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これまで/これからの建設DXの動きを解説 建設はどう変わっていくのか

BIMやi-Constructionの取り組みが進み、建設業界では「建設DX」という言葉が一般的になってきました。しかし、あまりにも急速にDXの概念が広がったため、建設DXにおける自分の現在地を見失ってしまっている方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、これまでの建設DX、そして、これからの建設DXの動きを解説します。参考にするのは、国土交通省が作成したロードマップです。建設業界全体の指標となるロードマップを参考にすることで、みなさまのこれからの建設DXの道しるべになることを期待しています。

これまでの建設DXの動き

日本では、経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を取りまとめた2018年から、「DX」という概念が広がりました*1。

これを機に、建設業界でも徐々に「建設DX」という言葉が使われるようになりましたが、建設DXの核である「BIM」と「i-Construction」は、それ以前からスタートしています。

BIM元年とされる2009年にBIM導入が始まり、2010年には国土交通省が官庁営繕事業におけるBIM導入プロジェクトを開始しました*2。

その後、2014年には「BIM活用ガイドライン」が発表され、2019年にはBIMの活用を推進する「建築BIM推進会議」が設置されています。

2023年には、中小企業も含めた業界全体にわたるBIMの普及を加速するべく「建築BIM加速化事業」が開始され、多くの関係者がBIMに触れるようになりました。

一方、「i-Construction」は、2016年から国土交通省が推進している建設生産プロセスでICTを活用する取り組みです(*3_p.6)。

i-Constructionで最も好成績を収めているのはICT施工の分野で、2022年度時点で2015年と比べて平均約21%の作業時間の短縮を実現しています。

2024年には、「i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~」が策定され、2040年度までに2023年度と比べて3割以上の省人化、つまり1.5倍以上の生産性向上を目指すことが示されました(*3_p.10)。

設計者・施工者・専門工事業者・メーカー・建築主・ビル管理者など、多くの関係者が、BIMの普及やi-Construcionをとおしてデジタル技術に触れるようになり、建設プロセスにおける横断的なデジタル活用が広がったことが、建設DXに繋がっているのです。

これからの建設DXの動き(BIM)

ここからは、「これからの建設DXの動き」を解説します*4。

まずは、BIMに関する取り組みをみていきましょう。2023年に国土交通省が発表した「建築BIMの将来像と工程表(増補版)」を参考にしています。大きな取り組みは、以下の3つです。

・BIMによる建築確認の環境整備

・データ連携環境の整備

・維持管理・運用段階におけるデジタル化

BIMによる建築確認の環境整備

現在は紙媒体の設計図書で建築確認を行っていますが、BIMデータによる建築確認の実現に向けて準備が進んでいます。以下に示すのが、「BIMによる建築確認の環境整備」のロードマップです(図1)(*4_p.3)。

図1 「BIMによる建築確認の環境整備」のロードマップ

出所)国土交通省「建築BIMの将来像と工程表(増補版)」p.3

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001603587.pdf

2024年度には電子申請受付システムの整備、確認申請用IFCルールの策定、BIMデータ申請に必要な情報や既存の法チェックルールの整理を終え、2025年にはBIMソフトやCDE環境を用意して「BIM図面審査」を開始する流れになっています。BIM図面審査を開始する際にマニュアルが策定される予定なので、すぐにでもBIMで建築確認を行いたいという方は、チェックしておきましょう。

データ連携環境の整備

デジタル技術のメリットを最大限活かすために、データの標準化が進められています。データの入力や受け渡しのルールを共通化することで、設計・施工・維持管理といったプロセスを跨いだBIMの横断的活用を推進することが目的です。

以下に、「データ連携環境の整備」のロードマップを示します(図2)(*4_p.4)。

図2 「データ連携環境の整備」のロードマップ

出所)国土交通省「建築BIMの将来像と工程表(増補版)」pp.4

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001603587.pdf

BIMによる建築確認と同様に、基本的には2025年までに情報整理やルールの策定、運用方法の検討などは終わらせる予定になっています。2025~2027年のうちにデータのルールを確立し、2028年から本格的な運用を目指すようです。

維持管理・運用段階におけるデジタル化

これまで、建物の維持管理や運用は、建築主任せになっていました。国土交通省は、維持管理・運用段階のプロセスも建設DXによって改善することで既存ストックの利活用や不動産価値の向上を実現するため、以下のようなロードマップを描いています(*4_p.5)。

図3 「維持管理・運用段階におけるデジタル化」のロードマップ

出所)国土交通省「建築BIMの将来像と工程表(増補版)」pp.5

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001603587.pdf

建物の維持管理・運用段階におけるBIM活用は、建築主やビル管理者の要望を把握する必要があり、2023年まではユースケースの整理や開発に終始していたのが実情です。2024年には活用方法やワークフローなどを策定し、2025年からは検証と試行を開始する予定になっています。

これからの建設DXの動き(BIM以外)

次に、建築・都市のDXとして、「PLATEAU」「不動産ID」「地理空間情報」に関する動きを解説します。これらは、建設プロセスの生産性向上というよりも、建物の不動産価値の向上に向けた取り組みです。少し分野が異なるかもしれませんが、建設業で生産された建物がどのような価値を持つことになるのかを知ることは、大きなモチベーションに繋がると思います。

国土交通省は、「建築・都市のDX」に関する官民ロードマップを作成しています(図4)(*5_p.1)。このロードマップを参考に、それぞれの動きをみていきましょう。

図4 「建築・都市のDX」官民ロードマップ

出所)国土交通省「「建築・都市のDX」官民ロードマップ」p.1

https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/chirikukannjoho/content/001756435.pdf

PLATEAU

PLATEAUとは、国土交通省が主導する「日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト」です*6。既に公開されており、誰でも3D都市モデルを閲覧することができます。既存建物の高さなどを確認できるので、設計を行うときのボリューム検討や、施工計画に役立つツールです。

これからも持続的にデータ更新が行われ、まちづくり関係プロセスのデジタル化やDXで利活用される3D都市モデルの構築に向けて進んでいきます。2025年からは「建築確認手続き等の制度を踏まえた3D都市モデル作成・更新手法等の確立」に関する取り組みがスタートするので、BIMによる建築確認とあわせてチェックしておきましょう。PLATEAUに入力するデータに関する指定があるかもしれません。

不動産ID

不動産IDとは、不動産関連情報の連携・蓄積・活用・発信を促進するために、不動産を一意に特定するIDです*7。

消費者の利便性の向上を図るほか、生活インフラ・まちづくり・物流といった幅広い分野での利活用が期待されています。最終的には、不動産IDとPLATEAUを連結し、デジタルツインでの情報提供が実現する予定です。

2024年から不動産IDシステムの提供・整備が開始され、2026~2027年の試験運用を経たのち、2028年から本格運用が始まります。

地理空間情報

地理空間情報(GIS)とは、「位置に関する様々な情報を持ったデータを電子的な地図上で扱う情報システム技術」の総称です*8。

国土交通省のGISは、2024年時点で211万ダウンロードを記録しています。

今後は、不動産情報ライブラリの公開や、情報連携基盤構築の構築・運用を行うことで、PLATEAUの基盤データとして質・量の拡充を進めていきます。

おわりに

建設DXはまだ始まったばかりです。BIMやICT施工の取り組みは広がっているものの、多くのニーズには応えられていないのが実状といえます。

設計者・施工者・建設労働者・メーカー・建築主・ビル管理者など、多くの関係者がBIMをはじめとしたデジタル技術に触れ、意見・要望を出し合い、解決に向けて具体的な行動を取ることが、業界全体の改善に繋がります。

国土交通省のロードマップによると、2028年から多くの取り組みの本格運用が始まるので、それまでに準備を進めておきましょう。

(3795字)

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注釈

*1

出所)ソフトバンク株式会社「令和2年度 BIMモデル事業・連携事業 検証結果報告書」

https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202002/dx-guideline/

*2

出所)BuildApp News「BIMの歴史|海外と日本での流れを解説」

https://news.build-app.jp/article/29605/

*3

出所)国土交通省「-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~」p.6,10

https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001738240.pdf

*4

出所)国土交通省「建築BIMの将来像と工程表(増補版)」pp.3-5

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001603587.pdf

*5

出所)国土交通省「建築・都市のDX」官民ロードマップ」pp.1-2

https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/chirikukannjoho/content/001756435.pdf

*6

出所)国土交通省「PLATEAU」

https://www.mlit.go.jp/plateau/

*7

出所)国土交通省「不動産IDルールガイドライン 概要」

https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001474374.pdf

*7

出所)国土交通省「地理空間情報」

https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/chirikukannjoho/tochi_fudousan_kensetsugyo_tk1_000041.html

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