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OpenAIの点群データ生成AI「Point-E」の凄さと課題とは?

この数年でAI活用の幅は一気に広がり、今では幅広い業務や生活シーンで運用されています。特にAI運用を推進しているのがOpenAIで、高度な言語モデルや画像生成モデルを世に送り出し、AIのポテンシャルの片鱗を世の中に証明しました。

この記事では、そんなOpenAIが新たに公開した点群データ生成AI「Point-E」の概要について解説しつつ、その潜在能力や課題について紹介します。

目次:

  1. OpenAIの概要
  2. 点群データ生成AI「Point-E」とは
  3. Point-Eに期待できる効果
  4. Point-E活用の課題
  5. その他の点群データ関連のAI

OpenAIの概要

近年のAIニュースを見ていると、よく目にするのがOpenAIと呼ばれる組織の名前です。OpenAIはアメリカのカリフォルニア州に拠点を置く、AI関連の研究機関で、テスラやスペースXでも馴染み深いイーロン・マスクが設立に携わっていることでも知られています。

2015年に設立されたOpenAIですが、その名前を広く知らしめることになったのが、自然言語処理と画像生成が可能なAI「DALL-E」の発表です。従来のAIとは異なり、人間の目から見ても見分けがつかないほど質の高い文章を作成するとともに、テーマに基づく画像をゼロから生成できる能力が、高く評価されました。

一般向けにOpenAIが知られることとなったのは、自然言語生成AIの「GPT-3」の発表がきっかけです。これをさらに発展させ、一般向けに提供されているのが「Chat-GPT」で、ユーザーのニーズに基づく多様な文章を生成、あるいはユーザーの疑問や質問への高度な回答が可能となりました。

2023年3月、OpenAIはより高度な言語モデルである「GPT-4」を発表しましたが、ChatGPTの登場から半年も経たないうちに現れたこのAIは、人間の想像を超えるスピードで学習を繰り返し、あまりに高度な性能を発揮することが話題を読んでいます。

その性能の高さは人間の理解を遥かに超える可能性があることから、現在はGPT-4を超えるAIの開発を一旦停止するよう業界の間で署名運動が行われるなど、社会問題に発展しました*1。

いずれにせよ、OpenAIは現在のAI開発の最先端を走る、有望な研究機関であることは間違いありません。

点群データ生成AI「Point-E」とは

そんなOpenAIが2022年11月に発表したのが、点群データを生成できるAIという「Point-E」です。Point-Eは、テキストをユーザーが入力するだけで、そのテキストに適した点群データを生成してくれるという、便利なAIサービスとなっています*2。

Point-Eはテキストをそのまま点群データに変換しているのではなく、具体的にはテキストを画像に変換し、画像を点群データに変換するというプロセスを採用しているのが特徴です。これまでのAIアプリ開発の中で得られた、画像データの学習経験を応用し、今回の点群データ生成に応用しています。

点群データ生成を可能にしたPoint-Eは、従来の3Dデータ生成よりも遥かにデータ生成にかかる時間が短くなっている点も高く評価されています。一般的な3Dデータの生成は、綺麗な面張りが行われたポリゴンメッシュで行われていたため、生成に必要なデータ量は必然的に大きいのが当たり前でした。

しかし、Point-Eではポリゴンメッシュよりもデータ量が小さい点群データの生成が可能になったため、生成にかかる負担も大幅に軽減しました。従来の3Dデータに比べ、600倍以上の高速化が実現しているなど、確かな進歩が確認できます*3。何時間も生成にかかっていた時間が、ものの数分で済むというケースもあるでしょう。

Point-Eに期待できる効果

Point-Eの登場は、これまでの3Dデータ活用をより効率的なものにしてくれる可能性があると考えられています*4。例えば3Dプリンタを使って物体を生成したい場合、従来のプロセスだとまず3Dモデルを手動で作成し、それからプリンタに読み込ませるという手順が求められました。

Point-Eの登場は、3Dモデル作成の負担を大幅に軽減し、すぐに実体化することができる可能性を秘めています。キーワードをPoint-Eに読み込ませるだけで、すぐに3Dデータを生成してくれるため、3Dモデル作成の負担は最小限で済みますし、3Dモデルを生成する技術力も必要ありません。

もちろん、複雑な構造物を設計する場合は高度なスキルを持った設計者が必要ですが、簡素な3Dデータ生成であれば、Point-Eに丸投げしてしまうことも今後は可能になるでしょう。

Point-E活用の課題

Point-Eは確かに便利なツールですが、一方で実際の運用に当たっては懸念すべき課題もあります。例えば、生成される3Dデータの著作権の問題です。

膨大なデータを元に運用されているPoint-Eですが、これまでの学習データに著作物が混ざっている可能性が高いことは言うまでもありません。他人の作品を模倣するつもりはなかったのに、知らないうちにPoint-Eが著作物を極めて正確に模倣してしまったことで、ユーザーが著作権侵害の罪を犯す可能性があります。

また、殺傷力のある武器や兵器をAIが生成してしまい、治安の悪化を招く可能性も秘めていますし、そもそも3Dモデリングを本職としている人は、Point-Eの登場で瞬く間に職を失ってしまう可能性もあるでしょう。Point-E運用に伴うリスクへ十分に配慮した、AI設計や社会的なルール作りを進めていかなければなりません。

その他の点群データ関連のAI

点群データに関連するAIは、Point-E以外にも複数のサービスがすでに登場しています。例えば航空関連企業大手の朝日航洋は、AI開発を手掛けるAutomigiと協業で、ヘリコプターを使って撮影し、作成した空間の点群データを自動で仕分けるモデルを開発しました*5。

また、AIコンサルティング会社のリッジアイと3D計測サービスを手掛けるクモノスは、大規模な3D点群データのノイズを自動で除去できるAI「ANJU」を開発しました。ドローンなどを使って取得した点群データには、意図せずして含まれるノイズ情報も含まれますが、これらをAIを使って除去できるようになったことで、50%以上の工数削減が実現しています*6。

点群データ関連のAI開発は今後も高度化することが期待でき、各種サービスの併用により、大幅な生産性の向上が得られるでしょう。

まとめ

この記事では、OpenAIが新たに開発した点群データ生成AIや、点群データ関連のAIサービスについて紹介しました。点群データはポリゴンメッシュの3Dデータと比べて軽量であることから、関連業務の高度な効率化が期待できます。

ただ、同AIの運用に当たっては懸念点も残っているため、法整備を待つことはもちろん、実際の運用に当たっての自発的な注意が必要です。

強みと弱みを正しく理解し、AI活用を進めましょう。

 

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参考:
*1 Business Insider「GPT-4以上のAIの開発停止を求める公開書簡」
https://www.businessinsider.jp/post-267633

*2 ASCII.jp「OpenAIの呪文から3Dモデルを高速生成するAI、巨大な需要を見込めるが課題は山積み」
https://ascii.jp/elem/000/004/118/4118349/

*3 GIGAZINE「3Dモデル生成AI「Point-E」をOpenAIがオープンソース化して誰でもダウンロード可能に、これまでの600倍高速にプロンプトから3Dオブジェクトを生成して表示可能」
https://gigazine.net/news/20221221-openai-point-e/

*4 *2に同じ

*5 PRTIMES「AIを活用し、3D点群データの自動仕分けを行う新たな技術を開発!実証実験の仕分け精度は90%以上を達成。実運用も開始し、コストやリソースの大幅な削減を実現!」
https://prtimes.jp/story/detail/DBnJdOc8nXB

*6 PRTIMES「業界初! 大規模3D点群データのノイズ除去自動化AI 『ANJU』 の共同開発に成功」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000026963.html

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