建築における図面の種類|意匠図・構造図・設備図および施工図の概要を解説
建築物を設計する場合、建築主や現場の職人など関係者間で情報を共有するために多種多様の図面を作成しなければなりません。しかし、種類が多すぎて、どのような図面を作成したらよいのか把握しきれていないと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
本記事では建築の初期段階から作成する基本設計図と実施設計図の概要を解説します。また、実施設計図の種類と特徴にもふれていくため、設計図に関して詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
この記事を読むと以下のことが分かります。
1.基本設計図の概要
2.実施設計図の3つの種類とそれぞれの概要
初期段階には基本設計図を作成する
基本設計図とは建築主がイメージしている設計を図面化したものです。建築主のイメージを聞き出し、図面として作成します。しかし、イメージを全て反映できるわけではありません。建築物は建築基準法や都市計画法などさまざまな法に従って設計する必要があります。建築主に法律に準じた制限があることを説明しつつ、設計の調整を行わなければなりません。法律による制限をはじめ、さまざまな事項を議論する必要があります。議論すべき事項の具体例は次のとおりです。
・建築物を使用する目的および規模
・耐用年数
・建築物の仕様
・収支計画
・立地条件
・周囲の環境
・地盤状況
議論後、基本設計図の作成を開始します。基本設計図をもとに、次のステップとなる実施設計図を作成します。
建築における実施設計図には3つの種類がある
建築設計では設備や電気系統、構造部材、寸法など膨大な量の情報が扱われるため、建築物の情報は1枚の図面に収まりません。そのため、設計者は実施設計図として複数の図面を作成する必要があります。建築における実施設計図には多種多様の図面が存在し、大きく分類すると次の3つの種類に分かれます。
種類 | 概要 |
意匠図 | 完成のイメージを伝える |
構造図 | 構造部材の情報を伝える |
設備図 | 設備の仕様を伝える |
ここでは、3つの種類の特徴を詳しくみていきましょう。
意匠図:完成のイメージを伝える
意匠図とは建築物の完成のイメージを伝える図面です。建物のデザインや仕様、間取り、形態などの情報を関係者間で共有するために作成します。意匠図に分類される代表的な図面は次のとおりです。
図面 | 記載されている情報 |
展開図 | 住宅内部の中心から4方向を見た投影図 |
仕上表 | ・床や壁、天井などの仕上げ材を記載・基本的に文字と表で記載されている |
案内図 | 建物の位置(住所)を伝える図面 |
外構図 | 門扉や通路、植栽、駐車場などの情報を伝える(建築物を除く) |
配置図 | 敷地の形状や敷地内外との高低差、道路の幅員など |
断面図 | ・各階を垂直に切断した図面・上下階の高さ関係を把握できる |
平面図 | ・各階を水平に切断した図面・間取りや壁の種類および位置を示す |
平面詳細図 | 平面図をより詳しくした図面 |
立面図 | ・外観を4方向から横にした状態の図面・屋根や外壁の情報を記載 |
屋根伏図 | ・屋根を平面的に身下した状態の図面・屋根の形状や仕上げなどが分かる |
天井伏図 | ・天井を描く・火災報知機やエアコン、照明の位置が分かる |
求積図 | 面積や床面積を算出する際に使用する |
矩計図 | 断面図をより詳しくした図面 |
階段詳細図 | 階段の段や手すり、踊り場などの寸法 |
建具表 | 部屋内部の間仕切りや開口部などに配置する建具の詳細 |
雑詳細図 | 家具や外壁などの情報 |
構造図:構造部材の情報を伝える
柱や壁など建築物を支える構造部材の情報を伝える図面は構造図に分類されます。構造部材は部位ごとに図面を分けます。構造図の種類をみていきましょう。
図面 | 記載されている情報 |
標準施工図 | 各部材同士の接合や取り付けの状態を示す |
伏図 | 基礎や柱、梁などの構造部材を平面で表現する |
軸組図 | 構造部材を垂直に切断した断面図 |
詳細図 | 納まり寸法や材料などの情報を記載 |
設備図:設備の仕様を伝える
設備図は設備の仕様や配管経路などの情報を伝えるための図面です。設備図は次の4つの種類があります。
図面 | 記載されている情報 |
電気設備図 | ・電気に関係のある情報全て・ブレーカーの系統、コンセント、電話、照明器具などが設置されている位置を記載 |
ガス設備図 | ガスの配管経路や配管の接続方法など |
給排水衛生設備図 | 給排水の経路や給排水箇所、衛生設備の設置場所 |
空調換気設備図 | エアコンの室内機および室外機、換気扇の配管経路など |
施工図には3種類の図面がある
施工図とは現場管理者が作業者と情報共有するために作成する図面です。代表的な施工図は次の3つです。
・平面詳細図
・躯体図
・総合図
ここでは、それぞれの図面の特徴を詳しくみていきましょう。
平面詳細図
平面詳細図とは平面図の縮尺を拡大して作成する図面を指します。図面にはさまざまな寸法が明記されています。明記されている寸法の具体例は次のとおりです。
・建具の寸法
・壁厚の寸法
・躯体寸法
平面詳細図は仕上げ箇所を作り上げるために、実際の間取りを表現する役割があります。屋内の高さやフローリングの方向などを図面内に記載します。
躯体図
躯体図とは建築物の骨組みを組み立てる躯体工事に必要な図面です。骨組みとは柱や壁、床、階段、梁、屋根、天井などを指します。躯体図のベースは構造図や平面詳細図です。明記される情報は次のとおりです。
・コンクリートの打設位置および寸法
・通り芯
・壁芯
・コンクリートの断面寸法
総合図
総合図とは設備機器の配備に必要な図面です。設備図や平面詳細図に明記されている情報を土台に作成されます。電気設備や空調設備、衛生設備などを含めた全ての情報を明記しています。総合図の作成により、納まりの検討ができるようになるでしょう。
まとめ
建築工事の初期段階として建築主のイメージを作図する基本設計図を作成します。建築基準法や都市計画法など建築に関わる法律に従わなければならないため、制限や条件が生まれます。そのため、基本設計図に建築主のイメージを全て反映できるわけではありません。基本設計図の作成では建築主と法律に関する制限をはじめ、さまざまな事項を議論しつつ作業を進めていく必要があります。
次の段階として、実際に工事を実施するために必要な実施設計図を作成しましょう。実施設計図は意匠図・構造図・設備図の3種類に分類され、工事を実施する上で必要な情報を伝える役割があります。
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