ジェネレーティブデザインの特徴とは?|導入のメリットと活用事例も解説
ジェネレーティブデザインとはAIに条件を指定し、設計案の生成を自動化する手法です。生成される設計案は数千通りにのぼります。自動的に数千通りの設計案を生成するため、現場での作業工程の短縮や人件費削減につながります。
そのため、ジェネレーティブデザインの活用を検討している建築業界の方も少なくありません。しかし、具体的にどのように活用されているのか分からないという方もいるのではないでしょうか。
本記事ではジェネレーティブデザインの特徴やメリットにふれつつ、実際の企業の活用事例を解説します。
この記事を読むと、以下のことが分かります。
1.ジェネレーティブデザインの特徴とメリット
2.ジェネレーティブデザインの活用事例
ジェネレーティブデザインの特徴(*1)
ジェネレーティブデザインとはAI(人工知能)に設計者が定義した具体的な要件を伝え、設計案の作成を自動化する手法です。ジェネレーティブデザインと呼ばれる理由は、人間による設計と比較すると圧倒的に膨大な量の設計案を生成することから英単語の「generative(生成する)」が用いられているためです。
特定の設計パラメーターの定義により、数千通りの設計案を生成します。生成された設計案から専門家が設計における問題点と解決策を探り、適切な判断を迅速に下せることを目的としています。しかし、数千通りの設計案から人間が望むものを選択することは困難です。そのため、ソフトウェアに希望の条件を指定することで、数千通りの設計案の中から最適なものを抽出してくれる点が特徴です。
ジェネレーティブデザインの導入によるメリット
ジェネレーティブデザインの導入により、次のようなメリットがあります。
・作業工程を短縮できる
・設計コストと人件費の削減につながる
・独自のデザインを創出できる
ここでは、それぞれのメリットを詳しくみていきましょう。
作業工程を短縮できる
一般的な建築業界の設計プロセスでは設計者が検討した目的や開発における条件を軸に、選択肢を挙げて検証する手順を繰り返します。そのため、人為的に作成された多数の設計案からもっとも適切な案を見つけ出すためには、多くの時間を費やし試行回数を重ねる必要があります。
一方でジェネレーティブデザインでは、指定された開発条件を基にAIが多数の設計案を短時間で自動的に生成可能です。自動的に生成された設計案の中から設計者が開発プロジェクトに対する適切な案を選定できます。設計案の検証や修正および改善の時間と手間が省けるため、設計作業のプロセスを大幅に短縮できるでしょう。
設計コストと人件費の削減につながる
設計プロセスの手順を大幅に短縮できるため、設計に関するコストの削減を実現可能です。加えて、設計プロセスの短縮により設計に携わる人間の作業時間も短縮できるため、人件費の削減に寄与します。建築現場における人材不足の解消にもつながるでしょう。
また、建築現場のプロジェクトにおいて顧客の要望や収益性などを実現できるデザインを生成します。無駄な材料の使用を回避できるため、材料費のコストカットにつながります。
独自のデザインを創出できる
人間が思いつかなかった設計案を創出できる可能性を秘めている点が魅力の1つです。生成手順では、まず建築のプロジェクトにおける特定の箇所の材質や部品など複数の条件を指定します。AIは指定条件に従い、自動的に適切なデザインを生成します。
生成過程で人間が思いつかなかった独自のデザインを提案するケースも珍しくありません。
建築業界におけるジェネレーティブデザインの活用事例
では、具体的に建築業界ではどのようにジェネレーティブデザインが活用されているのでしょうか。ここでは、建築業界におけるジェネレーティブデザインの活用事例を2つみていきます。
事例1.大和ハウス工業
1つ目の活用事例は大和ハウス工業の事例です。(*2)大和ハウス工業は国内最大手の住宅・建設業界の企業です。戸建住宅をはじめ、分譲マンションや介護施設、病院、大型ショッピングセンターなどに工業化へのアプローチを導入しています。大和ハウス工業は多くの事業の中から、ジェネレーティブデザインによる集合住宅の事業および建築計画の自動化に取り組みました。
大和ハウス工業は都市部の長期的な住宅需要と土地の少なさに折り合いをつけることを目指しました。ジェネレーティブデザインを活用し、狭い土地でも最高の小規模開発を実現するためにサポートを行うことを目標としたシステムを開発しています。開発されたシステムを従業員が使いこなせるようになると、「顧客への提案を迅速に作成すること」「受け入れられた提案は営業から設計のチームへ大幅な変更がなく渡せること」が可能です。システムにより営業と設計の両方のチームをサポートしつつ、従来では創出できなかったプランも提示できるようになることを目指しています。
事例2.Van Wijnen社
オランダを拠点とするVan Wijnen社はジェネレーティブデザインの活用によって住宅の建設方法の改革を実現しました。(*3)具体的には、ジェネレーティブデザインを活用する際にAIに対しマテリアルの使用量やエネルギーの消費量をできる限り抑制できるように条件を指定することで、コストを削減し、施工作業の効率性を向上させています。
同社はリーズナブルな価格で環境に配慮した住宅の建設を目標とし、ジェネレーティブデザインの活用により15,000通りの設計案を生成しました。膨大な量の設計案から都市部に適している形状に仕上がりそうな3つのオプションを選定した上で、次の条件も指定し最適化を図ります。
・太陽エネルギーを最大限に収集できる
・ネットゼロエネルギーの目標を満たせる
・敷地面積や部屋からの眺めが良い
加えて、建設のコストと利益率を条件に指定することで、最適なソリューションを導き出しました。同社は都市規模でジェネレーティブデザインを活用し、財務面や環境面、社会学的観点を考慮し、住宅地の敷地計画における可能性を探っています。
まとめ
ジェネレーティブデザインの特徴と導入のメリット、活用事例を解説しました。ジェネレーティブデザインはAIに複数の条件を指定することで、建築現場に適している設計案を自動的に多数生成します。自動的に設計案の作成および検討を行うため、作業工程の短縮や作業コストおよび人件費の削減につながる点が魅力です。
活用の具体例には大和ハウス工業とVan Wijnen社の事例が挙げられます。2社ともに住宅の建築現場で活用し、独自のデザイン創出や最適なソリューションの導出を目指しています。2社の事例のように建築現場でジェネレーティブデザインを活用することで、作業工程や人件費の削減だけでなく、顧客への最適な設計案の生成を実現できるでしょう。
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❹建設業界におけるDX

*1 *3
「Autodesk|ジェネレーティブデザインの本質に迫る」
https://bim-design.com/uploads/AEC_Generative_Design_eBook.pdf
*2
「Design&Make with Autodesk|集合住宅の計画にジェネレーティブデザインを活用する大和ハウス工業の先進的な取り組み」
https://www.autodesk.com/jp/design-make/articles/daiwa-house-generative-design-jp