建設業のAI活用を推進する「Scan2BIM/CIM」の可能性とは
今回は点群データをAIの力で3Dモデルに変換してくれる、Scan2BIM/CIMの機能やその可能性についてご紹介していきます。
目次:
①Scan2BIM/CIMとは
②Scan2BIM/CIMが掲げる強み
③Scan2BIM/CIMの登場で変わる建設業のあり方
Scan2BIM/CIMとは
Scan2BIM/CIMは、システムインテグレーション事業を展開するスマートスケープ株式会社が、2021年2月に発表した3Dモデル運用サービスです*1。
点群データを「使える」3Dデータに変換
スマーとスケープ株式会社は、これまで様々な3Dデータ変換ソフトを販売してきた企業です。Scan2BIM/CIMはインドの3Dソフトウェア会社であるnCircle Techと提携して開発した変換サービスで、取得した点群データを3Dモデルへと自動で変換する機能を備えています。
3Dモデルの需要は年々大きくなっているものの、実物から瞬時にモデルを構築することは困難を極めます。まず、スキャナを使って実際の建物の点群データを取得し、そのデータを元に3Dのモデリングを形成しなければなりません。近年は設計段階から3Dモデルが存在するようになってきたものの、橋梁やトンネルなど、耐用年数が長く、数十年前に建設されたものはデータ化されていません。これらをデータ活用につなげるためには、3Dモデリングの作業が不可欠なのです。
Scan2BIM/CIMは、そんなまだまだ日本に存在する3Dモデリングの作業を、大幅に効率化してくれるサービスとなっています。点群データをサービスに読み込ませるだけで、AIが自動的に読み込み、3Dモデルへの変換を行ってくれます。従来では人の手で行っていた作業でしたが、AIの自動変換によって対応できるようになり、作業の効率化、および省人化を進められることとなりました。
Autodesk RevitのAPIを活用
点群データの変換プロセスにおいては、Autodeskが提供するCADシステム「Revit」のAPIを活用している点も特徴です。まず、点群データの読み込みには機械学習ベースで構築されたAIソフトが用いられます。その後AIの画像認識により、壁や柱、配管などの構成要素を検出し、色分けを行います*2。
形状と各部位の位置情報を検出した後は、Revit APIの出番です。変換ソフトから得られた情報をもとに、APIを活用してRevit内に要素を作成します。あとは手動で元のデータを参考にしながら、精度向上に向けた微調整、およびモデリングとテストを行います。
AIによって作業の大半を省略できるようになるため、業務効率を大幅に削減できるという仕組みです。
Scan2BIM/CIMが掲げる強み
利便性の高い機能を備えるScan2BIM/CIMですが、自ら強みとして掲げているのが、低コスト、短納期、高精度の実現です。
低コストでの運用
AIによる自動処理を用いた変換サービスとなると、そのソフトの開発に大きな費用がかかり、利用料金に上乗せされることも懸念されます。しかし、Scan2BIM/CIMはインドでのオフショア開発によって誕生したサービスであるため、低コストでの開発、および運用を実現しています。
低コストでの運用は、大企業だけでなく、中小企業においてもAI活用をより身近にするためには必須の要素です。
短い納期
AI活用によって、手動操作が必要な業務を最低限に抑えているため、短い納期で3Dモデリングが行えることも魅力です。AIを使うことで、人手を必要とするだけでなく、マニュアル操作よりもはるかにスピードを高められます。
単に人手を補えるだけでなく、業務スピードを改善し、さらなる生産性の向上を実現します。
高い精度の確保
また、AIによる作業はヒューマンエラーのリスクが存在しないため、精度を最大限高めることにもつながります。
完全自動変換では達成できない、高度な仕上がりを手動操作も交えることで実現し、顧客満足度の向上に努めます。
Scan2BIM/CIMの登場で変わる建設業のあり方
Scan2BIM/CIMの登場によって、建設業におけるAI活用の機会はさらに広がることが期待されます。具体的に、どのような変化が期待できるのかについても見ておきましょう。
デジタルツインの実現を容易に
一つ目の未来予測は、さらなるデジタルツインの普及です。デジタルツインとは、実物の建設物と全く同じ3Dモデルをデジタル空間に再現し、仮想的にもう一つ実物と寸分違わない建物を構築する技術です。BIMデータを活用し、部材の性質や価格などの情報も同じように再現した3Dモデルを実現することで、高度なシミュレーションが行えるようになります。
デジタルツインには建物の3Dモデルを必要としますが、Scan2BIM/CIMの登場によって、従来よりも容易に3Dモデルを構築できるようになりました。Scan2BIM/CIMによって多くの企業が3Dモデリングを正確かつスピーディに構築できれば、デジタルツインの実現にも大いに役立ちます。
デジタルツインの普及が進めば、街全体をIoTとセンシングで管理する、スマートシティの実現も早まります。Scan2BIM/CIMは、未来都市の実現をより身近にしてくれるでしょう。
BIMモデル活用の現場を拡大
3Dモデリングがスピーディかつ正確に行えることで、BIMモデル活用の現場をさらに増やしていくきっかけにも繋がります。BIM運用はソフトの普及が遅れているだけでなく、それを動かせるBIMオペレーターの不足も課題として挙げられています。
Scan2BIM/CIMの登場によって、BIMオペレーターの負担を軽減できるようになれば、少ない人数でも十分なBIM運用を進められるでしょう。
おわりに
BIMデータの活用は、BIMの認知度の向上だけでなく、それを取り巻くサービスの拡充によって進んでいる背景もあります。
Scan2BIM/CIMの登場によって、私たちの生活のなかにBIMが現れる機会も増えてくることでしょう。
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参考:
*1 ZDNet Japan「AI活用でデータ化作業を大幅に自動化し短納期・低価格を実現 点群データを3Dモデル化する「Scan2BIM/CIM」 建設業を中心に3Dデータの利活用に 2月16日サービス開始」
https://japan.zdnet.com/release/30520033/
*2 スマートスケープ株式会社「Scan2BIM/CIM」
https://www.smartscape.co.jp/service/scan2bim-cim/