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竹中工務店が設計にもAIを導入!ITで拓くハイテクな建築技術

この記事を読むと、以下の3つのことがわかります。
1.竹中工務店が取り組んでいる設計AI技術
2.AI活用サービスを展開するHEROZ社の概要
3.竹中工務店が作り上げた「使えるAI」について

大手ゼネコンである竹中工務店は、BIMに限らずAI技術を積極的に導入しています。2017年から構造設計AIの開発を行い、2019年にはIoT技術を駆使した建築物で、AIを使った空間制御システムの実証実験も始めました。

建築作業は毎回現場が異なるため熟練者の経験に頼るところが多く、オフィスワークのようなIT化がなかなか進みません。この記事では、竹中工務店が取り組むAI技術についてご紹介します。

竹中工務店が取り組む構造設計AIの開発

AI(人工知能)は様々な業界への導入が進んでいます。その1つが建築業界であり、BIM(Building Information Modeling)とAIを掛け合わせたさらにハイテクな技術が生み出されているのです。

単純作業7割減を目指して構造設計AIの開発を行う

竹中工務店は主にルーティン作業の効率化を目指し、以前よりAIの導入を手掛けています。2017年11月には、国内のAI活用サービスを展開するHEROZ(ヒーローズ)社との共同開発を発表しました。また、竹中工務店は関係強化のためにHEROZの新株予約権付社債を引き受け、資本業務提携も結んでいます。

この時から竹中工務店は本格的なAIの導入を考えていました。構造設計AIシステムの開発を第一歩として、竹中工務店が独自で持っていた構造設計システム「BRAIN」と、HEROZの持っているAI技術「HEROZ Kishinプラットフォーム」を掛け合わせる取り組みを始めています。※1

2020年までにディープラーニングを行い即戦力化を目指していると発表しているので、もうすぐ竹中工務店から発表があるかもしれません。これにより、構造設計を行っていた人がよりクリエイティブな業務に集中したり、長時間残業や休日出勤を減らしたりという効果を期待しています。

2019年にはAIの空間制御システムを共同開発

2017年から竹中工務店とHEROZは構造設計システムの共同開発を行っています。しかし2019年には、別の物として「Archiphilia Engine」(アーキフィリアエンジン)という空間制御システムの共同開発も発表しました。※2

竹中工務店が設計施工をしている「EQ HOUSE」というプロジェクトで、5月より実証実験がスタートしています。この実験が成功すれば、竹中工務店のAIシステムはさらに進化していくでしょう。

Archiphilia Engineエンジンとは

空間制御システムであるArchiphilia Engineは、省エネや省人化といった建物管理の効率化を図れるシステムです。空調や照明、室内の温度や湿度といった住環境に必要な調整を自動で行うことで、今まで設備管理員が手動で行っていた空調管理を自動で調整してくれます。

Archiphilia Engineでは、HEROZの「HEROZ Kishin」という学習エンジンと、「ビルコミ」というプラットフォーム、そしてIoTが使われています。

IoTセンサーとビルコミプラットフォームでEQ HOUSE内の照明や空調、人感センターのデータを集め、そのパターンをHEROZ Kishinで学習させることでAIシステムを開発したのです。

Archiphilia EngineとHEROZ Kishinは両方AIが搭載されているため、ディープラーニングを続けることでよりパーソナライズされた設定が可能となります。

竹中工務店が手掛ける「EQ HOUSE」とは

EQ HOUSEは「近未来的な住環境」を目指し、IoT技術によって家を快適に保つ技術が搭載された建築物です。竹中工務店が設計施工を行っていて、あのメルセデスベンツとも連携しています。

竹中工務店は数々の大規模プロジェクトを手掛けていますが、今では上記のような近未来的な取り組みも進めているのです。

HEROZは「将棋AI」に強みを持った会社

HEROZは2009年に創業した日本のAI技術会社ですが、最大の特徴として将棋AIへの強みがあります。

2017年にはAI将棋ソフト「Ponanza(ポナンザ)」がプロ棋士相手に勝利したことで話題となり、同社が開発している将棋アプリ「将棋ウォーズ」は500万ダウンロード突破という大きな実績を持っています。その功績も影響して、2018年4月にはマザーズ上場も果たしました。※3

AIソリューションによるB to Bを展開

将棋AIを通してディープラーニングによる機械学習を強みとするHEROZは、「HEROZ Kishin」というAIソリューションの展開を始めました。このソリューションこそが、竹中工務店との共同開発で使っている技術でもあります。

「Kishin」とは将棋の神である「棋神」に由来があり、本来得意としている将棋AIの技術がベースとなっています。

HEROZは竹中工務店だけではなく、バンダイナムコエンターテインメントをはじめ複数の企業と資本業務提携しており、AI技術の開拓に貢献しているのです。

竹中工務店はどうやってAIによる設計を実現したのか

AIを開発するためには、ビッグデータといえる量の情報が欠かせません。竹中工務店がどのようにしてAIによる設計システムに取り組んでいるのか、その仕組みについてご紹介します。

AIシステムのベースとなる「BRAIN」

竹中工務店では、一環構造設計システムである「BRAIN」を持っています。BRAINには竹中工務店が設計を手掛けた400以上のプロジェクトや25万部材の情報がデータベース化されており、この情報を深層学習させることでAIの開発を行っているのです。

BRAINは2006年の建築基準法改正に対応したシステムで、BIMソフトとの連携もできます。基本設計から詳細設計まで利用できる高機能なシステムで、今では外販も行っています。※4

竹中工務店には豊富なデータがある

竹中工務店は1610年創業の“超老舗”ともいえる企業であり、神社仏閣を始め早くから洋風建築も手掛けていました。今では国内外の大規模プロジェクトにかかわっており、豊富な経験とデータを持ち合わせています。

しかし各プロジェクトで作成した設計データは作成者しか覚えておらず、似たようなプロジェクトが発生しても、その作成者がいなければなかなか類似事例を見つけられません。

しかしBRAINで竹中工務店内のデータを集めれば、誰でも類似事例を参照できるのです。これは、機械学習の1種であるクラスタリングを応用して開発されています。竹中工務店独自の「リサーチAI」という技術で、人が膨大なデータの中から似たような事例を探す必要がありません。

このBRAINを元に、竹中工務店は建設業で使えるAIとして「リサーチAI」、「構造計画AI」「部材設計AI」の3つのAIを開発しました。竹中工務店のAI×BIMについては、「竹中工務店がBIMで遮音設計も自動化!最新のAI技術もご紹介」(https://www.capa.co.jp/archives/33275)でご紹介しておりますので、ぜひご参照ください。

AIによる画像認識技術にも取り組む

竹中工務店は設計の他にもAIを活用しようとしています。AIによる画像認識技術を使い、今まで人が行っていた写真の仕分け業務を自動化しようとしているのです。

この取り組みではMicrosoft Azureが使われており、Microsoft Azure Machine Learningサービスによるクラウド上で行う機械学習技術を使っています。

建築作業では毎回多くの工程がありますが、報告書のためにそのすべての工程を撮影しなくてはいけません。報告書は工事の品質確保に不可欠で、品質基準を満たすためには1平米につき10枚ほどの写真を撮影する必要があります。この報告書作業は、現場作業員にとって大きな負担になっているのです。

AIによる画像認識技術が活用できるポイントは、撮影した写真の仕分け業務にあります。竹中工務店は2014年時点でiPadを導入しており、現場写真の撮影はある程度自動化していました。しかし、撮影した写真がどの工程のものかを認識するAI技術はまだなく、この部分は人が行っていたのです。

そこでMicrosoft Azureの機械学習で膨大な写真データを学ばせ、どの工程の画像なのかAIで自動化できるようにしました。結果として、18年6月からの建築プロジェクトで活用され、1人あたり2時間もの作業時間の効率に成功しています。※5

まとめ

竹中工務店が取り組んでいる、構造設計や画像認識のAI事情についてご紹介しました。国内の大手ゼネコンはBIMを積極的に導入していますが、今では各社が独自のシステムを構築しはじめています。AIに限らず、今後はVRやMR技術ももっと建築業界に進出してくるでしょう。

専門技術を結集させて行う建築作業は「人頼り」の側面が強く、なかなかIT化が進んでいません。しかし今回ご紹介したように竹中工務店はAIや機械学習を積極的に取り入れ、作業の効率化を実現しています。これからも、もっとハイテクな建築技術を開発していくでしょう。

参照
※1 https://www.takenaka.co.jp/news/2017/11/04/index.html
※2 https://www.takenaka.co.jp/news/2019/06/01/index.html
※3 https://heroz.co.jp/
※4 https://www.takenaka.co.jp/solution/needs/earthquake/service29/index.html
※5 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1807/23/news003.html

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