BIMを使った4Dシミュレーションとは?運用メリットなどを解説
BIMはそのポテンシャルや運用方法を正しく理解しておくことで、極めて利便性に優れた技術として運用することができます。
ただ、その使い方についてはまだ十分に知られていない部分も多く、CADとは異なる運用方法をマスターすることで、強力な生産性や品質向上が可能です。
この記事では、BIMの代表的な運用方法でもある4Dシミュレーションについて、その概要や具体的なメリット、そして4Dシミュレーションをさらに発展させた活用方法を紹介します。
目次:
- BIMの強み
- BIMを使った4Dシミュレーションとは
- BIMの4Dシミュレーションの運用メリット
- BIMの5D・6D・7D活用との違い
- BIMの4Dシミュレーションを実現可能なNavisworksについて
BIMの強み
そもそもBIMとは従来の3Dモデリングとは異なり、あらゆる設計情報を3Dモデルの中に内包できる技術です。
これまで3Dモデルと設計図は別個に運用する必要があり、それぞれを管理する際の手間が設計業務の負担となってきましたが、BIMにおいてはそれが解消されています。
BIMを活用することは、こういった効率的な情報共有を促す上で強みを発揮します。設計から施工、そして維持管理に至るまで、一気通貫で同じデータを使い続けられるのがメリットです。
また、BIMモデルが有する豊富な情報量を使って、高度なモデル活用を実現することもできます。BIMモデルを使った高度なシミュレーションの実践や、実物と差分のないモデルデータを使ったVR体験など、従来の3Dモデルでは難しかったアプローチを実現します。
BIM普及の課題となっているのが、BIMの活用方法についての認知度の低さです。BIMの使い方や可能性が広く共有されれば、BIM導入がさらに促進され、BIM活用のメリットがより大きくなっていくことが期待できます。
BIMを使った4Dシミュレーションとは
BIMの運用方法にはさまざまな取り組み方がありますが、中でも近年注目を集めている手法の一つとして、4Dシミュレーションが挙げられます。
4Dシミュレーションとは、3Dの概念に時間軸の概念を付与し、より流動的なBIMデータ活用を促進しようという取り組みです。
これまでの3Dモデル運用においては、立体モデルを制作して、建設予定地の写真やモデルに重ね合わせて配置したり、3D空間を擬似的に体験したりするのにとどまっていました。
しかしBIMを使った4Dシミュレーションは、現実世界同様に時間の概念をモデルに与え、時間経過によって得られる変化を体験することができるようになります。
時間経過による4Dシミュレーションの実現は、あらゆる設計情報がモデルに統合されているBIMモデルだからこそ可能になるのであり、従来の3Dモデルではそれを再現することは極めて困難でした。
BIMの4Dシミュレーションの運用メリット
BIMを使って4Dシミュレーションを実現することは、具体的にどのようなメリットを現場にもたらすのでしょうか。ここでは主な利点をまとめて解説します。
施工スケジュールを最適化できる
BIMを使った4Dシミュレーションの実現は、施工スケジュールの最適化する上で重要な役割を果たします。
設計モデルを4Dシミュレーションにかけることで、施工にかかる具体的な時間を極めて正確に計算し、スケジュールを算出することができるからです。
これまで、施工スケジュールはある程度余裕を持たせて設定することが一般的でしたが、この場合工期が無駄に長くなってしまうため、負担の増大や完成の遅れが発生する要因にもなっていました。
4Dシミュレーションを導入することで、極めて正確な工期の算出、そして適切な業務フローを算出できるようになることから、施工スケジュールを最適化し、アップデートするのに役立ちます。
コスト削減につながる
4Dシミュレーションによって施工スケジュールを最適化できれば、工事全体のコスト削減にも繋がります。
余計に工期を伸ばす必要がなくなりますし、施工に必要な資材の確保も余剰の発生を抑えられるため、人件費と資材費の両方をカットできるからです。
時間的・経済的負担を抑えた無駄の少ない施工を実現し、組織の収益性を改善できるでしょう。
設計品質の向上に貢献する
4Dシミュレーションは、設計品質の向上においても良い影響をもたらしてくれます。
時間軸に基づくシミュレーションを実行することで、建物の劣化具合を検証したり、大きな負担がかかりやすい箇所を発見したりするのに役立ちます。
4Dシミュレーションの結果をもとにした、さらに質の高い設計へ役立てられるでしょう。
BIMの5D・6D・7D活用との違い
BIMを使った4Dシミュレーションは画期的ですが、より高度な運用方法として5D・6D・7Dといった技術活用も可能です。ここではそれぞれの技術がどのような可能性をもたらしてくれるのか、確認しましょう。
BIMの5D活用
BIMの5D活用とは、4Dの概念にコストの概念を加えたものです。4D情報をもとにコストの検証を正確に実施することで、プロジェクト全体の費用を事前に検証したり、リソースの最適化を実施したりします。
BIMの6D活用
BIMの6D活用は、5Dまでの概念にエネルギーの概念を加えたものです。設計段階で施工や維持管理の段階でどれくらいのエネルギー消費が発生するのかを確認し、エネルギー消費の小さい工事のあり方や建物の運用方法を検討します。
SDGsの達成が企業価値や建物の価値にまで影響を与えるようになっていることから、近年注目度が高まっている概念です。
BIMの7D活用
BIMの7D活用とは、6Dまでの概念に維持管理の概念を加えた考え方です。
これまで、設計データは施工段階までの使用を想定されていたため、維持管理においては新たに図面を作成する必要がありましたが、BIMは設計時に作成したモデルを、維持管理にまで適用することができます。
BIMの7D活用を実現することで、建物の維持管理における負担を大幅に削減し、業務の効率化やコストの削減、そして建物の寿命の延長にも貢献します。
BIMの4Dシミュレーションを実現可能なNavisworksについて
BIMは従来の3Dモデルには難しかった4Dシミュレーションを実現できることが強みと言えますが、それを支援するソフトとして重要な役割を果たすのがNavisworksです。
NavisworksはBIMモデルを検証するのに特化したレビュープラットフォームで、4Dシミュレーションに対応しています。
着工前にBIMモデルを同製品に読み込ませることで、データの統合やシミュレーションといった処理を実行することが可能です。
建設設計はもちろん、土木建設にも対応していることから、幅広いBIM利用の場で活躍できるソフトと言えます*1。
まとめ
この記事では、BIMを使った4Dシミュレーションについて解説しました。4Dシミュレーションは従来の3Dモデル運用では実現できなかった、さまざまなメリットをもたらしてくれる可能性を秘めています。
4Dシミュレーションが秘めているポテンシャルへの理解を深め、BIM運用の機会を増やしていきましょう。
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出典:
*1 Autodesk「Navisworks」