シリコンビーチのエンタメ×テクノ系スタートアップが熱い
パソコンやインターネットの黎明期にIT関連のスタートアップ(新興企業)といえば、シリコンバレーに本拠地を置く企業がほとんどでした。ところが最近、シリコンビーチにスタートアップの拠点が移動しつつあります。シリコンビーチはカリフォルニア州ロサンゼルス群のサンタモニカ周辺に位置し、ここにスタートアップや投資家が注目するようになりました。
ITバブルの時代にはシリコンバレーがIT系スタートアップの聖地でした。半導体のIntel、AMDをはじめ、Apple、Oracle、Sun Microsystems(Oracleに吸収合併)というような名だたる企業がここから生まれました。クリエイターには馴染みの深いAdobe Systems、検索エンジンから巨大な企業に成長したGoogle、当初は同窓会名簿だった人脈データベースが世界を席巻するSNSにまで発展したFacebookも、シリコンバレーで誕生した企業です。
しかし、5年ほど前から、シリコンバレーからシリコンビーチに拠点を構える企業が増加しつつあります。その新しい時代の潮流は「エンターテイメント×テクノロジの時代」といえるかもしれません。
シリコンビーチの風土が「遊び心」を育む
シリコンビーチのある「LA」ことロサンゼルスは、石油化学工業と航空宇宙産業という重厚長大型の産業が発達しています。一方で、ハリウッドの映画産業が経済的に重要な分野であり、ワーナー・ブラザースやパラマウントなどの製作会社が設立されています。ユニバーサルスタジオ、ディズニーランドなど、テーマパークのビジネスも発展している都市です。
映画産業が発達した理由として、夏季に晴天の日が多いため撮影に充分な光量があったからだそうですが、温暖な気候が特長のひとつ。サンタモニカのビーチではサーフィンも楽しめます。そんな解放的な環境のもと、シリコンビーチ近辺には、ミュージシャンや映像作家などのアーティストも多く在住しています。
ところで、シリコンビーチから生まれたサービスのひとつに、 Omaze というサイトがあります。マット・デーモンとピザを食べる、シュワルツネッガーと戦車に乗るなど「人生で一度きりの体験」を10ドルで提供するサイトです。まさにハリウッドスターとのコラボによって生まれました。しかも、その収益は慈善事業に寄付されます。ハリソン・フォードがビデオチャットに登場するチャリティーキャンペーンも実施しました。
文筆家のダニエル・ピンク氏は、『ハイコンセプト 「新しいこと」を考え出す人の時代』(大前研一訳、三笠書房、2006年)で、これからの時代に必要な「六つの感性(センス)」は「デザイン」「物語」「全体の調和(シンフォニー)」「共感」「遊び心」「生きがい」と予測しました。
この「遊び心(エンターテイメント)」とテクノロジが結びついて新しいカルチャーを生み出す」可能性が、シリコンビーチのスタートアップに感じられます。
スペックからワクワクする体験の時代へ、日本はどうなる
20世紀後半までは「スペックが要求される時代」だったのではないでしょうか。もちろんAppleのように所有する喜び、ブランド価値を提供する企業もありました。しかし、CPUのクロックやコア数、ネットワークは速くて容量が大きいこと、ハードウェアは小型軽量であることのように「仕樣」が重視されました。
ところが現在では「そのガジェットやアプリはどんなワクワクした体験ができるか」というユーザーエクスペリエンス(UX)あるいは、製品やサービスの価値や世界観に共感できるかどうかが求められる時代です。その一例はInstagramによる自撮りの流行や、VRやARによるエンターテイメントの隆盛として現れています。
同時に、現在はインターネットで接続されていれば「どこにいても仕事はできる」環境が整備されています。スタートアップが集中するあまり物価が高騰したシリコンバレーを離れて、他の場所を探し始めることも当然です。
20世紀を振り返ると、日本では渋谷がシリコンバレーにちなんで「ビットバレー」と呼ばれていた時期がありました。あるいは電子パーツの専門店や家電量販店が立ち並ぶ秋葉原は、世界的に有名なハイテクの街です。しかし今後は、東京がスタートアップの中心ではなくなるかもしれません。地方から勢いのよい企業が生まれる可能性もあります。
たとえば、海に近い環境を考えると、九州の福岡は有力な都市といえるのではないでしょうか。堀江貴文氏や家入一真氏などの起業家を排出した地域でもあります。北海道の石狩湾に面した札幌、魅力のない街ナンバーワンに評価されたことがあるとはいえ伊勢湾のある名古屋からも、次世代のスタートアップの登場に期待したいところです。
Appleは横浜に研究開発施設「Apple YTC」を設立しました。横浜も海の近い場所にあります。これからテクノロジ産業の新しい風はバレーからビーチへ吹くといえるかもしれません。
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