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BIMとCIMを融合する東急建設のUiM構想がもたらすメリット

渋谷駅では大規模な工事が10年近く続けられてきましたが、ここで新たに採用されていたのは、UiMと呼ばれる東急建設の新たな取り組みです。

BIMとCIMを融合するというUiMは、どのような可能性をもたらしてくれるのでしょうか。そして、そもそもBIMとCIMが分けられて使用されてきた背景や、融合の先にある技術について、ご紹介していきます。

目次:
①渋谷駅の大規模リニューアルで実現するUiM
②BIMとCIMの違いをおさらい
③BIMとCIMの融合がもたらす次世代都市の姿

渋谷駅の大規模リニューアルで実現するUiM

渋谷駅周辺は、様々な鉄道や路線が乗り入れる、複雑で巨大な様相を呈しています。
今回東急建設がリニューアルを行った東京メトロ銀座線もまた、1日あたり21万人もの人々が使用する路線ですが、ここで採用されたのがUiMの構想です。

BIMとCIMを融合したUiM

UiMは “Urban Information Modeling/Management”の略称です。
BIMとCIMを一体的に活用することで、単一の土木や建設プロジェクトではなく、「一つの都市」を効率的に作り出し、運営していくことを視野に入れた開発を行います。

かねてより都市開発という言葉は建設の分野で幾度となく使用されてきましたが、従来の都市開発のプロジェクトというものは、一つの建設物の竣工が限界でした。
そこでUiM構想を立ち上げ、土木と建築が一体となったプロジェクトを円滑に進められるようにすることで、都市の包括的な開発を促進していったのです。

渋谷駅がUiMを必要とした理由

都市開発に特化したプロジェクトの推進を行うUiMですが、渋谷駅の再開発でUiMが採用されたのは、渋谷という都会のど真ん中であるという条件が存在していたためです。
再開発以前より、渋谷駅は東京でも有数の利用者数を誇ってきた過密地域でした。
すでに多くの建物や路線、そして地下街が形成されていたため、渋谷を利用する人々の経済活動を阻害することはできなかったのです。

そのため、駅のリニューアルにも繊細な計画性が要求されました。
2009年に着工した銀座線渋谷駅の移設工事は 周辺事業との調整も細かく求められ、現在の場所から130メートル移動するだけで、計 5 回もの線路切り替えを行う複雑な移設工事が必要とされたのです*1。

また、構台面、軌道面、地上面の三層に分かれた工事を伴うため、従来の平面図を用いた施工では情報共有にも限界がありました。
そこでBIMとCIMを併用することで情報を3D化し、建物だけでなく土地の情報も合わせて共有されたことで、施工プロセスの迅速な理解を促進しました。

東京は過密都市となっており、今後も渋谷以外のエリアで都心での大規模な修繕工事やリニューアルが求められる事が予想されます。
UiMは、そんな都市部での複雑な工事において重宝され、より維持管理に最適化された都市の実現を促してくれるでしょう。

BIMとCIMの違い

ここで、BIMとCIMの違いについても改めて確認しておきましょう。
基本的には同じ仕組みを共有するBIMとCIMですが、どのような点で使い分けが行われているのでしょうか。

建物に特化したBIM

まずBIMの方ですが、名前にもBuilding Information Modelingとあるように、こちらは建物の3Dモデリングに特化した技術です。
単に建築物を模した3Dモデルを作成するのではなく、「デジタル空間に現物と同じ建物を作成」することを目的とします。

通常の3Dモデルとは違い、BIMモデルには各部材の採寸や重量、材質や価格など、あらゆる情報が付与されています。
そのため、BIMモデルはもはや平面図などの二次元情報も兼ねた3Dモデルとして運用する事ができ、情報共有の円滑化を促す事が可能です。

土木に注目するCIM

一方のCIMですが、こちらはConstruction Information Modelingという名前の通り、土木関係のプロジェクトに使用される技術です。
道路や水道、電力などのインフラ分野において導入が進んでおり、役割としてはBIMと大差はありません。

元々、CIMはBIMの技術を土木分野にも応用しようということで、国土交通省が提唱を始めた技術です。
労働人口の減少や維持管理コストの増大を防ぐべく、今後あらゆるインフラ工事においてCIMの活用が期待されており、ドローンの活用やIoTの普及にも役立てられています。

課題解決を導く両者の融合

BIMとCIMはわけて運用が進められてきましたが、この分断は課題をもたらすことにもなりました。
BIMとCIMを分けて扱うことで、情報共有に支障をきたし、統合運用を阻害してきたのです。
技術面では近しい間柄ではありますが、データの形式やソフトの違いから、相互運用が難しいともされてきました。

しかしUiMにおいては、BIMとCIMの統合運用環境を実現するべく取り組みが進んでいます。
上記の渋谷銀座線リニューアルにおいてはAutodesk社のRevit、およびCivil3Dを併用し、InfraWorksやNavisWorksといったソフトウェアの連携を実現することで対応しました*2。

BIMとCIMの融合がもたらす次世代都市の姿

BIMとCIMの同時運用は、技術的には十分に可能であるため、今後はどのように相互運用環境を整えていくか、というアプローチが問われています。
UiMが本格的に採用されていくようになれば、都市全体をデジタル化することも容易になるでしょう。

高度なシミュレーションを可能にする「デジタルツイン」

都市を丸ごとデジタル情報化する構想は「デジタルツイン」と呼ばれ、兼ねてより世界中で検討と実践が繰り返されてきました。
デジタルツインの最大の特徴は、これまでにない精度でシミュレーションを実施し、あらゆるリスクに備え、効率的に都市を管理していくことを可能にする点です。

従来のシミュレーションはあくまでも予測値に基づく検証も多く、時として現実と結果が乖離することも珍しくありませんでした。
しかしデジタルツインでは都市を丸ごとデジタル化し、温度や人の移動、利用環境までもが仮想空間に再現されるため、まるで現実空間のような値を算出する事ができます。

そのため、デジタルツインの実現に必要なのは、センサーを使ったIoTの普及やAIによる処理能力の向上、そしてUiMを用いた、都市を丸ごと扱えるようなデジタル化技術です。
UiMの実現は、そんなデジタルツインの登場にも大きな影響を与えることになるでしょう。

おわりに

東急建設が提唱し、実践を開始したUiMは、渋谷駅をきっかけに多くの都市開発において運用される事が予想されます。
単に現場の作業を効率化するだけでなく、長期的には運営管理にも良い影響を与えるという事で、まちづくりには欠かせない技術へと発展するかもしれません。

 

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*1 Redshift「東急建設の渋谷 UiM が支援する東京メトロ銀座線渋谷駅の移設工事」
https://redshift.autodesk.co.jp/ginza-line-shibuya/
*2 上に同じ

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