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「Autodesk University 2023」で示されたこれからの建設DX。BIMやAIの行く末を探る

2023年11月に「Autodesk University 2023」が開催されました*1。

エンジニアやクリエイターが各分野の新しい姿を披露するこのイベントで、Autodesk社がAIを活用した新たな建設業の在り方を示したことが注目を集めています。

この記事では、Autodesk社が明らかにしたAIを活用した建設業向けソリューションを紹介し、BIMやAIによる建設DXの行く末を探ります。

「Autodesk University 2023」とは

Autodesk University(以下、AU)は、Autodesk社が毎年秋ごろにラスベガスで開催するイベントです*2。

まずはAUの概要を紹介します。

エンジニアやクリエイターが各分野の新しい姿を披露する*1

AUには、建設・製造・エンジニアリング・ゲームなどの幅広い分野の最新情報・技術が集まります。

各分野のエンジニアやクリエイターが最新技術を披露・体験し、ある人は今後のヴィジョンを見据え、またある人はアイディアのヒントを見つけて新たなものづくりに取り組みます。

AUは世界のものづくりの行く末を占う場といえるでしょう。

AU2023では、セッション、パネルディスカッション、講演など、専門家による600個以上の講座が行われました。

なかでも注目を集めたのがAIに関する講座です。AIに関する50個以上のセッションや業界デモ、交流会が開催されており、AIの世界的な注目度の高さが窺えます。

AUに参加したイノベーターたちにより、画像や動画などの分野でもAIがますます発展していくことでしょう。

Autodesk社の目玉はAutodesk AI*1

Autodesk社が主催するAUは、もちろんAutodesk社が最新情報・技術を披露するプロモーションでもあります。

主製品のひとつである「AutoCAD」でCAD時代の覇権を取ったAutodesk社の最新技術ともあり、まさにものづくりの行く末を垣間見ることができる場です。

Autodesk社のAU2023の目玉は、「Autodesk AI」です。

Autodesk社の社長兼CEOのアンドリュー・アナグノスト氏は、「弊社の AI 活用の取り組み、そしてまさに新たな時代を切り拓こうとしているデザインと創造(Design and Make)のプラットフォームについてご紹介します」(Autodesk*1)と述べており、AIでものづくりを変えていこうという意思が感じられます。

Autodesk AIは、Autodesk製品のクラウドベースソフトウェア・プラットフォームに搭載されるとのことです*1。

クリエイティビティを活性化させ、また、非生産的な作業をなくすソリューションとされており、ものづくりに携わるエンジニア、クリエイターを力強くサポートするサービスになることが期待できます。

新しい時代の転換点、AIがビジネスを変える

アグノスト氏は、Autodesk AIを発表したAU2023の基調講演で、今は「新たな時代の入り口 (Cusp Of New Era)」(Design & Make with AUTODESK*3)であると述べています。

さらに、デジタルの未来は「クラウドベースのプラットフォーム」「シームレスに接続されたデータ」「AI」で構成され、AIがビジネスを変える段階になったとしています*3。

建設業界では、BIMベースのクラウドプラットフォームであるCDEを核とし、すべての関係者がシームレスにデータを扱える環境の構築が目指されています。

また、計画・設計・施工・運用・維持管理のすべてのフェーズで一貫したBIMモデルを使うことも、時間軸上でシームレスに接続されたデータといえるでしょう。

一方、AIに関しては実践的な導入が実現していないのが実情です。

画像生成AIによるパースの作成などは行われていますが、設計や施工管理、コストマネージメントなどを支援する更なるAIの実装が待たれています。

建設業の働き方を変えるAIの登場を期待したいところです。

「Autodesk University 2023」で示された建設業の未来*4

ここでは、AU2023で示された建設業の未来について触れていきます。

AIをはじめとした最新技術により建設DXはどのように動いていくのでしょうか。

AIを導入した建設業向けソリューション

Autodesk社は、クラウド上のプラットフォームに蓄積されたプロジェクトデータから、AIを使って最大限の情報を得られる環境を実現しています。この環境は建築主の素早い決断を助けるほか、設計・施工・維持管理で一貫したデータの運用を可能にするとのことです*4。

また、AIによるプロセスの自動化やデータの分析により、プロジェクトの関係者に新たなインサイトを与えてくれます。クリエイティブな作業の時間を削ってしまう単調な作業を減らし、性能や品質を向上させるための設計を行えるようになるのがメリットです。

Autodesk社製の建設業向けソリューションの大部分にAutodesk AIが実装されるので、デザインと創造の力を大いに強化してくれることでしょう。

AIと機械学習で進化する排水計画

AU2023では、AIを搭載した新たな建設業向けソリューションの具体例として、排水計画を効率化するAIと機械学習機能が発表されました。

新たに登場したツールは、敷地に水が流れ込んだときの洪水の状況をAIで予測し、排水計画をサポートします。排水計画は、建物竣工後の大雨時の安全性確保だけでなく、施工中の大雨に対する安全性検討のためにも重要です。従来は設計者や施工者が多くの手間を掛けていた雨水の流動シミュレーションを効率化してくれます。

AIベースの予測分析機能を備えた「Autodesk FormaTM」

AU2023で発表された「Autodesk FormaTM」(以下、Forma)はAIによる予測分析機能を備えたシステムです。このシステムの大きなメリットは、プロジェクトの早い段階で予測分析を行い、プロジェクトの成果を最大化できることです。

例えば、騒音・風解析では建物を建てることによる騒音・風環境の変化を設計者に示してくれるので、これらによる問題を早期に回避することができます。

また、環境設計では、運用エネルギー解析を行うことで最適な建物形状、開口率、外皮構造などを予測できます。

従来は高度な解析を行うために熟練の知識や技術、多くの時間が必要でしたが、誰でも簡単に行えるようになる時代が近づいているかもしれません。

製図作業の自動化

2次元CADであるAutoCADも進化しています。

AutoCAD® 2024 は、機械学習で図面テキストの更新を自動で行うマークアップ アシスト機能を搭載しています。

その他にも、機械学習による形状の自動変換やオブジェクトの提案機能などを実装しており、製図作業の自動化を図っているとのことです*4。

リスク要因の特定を予測ベースのAIで支援する「Construction IQ」

建設の施工フェーズに対しては、予測ベースのAI機能「Construction IQ」の実装が進められています。Constrution IQは、問題やチェックリスト、下請け業者の稼働状況などを分析し、さまざまなリスク要因の特定をサポートしてくれます。

これにより、施工管理者や作業員の安全性と生産性を向上させるとのことです*4。

また、不足している工事書類の特定、概算、文書管理、プロジェクト管理など、施工のワークフローの多くにAIを搭載しています。よい建物を建て、建築主に優れた価値を提供することに貢献してくれることでしょう。

AIの効果を高める良質なデータを提供する「Autodesk Data Model」*4

さいごに、AIや機械学習の機能を最大限に活用するために重要なデータについて紹介します。

AIは良質なデータで機械学習を行うことで優れたソリューションに成長していきます。

そこで、Autodesk社が良質なデータを蓄積するために提供しているサービスが、「Autodesk Data Model」です。

Autodesk Data Modelはデータをサブセットに分割することができ、モデル全体ではなく必要なデータのみを共有できるため、扱いやすいのが特徴です。

AU2023では、BIMソフトウェア「Revit」をはじめとした建築・土木の設計アプリケーションで使えるようになる新しいデータモデルAPIを発表しました。

これにより、BIMの専門家でない人も直感的に触りやすくなるとのことです*4。

多くの関係者が手軽にアクセスできるようになることでデータの蓄積が加速し、AIの機械学習の強化に繋げられることでしょう。

おわりに

Autodesk社主催のAU2023では、さまざまな最新情報・技術が発表されました。

AU2023で予見されているとおり、2024年以降はAIが世界のビジネスを変えていくことでしょう。

建設業においても、AIとBIMが連携したデジタル環境が建設DXを推し進めていくかもしれません。

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注釈

*1
出所)Autodesk「Autodesk、デザインと創造(Design & Make)のカンファレンス「Autodesk University 2023」を開催」

https://blogs.autodesk.com/autodesk-news-japan/autodesk-university-2023/

*2
出所)Autodesk「A brief history of AU」

https://www.autodesk.com/autodesk-university/blog/brief-history-AU-2015

*3
出所)Design & Make with AUTODESK「AU 2023: AIドリブンなクラウドプラットフォームが導くデザインと創造の未来」

https://www.autodesk.com/jp/design-make/articles/autodesk-university-2023-jp

*4
出所)Autodesk「Autodesk、複数の建設業向けソリューションの新機能および機能拡張を発表」

https://blogs.autodesk.com/autodesk-news-japan/aec-ai/
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