Autodesk Vault2026最新バージョンアップまとめ|新機能と改善点をわかりやすく解説
1. はじめに
Vaultのバージョンアップは、設計現場にとって無視できないテーマになっています。製造業のエンジニアにとっては、CADソフトとの連携や設計データの管理を「どこまで効率化できるか」が大きな課題です。
その中でもAutodesk Vaultは、InventorやAutoCADと密接に連携し、設計データを一元管理できるツールとして広く使われています。うまく活用できれば、図面や3Dモデルの管理にかかるムダな時間を減らし、日々の作業負荷を大きく軽減することが期待できます。
一方で、Vaultをバージョンアップするとなると話は別です。
「Vault データベースのバックアップはいつ、どう取ればいいのか」
「サーバーとクライアントのバージョンはどこまで合わせないといけないのか」
といったポイントを曖昧なまま進めると、リビジョン履歴がうまく引き継がれなかったり、ライフサイクル管理で思わぬエラーが出たりするリスクがあります。
そこで本記事では、Autodesk Vault の最新バージョン(ここでは便宜的に「Vault 2026」と呼びます)を例に、新機能や改善点の概要とバージョンアップ時の基本的な考え方をわかりやすく整理します。中学生でもイメージできるよう、専門用語はできるだけかみ砕いて説明していきます。
また、Vaultのバージョンアップは、単にソフトを新しくするだけではありません。データ管理の効率化に加え、リモート環境での共同作業のしやすさや、プロパティ管理の見通しの良さなど、チーム全体の働き方にも大きな影響があります。
この記事では、
- なぜバージョンアップが重要なのか
- 新バージョンでどんなメリットがあるのか
- 失敗しないためにどんな手順・注意点があるのか
を順を追って解説していきます。Vault運用をこれから見直したい方も、すでに使っていて不安を感じている方も、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
2. Autodesk Vaultのバージョンアップの基本
Autodesk Vaultは、CADデータや関連文書を一元的に管理するためのPDM(Product Data Management)システムです。複数人で設計作業を進める際に欠かせないツールであり、図面や3Dモデル、付随するドキュメントを安全かつ確実に管理できます。特に、離れた拠点からでも同じデータを参照できる点や、リビジョン管理・ライフサイクル管理をシステム上で統合できる点は、Vaultが広く利用されている理由のひとつです。
Vaultは毎年のように新バージョンが提供されており、新しいリリースでは操作性の向上、検索精度の改善、連携機能の強化など、実務の負担を軽減するアップデートが多数盛り込まれています。ただし、バージョンアップを実施する際には、サーバーとクライアントのバージョン整合に特に注意が必要です。一般的に、クライアントがサーバーより古い場合は一定範囲で接続が許容されますが、サーバーより新しいクライアントは接続できないため、双方のバージョンが揃っていることが安定運用の前提となります。
また、Vaultを最大限に活用するには、Autodesk Inventor や AutoCAD との連携が欠かせません。しかし、これらのCADソフト側のバージョンが古すぎる場合、Vaultの最新機能が動作しなかったり、エラーが生じる可能性があります。アップデート前には、Inventor / AutoCAD の対応バージョンを事前に確認し、Vaultサーバーを更新する際は正しい手順で進める必要があります。
現場でのバージョンアップ計画では、Autodesk製品のサポート期間や、自社の運用スケジュールも十分考慮することが重要です。Vaultの更新だけでなく、周辺アプリケーションのバージョンとの兼ね合いも踏まえて慎重に計画を立てれば、トラブルを未然に防ぎ、よりスムーズな運用につなげることができます。
3. 最新バージョンの新機能
Autodeskの公式情報によると、「Vault 2026」では複数の重要な機能追加・改善が行われています。具体的には、プロジェクトとデータを安全に長期保管できるアーカイブ機能、削除ファイルを一時的に保持するゴミ箱機能、外部システムへ直接アクセスできるハイパーリンク付きユーザ定義プロパティ、コピー設計機能の強化、さらに新しいVault Data APIやアカウント自動無効化機能など、データ管理とコラボレーションをより効率的に行える仕組みが多数取り入れられています。
ここでは、その中でも特に実務で役立つ4つのポイントに分けて紹介します。全体的な傾向としては、設計データの整理・保全をしやすくするだけでなく、誤操作やアクセス権管理のリスクを抑え、Vaultをチーム全体の運用基盤としてさらに使いやすくする方向で改良が進められています。
3.1. プロジェクトとデータのアーカイブ
「プロジェクトとデータのアーカイブ」は、Vault 2026で新たに追加された目玉機能のひとつです。完了済みの案件や現在参照しないプロジェクトをアーカイブとしてまとめて保存することで、日常の作業領域をシンプルに保てる仕組みです。
アーカイブされたデータは通常の検索結果から外れ、日々の作業で扱うデータ量を実質的に減らすことができます。一方、必要になった場合はアーカイブから復元できるため、「削除はしたくないが一覧に常に表示されると邪魔」という悩みを解消してくれます。
特に複数案件を並行して進める設計部門では、定期的にアーカイブ運用を取り入れることでVaultの動作が軽くなり、検索性や操作性の向上にもつながるでしょう。
3.2. ゴミ箱機能による誤削除対策
Vault 2026では、ファイル削除後の安全性を大きく向上させる「ゴミ箱(Trash Bin)」機能が新しく搭載されました。
従来は、一度削除したファイルを復元するには管理者によるバックアップからの復旧が必要で、利用者側では対処が難しい状況でした。しかしゴミ箱機能により、削除されたファイルが一定期間一時保管され、ユーザー自身が必要に応じて元に戻せるようになっています。
また管理者は保持期間や削除ルールを細かく設定できるため、不要なデータは適切なタイミングで自動的に完全削除しつつ、誤操作やヒューマンエラーにも備えられます。現場の運用負荷を大幅に減らす、実用性の高い改善点といえます。
3.3. ハイパーリンク付きプロパティとコピー設計の強化
Vault 2026では、ユーザ定義プロパティにURLやメールアドレスなどを設定し、そのままクリックして外部システムへアクセスできる「ハイパーリンク付きユーザ定義プロパティ」が追加されました。
これにより、Vault内の部品情報から直接PLMシステムの詳細ページへ移動したり、社内ポータルの資料を参照したりできるなど、システム間の移動が非常にスムーズになります。
さらに、「コピー設計(Copy Design)」機能の強化により、ライブラリファイルの意図しない複製を防ぎつつ、必要な設計データだけを効率的に再利用できるようになりました。類似設計をベースに新製品を作りたい場合などに、作業効率が大きく向上します。
3.4. Vault Data APIとアカウント自動無効化
Vault 2026では、外部システムとの連携をより柔軟にするために「Vault Data API」が新たに案内されています。Vault内のデータへREST形式でアクセスできるクラウドベースのAPIで、ERP・PLM・社内管理システムなどとの情報連携を自動化しやすくなります。
また、「アカウント自動無効化(Automatic Account Disablement)」機能により、ユーザーアカウントに有効期限を設定し、期限が過ぎると自動的に無効化される仕組みも追加されました。退職者や外部協力者のアカウント削除漏れを防げるため、セキュリティと管理効率の大幅な向上が期待できます。
これらの改善により、Vaultは単なるデータ保管ツールではなく、企業全体の情報システムと連携する中核的なプラットフォームとして進化しています。
4. バージョンアップによる実務上のメリット
ここからは、Vaultをバージョンアップすると実際にどのようなメリットが得られるのかを、4つの視点から詳しく見ていきます。Vaultのアップデートによる効果は決して抽象的なものではなく、作業時間の短縮やヒューマンエラーの削減など、日々の業務改善に直結する内容が多く含まれています。
特に製造業では、設計変更の頻度が高く、扱うドキュメントの種類も増え続ける傾向があります。Vaultを最新バージョンへ更新することで、検索のスピードや履歴管理のわかりやすさが向上し、業務全体の生産性や安全性が高まる効果が期待できます。
4.1. 作業時間の短縮
Vaultのバージョンアップで特に恩恵が大きいのが、検索機能を中心とした操作性の向上です。新しいバージョンが出るたびに検索インデックスやフィルタ機能が強化されるため、大規模なアセンブリや大量の図面を扱っていても、部品番号やプロパティ情報から素早く目的のデータにたどり着けます。
さらに、Vaultのライフサイクル管理を使った自動承認フローにより、従来手作業で更新していたステータス変更を自動化できるようになります。承認者が大量のドキュメントを1つずつ確認する手間が減り、大幅な時間削減につながる点は大きな利点です。
また、UI改善により操作がわかりやすくなっているため、初心者や中級者でも習熟スピードが速まり、教育コストの削減にも寄与します。結果として、チーム全体がより価値の高い作業に集中でき、工数削減にも直結します。
4.2. 設計ミスの削減
設計ミスは後工程で大きな手戻りにつながるため、早期の防止が重要です。Vaultのバージョンアップにより、リビジョン管理やプロパティの整合性チェックが強化されることで、こうしたトラブルを未然に防ぐ効果が高まります。
特に、ファイルが最新状態でない場合や、リビジョン・ステータスに矛盾がある場合には、ライフサイクル設定にもとづいてエラーや警告を通知してくれるため、更新漏れにすぐ気づけます。これらの仕組みにより、メンバー全員が正しいデータを共有しやすくなり、設計ミスの発生を大きく抑えられます。
加えて、InventorやAutoCADとの連携によって図面やモデルの状態が都度同期されるため、古い部品ファイルを誤って参照するリスクも低減します。適切にライフサイクルを設定すれば、Vault側が自動でエラーチェックを行ってくれるため、現場の品質向上にもつながります。
4.3. 共同作業・リモート対応の強化
Vaultのバージョンアップでは、共同作業性やリモート対応機能の拡充も大きなテーマとなっています。モバイルアプリやWebクライアント(Thin Client)が使いやすく改良され、オフィス外でも図面確認やコメント作成などの作業が容易に行えるようになりました。
リモートワークが一般化した今、CAD担当者が離れた場所から同じデータにアクセスする機会は増えています。Vaultのリモート対応が強化されることで、VPN経由でも安全にデータ閲覧ができ、コミュニケーションのズレも減らすことができます。
また、プロジェクト単位で柔軟にアクセス権限を設定できるため、「社内ユーザーは編集可」「サプライヤーは閲覧のみ」など、業務に合わせた権限設計が容易です。社外パートナーとVaultを通じて効率よく情報共有したい企業にとっては、非常に大きなメリットとなります。
4.4. セキュリティ・安定性の向上
Vaultは機密性の高い設計データを扱うため、セキュリティ面の強化は非常に重要です。最新バージョンでは、対応OSやデータベースの更新に加え、各種セキュリティパッチも適用されており、脆弱性リスクの低減につながります。
バックアップ/復元機能も継続的に改善され、サーバーコンソールからデータベースとファイルストアをまとめてバックアップできるなど、運用管理しやすい環境が整えられています。これにより、万が一の障害時にも迅速かつ確実に復旧できる体制を作りやすくなります。
大規模な設計部門ではサーバー負荷が高くなりがちなため、最新バージョンで動作環境を整え、ログ監視やサーバー状態の確認を行うことで、より安定した運用が可能になります。Vaultが安全で信頼性の高い運用基盤へ進化していることは、作業者にとって大きな安心材料となり、不要なトラブル対応の時間削減にもつながるでしょう。
5. バージョンアップ時の注意点
Vault バージョンアップには多くのメリットがありますが、その一方で、更新作業そのものには一定のリスクも伴います。準備が不十分なまま突発的にアップデートを行うと、データ破損やシステム停止といった重大なトラブルにつながりかねません。
ここでは、特に押さえておきたい5つの注意ポイントを取り上げます。サーバーとクライアントの更新順序、混在環境の扱い方、Inventor / AutoCADとの連携、バックアップの運用方法などを整理し、正しい手順で進めることでトラブルを未然に防ぐことを目指します。あわせて、担当者だけで抱え込まず、組織全体で協力する体制づくりの重要性についても意識しておきましょう。
5.1. サーバーからクライアントへの順序での更新
Vault環境をバージョンアップする際は、「サーバー → クライアント」という順番を厳守することが基本です。これは、システム全体としての整合性を保ち、想定外の通信エラーを防ぐために欠かせないルールです。
もしクライアント側を先に最新バージョンへ更新してしまうと、旧バージョンのサーバーと正常に通信できず、Vaultに接続できない、あるいは特定機能が動作しないといった問題が発生する恐れがあります。そこで、まずサーバーを最新バージョンにアップデートし、動作確認が取れてから、クライアントPCを順次更新していく流れを徹底する必要があります。
大規模ネットワークで台数が多い場合は、初めに一部のテストクライアントだけを更新し、接続状況や動作を確認する「試験運用」を挟むと安心です。問題がなければ、段階的に対象を広げていく方法が有効です。多くの企業では、業務への影響を最小限にするため、週末や連休を利用してサーバー更新とクライアント展開を行うケースが増えています。
5.2. データベースのバックアップの重要性
Vault バックアップ運用のルールを守らずにバージョンアップを実施することは、非常に大きなリスクを伴います。アップデート中に障害が発生した場合、Vaultデータベースやファイルストアが破損し、復旧に膨大な時間とコストがかかる可能性があるためです。
そのため、現行のVaultサーバーが安定稼働しているタイミングで、必ずフルバックアップを取得しておきましょう。保存すべき対象は、ファイルストアとSQLデータベースの両方です。ライフサイクル設定やカスタムプロパティ、ユーザー情報なども一緒に保全されるように、正しい手順でバックアップを行うことが重要です。
また、バックアップデータの保管場所にも注意が必要です。同一サーバー上のフォルダや短期間で上書きされるストレージに置くのではなく、社内ネットワーク上の別サーバーや信頼性の高い外部ストレージに逃がしておくことが望ましいでしょう。アップデート前のバックアップ取得に加え、作業後の定期バックアップスケジュールを見直し、セキュリティ対策と合わせて運用を強化することが、長期的な安心につながります。
5.3. Inventor / AutoCADとのバージョン整合
Autodesk InventorやAutoCADとの連携は、Vaultを導入する大きな理由のひとつですが、その分、ソフトウェア同士のバージョン整合を適切に管理することが非常に重要になります。
新しいVaultに対して、InventorやAutoCADが古すぎるバージョンのままだと、一部機能が使えない、アドインが動作しない、エラーメッセージが頻発するといった問題が発生することがあります。逆に、CAD側だけを先に最新バージョンへ上げてしまい、Vault側が追いついていないケースでも、連携機能に支障が出る可能性があります。
このため、Autodesk製品のリリースサイクルやサポート情報、互換性マトリクスなどをあらかじめ確認し、自社の環境にとって無理のないアップデート計画を立てることが大切です。どうしてもバージョン差が残る状態で運用する必要がある場合でも、本番適用前にテスト環境で必ず動作検証を行い、問題の有無を確認しておきましょう。特定バージョンでしか使用できないアドインや機能がある場合は、どの時点で何を優先するか、社内で合意形成をしておくことも重要です。
5.4. アドイン・カスタマイズ環境の動作確認
Vaultを長年運用している組織では、標準機能に加えて、プロパティ管理を拡張するカスタムスクリプトや、独自のアドインを組み合わせて使っているケースが少なくありません。こうしたカスタマイズは業務効率化に大きく貢献する一方で、バージョンアップ時のリスク要因にもなり得ます。
最新バージョンのVault環境で、既存のアドインやスクリプトがそのまま動作するとは限らないため、事前に各ベンダーや開発元が提供している対応情報を確認しておく必要があります。とくに高度にカスタマイズされた環境では、些細な仕様変更が既存フローに影響する場合も多いため、丁寧な検証が不可欠です。
動作確認を行う際は、テスト用に複製したVault環境を用意し、本番データを使わずに検証できるようにしておくと安心です。そのうえで、「万が一アドインの一部が使えなくなっても業務が回るか」「一時的に手作業に置き換え可能か」といった観点から、影響範囲をあらかじめ洗い出しておきましょう。こうした準備を怠ると、新機能を取り入れるどころか、既存の業務フローそのものが混乱するリスクがあるため注意が必要です。
5.5. 混在環境のリスク
社内の一部PCだけを先行してアップデートする「混在環境」は、一見すると柔軟な運用に見えますが、Vault サーバーバージョンとクライアントバージョンのズレを生みやすく、トラブルの温床にもなりかねません。バージョンが一致していないクライアントからは、Vaultに接続できなかったり、特定の機能が制限されたりといった不具合が発生することがあります。
どうしても部署や拠点ごとに時期を分けて更新する場合は、同期して作業するメンバー同士や、同じプロジェクトに関わるチーム単位でアップデートのタイミングを揃えるなど、グループ分けとスケジューリングを明確にしておくことが重要です。混在状態が長く続くほど、誰がどのバージョンを使っているのか把握しづらくなり、コミュニケーションエラーやデータ更新漏れが増える傾向があります。
Vault バージョンアップのメリットを最大限享受するには、できるだけ短い期間で社内全体のバージョンを統一することが理想です。そのうえで、万が一接続エラーや想定外の不具合が出た場合に備えて、ロールバック手順や代替運用をあらかじめ用意しておくと、安心してアップデートに踏み切ることができるでしょう。
6. バージョンアップを成功させるための手順

これまでの注意点を踏まえたうえで、ここではVaultを最新バージョンへアップデートする際の全体的な流れを整理して説明します。特に、データベースのバックアップやサーバー更新はミスが起きやすい工程のため、段階ごとに丁寧に確認することが欠かせません。
以下にまとめる内容はあくまで基本的なプロセスですが、企業ごとのITポリシーやサーバー構成に応じて適宜調整が必要です。アップデート後には必ず動作確認と運用チェックを行い、問題がないことを確認して初めて「バージョンアップ完了」となります。では、順番に見ていきましょう。
6.1. 事前チェックリスト
作業に入る前に、まずはOSやSQL Serverのバージョン、必要なディスク容量、ネットワーク帯域など、Vaultが求めるシステム要件を整理します。特に、導入しているサードパーティアドインが新バージョンに対応しているかどうかは、必ず確認しておくべきポイントです。
さらに、アップデート実施日について社内の関係者へ事前通知を行い、作業中にVaultへアクセスしないよう体制を整えておくことも重要です。複数拠点がある企業では、タイムゾーンや休日の違いを考慮したスケジュール調整が欠かせません。
また、アップデートに伴う予想ダウンタイムを明示し、製造や設計の進行に影響が出ないよう調整しておくことで、作業当日の混乱を防げます。こうした事前の準備とリスク把握が、アップデート全体の成功率を高める鍵となります。
6.2. バックアップの取り方
Vault バックアップの基本は、SQLデータベースとファイルストアを同時に確保することです。これを簡単に実施できるのが、Autodesk Data Management Server Console(Vault サーバーコンソール)に搭載されている「バックアップおよび復元」機能です。
バックアップを取る際は、保存先を別のサーバーや外部ドライブに指定し、障害発生時にも確実に復旧できるようにしておくことが大切です。クラウドストレージへのバックアップを併用すれば、さらに安全性を高められます。
また、大幅なバージョン変更が発生するタイミングでは、古いバックアップも一定期間残しておくと、万が一の際に役立ちます。実際に復元テストを行い、復旧手順に問題がないことを事前に確認してからアップデート作業へ移ることが理想的です。
6.3. サーバー更新とウェブサイトの確認
バックアップが正しく取得できたら、いよいよVaultサーバーの更新へ進みます。まずは現行のVaultサービスを停止し、最新バージョンのインストーラーを実行します。画面の案内に従ってSQLデータベースの更新とサーバープログラムの置き換えを進めていきます。
アップデート完了後は、WebブラウザからVaultサーバーのサイト設定が正しく反映されているかを確認します。サーバー再起動を行い、イベントログにエラーが出ていないかをチェックすることも重要です。
また、クラウドサービスと連携している環境では、APIトークンや接続先設定が更新後も正常に残っているか必ず確認しましょう。これらのチェックが確認できて初めて、クライアント側の更新に進む準備が整います。通信テストを小規模に行い、正常に接続できるか確かめておくと安心です。
6.4. クライアント更新の流れ
サーバー更新が完了したら、次は各ユーザーのクライアントソフトをアップデートします。自動配布ツールを使う場合は、事前に更新パッケージを準備しておくことで、作業が大幅に効率化されます。
インストール時には、サーバーのIPアドレスやDNS名など、接続に必要な設定が正しく入力されるよう注意を促します。アップデート直後は初回接続時に同期処理が走る可能性があるため、ネットワーク負荷にも配慮してタイミングを調整しましょう。
特殊な環境でVaultを使っているユーザーがいる場合、追加のマニュアル作業や設定ファイル更新が必要になることもあります。大規模環境では数百台規模の更新となる場合もあるため、サポート窓口を設け、問い合わせに迅速に対応できる体制を整えておくと作業が円滑に進みます。
6.5. 完了後の動作テスト
最後のステップは、Vaultが正常に動作しているかを確認する動作テストです。最低限、以下のポイントをチェックすると良いでしょう。
- Vaultへのログインやデータ閲覧・検索・ダウンロードが問題なく行えるか
- InventorやAutoCADとの連携が正常に動作し、図面登録やリビジョン管理が正しく機能しているか
- ライフサイクル管理やカスタムプロパティの制御が想定どおり動いているか
もし不具合が見つかった場合は、ログファイルを確認したり、必要に応じてバックアップから復元する判断を行います。ただし、事前準備が十分であれば深刻な問題に発展するケースは少ないはずです。
すべての検証が完了し、ユーザーが日常業務を問題なく行える状態になったら、ようやくバージョンアップは正式に完了となります。このプロセスを丁寧に進めることで、更新作業に伴うリスクを大幅に抑えられるでしょう。
7. 旧バージョンからの移行ポイント
Vaultを長期間使用している環境では、旧バージョンがサーバーOSのサポート切れを迎えていたり、データベース仕様が大きく変わっていたりする場合があります。そのため、最新バージョンへ一気にアップデートできず、複数バージョンを段階的に経由して移行しなければならないケースも少なくありません。特に古い環境ほど依存関係が複雑になりやすいため、計画的なアップデート計画が必要になります。
また、リビジョンスキームやプロパティ設定が以前の形式のままでは、最新Vaultで追加された便利な機能を活用しきれない可能性があります。そのため、乗り換え前にカスタム項目やライフサイクル定義を一度棚卸しし、必要に応じて最新仕様に合わせて整理・再構築しておくことが大切です。これにより、パフォーマンス向上や運用トラブルの抑制につながります。
さらに、アップグレードパスが複雑な場合は、手順を誤ると予期しないエラーが発生しやすいため、必ずテスト環境で事前に移行シミュレーションを行いましょう。Autodeskのサポート文書やコミュニティフォーラムには、過去の事例や移行時の注意点が多数掲載されているため、それらを参考にすることでリスクを大幅に抑えられます。
なお、移行期間中に新旧バージョンを併用する状況になると、同じデータを重複して管理しなければならず、バージョン整合の崩れやデータ更新漏れを招く恐れがあります。こうした混在環境は可能な限り短期間にとどめ、新バージョンへ一本化するスケジュールを明確にして移行作業を進めることが、安定運用への近道となるでしょう。
8. まとめ
本記事では、Autodesk Vaultのバージョンアップについて、その基本手順から最新バージョンの注目機能、さらに作業時に押さえるべきリスクと注意点まで、幅広く解説してきました。サーバーとクライアントのバージョン整合、バックアップ運用の徹底、Inventor / AutoCADとの連携確認など、どれも日々の設計業務に直結する重要なポイントです。
Vaultを最新バージョンへ適切に更新することで、検索性能や操作性の向上、共同作業のスムーズ化、セキュリティ強化といった具体的なメリットが得られます。こうした改善は、設計チーム全体の効率化だけでなく、ミス防止やトラブル削減にもつながり、結果として業務品質の向上に直結します。
その一方で、アップデートを成功させるには、事前準備の充実が欠かせません。チェックリストを作成し、バックアップを確実に取得し、サーバー → クライアントの順で段階的に更新するなど、基本プロセスを丁寧に進めることがトラブル回避の鍵となります。
製造業界では、競争力向上やコスト削減が常に求められ、CADソフトとの連携を含む設計データ管理の最適化がますます重要になっています。Vaultを最大限活用するには、単にバージョンアップするだけでなく、運用ルールや教育体制を見直し、継続的に最適化していく姿勢が欠かせません。
Autodesk Vaultは今後も新機能や改善が随時提供されると見込まれており、情報収集を怠らず、自社の運用に合わせたタイミングでアップデートを取り入れることが大切です。的確なバージョン管理と継続的な改善を積み重ねることで、Vaultのポテンシャルを最大限に引き出し、組織全体の生産性向上につなげていきましょう。
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<参考文献>
Vault ヘルプ | Autodesk





