Podcastの分析ツール「Google Podcasts Manager」
これまでIT業界の巨人のひとつであるGoogleでも、ポッドキャスト分野では存在感を示すことができていませんでした。しかしここにきてGoogleは、iOS版ポッドキャストのリリース、Android版のリニューアルに続き、ついに分析ツールを発表するなど意欲的に動き始めました。今回はリリースされたばかりのGoogle Podcasts Managerについてご紹介していきます。
この記事でわかること
・ポッドキャストとは何か?
・Google Podcasts Managerの機能を紹介
・これからのポッドキャストの活用について
ポッドキャストとは何か?
ポッドキャストとはインターネットラジオの一種で、配信者がアップロードした音声データをリスナーがiPodやiPhoneなどの携帯端末などにダウンロードして好きな時に聞くことができる仕組みです。2005年ぐらいから実用化された比較的歴史のあるもので、アメリカでは多くのユーザーがいる人気のあるサービスです。しかし残念ながら日本ではアメリカほどメジャーな存在ではありません。
ポッドキャストの仕組み
ポッドキャストではRSSという仕組みを利用しています。RSSを使うことによってリスナーは自分の好きな番組を登録するだけで、あとは最新のデータを自動で取得・ダウンロードしてくれるという点が非常に便利です。ネット環境を気にせず、外出先などでダウンロードした番組を聞くことが可能となります。ポッドキャストの一番の魅力であり特徴を担っているのが、このRSSの仕組みであると言えるでしょう。
多種多様な番組があるポッドキャストの世界
最初に「インターネットラジオ」という表現を使いましたが、ポッドキャストを使って配信できるのは音声データだけには限りません。動画データやファイルなどもRSSを利用して配信が可能ですので、例えば「インターネットテレビ」としても利用することができます。有名ブランドなど企業からのアナウンスや、語学学習番組さらにはお笑いなどのエンターテイメント番組など、多種多様なコンテンツが存在しており今や「インターネットラジオ」という枠組みだけでは収まりきれない魅了があります。
ポッドキャストを利用するには
携帯端末の場合、iOSなら純正アプリの「Podcast」が一番メジャーでしょう。もともとiPod用のアプリとして登場した経緯から「Podcast」という名称になっていることからも分かる通り、この分野では最も利用されています。Androidには「Google ポッドキャスト」がありますが、iOS端末でも利用できる「Spotify」の方が多く利用されているようです。
Spotifyは、世界中のアーティストが提供する4,000万曲以上の音楽や、ポッドキャストを楽しむことができるストリーミングサービスです。現在ではAppleやGoogle、Amazonなどが提供する多くの音楽ストリーミングサービスが存在しますが、Spotifyはその中においても老舗であり、多くのユーザーがいる代表的なサービスです。
携帯端末ではなく、MacやWindowsなどのパソコンでポッドキャストを利用する場合には、「iTunes」と並び「Spotify」を利用することが多いようです。*注1
例えば、iTunesのPodcastを見ると、非常に多くの番組が登録されていることがわかります。いくつかのカテゴリーに分かれていますが、「人気作品」のところをいくつか紹介すると、
・NHKラジオニュース(NHK)
・未来授業(TOKYO.FM)
・大竹まこと ゴールデンラジオ(文化放送Podcast.QR)
・English News(NHK)
・バイリンガルニュース(Micheal & Mami)
などがあります。
ニュース、語学学習、エンターテイメント系、音楽系などの他にも、アーティストや有名ブランドが運営しているポッドキャストやASMRなど、多種多様な番組が運営されています。
Google Podcasts Managerの機能を紹介
ポッドキャスト分野においては、AppleとSpotifyがユーザー側のアプリとして主流であり、Googleはこれまで存在感を出すことができていませんでした。ところが、ここにきてiOS用のアプリをリリースし、さらにAndroid用アプリのリニューアルに続き、分析ツールのリリースなど立て続けに大きな動きをしています。ついにGoogleがポッドキャスト分野でも積極的な戦略で動き始めたか!というのが今回注目を集めているところです。
これまで、ポッドキャスト配信者が自身の番組の視聴状況を把握するには、iTunesなどポッドキャストを登録したサイト上で、管理パネルを確認するなどの方法がありました。ただし、iTunesでは再生回数やランキングなどの情報は分かりますが、実はリスナー数(フィード登録者数)を把握することはできません。配信者からしてみるともう少し詳しい情報が欲しいところです。
ご存知の通り、Googleは利用者にとって最適な情報を素早く表示する検索エンジンの開発からスタートした企業です。サイト構築者にとってはユーザーの動向を詳しく分析することができる「Google Analytics」が有名で、事実上のデファクトスタンダードであり解析ツールとして絶対に外せないものとなっています。このGoogleがポッドキャストのユーザー分析ツールをリリースしたのですから、配信者にとっては見逃せないニュースです。
Google Podcasts Managerでできること
「Google Podcasts Manager」は、機能的にはまさしくポッドキャスト版のGoogle Analyticsといえるもので、
・リスナー数
・再生時間
・視聴継続時間
などの基本的な項目に加え、リスナーがどこから聴き始めて、どの段階で離脱したかなどの具体的なアクションまで分析することが可能です。
ユーザーが利用する端末についても、匿名化された状態での確認ができるなどの機能が実装されています。より具体的にデータの分析をすることができるよう、各データのエキスポート機能がついていることも特筆されるべきでしょう。ポッドキャスト配信者にとって、これから手放せないツールになる可能性を秘めています。*注2
これからのポッドキャストの活用について
そもそもポッドキャストにはどのような魅力があり、どのように活用することができるのでしょうか?実は数多くの番組が存在するポッドキャストも、日本国内での利用状況はアメリカに比べて活発とまでは言えないようです。YouTubeなどの動画共有サービス、Twitter・FacebookなどのSNSを通して一般の方でも気軽に情報発信し交流することができますので、それらと比べてポッドキャストはややマイナーな存在ではないでしょうか。
ポッドキャストユーザー側の利点や魅力
・ながら視聴できること
・自動でコンテンツをダウンロードし、非ネット環境で利用できる
・無料で利用でき、広告が入らない
この3つがポッドキャストのユーザ側からの利点や魅力と言えます。
YouTubeなどの動画配信サービスや、SNSなどの文字情報をメインとするサービスでは、ユーザー側が画面を注視することが不可欠となります。映像・文字情報・画像など魅力的なコンテンツほど視覚に訴えるものが多く、他の作業をしながら集中して視聴することは難しいでしょう。その点、音声情報を主体とするポッドキャストの場合はさながらラジオ放送のように、運転しながらや家事作業をしながらなど、何かのついででも十分に楽しむことができます。ポッドキャストの一番の特徴がこの点でしょう。
また、ポッドキャストが一般のラジオやインターネットラジオと異なる点として、登録さえしておけば自動で最新のコンテンツをダウンロードし、いつでも好きな時に聞くことができるというところです。時間の制約を受けず、好きな場所で必要な情報を取得できるというメリットが二つ目の特徴です。
これは語学学習を目的としてポッドキャストを利用する人にとっては、もっとも利便性を感じるところではないでしょうか。空き時間に少しずつ自分のペースで無理なく学習を進めたり、理解できない部分を繰り返し視聴することができます。
ポッドキャスト自体はYouTubeなどと異なり、特定の企業が運営しているサービスではないので広告は表示されません。基本的に無料で利用できるのがポッドキャストの大きなメリットです。広告で頻繁に中断される煩わしさがありません。
ポッドキャストの配信者側からみた特徴
・動画などと比べて手軽に配信ができる
・リスナーとの交流が生まれやすい
この2つがポッドキャストの配信者側からみた特徴です。
安価で高性能な機材が入手できるようになってきたため、一般の方でも動画の撮影・編集・配信ができる環境が身近になってきました。とはいうものの、クオリティの高い動画を作成するにはコストも手間もかかるため、継続的に多くのコンテンツを提供するのはなかなか大変です。それに比べて音声データであるポッドキャストの場合は、配信者の負担が動画に比べて少なくなります。もっとも、コンテンツの質を高めようと思ったらそれに応じて手間とコストは増加しますので、あくまで”比較的”ではありますが。
ポッドキャストは地域FMのようなイメージと文化を持っているため、大手メディアに比べてリスナーとの距離感が近く、交流が生まれやすいという特徴もあります。リスナーの質問や要望などを反映して番組が作られるなど、いい意味での手作り感があるメディアとなっています。
【まとめ】
利用したことがない方にとっては、ポッドキャストの利点はわかりにくい部分があるかもしれませんが、現在でも非常に多くの番組が毎日情報を更新し続けています。
芸能人や有名人だけでなく、ニュース・教育・各種情報提供、さらには落語やお笑いなどのエンターテイメントから有名ブランドや企業などのアナウンス、一般の方が個人的に提供している番組まで、幅広いコンテンツが配信されています。Googleの分析ツールの提供によって、ポッドキャストの配信者がこれまで以上にそれぞれの目的に応じた効果測定が可能になりますので、さらに魅力的なコンテンツが作成されていくでしょう。今後のポッドキャストの発展に期待したいところです。
■参考文献
注1 Spotfy 「Spotifyって何?」
https://support.spotify.com/jp/using_spotify/getting_started/what-is-spotify/
注2 engadget日本語版 「Google、ポッドキャストの分析ツールをリリース」
https://japanese.engadget.com/jp-2020-05-06-google.html
Tech Crunch 「Googleがポッドキャストアプリにリスナー分析機能を追加」
https://jp.techcrunch.com/2020/05/06/2020-05-05-google-podcasts-finally-gets-listener-analytics/
Tech Crunch ”Google Podcasts is finally available on iOS”
https://techcrunch.com/2020/03/25/google-podcasts-is-finally-available-on-ios/
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