IoTセンサーとBIMを連動する方法|仕組み・活用例・デジタルツインを解説

1. はじめに

近年、建物の設計や施工だけでなく、設備管理や施設管理の効率化を目的としてBIMの導入が進んでいます。BIMは、従来の2D図面だけでは表現しきれない建物の情報を、3Dモデルと属性情報で一元的に管理する手法です。一方、実際の建物や設備は、温度や湿度、利用状況、経年劣化などによって常に状態が変化します。

こうした変化を把握するうえで役立つのがIoTセンサーです。IoTセンサーには、温度センサーや湿度センサー、照度センサー、人感センサー、振動センサーなどがあり、建物内部や設備の状態をリアルタイムで取得できます。取得したセンサーデータをクラウド上のIoTプラットフォームなどへ送信し、BIMモデルと関連付けることで、仮想空間上に現実世界の情報を反映し、建設現場でのトラブルの早期発見や運用コストの削減などを目指せます。

本記事では、IoTセンサーとBIMを連動する仕組みや、それによって実現できること、近年注目されているデジタルツインとの関係について解説します。できるだけわかりやすい言葉で、プロジェクトマネージャーなどの実務者にも参考になるよう、具体的な活用方法と注意点を紹介します。

また、クラウドやIoT基盤などの技術がどのようにつながるのかを整理し、APIを介したデータ連携やセキュリティの考え方にも触れます。建物運用データや異常検知に関心のある方にも役立つ内容です。ぜひ参考にしてください。

2. IoTセンサーとBIMの基本概念

2.1. IoTセンサーとは何か

IoTセンサーは、温度や湿度、照度、人の動き、振動など、建物や設備の状態を計測するデバイスです。取得したデータをネットワーク経由で送信し、クラウドやIoTプラットフォームで管理することで、設備監視や異常検知、予知保全などに活用できます。

2.2. BIMの役割と機能

BIM(Building Information Modeling)は、建物の3D形状だけでなく、柱や壁、設備機器などの属性情報もまとめて扱える仕組みです。BIM上の設備や空間とIoTセンサーから取得したデータを関連付けることで、建物や設備の状態を3Dモデル上で把握しやすくなります。

3. IoTセンサーとBIMの連動のメカニズム

ステップ内容
1. データ取得IoTセンサーで温度・湿度・振動などを取得する
2. データ送信ネットワーク経由でクラウドやIoT基盤へ送信する
3. データの紐付けセンサーとBIM上の設備・空間を対応付ける
4. 可視化BIMやデジタルツイン上に設備や空間の状態を表示する

3.1. データの取得と送信

例えば、温度センサーで1分ごとに室内環境を測定し、その数値をWi-FiやLPWAなどの無線通信を使ってIoTプラットフォームへ送る仕組みがあります。取得したデータはクラウド上で処理・蓄積し、デジタルツインなどのシステムに反映できます。

Azure Digital Twinsでは、IoT Hubを使ってIoTデバイスと接続し、ライブデータをデジタルツインに反映できます(参照*2)。また、Microsoftの公式ガイドでは、IoT Hubから受信したデータをAzure Functionsなどで処理し、DigitalTwins APIを介してデジタルツインのプロパティを更新する構成が示されています(参照*3)。このような仕組みをBIMや3Dモデルと組み合わせることで、センサーデータの可視化や遠隔監視などに活用できます。

こうしたデータ連携を行うには、建設現場などのネットワーク環境を安定させることが重要です。また、データ形式をあらかじめ標準化しておくことで、その後のBIM連携やAPIとのやり取りをスムーズに進められます。

3.2. IoTデータとBIMオブジェクトの紐付け

センサーから送られてくる数値だけでは、それがどの空間や設備の情報なのかを判断できません。そこで重要になるのが、IoTデバイスとBIM上の設備や空間との対応関係を設定することです。例えば、温度センサーAと、そのセンサーが取り付けられている空調設備Aを結び付けたり、人感センサーBの計測エリアをBIMモデル上の一部屋に紐付けたりします。 

こうした紐付けを正確に行うことで、取得したセンサーデータを3Dモデル上の適切な場所に可視化し、異常検知や設備管理に活用しやすくなります。例えば、振動センサーが特定の機器の異常を示した際に、BIM上の該当設備をハイライト表示できれば、メンテナンスの優先順位を判断しやすくなります。

また、データ連携では、センサーとデジタル空間上の設備や場所との対応関係を適切に管理することが重要です。Azure Digital Twinsの公式例では、IoT Hub上のデバイスIDと対応するデジタルツインのIDを一致させてデータを反映しています。より複雑な構成では、マッピングテーブルを使ってデバイスとデジタルツインを対応付ける方法も示されています(参照*3)。BIMと組み合わせる場合も、こうした対応関係を整理することで、センサーデータを適切な設備や空間に関連付けやすくなります。 

3.3. 3Dモデル上での情報の可視化

最後に、BIMモデルと関連付けたセンサー情報を、どのように表示して活用するかを見ていきます。Autodesk Tandemは、BIMデータからデジタルツインを構築し、IoTやBMSのデータを接続できるプラットフォームです。ほぼリアルタイムのデータや過去のデータを監視・分析できるほか、3Dビューア上ではストリームデータをヒートマップなどで可視化できます(参照*1)。 

例えば、部屋ごとの湿度を確認して適切に管理したり、特定のエリアで照度が不足していることを把握し、照明調整の判断に活用したりできます。3Dモデル上で状態を視覚的に確認できるため、遠隔地からの監視にも活用しやすくなります。こうした可視化により、プロジェクトマネージャーや施主、現場作業員など、さまざまな立場の関係者が同じ情報を共有できます。 

さらに、BIMとセンサー情報を統合したインターフェースをスマートフォンやタブレットで利用できれば、建設現場や設備点検でもその場で状況を把握しやすくなり、より迅速な意思決定につなげられます。

4. IoTセンサーとBIMの連動による具体的な活用方法

4.1. 建物と設備の状態のリアルタイム監視

IoTセンサーから取得した情報をBIMと組み合わせることで、建物や設備の状態を継続的に監視できます。例えば、SBエンジニアリングの「Visual Flow」では、BIMモデルと各種IoTセンサー・カメラを連携し、設備の稼働状況をリアルタイムで可視化する仕組みが提供されています(参照*4)。設備の状態を3D空間上で把握できれば、異常発生時の状況確認や設備管理にも活用できます。 

4.2. 異常検知と予知保全 

IoTセンサーの値が設定したしきい値を超えたり、異常を検知したりした場合にアラートを出すことで、設備の問題を早期に把握できます。また、蓄積したセンサーデータからパターンや異常傾向を分析し、設備が故障する可能性を予測する予知保全にも活用できます。Bentley SystemsのiTwin Platformでも、IoTセンサーによるアラートや、センサーデータを分析した予知保全が紹介されています(参照*8)。 

4.3. 遠隔からの監視と制御

IoTセンサーとBIMを連動すると、離れた場所からでも建物や設備の状態を確認できます。さらに、設備制御システムなどと組み合わせることで、遠隔地から設備を操作することも可能です。複数拠点を管理する場合にも、情報をまとめて確認しやすくなります。

4.4. 建設現場の進捗と安全管理

施工現場では、温度や空気質、振動量などの情報をBIM上に表示し、作業環境の確認に活用できます。また、ビーコンなどで取得した作業員や資機材の位置情報を3D空間上に表示することで、現場の配置や作業状況を遠隔地から把握することも可能です。

活用方法主な用途
リアルタイム監視温度・湿度や設備の稼働状況を確認する
異常検知・予知保全異常の早期把握や故障兆候の分析に活用する
遠隔監視・制御離れた場所から設備の状態確認や操作を行う
進捗・安全管理作業環境や作業員・資機材の位置を把握する

5. デジタルツインとの関連性

5.1. BIMとデジタルツインの違い

BIMとデジタルツインは関連性が高いものの、同じものではありません。BIMは建物の3D形状や属性情報を扱うために利用されます。一方、Autodesk Tandemでは、BIMデータから実際の施設を再現したデジタルツインを生成し、IoTや建物のデータを連携して運用状況の監視や分析に活用できます(参照*1)。

またAzure Digital Twinsでは、建物や工場などの物理環境をデジタルモデルとして表現し、IoT Hubを通じてIoTデバイスからライブデータを取り込めます(参照*2)。このように、BIMが持つ建物や設備の情報に、IoTセンサーなどから取得する運用データを組み合わせることで、現実の状態を反映したデジタルツインとして活用できます。

6. 実際の活用事例

6.1. 東京大学とNTT Comの共同実証

引用:https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2021/0324.html

東京大学グリーンICTプロジェクトとNTT Comは、2021年3月から、建物空間を対象としたデジタルツインの実証実験を開始しました。この実証では、BIMデータやIoT情報、位置情報などを活用し、デジタルツイン・アプリケーションの構築における技術課題やプロセスを検討することを目的としていました(参照*5)。 

実証開始時には、LiDARなどで取得した点群データを活用したBIM・ジオメトリの生成に加え、BIMに含まれる空間構成や属性データなどの取得、建物内のIoTデバイスの位置とBIMやジオメトリ上の位置の紐付けなどが検証項目として想定されていました(参照*5)。 

さらに、ジオメトリやIoTデバイスを使い、清掃ロボットと建物内のカメラなどを連動させる機能も検証対象となりました。この事例から、BIMとIoTを組み合わせる際には、現実空間の機器とデジタル空間上の位置情報を対応付けることが重要だとわかります。

6.2. 鹿島建設の3D K-Fieldシステム

引用:https://www.kajima.co.jp/news/press/202010/28a1-j.htm

鹿島建設が開発した「3D K-Field」は、建物の3次元情報を持つBIMと連携し、資機材や人の位置情報、カメラやIoTセンサーなどから得られた情報を3D空間上に表示するシステムです。これらの情報を一つの画面に集約し、現場全体の状態をリアルタイムで可視化できます(参照*6)。

羽田イノベーションシティでは、施設管理スタッフやモビリティ、ロボットなどのリアルタイムな位置情報や稼働状況に加え、トイレや会議室の空き状況の可視化にも活用されています(参照*6)。BIMとIoT、位置情報を組み合わせることで、建設現場だけでなく施設運営の情報を一元的に把握できる事例です。

6.3. 大和ハウス工業のセンサー情報可視化

引用:https://www.fsi.co.jp/aws/case/case_daiwahouse02.html

大和ハウス工業は、富士ソフトと協力し、IoTとBIMを活用した施設管理の実証に取り組みました。照度・温度・湿度・人感などのセンサーデータをクラウド上で収集・分析し、BIMを活用した3Dの施設内環境を可視化する画面を開発しています(参照*7)。

可視化画面には、センサー情報のグラフ表示に加え、温度・湿度・照度のヒートマップ、照明制御パネル、ウォークスルー表示などが実装されました。また、照度・人感センサーなどのデータを利用して施設の使用状況を可視化し、遠隔地から照明機器の電源を制御する実証も行われています(参照*7)。

この事例では、IoTセンサーとBIMによる3D可視化だけでなく、遠隔からの設備管理・制御まで検証されており、施設管理や省エネルギーへの活用例として参考になります。

7. 導入時の注意点

7.1. センサーとBIMデータの整合性

IoTセンサーを多数導入すると、それだけ扱うデータ量も増加します。そこで重要になるのが、どのセンサーがどの設備や空間を監視しているのかを明確に関連付けることです。

センサーとBIM上の設備や空間との対応関係を管理する手順をあらかじめ設計しておかないと、後から管理情報が混乱する可能性があります。また、建設現場では一時的にセンサーの位置を変更する場合もあるため、最新のセンサー配置情報をモデルへ反映する運用方法を定めておくことが大切です。 

こうした整合性が不十分だと、正確なリアルタイム可視化や異常検知ができなくなる恐れがあります。

7.2. システム間の連携確認

BIMソフト、IoTプラットフォーム、クラウドサービスなど、使用するシステムが増えるほど、連携も複雑になります。APIの仕様やデータ形式の違いによって、センサー情報がBIMへ適切に反映されないケースも考えられます。

導入前には、主に次の項目を確認しておきます。 

確認項目確認する内容
IoT基盤どのプラットフォームを利用するか
通信方法使用するプロトコルやAPI
データ連携システム間で扱うデータ形式や規格
システム構成可用性や拡張性に問題がないか

特に大規模な建設プロジェクトでは、多くの業者とデータをやり取りするため、標準化された規格に沿って連携することが重要です。 

また、セキュリティ面でも、各システム間で情報を安全にやり取りできるよう、適切な処理や暗号化を行う必要があります。

7.3. データ取得の最適化とセキュリティ

運用中のセンサーデータは、常に取得すればよいとは限りません。必要に応じて取得頻度を調整し、利用目的に合った量のデータを集めることが重要です。例えば、毎秒記録する必要があるのか、5分単位で十分なのかを判断しておけば、ネットワーク負荷やストレージコストを抑えられます。

さらに、セキュリティも導入時に重要となるポイントです。遠隔監視や設備制御が可能になる分、不正アクセスへの対策やデータの暗号化が欠かせません。一度のトラブルがシステム全体への信頼を損なう恐れがあるため、導入段階から十分な対策を検討しておくことが重要です。

データ取得の最適化とセキュリティ対策を並行して進めることで、安定したIoTセンサーとBIMの連動環境を構築できます。

8. まとめ

IoTセンサーとBIMを連動させることで、現実世界の建物や設備の状態を3Dモデル上で把握しやすくなり、異常検知や予知保全、遠隔監視など、より高度な運用に活用できます。

連携を実現するには、IoTデバイスからセンサーデータを取得し、クラウドやIoT基盤へ送信したうえで、BIM上の設備や空間との対応関係を適切に管理することが重要です。これにより、リアルタイムな状態を可視化できるほか、設備制御システムなどと組み合わせることで、遠隔制御や自動化にも展開できます。また、BIMとIoTデータを統合することで、デジタルツインとしての活用にもつなげられます。 

プロジェクトマネージャーをはじめ、建設現場に関わるさまざまな立場の人が同じ画面で状況を共有できれば、迅速な意思決定につながります。コスト削減や安全性の向上、施設管理の効率化にも役立つため、今後さらに活用が広がっていく技術といえるでしょう。

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<参考文献>
(*1)Autodesk Tandem | Autodesk Tandem の無償体験版と購入
https://www.autodesk.com/jp/products/tandem/overview

(*2)Azure Digital Twins とは - Azure Digital Twins | Microsoft Learn
https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/digital-twins/overview

(*3)Ingest telemetry from IoT Hub - Azure Digital Twins | Microsoft Learn
https://learn.microsoft.com/en-us/azure/digital-twins/how-to-ingest-iot-hub-data

(*4)Visual Flow|設備管理デジタルツイン|SBエンジニアリング株式会社
https://sbengineering.co.jp/solutions/visualflow

(*5)ニュース 2021年3月24日:東京大学グリーンICTプロジェクトとNTT Com、Smart City実現に向けた建物空間の「デジタルツイン」実証実験を開始|NTTドコモビジネス 企業情報
https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2021/0324.html

(*6)リアルタイム現場管理システム「3D K-Field」をスマートシティに初適用 | プレスリリース | 鹿島建設株式会社
https://www.kajima.co.jp/news/press/202010/28a1-j.htm

(*7)AWS 導入事例 大和ハウス工業株式会社 様 |富士ソフト株式会社
https://www.fsi.co.jp/aws/case/case_daiwahouse02.html

(*8)iTwins and IoT | iTwin Platform
https://developer.bentley.com/use-cases/itwins-and-iot/