リアルな環境をデジタルで再現する際には、点群の細密さが非常に有効です。こうした多様な用途に対応するため、自然と処理に必要なパソコンスペックも高くなります。特に、点群を操作しながら他の作業を並行して行う場合には、GPUの性能やメモリ容量の大きさが重要な要素となってきます。
3. 点群処理に必要なパソコンの基本スペック
点群処理をスムーズに行うためには、パソコンの性能が非常に重要です。なかでも特に重視したいのが、CPU、メモリ(RAM)、GPU、ストレージ(SSD)の4つのパーツです。これらはそれぞれ異なる役割を持ち、連携しながら大容量の点群データを読み込み・表示・解析するために働いています。
ただし、どこに最も力を入れるべきかは、行いたい作業の内容によって異なります。たとえば、3Dでの点群の可視化やリアルタイム操作を重視する場合はGPU性能が鍵になります。一方で、大量の点群データを同時に読み込んで解析するような場面では、メモリ容量が作業効率を左右します。
このように、点群処理に適したPCを選ぶためには、各パーツの特性と自分の作業スタイルの相性を理解しておくことが大切です。また、OSは64bitのWindows 10やWindows 11が前提となります。32bit OSではメモリ容量を十分に扱えず、大容量データの処理が困難になるためです。ここからは、各パーツごとに必要なスペックや選び方のポイントを詳しく解説していきます。
3.1. CPU:マルチコアプロセッサの重要性
CPUは、パソコン全体の頭脳にあたるパーツで、点群処理においても中核的な役割を果たします。とくに、点群の解析やデータ変換など、複雑で計算量の多い処理を行う際に、その性能が大きく影響します。点群処理では複数のタスクを同時に進める場面が多く、並列処理が得意なマルチコアCPUが有利です。
具体的には、IntelのCore i7やCore i9、あるいはAMDのRyzen 7やRyzen 9といった、6コア以上のCPUが標準的な選択肢になります。また、単純にコア数が多いだけでなく、クロック周波数(動作速度)も重要なポイントです。ソフトウェアによっては、マルチスレッドよりもシングルスレッド性能を重視するものもあり、バランスの良い構成が求められます。
点群処理用のソフトウェアは、計算処理の一部をGPUに任せることもありますが、多くの解析系機能はCPUに依存しています。そのため、将来的な作業の拡大も見越して、性能に余裕のあるCPUを選んでおくと安心です。
3.2. メモリ(RAM):最低限必要な容量
点群処理では、一度に扱うデータ量が非常に大きくなるため、メモリ(RAM)の容量は作業の快適さに直結します。点群データを読み込んで表示するだけでなく、ノイズ除去やレジストレーション(位置合わせ)といった処理を行う際にも、一定の作業領域が必要になります。ここでメモリが不足していると、ソフトの動作が極端に遅くなったり、最悪の場合、強制終了してしまうこともあります。
一般的に、初心者が軽めの点群データを扱う場合でも、メモリは最低16GBは必要です。可能であれば32GBを搭載しておくと、より快適に作業ができます。さらに、大規模な点群データや複数のファイルを同時に扱うような中〜上級者向けの作業では、64GB以上のメモリが推奨されるケースもあります。
また、メモリの容量だけでなく、OSが64bitであることも大前提です。32bit OSでは、搭載しているメモリをフルに活用できないため、せっかくのハードウェアが活かせなくなってしまいます。購入前には、メモリの増設余地も含めて確認しておくと良いでしょう。
3.3. GPU:グラフィックスカードの役割
GPU(グラフィックスカード)は、主に点群データの可視化や3D表示処理を担当します。画面上で点群をスムーズに回転・拡大縮小・移動させたり、リアルタイムにレンダリングを行うには、高性能なGPUが欠かせません。また、近年ではGPUによる並列演算機能(CUDAやOpenCL)を活用し、一部の処理を高速化できるソフトウェアも増えてきています。
GPUの選定にあたっては、NVIDIAのGeForce RTXシリーズや、AMDのRadeonシリーズが一般的です。とくに、NVIDIA製のGPUは点群処理ソフトとの互換性が高く、公式に推奨されているケースも多く見られます。また、GPUの中でも「VRAM(グラフィックメモリ)」の容量が重要です。VRAMが不足すると、処理速度が落ちたり、データの一部が表示されないことがあります。
初心者向けの構成であっても、最低8GB程度のVRAMを備えたGPUを選ぶのが望ましいでしょう。中規模以上のデータを扱う場合や、VRやARと連携した表示が必要な場合は、12GB以上のVRAMを搭載した上位モデルを検討すると安心です。
3.4. ストレージ:SSDの利点
点群処理を快適に行うためには、ストレージの速度も見逃せないポイントです。特に、点群データは1ファイル数GB〜数十GBに及ぶことがあるため、読み込みや書き出しに時間がかかってしまうと作業効率が大きく低下します。そこで有利になるのが、HDD(ハードディスクドライブ)よりも読み書きが速いSSD(ソリッドステートドライブ)です。
なかでも、より高速なデータ転送が可能な「NVMe(エヌブイエムイー)対応SSD」を搭載することで、ファイルの読み込みやソフトの起動が格段に早くなります。これは、複数の点群ファイルを一括で処理するような作業において、大きな時短効果を発揮します。
実用面では、OSやソフトウェアはSSDにインストールし、最低でも512GB、可能であれば1TB以上の容量を確保するのが理想です。また、大容量の点群データを保存するために、追加のHDDや外付けストレージを併用するのもおすすめです。USBポートの数や接続の規格(USB 3.2など)についても、拡張性を考慮して事前にチェックしておきましょう。
4. ソフトウェア要件の理解
点群処理に適したパソコンを選ぶ際には、ハードウェアだけでなく、使用するソフトウェアの動作環境も確認することが大切です。ソフトによって求められるスペックは少しずつ異なり、GPUによる高速処理を重視するものもあれば、CPUの性能に強く依存するものもあります。また、基本的には64bit対応のWindows 10やWindows 11での動作が推奨されており、これらのOSを前提とした構成を検討する必要があります。
とくに初心者の方は、まず使ってみたい点群処理ソフトの「推奨スペック」や「動作要件」を調べておくことが重要です。ソフトに適した構成を選ばないと、せっかくのハードウェアの力を十分に発揮できなかったり、逆に処理能力が足りずに操作が重くなることもあります。また、将来的に別のソフトに移行する可能性がある場合は、多少スペックに余裕を持たせておくと安心です。
このセクションでは、代表的な点群処理ソフトをいくつか紹介しながら、それぞれのシステム要件の傾向や特徴をわかりやすく解説します。使用予定のソフトに適したパソコン環境をしっかりと把握することで、作業の快適さや処理効率が大きく変わってきます。
4.1. 点群処理に使用される主なソフトウェア
点群処理に使われるソフトウェアはさまざまありますが、大きく分けて無料で使えるフリーソフトと、業務向けの有料ソフトがあります。たとえば、CloudCompareやMeshLabといったフリーソフトは、誰でも無料で利用でき、基本的な可視化・編集・解析機能を備えています。これらは個人利用や教育目的で使われることも多く、軽量かつ導入しやすいのが特長です。
一方で、建設・土木・測量などの業務用途では、より高機能な有料ソフトが主流です。たとえばAutodesk ReCapは、BIM/CIMのワークフローと連携した点群データの作成・編集・エクスポートに対応しており、建設業界で広く使われています。また、Leica Cycloneシリーズは、レーザースキャナーデータを効率的に処理・管理できるプロフェッショナル向けのツールです。
さらに、Agisoft MetashapeやPix4Dmapperのようなフォトグラメトリ系ソフトでは、写真から3Dモデルを生成し、その中間結果として点群を作成・活用できます。これらは製造業や測量、文化財保存といった分野でも幅広く利用されており、点群処理と深く関係しています。
このように、どのソフトを使うかによって必要なスペックやパソコン構成は変わってきます。それぞれの特性を理解し、自分の作業に最適なソフトを選ぶことが、効率的な点群処理の第一歩です。
4.2. 各ソフトウェアのシステム要件
点群処理ソフトには、それぞれ異なるシステム要件があります。たとえば、CloudCompareのような軽量なソフトは、比較的スペックの低いパソコンでも動作しますが、それでも数千万点を超えるような大規模データを扱うときは、GPUやメモリの性能が不足して動作が重くなる可能性があります。
一方で、ReCapやCycloneのような業務用ソフトは、非常に高精度で多機能な解析が可能なぶん、より高いスペックを求められることが多いです。たとえば、GPUにはNVIDIA GeForce RTXシリーズなどの中〜高性能モデルが推奨されることが多く、VRAM容量も重要なポイントになります。CPUについても、最低でも4コア以上、可能であれば6コア以上のプロセッサが求められるケースがほとんどです。
また、ソフトによってはCUDAコア数やOpenGLの対応状況が明記されていることもあります。たとえば、NVIDIA製GPUに最適化された処理が含まれている場合、AMD製GPUでは期待した性能が出ないこともあるため注意が必要です。
各ソフトの公式サイトには、必ず「最小構成」と「推奨構成」の両方が掲載されているので、導入前にはその情報を確認しておくことが重要です。そして、実際に選ぶパソコンの構成は、できれば「推奨構成」よりも少し余裕を持たせたスペックにしておくことで、将来のアップデートや他ソフトへの切り替えにも柔軟に対応できます。
5. 初心者向けの選び方ガイド
ここまでご紹介してきたとおり、点群処理ではCPU・メモリ・GPU・SSDといった各パーツの性能が重要になります。ただし、実際にパソコンを購入しようとすると、「どこまでのスペックが必要なのか」「どの程度の予算を組むべきか」「デスクトップとノートはどちらが適しているのか」といった悩みが出てくる方も多いでしょう。
また、ブランドやモデルによっても性能や価格帯に違いがあるため、初心者の方にとっては比較の判断が難しく感じられるかもしれません。そこでこのセクションでは、パソコン選びを進めるうえで役立つ3つの視点「予算」「用途」「メーカー(ブランド)」に分けて、それぞれの選び方のポイントをわかりやすく解説していきます。
自分にとって無理のない範囲で、かつ作業に支障が出ない程度の性能を備えたパソコンを選ぶために、以下のポイントを参考にしてみてください。
5.1. 予算の設定:どの程度の投資が必要か
パソコン選びの第一歩として、自分の作業内容に応じたおおよその予算感をつかんでおくことが大切です。最低限のスペックで構成した入門モデルであれば、20万円前後の価格帯から購入可能ですが、作業の安定性や拡張性も考慮するなら、やや余裕を持たせたミドルスペックの構成が安心です。
中級者向けの構成、つまり点群データの可視化・編集・書き出しを日常的に行うレベルになると、30万円〜40万円程度が目安となります。そして、業務用途で高精度な解析や大規模なデータ処理を行うプロフェッショナル向けでは、ワークステーションクラスのハイスペック構成となり、50万円以上になるケースも珍しくありません。
もちろん、価格を抑えることも重要ですが、「とりあえず安いものを買う」ことでスペックが不足し、後から買い替えが必要になってしまうと、結果的にコストがかさんでしまいます。将来的な作業の広がりも見据えて、「少し先を見越した構成」に投資する意識が、長期的にはコストパフォーマンスの良さにつながります。
5.2. 用途に応じた選択:事務所用か、持ち運び用か
パソコンを使うシーンによって、デスクトップとノートのどちらが適しているかが変わってきます。たとえば、主に事務所内で点群処理を行うのであれば、デスクトップ型パソコンのほうが適しています。デスクトップは冷却性能に優れ、処理中に熱がこもりにくく、長時間の高負荷作業にも安定して対応できる点が魅力です。さらに、パーツの交換や拡張がしやすく、将来的な性能向上にも柔軟に対応できます。
一方で、現場でスキャンしたデータをすぐに確認したい場合や、出張先で作業を行う必要がある場合には、ノートパソコンが便利です。近年では、高性能なGPUを搭載したクリエイター向けノートPCも登場しており、ある程度の点群処理にも対応できるスペックを持つモデルが増えています。
ただし、ノートパソコンにはいくつかの注意点もあります。コンパクトな筐体ゆえに冷却能力が限られており、長時間の重い処理では自動的にパフォーマンスが抑えられることがあります。また、内部パーツの交換や拡張が難しいため、将来的に大規模な処理が必要になった場合には買い替えが必要になる可能性もあります。自分の作業スタイルや使用環境を踏まえた上で、慎重に選びましょう。
5.3. ブランドとモデルの比較:人気のあるPCブランドとその特徴
パソコンのブランドやモデルによっても、性能、信頼性、サポート内容に違いがあります。代表的なメーカーとしては、DELLやHP(ヒューレット・パッカード)、Lenovoなどがあり、これらは法人向けのワークステーションシリーズを展開していることから、点群処理にも適した構成が多く用意されています。特に、サポート体制がしっかりしているため、業務利用を想定した場合にも安心です。
日本国内メーカーでは、富士通やパナソニック(Let’s note)、エプソンダイレクトなどがあり、こちらもサポートの手厚さや国内配送のスピード感などで一定の評価を得ています。トラブル時の対応を重視する場合には、国内メーカーを検討するのも良い選択肢です。
また、最近ではBTO(Build To Order)パソコンも注目されています。BTOとは、ユーザーの希望に応じてパーツ構成をカスタマイズできる方式で、コストパフォーマンスの高さが魅力です。ドスパラ、マウスコンピューター、パソコン工房などが代表的なBTOメーカーです。ただし、初心者にとっては構成の判断が難しい場合もあるため、公式の「おすすめ構成」や用途別モデルを参考にするのがおすすめです。
どのブランドを選ぶにしても、64bit OSの搭載や十分なメモリ容量・GPU性能の確保が重要です。スペック表やメーカーサイトをよく確認し、用途に合った信頼できる1台を選びましょう。
6. 失敗しないためのポイント
点群処理に適したパソコンを選ぶうえで、初心者がつまずきやすいポイントはいくつかあります。なかでもよくあるのが、必要なスペックを正確に把握できていなかったり、保証やサポート体制を確認せずに購入してしまい、あとからトラブルに発展するケースです。また、コストを抑えるために中古パソコンを検討する方も増えていますが、点群処理のような高負荷作業には注意が必要です。
このセクションでは、初心者が安心してパソコンを選べるよう、購入前に確認しておくべき基本的なチェックポイントや、保証・サポートの重要性、そして中古パソコンを選ぶ際のリスクや対処法について具体的に解説していきます。事前にこれらの点をしっかり押さえておけば、余計な失敗や無駄な出費を避けることができ、長く安心して使える1台を見つけやすくなります。
6.1. 購入前に確認すべき事項
パソコン選びで失敗を避けるためには、購入前にいくつかの重要な項目をチェックしておくことが欠かせません。とくに点群処理に関しては、パソコンの見た目や価格だけで決めるのではなく、「自分がどのような作業をしたいのか」「その作業にはどんなスペックが必要か」を明確にしておくことが大切です。
まず確認すべきは、自分が使用する予定の点群処理ソフトの推奨スペックです。ソフトによってCPUやGPUの要求性能、メモリ容量が異なるため、事前に公式サイトなどで動作要件を調べておきましょう。また、扱う予定のデータ容量も重要です。簡易的な可視化なのか、大規模なスキャンデータを編集・解析するのかによって、必要なスペックは大きく変わります。
そのうえで、以下のポイントを確認しておくと安心です:
1)使用予定のソフトウェアが要求する推奨スペックを満たしているか
2)64bit版のWindows 10または11がインストールされているか
3)メモリやストレージ、GPUの交換・増設が可能な構造になっているか
4)USBやHDMIなどの端子が必要数そろっているか(外部ディスプレイやストレージ用)
5)メーカーや販売店のサポート・保証体制が信頼できるか
とくに「とりあえず動きそうだから」と安易に選んでしまうと、処理が途中で止まったり、後から買い替えが必要になったりすることがあります。用途に合った構成かどうか、冷静にチェックしてから購入するようにしましょう。
6.2. サポートや保証の重要性
点群処理は、パソコンにとって比較的高負荷な作業が続く用途であるため、故障や不具合が発生する可能性が他の一般的な作業よりも高いと言えます。こうした万が一の事態に備えるためにも、メーカーや販売店が提供する保証やサポート体制は非常に重要な要素です。
とくに業務利用や納期のある仕事で使う場合には、トラブルが作業の遅延や損失に直結することもあるため、信頼できるサポート窓口があるかどうかを事前に確認しておくことが大切です。たとえば、修理の際に代替機を用意してくれるサービスや、オンサイト(出張)修理対応、平日以外も相談可能なカスタマーサポートなど、サポートの質には大きな差があります。
また、メーカー保証の期間や内容も要チェックです。保証期間が短かったり、特定の故障しかカバーしていないケースもあるため、「どこまで対応してもらえるのか」を明確にしておきましょう。さらに、パソコンの使用年数が長くなるほどトラブルのリスクは高まるため、可能であれば延長保証や保守契約の導入も検討すると安心です。
多少コストがかかっても、長期的に安定して点群処理を行いたいなら、購入時のサポート体制も含めて総合的に判断するのがおすすめです。
6.3. 中古PCを選ぶ際の注意点
点群処理用のパソコンを少しでも安く手に入れたいと考え、中古品やリースアップ品を検討する方もいるかもしれません。たしかに、同じスペックでも新品より価格が大幅に抑えられることがあるため、魅力的な選択肢に見えるのは事実です。
しかし、点群処理はパソコンにかかる負荷が高く、長時間安定して動作することが求められます。そのため、中古PCを選ぶ際にはいくつかの注意点があります。まず、前の使用者がどれだけハードに使っていたかがわからないため、内部パーツの消耗度合いを事前に確認するのが難しいというリスクがあります。とくにGPUやストレージは消耗しやすいため、性能が不安定になることもあります。
また、中古PCには保証がつかない、あるいは極めて短期間しか保証されない場合が多いため、万が一のトラブルに備えにくいという欠点もあります。もし中古品を検討するなら、「動作確認済み」「保証あり」と明記されている信頼できる販売店から購入するようにしましょう。
さらに、使用目的が明確で、どのスペックまで必要かが把握できている場合は、中古PCでもある程度の選択が可能ですが、初心者にとっては見極めが難しい面があります。とくにGPUやメモリの換装ができるかどうかなど、仕様の確認も必要になります。可能であれば、GPUやストレージだけでも新品にするなど、安全性と性能のバランスを取る工夫をおすすめします。
7. まとめ:点群処理に最適なパソコンスペックの要点を再確認
ここまで、点群処理において重要となるパソコンのスペックや選び方について、初心者の方にもわかりやすく解説してきました。最後に、記事全体の内容を振り返りながら、パソコン選びで押さえておくべきポイントを整理しておきましょう。
まず、点群処理は非常にデータ量が大きく、処理の負荷も高いため、一般的な事務用PCでは対応が難しいことがあります。快適に作業を進めるためには、以下のようなパーツ構成を意識することが重要です。
- CPU:演算処理を担う中心的なパーツであり、マルチコア・高クロックのモデル(Intel Core i7/i9やAMD Ryzen 7/9)が推奨されます。
- メモリ(RAM):作業領域として使われるため、最低でも16GB、できれば32GB以上、用途によっては64GB以上を検討しましょう。
- GPU(グラフィックスカード):点群の可視化や一部の処理を高速化する役割を担い、GeForce RTXやRadeonシリーズの中〜高性能モデルが適しています。VRAMの容量も重要です。
- ストレージ(SSD):大容量データの読み書きをスムーズに行うために、NVMe対応SSDの搭載が望ましく、512GB〜1TBの容量があると安心です。
また、使用するソフトウェアによっても求められるスペックは異なりますので、事前に動作環境を確認し、推奨スペックに少し余裕を持たせた構成にしておくと、将来のアップデートや他ソフトへの対応もスムーズです。
さらに、パソコンを選ぶ際には「予算」「用途(据え置きか持ち運びか)」「メーカーやサポート体制」なども総合的に考慮することが大切です。とくに、点群処理ではトラブル時の対応が作業の遅れに直結するため、保証やサポートの有無も忘れずに確認しておきましょう。
これから点群処理に取り組む初心者の方にとって、最適なパソコン選びは、作業効率の向上とストレスのない環境づくりに直結します。少し先を見据えたスペック選定によって、長く使える安心の1台に出会えるはずです。
本記事が、みなさんのパソコン選びに役立ち、点群処理を快適かつスムーズに始めるための一助となれば幸いです。どうぞ、ご自身の用途に合った理想の構成を見つけて、3Dデータの世界を安心して楽しんでください。
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<参考文献>
Autodesk ReCap Pro ソフトウェア | ReCap Pro 2026 正規品の価格と購入
https://www.autodesk.com/jp/products/recap/overview
CloudCompare – Open Source project
動作システム要件|株式会社オーク
https://oakcorp.net/agisoft/system-requirements/
GeForce グラフィックス カード | NVIDIA
https://www.nvidia.com/ja-jp/geforce/graphics-cards/
Windows 11 の仕様とシステム要件 | Microsoft Windows
https://www.microsoft.com/ja-jp/windows/windows-11-specifications