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建築現場で生かすBIM—実装と浸透を促進するための戦略ガイド

BIMを建築現場でも運用させる重要性

建築業界において、BIM(Building Information Modeling)の導入は、プロジェクトの成功に欠かせない要素となりつつあります。BIMは、建築情報モデリングを通じて、設計から施工、維持管理に至るまでのプロセスを一元管理し、効率化を図るための強力なツールです。

しかし、BIMを単に導入するだけでは、その真の価値を引き出すことは難しいのが現実です。現場で実際に活用され、効果を発揮するためには、さらなる工夫と実践的な戦略が求められます。管理層には、BIMを現場に浸透させるための具体的な方法を理解し、戦略的に実行していくことが求められています。

本記事では、BIMの現場浸透を促進するための実践的なアプローチについて詳しく解説します。

BIMがもたらす具体的な効果

BIMが建設現場に根付くことで、現場スタッフやプロジェクト全体にどのような具体的なメリットが得られるのでしょうか。管理層が押さえるべき主要なポイントを以下にまとめました。

コスト削減  

 BIMは、プロジェクト全体を3Dで可視化することで、設計段階でのエラーや干渉を事前に発見し、施工段階での手戻り作業を削減します。これにより、無駄なコストが削減され、プロジェクトの効率が大幅に向上します。

リソース最適化  

 BIMは、プロジェクトの各フェーズで必要なリソースを可視化し、適切なタイミングでのリソース配分を容易にします。これにより、資材や人員の過剰配置や不足といった問題を防ぎ、現場の作業効率が向上します。適切なリソース管理は、予算やスケジュールの無駄を防ぎ、全体的な生産性を引き上げます。

リスク軽減

 BIMを活用すると、プロジェクトの初期段階で潜在的なリスクを予測しやすくなり、リスクに対応するための計画も立てやすくなります。これにより、プロジェクト進行中のトラブルが減少し、全体の信頼性と安全性が向上します。リスクを早期に把握することで、突発的な問題が発生した際の対応もスムーズに進められます。

作業効率の向上

 現場での作業が円滑に進行しやすくなるため、プロジェクト全体の進行がスムーズになり、納期短縮も期待できます。特に、リアルタイムでのデータ共有により、現場とオフィスの情報ギャップが解消され、複数のチームが連携して効率的に作業を進められるようになります。このようなBIMを通じた情報共有は、作業効率を高める大きな要因です。

建築現場でのBIM運用を阻む課題

しかし、現場でBIMを運用する際には、いくつかの課題が伴います。以下のような点が、現場でのBIM利用を妨げる要因となりがちです。

スキル不足

BIM操作やデータ分析に必要なスキルを持つスタッフが不足している場合、現場での活用が限定的になることがあります。BIMの効果を最大限に引き出すためには、スタッフのスキル向上が不可欠です。

既存システムとの連携

現場での既存システムとBIMがうまく連携しないと、データ更新の遅延や情報共有の不備が生じます。システム間の連携がネックとなり、逆に作業量が増えてしまうなど、プロジェクトの進行に支障をきたす可能性があります。

データのリアルタイム更新の難しさ

現場からのデータ入力や更新がリアルタイムで行われない場合、設計と現場との間で情報のギャップが生まれ、プロジェクト進行に悪影響を及ぼします。リアルタイムでのデータ更新を実現するためには、適切なシステム環境の整備と現場での対応が必要です。

トレーニングの必要性

現場スタッフにBIMの活用を促すには、時間とコストのかかるトレーニングが不可欠です。スタッフがBIMを効果的に活用できるようにするためには、継続的なトレーニングプログラムの整備が求められます。

建築現場でのBIM運用を促進するためのアプローチ方法

建築現場でのBIM運用を阻む課題を解決するために、次の4つの具体的なアプローチを実行することで、BIMを効果的に現場に根付かせ、現場作業の効率化と質の向上を図ります。

簡易BIMビューアの導入によるスキル不足の克服 

BIM操作やデータ分析スキルの不足という課題に対し、現場に必要な機能だけを備えた簡易BIMビューアを導入します。これにより、複雑な操作を必要とせず簡単に素早く最新の設計データにアクセス可能となり、現場での利用ハードルが下がります。

現場連携アプリによるシステム連携の強化

既存システムとの連携に対応するために、BIMデータを既存システムへも登録する現場連携アプリを活用します。モバイルで確認・共有できるアプリを用意することで、現場での進捗報告、変更依頼、写真の添付などが一元的に行え、オフィスとの情報連携が効率化されます。

事前シミュレーションによるリアルタイム更新のサポート

データのリアルタイム更新の難しさを解決するため、BIMデータを活用した3Dシミュレーションを事前に実施し、AR/VRを使って設計段階での状況を視覚的に共有します。これにより、事前に現場での流れや潜在的なリスクが把握され、また現場での動きやメリットを知ることで、BIM利用を促進します。

段階的トレーニングでトレーニング負担を軽減

現場スタッフのトレーニング負担に対応し、段階的なトレーニングプログラムを導入します。初期段階では基本機能の操作を、次に応用方法を学び、最終的に実務でのフィードバックを通じて習得を進めることで、トレーニングを無理なく継続可能な形で提供します。

成功事例紹介:i-Constructionの取組に基づくBIM活用の実績

日本の建設業界で国土交通省が推進する「i-Construction」では、2016年度から建設現場の生産性向上を目指し、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までのあらゆる生産プロセスにおいてICT技術を活用する取り組みが進められています。このプロジェクトを通じ、具体的な数値で示される成果が確認されており、BIM活用の効果を理解する上でも非常に参考になる事例です。

成果1:作業時間の短縮効果

i-Constructionの中核を成す「ICT施工」は、2022年度には直轄土木工事の87%で導入されており、2015年度と比較して**平均で約21%の作業時間短縮**が確認されています。ICT施工の普及によって、従来の作業工程の一部が自動化され、現場での施工が効率化された結果です。この取り組みによって、建設現場での作業スピードが向上し、業務の負担が軽減されていることが分かります。

成果2:測量分野における省人化

従来の測量方法では、測量機器を操作する作業員のほかに、測点でターゲットを持つ作業員も必要でしたが、ドローンを活用した測量では、短時間で広範囲の測量が可能となり、**従来手法の約4割の労力で測量**が実現しています。この技術の導入により、人の立ち入りが難しい危険な場所や急峻な地形でも測量が行え、建設現場での安全性向上と省人化が大きく進んでいます。

成果3:施工管理の効率化と3次元計測技術の普及

施工管理においても、ドローン測量、高精度な3Dレーザースキャナ、簡易な3D測量が可能なスマートフォンアプリなどが導入され、**施工管理の効率化と省人化**に寄与しています。これらの技術により、迅速かつ正確な出来形管理が可能となり、現場での作業を効率的に進められるようになりました。施工管理におけるデータ取得が効率化されることで、データの処理や活用もスムーズに行えるため、現場作業全体の生産性が向上しています。

まとめ:BIMを現場で活用するために重要な戦略

BIMを建設現場に浸透させるためには、技術的なサポート体制の整備だけでなく、段階的な導入と現場スタッフのスキル向上が不可欠です。BIMを現場で効果的に活用することで、プロジェクトの効率化と競争力の向上が期待でき、企業全体の価値を高めることができます。意思決定層には、BIM導入のメリットを現場レベルで最大限に引き出すための戦略的な視点が求められます。

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参考リンク

・国土交通省『i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~』
https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001738240.pdf

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