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ワトソンは人工知能ではない。コグニティブとAIの違いとは


IBMのワトソン(Watson)のCMを見たことがある人も多いのではないでしょうか。
CMでは、ワトソンが人間の著名人と自然言語で流暢に会話しているシーンがピックアップされていました。
このCMによって、ワトソンがあたかも人間のように思考することのできる真のAIではないかと錯覚された方も多いのではないでしょうか。

しかし、実際のところワトソンはAIではないとIBM自身が表明しています。
では、IBMが提唱するコグニティブ・コンピューティングとはいったいどのようなものなのでしょうか。

 

ワトソンの歴史

 

ワトソンが有名になったのは、2011年にアメリカの人気クイズ「ジョパディ!」(Jeopardy!)に回答者として参加し、歴代のクイズ王と対戦して勝利を収めたことがきっかけでした。

これは、IBMとワトソンにとってとても良いプロモーションになりました。
人間に打ち勝つことによって人間以上に知能を持っているかのように見えるからです。

しかし、実際のところワトソンは自ら思考しているわけではなく、データとして入力された情報と、司会者が読み上げる問題を照らし合わせて、「確からしさ」が高いものに関して回答するという処理を行っていただけだったのです。IBMはワトソンを作り上げる過程で、歴史や文化、スポーツや政治経済まで、さまざまなドキュメントを読み込ませました。この過程を経ることで、ワトソンはデータと照らし合わせるという作業ができるようになったのです。

ワトソンが膨大な量のドキュメントを読み込ませるのに、自然言語処理という技術を用いています。自然言語処理は、1950年代から研究開発されている伝統的な分野です。自然言語処理は、画期的なブレークスルーは発生していないものの、IBMは巨額の資金を投入して研究を続けました。IBMは巨大企業の特性を活かして、他者が追随できないほどの大量のドキュメントを読み込ませることに成功したのです。ワトソンは、IBMだからこそ作ることができたコグニティブ・コンピューティングと言えるでしょう。

膨大な情報を蓄積し、質問に対して確からしい答えを回答するのは、クイズ王と言っても人間にはなかなかできることではありません。ワトソンにはこのようなことができますが、膨大な量のドキュメントを照らし合わせることができても、それが知能(AI)かというとやはり違うと言うことになります。

 

コグニティブ・コンピューティングの目指すところ

 

IBMは、ワトソンに関して公式にAIではないという声明を出しています。
ワトソンは、AIではなくコグニティブ・コンピューティングであるというのです。

では、コグニティブ・コンピューティングとはいったいどのようなものなのでしょうか。

「コグニティブ(cognitive)」とは、日本語で「認知」という意味になります。コグニティブ・コンピューティングは、認知科学(cognitive science)や認知心理学(cognitive psychology)と同様で、問題を認知(認識)して、その解答として正しいもの、正しそうなものを推測し、提示すると言う役割をコンピュータが行うことを意味しています。

2015年にIBM WatsonのCTO、ロブ・ハイがIT Pro Expoの基調講演でワトソンは膨大な情報から人間の助けとなりそうな情報を提示し、人間の判断を支援することがゴールだと語りました。

つまり、人間の自然言語を理解し、それに反応して膨大な情報のなかから人間が判断できる情報を提示することこそがワトソンの目的なのです。
そして、決定を行うのはワトソンではなく人間だということなのです。

 

ワトソンの活用法に見るワトソンの本質

 

ワトソンがクイズ番組で勝利したあと、IBMはビジネスに応用することを目指します。企業の経営支援や医療、裁判の証拠文書の解析など、多岐に渡る分野で活用を試みました。そのなかでも成功例と言われているのが、医療分野への応用です。ワトソンの活用事例としてよく取り上げられるのが、白血病の種類を10分で見抜いたという事例でしょう。

膨大な臨床データを記憶し、患者の状態をデータと照らし合わせて瞬時に適合させるというのは、知識量の多い人間であっても至難の業です。
しかし、膨大な情報を瞬時に分類整理して必要な情報を取り出すという作業はコンピュータにとっては得意な分野のひとつになっています。「医師のアシスタント」としては、これ以上の打って付けな存在はいません。そしてこれこそが、ワトソンの本質であると考えられるでしょう。

その他にも、コールセンターでオペレーターに対してお客様の要望に応じた情報を提示するシステムや、好みに合ったワインを選択してくれるシステムなど、基本的には、蓄積した情報を状況に応じて提示することこそがワトソンの得意とする分野だと言うことが分かります。

 

ブレークスルーがなくてもワトソンの懸念は払拭されつつある

 

ワトソンの有用性やコストには、疑問が持たれていることもありました。昨今のAIブームでは、ディープラーニングの分野でブレークスルーが起こっています。しかし、先ほども触れたように、自然言語処理では技術革新は起きておらず、その活用方法にも疑問が持たれていたのです。また、IBMはワトソンに注力するために、読み込ませるための膨大なデータを必要としており、企業買収などを行ってきました。企業買収には当然コストが必要となり、懸念されていたのです。

しかし、医療やビジネス分野でのワトソンの成功により、評価は良好になりつつあります。ワトソンはすでに1000以上の事例で、癌治療に応用されています。そのうちの30%では、医師が思いつかなかった新しい治療法を提案しているのです。これは革新的なことであり、医療関係者に衝撃を与えたと言われています。このような成果を上げることで、今後巨額な利益を生み出すとも報じられているのです。IBMのワトソンは、懸念があるどころか、年々評価を高めています。

 

ワトソンはAIではなく我々のサポーターとなり得るもの

 

このように、ワトソンはAIであると勘違いされがちですが、実際のところは、認知し仮説や推測を行い、必要な情報を取り出すことにフォーカスしている点で弱いAI(Weak AI)やディープラーニングと同等であると言えます。

ワトソンがAIだと思っていた人にとっては残念かもしれませんが、ワトソンによって今後専門的な知識を人間が記憶する必要がなくなる世界がやってくるかもしれません。
そんな意味では、ワトソンは画期的なサービスだと言えるのではないでしょうか。

 

まとめ

 

IBMが開発を進めるワトソンについて解説してきました。勘違いされやすいですが、ワトソンはAIではなくコグニティブ・コンピューティングです。膨大な情報から人間の助けとなりそうな情報を提示することを役割としており、人工知能であるAIとは明確に違います。2019年になってからは、他者のクラウドプラットフォームやオンプレミス環境で可動できることが発表されました。ワトソンの可能性は、年々広がりを見せています。コグニティブ・コンピューティングとして成長し続けるワトソンから目が離せません。

参考サイト(比較サイト)
https://www.ibm.com/watson/jp-ja/
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50067
https://zuuonline.com/archives/141707
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41247420U9A210C1000000/

[2019年4月18日アップデート]

 

 


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