Autodesk Vault 2022 徹底解説|Inventor連携強化・UI改善ポイントをまとめて紹介
1. はじめに
設計データを安全に管理し、チームで効率よく作業を進めるためには、信頼できるデータ管理ツールが欠かせません。Autodesk Vault 2022(以下、Vault)は、その代表的な選択肢のひとつです。本記事では、Vault 2022 の基本機能から、Inventor との連携、刷新された Thin Client、そしてモバイルアプリまで、実務で役立つポイントをわかりやすく解説します。
Vault は、図面や 3D モデル、PDF などの設計データをサーバー上でまとめて管理できる PDM(製品データ管理)ツールです。チェックイン/チェックアウトによるバージョン管理や、関連ドキュメントの紐づけなど、設計現場でありがちな「どのデータが最新かわからない」問題を解消してくれます。
Vault 2022 は、2021 年 3 月 31 日付のリリースノートが公開されたバージョンで、次のような領域で機能強化が行われています。
- Inventor 2022 の「モデル状態(Model States)」対応や重複検索の強化など、生産性を高めるアップデート
- ブラウザから使える新しい Thin Client の導入と、Forge Viewer による 2D/3D プレビューの強化
- Vault モバイルアプリによる、場所を選ばないデータ閲覧・レビューのサポート
- 認証方式・ユーザー管理・レプリケーションなど、管理者向け機能の改善
この記事では、これらの公式ドキュメントで確認できる内容をもとに、Vault 2022 がどのように業務の効率化に役立つのかを整理して紹介します。
Vault をこれから使い始める方はもちろん、既に利用中の方の理解を深めるヒントとしても活用していただければ幸いです。
2. Autodesk Vault 2022 の概要
まずは、Vault 製品のラインアップの中で Vault 2022 がどのような位置づけにあるのかを整理しておきましょう。
Vault は、Autodesk が提供する設計データ管理ツールで、用途に応じて Basic / Workgroup / Professional など複数のエディションが用意されています。Vault 2022 はそのうちの 1 世代で、既に 2023 以降の後継バージョンが公開されていますが、安定性や既存ワークフローとの相性から、現在も多くの企業で運用されています。
公式ヘルプやリリースノートを確認すると、Vault 2022 では特に次の 3 つのテーマが重視されていることが分かります。
- Inventor を中心とした設計現場の生産性向上(モデル状態対応や重複検索の強化など)
- Web ブラウザやモバイルからのアクセス性向上(新 Thin Client と Vault モバイルアプリ)
- 管理者視点での運用性向上(認証、レプリケーション、ユーザー管理の改善)
2.1. 主要リリース情報とシステム要件
Vault 2022 は、2021 年 3 月 31 日付のリリースノートが公開されており、その後も 2022.1 / 2022.2 などのアップデートで不具合修正や細かな改善が続けられています。導入する際は、本体をインストールしたあと最新アップデートを適用することで、安定性や操作性がより向上します。
動作環境について、公式のシステム要件を簡潔にまとめると次のとおりです(詳細は Autodesk のサポートページをご確認ください)。
● 対応 OS(サーバー)
- Windows Server 2016 Standard / Datacenter
- Windows Server 2019 Standard / Datacenter
- Windows 10 Pro / Enterprise(※ Vault Basic のみサーバーとして使用可)
● 対応 OS(クライアント)
- Windows 10 Pro / Enterprise(64 ビット)
● データベース
- Microsoft SQL Server 2016 / 2017 / 2019
(Express / Standard / Enterprise のいずれもサポート)
● Thin Client の対応ブラウザ
- Microsoft Edge
- Google Chrome
- Mozilla Firefox
- Apple Safari など主要ブラウザ
いずれも 64 ビット OS のみサポートであり、サーバー・SQL Server・クライアントの組み合わせは Autodesk が公開している対応表に従う必要があります。
Vault のバージョンアップや新規導入を行う場合は、以下のような流れが基本となります。
- 既存の Vault データベースとファイルストアのバックアップ
- サーバー OS、SQL バージョン、クライアント OS などの互換性チェック
- サーバー側コンポーネントをインストールし、必要に応じてデータベースをアップグレード
- 各端末に対応バージョンのクライアントアプリをインストール
これらのステップは Vault 2022 に限らず、Vault 全体に共通する標準的な導入手順と考えておくとよいでしょう。
2.2. バージョン管理とドキュメント管理の基本
Vault の中心となる役割は、設計データの バージョン管理 と ドキュメント管理 です。Vault 2022 でもこの基本思想は変わっていません。
- チェックアウト
編集したいファイルを「自分が作業中」と宣言し、他のユーザーが誤って上書きしないようロックする操作。 - チェックイン
編集が完了したら Vault サーバーへ変更内容を反映し、新しいバージョンとして履歴に登録する操作。 - バージョン履歴
過去の状態をいつでも参照でき、必要に応じてロールバック(巻き戻し)も可能。 - 関連ドキュメントの紐づけ
3D モデル、2D 図面、PDF、仕様書、部品表など、プロジェクトに関わるさまざまなファイルを一つのまとまりとして管理可能。
こうした仕組みによって、「誰が・いつ・どのようにデータを変更したか」 が明確になり、特に複数人で開発を進める場合に大きな力を発揮します。ローカルフォルダにデータが散らばってしまうような管理方法よりも、後追い確認やトレーサビリティの確保が格段に容易になります。
3. Inventor との連携強化

続いて、Vault 2022 で特に強化されたポイントのひとつである Autodesk Inventor との連携機能について、順を追って見ていきます。
Inventor は 3D 機械設計向けの CAD ソフトで、多数の部品やアセンブリを扱う場面では、ファイル構造や状態をきちんと整理することが欠かせません。Vault を併用することで、Inventor で作成したモデルや図面をサーバー側で統合管理でき、データの所在やバージョンを迷わず把握できるようになります。
3.1. 連携強化の背景とメリット
Vault 2022 では、「Inventor 2022 の新機能をどれだけ活かせるか」が重要なテーマのひとつとして位置づけられています。公式ヘルプによれば、特に以下の 3 点が連携面での強化項目です。
- Inventor の モデル状態(Model States) への正式対応
- Inventor 内での 重複検索(Duplicate Search)機能の強化
- Inventor 用 Vault アドインの [詳細を表示]パネルの改善
これらの改善により、設計者は Inventor の画面から離れることなく、Vault と連携した状態でモデルのバリエーション管理や類似部品の検索、関連情報の確認をスムーズに行えるようになりました。
3.2. Inventor 2022 モデル状態への対応
Inventor 2022 では、「モデル状態(Model States)」と呼ばれる新しい設計ワークフローが追加されました。1 つの部品ファイルやアセンブリファイルの中に、寸法違い・構成違い・軽量化用など複数の状態をまとめて持てる機能です。
Vault 2022 はこのモデル状態に正式対応し、次のようなメリットが得られます。
- モデル状態ごとにプロパティや図面との関連付けを整理して管理できる
- 製造用・検証用など、異なる用途の状態を Vault 上で把握しやすい
- モデル状態を含むデータセットを他部門や他システムと共有しやすくなる
これにより、従来はファイルを複数作って管理していたバリエーション設計も、より統合的でわかりやすい形で Vault に登録できるようになりました。
3.3. 重複検索と「類似部品の再利用」
もうひとつの重要な強化点が、Vault Professional に搭載されている 重複検索(Duplicate Search) 機能です。これは、Inventor の 3D 形状を解析し、形状が同じ、またはよく似た部品を検出できる仕組みです。
Vault 2022 では、この重複検索にフィルタ機能などが追加され、次のような作業がより直感的にできるようになりました。
- 条件を指定してから検索することで、候補を効率よく絞り込む
- 検索結果を一覧表示し、代替候補として再利用する部品を選べる
- アセンブリ内の重複部品を置き換えて、部品点数やデータ量を削減する
過去に似た部品を新たに作り直してしまう手戻りを減らし、標準部品の再利用を促すことで、生産性向上にもつながる重要な機能強化です。
3.4. Inventor 用 Vault アドインの改善
Vault 2022 では、Inventor に統合されている Vault アドインの [詳細を表示]パネル も改良されました。このパネルからは、アイテムや変更管理に関する情報へ素早くアクセスでき、必要に応じて特定のコマンド(アイテムの割り当て/更新など)を非表示にすることも可能です。
こうした改善により、Inventor と Vault の間を行き来しなくても、必要な情報をその場で確認しながら作業が進められるようになり、日々の設計フローがよりスムーズになります。
4. Thin Client と UI の改善ポイント
Vault 2022 では、ユーザーインターフェース(UI)まわりの進化が大きな特徴となっています。特に、Web ブラウザから利用できる Thin Client が全面的に刷新され、従来版とは大きく異なるモダンなデザインと操作性を備えたクライアントへと生まれ変わりました。これにより、Vault の閲覧業務を担当する幅広いユーザーが、より直感的に操作しやすくなっています。
4.1. 新しい Thin Client のモダン UI
公式ヘルプによると、Vault 2022 の Thin Client は次のような特徴を持つ最新 UI に進化しています。
- 完全に再設計されたインターフェースとダークテーマの採用
- アクセシビリティガイドラインに準拠した配色とコントラスト設計
- ファイル、アイテム、変更管理といった作業スペースを左側ナビゲーションから切り替え可能
これらの改善により、Vault に保存されたデータを 少ないクリック数で検索・表示 できるようになり、目的の情報へのアクセス性が大幅に高まりました。ナビゲーション構造も整理され、どこに何があるかが理解しやすくなっている点も大きな利点です。
そのため、設計者だけでなく、管理部門や購買部門、外部協力会社など、閲覧中心のユーザーにとっても扱いやすいインターフェースへと進化しています。
4.2. Forge Viewer によるプレビューとクイック共有
新しい Thin Client には、Autodesk の Forge Viewer が統合されています。これにより、Inventor や AutoCAD で作成したデータを DWF/DWFx/PDF として発行しておけば、Thin Client 上でそのまま 2D/3D プレビュー を確認できます。専用ソフトをインストールしなくてもブラウザで表示できる点は大きなメリットです。
さらに、作業スペース内で複数のオブジェクトを選択し、
- まとめて閲覧
- ダウンロード
- リンク共有
といった操作を一括で行えるようになりました。関連ドキュメント一式へのリンクを発行してチームに共有することで、「どのファイルを見ればよいのか?」と説明する手間を減らし、情報共有のスピードを高められます。
4.3. Vault モバイルアプリによる現場からのレビュー
Vault 2022 を含む Vault Professional および Vault Office では、Autodesk Vault モバイルアプリ を利用できます。スマートフォンやタブレットから Vault に保存されたデータへアクセスし、閲覧やレビュー、非 CAD データのチェックイン/チェックアウトなどが可能です。
公式の案内でも紹介されているように、モバイルアプリを利用することで、外出先や現場から必要な図面や情報をすぐに確認でき、チームメンバーとの共有もスムーズになります。特に現場担当者やマネージャーのように PC の前に常駐しない立場の人でも、レビュー作業に参加しやすくなり、結果として 承認リードタイムの短縮 にもつながります。
5. 実務に役立つヒントとベストプラクティス
ここからは、公式に備わっている機能を前提に、Vault 2022 を実務でより効果的に運用するためのヒントとベストプラクティスを紹介します。日々の業務フローを改善し、Vault のメリットを最大限に引き出すためのポイントをまとめています。
- フォルダ構成と命名規則を統一する
Vault は柔軟に構成できますが、チームごとにフォルダ階層やファイル名のルールが異なると、検索や管理が一気に複雑になります。
そのため、プロジェクト単位・製品系列単位など、社内で分かりやすい分類軸に合わせて階層構造を整理し、ファイル命名規則も統一しておくことが重要です。統一ルールがあるだけで、検索性が大幅に向上し、図面やモデルの所在が明確になります。 - モデル状態と重複検索を前提に「再利用しやすい設計」にする
モデル状態(Model States)や重複検索(Duplicate Search)を活用することで、標準部品の再利用をより体系的に進められます。
特に、「流用しやすい標準部品」と「プロジェクト固有部品」を明確に区別しておくと、検索や置き換えがスムーズになり、設計作業の無駄を減らせます。こうした事前の整理は、部品点数削減や工程短縮にも直結します。 - Thin Client で「見る人」と「作る人」の役割を分ける
設計者はフル機能の Vault クライアントや Inventor と組み合わせて高度な編集作業を行い、閲覧や確認が中心のメンバーには Thin Client を使ってもらう、という役割分担も効果的です。
これにより、全員が必要以上に重いクライアントを使う必要がなくなり、閲覧ユーザーの操作負荷も軽減できます。部門間での情報共有もスムーズになるため、Vault 活用の幅がさらに広がります。 - モバイルアプリで承認フローを短縮する
承認者が席に戻るまでレビューが進まない、といったボトルネックを解消するには、モバイルアプリの活用が有効です。
スマートフォンやタブレットから図面や関連データをすぐに確認できるため、外出中でも承認作業に参加しやすく、結果として承認リードタイムの短縮につながります。
これらの方法は Vault 2022 に限らず他バージョンにも応用できますが、特に モデル状態・重複検索・Thin Client・モバイルアプリ といった Vault 2022 世代の機能と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。
6. トラブルシューティングの基本的な考え方
Vault 2022 を運用していると、サインインができない、クライアントがサーバーに接続できない、Inventor と Vault のバージョンが一致せず警告が表示されるなど、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。これらは原因が複数にまたがるケースも多いため、落ち着いて順番に確認していくことが重要です。
ここでは、公式ドキュメントで案内されている内容も踏まえながら、まず押さえておきたい基本的な確認ポイントを整理して紹介します。
- 動作環境とバージョンの整合性を確認する
サーバー OS、SQL Server、クライアント OS、そして Inventor のバージョンが、Vault 2022 のサポートマトリクスに適合しているかをチェックすることが第一歩です。
特にサーバーとクライアントの組み合わせが要件を満たしていないケースでは、接続トラブルや予期せぬエラーにつながりやすく、最優先で確認すべきポイントになります。 - 認証方式とアカウント情報を確認する
Autodesk ID / Vault アカウント / Windows 認証など、どの方式でサインインする設定になっているのかを整理し、必要なアカウントが正しく作成・割り当てされているかを確認します。
認証方式の設定ミスや権限不足が原因でログインできないケースは少なくないため、運用ルールと設定内容を照らし合わせて確認することが重要です。 - ログとリリースノートを参照する
特定のエラーコードや警告が表示されている場合は、サーバーログやクライアントログを確認し、Vault 2022 のリリースノートに記載された既知の問題・修正内容と照らし合わせます。
問題がアップデートで改善されている場合もあるため、ログとリリースノートのチェックは原因特定の近道です。 - アップデートの適用状況を確認する
2022.1 や 2022.2 といったアップデートが未適用の場合、それらに含まれる修正が適用されておらず、既知の不具合に該当している可能性があります。
Autodesk Account や Desktop App から、最新パッチが適用されているかを必ず確認しておきましょう。
これらの基本的なポイントを順に確認することで、多くのトラブルは自己解決できる可能性があります。それでも問題が解決しない場合は、Autodesk サポート、販売代理店、コミュニティフォーラムなど、信頼できる情報源を活用しながら対応していくのが現実的で効率的です。
7. まとめ
本記事では、公式ドキュメントで確認できる情報をもとに、Autodesk Vault 2022 の概要や特徴的な機能を整理しました。Vault 2022 では、次のような点が特に強化されています。
- Inventor 2022 のモデル状態や重複検索に対応し、バリエーション管理と部品の再利用がより効率的になったこと
- 完全に刷新された Thin Client により、ブラウザからの閲覧・プレビュー・リンク共有が格段に使いやすくなったこと
- Vault モバイルアプリの活用で、場所やデバイスを問わずデータ閲覧やレビューに参加しやすくなったこと
- システム要件・動作環境を適切に管理することで、安定した運用とスムーズなトラブル対応が実現できること
これらは、Vault 2022 世代ならではの大きなメリットであり、設計データ管理の質を高める重要なポイントでもあります。
また今後の Vault では、クラウドサービスとの連携強化や、AI を活用した自動分類・自動提案など、設計データ管理をさらに高度化する機能が期待されています。現在 Vault 2022 を使用している場合も、まずは自社に合った運用ルールやベストプラクティスを整えたうえで、将来的なアップグレードやクラウド移行に備えておくことが重要です。
Vault の基本コンセプトはバージョンを超えても大きく変わりません。まずは 2022 世代の機能に親しみながら、モデル状態・重複検索・Thin Client・モバイルアプリなどを段階的に取り入れ、「設計データを企業の資産として活かす」運用を目指してみてください。
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<参考文献>
Vault 2022 ヘルプ | Vault 2022 リリース ノート | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/VAULT/2022/JPN/?guid=Vault_ReleaseNotes_CLC_release_notes_html
Autodesk Vault 2022 製品の動作環境
Vault 2022 ヘルプ | Autodesk





