BIM確認申請でワークフローはどう変わる?効率化のポイントを解説
1. はじめに
建築確認申請では、紙やPDFで提出する複数の図面の整合性を確認したり、審査機関からの指摘を反映したりする作業に手間がかかります。特に大規模なプロジェクトでは、図面数や関係者が増えて作業量も多くなるため、申請をスムーズに進めることが難しくなります。
近年では、BIMの普及が進み、設計プロセスの効率化や建築デザインの検証などに活用されています。さらに、国土交通省は2026年春から「BIM図面審査」を開始し、BIMモデルを部分的に活用した新たな確認申請の仕組みを導入しました。
BIM図面審査の導入により、建築確認申請のワークフローにも変化が生まれています。図面の作成や審査対応だけでなく、チーム間の情報共有やデータ管理の方法も見直しが求められます。本記事では、BIM確認申請の概要やワークフローの具体的な変化、業務を効率化するためのポイントをわかりやすく解説します。
建築プロジェクトマネージャーをはじめ、BIM導入に関わる方は、確認申請の流れがどのように変わるのかを理解し、将来的なデジタル審査に備えるための参考にしてください。
2. BIM確認申請とは?

引用:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001757621.pdf
2.1. BIM図面審査の概要と基本
「BIM確認申請」という用語は広く使われていますが、2026年4月に正式に導入された制度の名称は「BIM図面審査」です。国土交通省は、BIMデータから作成したPDF形式の申請図書とIFCデータを提出し、建築確認申請に活用する仕組みとしてBIM図面審査を開始しました。(参照*2)
BIM図面審査では、PDF図書とともにIFC(Industry Foundation Classes)形式のBIMデータを提出し、審査担当者が建築物の三次元的な形状を把握する際の参考として活用します。(参照*1)IFCは、異なるBIMソフトウェア間でもデータをやり取りしやすい国際標準のデータ形式です。
ただし、現行制度では、IFCデータを提出することで審査が自動化されるわけではありません。あくまでPDF図書が審査の中心であり、IFCデータは建物形状などを把握するための参考として活用される段階です。 今後のデジタル審査を見据えた土台としても、その活用が期待されています。
2.2. BIM図面審査で提出するもの
まず、設計者はBIMデータを作成し、そこからBIM由来のPDF図書を出力します。確認申請では、建築基準法施行規則に基づいて必要な図書や明示すべき事項をそろえる必要があります。
加えて、BIM由来のPDF図書とIFCデータは、原則として同一のBIMデータから同一時点で出力し、確認申請用CDEへアップロードします。 ICBAでは、BIM図面審査の提出物として、BIMデータから書き出したPDF形式の図書とIFCデータを挙げています。(参照*3)
さらに、「入出力基準適合誓約書」などの必要な添付文書もあわせて提出します。ICBAでは、入出力基準に従って設計図書を作成したことを申告する誓約書と、確認申請用CDEへの提出物のアップロードをBIM図面審査のポイントとして示しています。(参照*3)
| 提出物 | 主な内容 |
| PDF図書 | BIM由来のPDF図書および必要なBIM由来でないPDF図書 |
| IFCデータ | BIM由来のPDF図書と同じBIMデータから書き出したデータ |
| 入出力基準適合誓約書 | 入出力基準に従ってBIMデータ等を作成したことを誓約する書類 |
| その他の申請書類 | 各種計算書など、確認申請に必要な書類 |
2.3. 従来の確認申請との違い
大きな違いは、審査担当者がBIMデータを参考として参照できるようになった点です。従来は主に図面から建築物の形状を把握していましたが、複雑な建物では三次元的な形状を理解するために時間がかかる場合がありました。
BIM図面審査では、PDF図書とあわせてIFCデータを提出することで、建物の形状を立体的に把握しやすくなります。例えば、2D図面だけでは理解しにくい複雑な形状なども、IFCデータを参考にすることで補足的に確認できます。
ただし、現時点ではIFCデータだけで審査が完結する仕組みではありません。 PDF図書は引き続き必要であり、IFCデータは建築物の形状を把握・理解するための参考として利用されます。BIMを審査の補助として活用しながら、今後の制度の発展につなげていく段階です。
3. BIM確認申請でワークフローはどう変わる?

3.1. 従来の確認申請ワークフロー
まず、従来の建築確認申請の流れを整理します。設計者は建築計画を進めながら紙やCADで図面を作成し、申請書類を準備します。その後、図面間に不整合がないか確認し、一定の整合性を確保したうえで、行政庁や指定確認検査機関へ提出します。
申請を受けた審査担当者は、図面や資料を確認し、建築基準法や関連する建築規制への適合性を判断します。不明点や不備があれば設計者へ指摘が入り、修正した図面を再提出するという流れを繰り返します。
このとき、図面が複数種類にわたるため、修正作業や不整合の確認が複雑になりがちです。特に大手建築会社などで複数人が同時に作業する場合、誰がどの図面をどのバージョンで修正したのかを追跡しづらく、申請や指摘対応に時間とコストがかかるケースも少なくありません。
3.2. BIM図面審査のワークフロー
BIM図面審査では、まず入出力基準に従ってBIMデータや申請図書を作成します。標準的な審査環境では、確認申請書様式をICBA電子申請受付システムから提出し、PDF図書やIFCデータ、入出力基準適合誓約書などを確認申請用CDEへアップロードして申請・審査を進めます。(参照*2)
審査側はPDF図書を使って法適合性を確認しながら、IFCデータを参照して建築物の全体像や三次元的な形状を把握します。国土交通省のマニュアルでは、IFCデータを閲覧しながら図面を確認する審査方法が示されています。(参照*2)
その後は、申請図書等の確認、審査、必要に応じた指摘・補正対応を進めます。対象となる場合は適合性判定や消防同意などの手続きを経て、確認済証が交付されます。(参照*2)
3.3. ワークフローで大きく変わるポイント
大きな変化の一つは、「BIMモデルが設計情報の基盤になる」点です。BIMモデルと連動して作成した図面であれば、モデルの修正内容を反映して再出力しやすくなります。そのため、図面を個別に作成・修正する場合と比べて、図書間の整合性を確保しやすくなります。
また、入出力基準に従って作成したBIMデータからPDF図書を出力することで、図書間の整合性を確保しやすくなります。国土交通省は、設計者の誓約を前提として、対象となる記載事項について審査時の整合性確認を一部省略できる仕組みを示しています。(参照*2)一方、IFCデータは審査対象ではなく、審査者が建築物の三次元的な形状を把握・理解するための参考として活用されます。(参照*2)
さらに、CDEを使って申請やデータのやり取りを行うことで、申請プロセスの進捗を把握しやすくなります。ファイルをオンライン上で管理でき、バージョンも確認しやすいため、メールによるやり取りやファイル管理の負担を抑えやすくなります。
従来の確認申請とBIM図面審査の主な違いを整理すると、以下のとおりです。
| 項目 | 従来の確認申請 | BIM図面審査 |
| 図面作成 | CADなどで図面を作成 | BIMモデルをもとに申請図書を作成 |
| 提出データ | 申請図書など | PDF図書、IFCデータ、入出力基準適合誓約書など |
| 建物形状の確認 | 2D図面を中心に確認 | IFCデータも参考として活用 |
| データ共有 | 個別に図書やデータを提出 | 確認申請用CDEを活用 |
| 修正対応 | 図面を修正して再提出 | BIMデータや申請図書を修正して再提出 |
4. BIM確認申請で効率化できる5つのポイント
BIM確認申請では、主に次の5つの点で業務の効率化が期待できます。
- 申請図書の作成
- 図面間の整合性確認
- 建物形状の確認
- 申請・指摘対応
- 審査期間の短縮
4.1. 申請図書の作成を効率化
BIMを活用するメリットの一つは、同じBIMモデルをもとに平面図・立面図・断面図などの申請図書を作成できる点です。BIMモデルと連動している図面であれば、モデルの修正内容を反映して再出力しやすくなります。
そのため、図面をそれぞれ個別に作成・修正する場合と比べて、変更漏れや図書間の不整合を防ぎやすくなります。図書作成や整合性確認の負担を軽減でき、申請準備の効率化につながることが期待できます。
こうした一貫したプロセスを生かすには、設計の初期段階からBIMモデルを適切に作成しておくことが重要です。そのためには、プロジェクト全体でモデルのレベルや作成範囲、属性情報の入力精度をすり合わせておく必要があります。
4.2. 図面間の整合性確認を減らせる
建物の各面を個別に作図する場合、立面図と断面図で高さや開口部の位置が異なるなど、図面間に不整合が生じることがあります。BIMを活用すれば、一つのモデルから複数の図面を作成できるため、こうした食い違いが起こりにくくなります。
また、入出力基準に従って作成されたBIM由来のPDF図書では、設計者の誓約に基づき、対象となる記載事項について審査時の整合性確認を一部省略できます。さらに、審査者はIFCデータを参考として閲覧できるため、2D図面だけでは把握しにくい建築物の三次元的な形状を理解しやすくなります。
こうした整合性確認の負担が減ることは、特に大規模物件のプロジェクトマネージャーにとって大きなメリットです。図面漏れやデータ誤りのリスクを抑え、手戻りの少ないスケジュールを進めやすくなります。
4.3. 建物形状を確認しやすくなる
部材や空間構成が複雑な建物では、2D図面だけでは形状をイメージしにくい箇所があります。BIM確認申請ではIFCデータを提出するため、審査担当者は3D表示や断面ビューを活用して建物形状を確認できます。
例えば、吹き抜け部分の高さや階段のかさ上げなど、文章や2D図面だけでは理解に時間がかかる要素も、IFCデータを参照することで把握しやすくなります。 その結果、不要なやり取りや補足説明を減らし、審査の効率化が期待できます。
さらに、設計者や施工担当者、設備系の専門家とも同じモデルを視覚的に共有できるため、関係者間のコミュニケーションも円滑になります。これは、プロジェクト全体の品質管理や情報の透明性向上にもつながります。
4.4. 申請・指摘対応を効率化
BIM図面審査では、確認申請用CDEを利用して申請図書などのデータを管理します。国土交通省のマニュアルでは、確認申請用CDEの基本機能として、ファイルのアップロード・ダウンロード、PDFの差分チェック、バージョン管理、チャット、IFC・PDFのビューイングなどが示されています。(参照*2)
また、ICBA確認申請用CDE「ArchSync」では、IFCデータの表示方向の変更や断面表示、プロパティ情報の確認、PDFの複数画面表示などが可能です。(参照*4)こうした機能を利用することで、申請・審査に必要なデータや指摘事項を確認しやすくなります。
プロジェクトマネージャーにとって、指摘対応にかかる時間を抑えることは重要です。BIMモデルとデジタルツールを組み合わせることで、より効率的なコミュニケーションフローを構築できることが期待されます。
4.5. 審査期間の短縮が期待できる
国土交通省は、BIM図面審査による申請者側のメリットとして、整合性の高い申請図書を作成しやすくなることや、審査の効率化によって審査期間の短縮が期待できることを示しています。(参照*1)また、IFCデータを参照することで、審査者が建築物の形状を把握しやすくなることも特徴です。
もちろん、プロジェクトの種類や設計の複雑さ、審査機関の対応状況などによって、審査期間がどの程度短縮されるかは異なります。ただし、図書作成や整合性確認にかかる負担が減ることで、全体のリードタイム短縮も期待できます。
特に大手建築会社などで複数のプロジェクトを抱えている場合、審査期間が長引くと後続の工程にも影響することがあります。BIM確認申請による効率化が進めば、プロジェクト全体をよりスムーズに進めやすくなるでしょう。
5. BIM確認申請のワークフローを効率化するためのポイント

5.1. 入出力基準を早い段階から意識する
BIM図面審査を円滑に進めるには、入出力基準を設計の早い段階から確認しておくことが重要です。ICBAでも、BIM図面審査のポイントの一つとして「BIM図面審査用のBIMデータを作成するための入出力基準」を挙げています。(参照*3)形状・属性・計算などに関するBIMデータへの入力方法や図書への表示・表記方法、PDF・IFCデータの書き出し方法などを確認し、基準に沿って作成します。
設計段階から基準に沿って作業を進めれば、申請直前にモデルを急いで修正する負担を軽減できます。また、途中で出力テストを行って問題点を洗い出しておくことで、後の指摘や修正にも対応しやすくなります。
プロジェクトマネージャーは、設計チームや外部協力会社とも基準について共通認識を持つことが重要です。BIMソフトウェアやBIMツールの使い方のばらつきを抑えることで、一貫性の高いモデルを維持しやすくなります。
5.2. BIMモデルの作成ルールを統一する
BIMモデルの品質は、細かな作成ルールによって左右されます。例えば、属性情報の入力項目や部材の名称、レイヤーの使い方、壁や柱などの作成範囲について、チーム内でルールが統一されていないと、後から整合性の問題が生じやすくなります。
特に確認申請を視野に入れる場合は、必要な寸法や用途区分が明確に分かるようにモデルを作成することが重要です。BIMツールのテンプレートやファミリを社内で標準化し、文字や寸法表現のガイドラインも整備しておくことで、再作業や混乱を避けやすくなります。
また、統一したBIM作成ルールをマニュアル化し、誰でも確認できるようにしておくとよいでしょう。新たにプロジェクトへ参加するメンバーがいる場合でも、一定の品質を保ったBIMモデルを共有しやすくなります。
5.3. PDFとIFCの出力方法を標準化する
BIMデータを作成した後は、PDF・IFCをどのように出力するかについても手順を統一しておくことが重要です。PDFやIFCの出力方法については、入出力基準や審査機関のルールを確認し、社内でも共通の手順で作業できるようにしておきましょう。
また、内部チェックリストを作成し、出力前に確認する項目を整理しておけば、後から修正や再提出が必要になるケースを減らしやすくなります。
このように出力方法を共通化しておけば、設計者・プロジェクトマネージャー・審査担当者の間でファイルを確認しやすくなり、データのやり取りも円滑に進めやすくなります。
5.4. CDEを使った申請フローを事前に確認する
BIM図面審査では、ICBA電子申請受付システムとICBA確認申請用CDEを利用する審査環境が標準とされています。(参照*2)ただし、実際の審査環境や手順は確認検査機関等によって異なる場合があるため、利用するシステムや提出方法を申請前に確認しておくことが重要です。
国土交通省のマニュアルでも、申請・審査環境の準備として「建築確認用CDEの機能理解と関係者による事前協議」が示されています。(参照*2)利用する審査環境の操作方法や提出手順をあらかじめ把握しておけば、申請時の混乱を防ぎやすくなります。
CDEの使い方を理解したうえで、運用ルールを社内の設計担当者やBIMチームに共有しておくことで、実際の確認申請もスムーズに進めやすくなるでしょう。
6. 2029年にはBIMデータ審査へ
国土交通省は、2029年春に「BIMデータ審査」を導入する予定です。BIMデータ審査は、BIMデータそのものを建築確認・検査に用いる仕組みとして検討が進められています。(参照*5)
国土交通省が2026年9月に公表した基本構想では、審査事項に応じてBIMデータを表示する「ビュー審査」と、AIやプログラムを使って審査を補助する「デジタル審査」の導入が示されています。また、対象となる審査項目については、効率化への寄与や検討工数などを踏まえて優先順位を付ける方針です。(参照*5)
今後のBIMデータ審査へスムーズに移行するためにも、BIM確認申請の体制を早めに整えておくことが重要です。建築業界全体でデジタル化が進む中、チームや組織としてどのように準備を進めるかが、将来の競争力を左右するポイントになるでしょう。
7. まとめ
BIM図面審査の導入により、建築確認申請のワークフローは大きく変わりつつあります。BIMモデルを活用することで、PDF図書の作成や図面間の整合性確認、申請・指摘対応など、さまざまな業務の効率化が期待できます。
特にCDEを活用すれば、ファイルの受け渡しや管理をオンライン上で一元化し、審査担当者とのやり取りも進めやすくなります。一方で、BIMを導入すればすべてが自動化されるわけではなく、人による最終確認やBIMモデルとPDF図書の整合性を保つ取り組みは引き続き重要です。
2029年にはBIMデータ審査の導入が予定されており、BIMをどのように業務へ取り入れるかは、今後ますます重要になるでしょう。将来を見据えて社内ルールや運用手順を整え、BIMソフトウェアやプラットフォームを適切に活用することが、確認申請を含む業務の効率化とプロジェクトの品質向上につながります。
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<参考文献>
(*1)国土交通省「2026年春、建築確認におけるBIM図面審査を開始!」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001757621.pdf
(*2)国土交通省「BIM図面審査 申請・審査マニュアル」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001990519.pdf
(*3)ICBA「BIM審査ポータルサイト」
https://bimpermit.jp/
(*4)ICBA「ICBA確認申請用CDE」
https://bimpermit.jp/cde/
(*5)国土交通省「建築BIMデータを用いた審査開始に向け基本構想をとりまとめました」
https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_001151.html
