エコ建築を促す大成建設の「T-BIM® Environment」とは
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)は、建築における情報共有の効率を飛躍的に向上させましたが、使い方はそれだけではありません。
3Dモデルに複雑な情報を内包することができるようになったことで、非常に質の高いシミュレーションも可能にしました。
大成建設の「T-BIM® Environment」は、BIMを活かして、建築に関わる様々な環境要素を効率よく解析し、モデルデータを作成するための、新しいシステムです。
目次:
①環境解析を効率化するT-BIM® Environment
②省エネ需要の増加により、環境解析のニーズは拡大
③BIMデータの運用は、CSRの促進にも大きく関与
「T-BIM® Environment」の概要
T-BIM® Environmentが解決するのは、環境要素の解析を行った上でのモデリングの高速化です。
大成建設 公式アナウンス:https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2017/170412_3641.html
環境解析モデルの短時間形成を実現
建築物に影響を与える環境要素は、多岐に渡ります。
例えば風や熱、光、温度などの環境要素は、毎日の天候や季節によって大きく異なるため、建築物に与える影響は、その時々によって変化します。
そのため、建築物の環境解析を行うためには、各要素に応じたモデルを作成する必要があり、いささか時間とコストを要していました。
そこで開発されたのが、大成建設のT-BIM® Environmentです。
これは、BIMデータを使って、それぞれの要素の解析モデル作成に必要な共通データを抽出することができるよう作られたシステムです。
共通データを抽出し、各環境要素が与える影響を自動で計算することで、T-BIM® Environmentは総合評価を下し、結果を3Dマップで閲覧することを可能にしてくれます。
一つのシステムで複数の解析結果を出力できるようになったことで、作業効率は大幅に向上しました。
解析手法の大幅な刷新
これまでの環境要素のモデル作成は、一つの要素につき一つの担当者を必要としていたため、非常に時間がかかりました。
また、要素ごとに人員を配置しなければならず、人員コストも大きな作業となっていたのです。
解析モデルを一つの要素につき一人の体制で作成したあとは、それぞれのモデルの評価を一つずつクライアントに伝えなければなりませんでした。
情報共有に時間がかかるだけでなく、事態を混乱させ、クライアントの理解を阻害してしまう可能性すらあったのです。
そのような複雑な総合評価を伴う業務であった以上、クライアントへの説明にはそれなりの経験とノウハウを有した人材を必要としています。
誰でもできる仕事ではなかったため、人材育成の負担増大にも繋がっていたのです。
そこまでの人手を必要としていた原因に、解析のために必要な形状作成の業務が、かなり時間を要していたという理由が挙げられます。
T-BIM® Environment以前も、BIMデータは環境要素の解析に運用されていました。
しかし、環境解析は要素ごとにモデルを作成しなければならず、BIMデータをシステムに流し込めばOKというわけにはいかなかったのです。
そこで誕生したのが、今回のシステムです。T-BIM® EnvironmentではBIMデータから環境解析に必要なデータを、自動で抽出するため、担当者の手を煩わせることはありません。
T-BIM® Environmentは一見すると地味な自動化システムのようにも思えますが伺えますが、設計段階において、大きな効果を発揮することが期待できます。
「T-BIM® Environment」誕生の背景
このように、環境要素の解析の自動化が行われるにあたり、それを促した背景にも注目していきましょう。
高まる省エネ意識
一つは、社会が環境への配慮に積極的になったことや、クライアントの中で省エネ意識が高まったことが挙げられます。
温暖化や公害の深刻化により、多くの企業ではCSRとして環境保護の取り組みや、省エネ対策を推進することが求められつつあります。
建設においてもそれは例外ではなく、少しでも環境への配慮が行き届いた建物をということで、建物設計において、環境要素解析を求める声が大きくなっているのです。
これまでは多少の負担増大が発生しても、従来のシステムで対応できていた環境解析ですが、省エネ意識の高まりに伴い、相談件数が増加しました。
そのため、少しでも担当者の負担を軽減し、効率的に業務を進めていくニーズが発生したため、大成建設はT-BIM® Environmentのようなシステムの開発に着手したのです。
快適な居住環境の実現
また、環境解析は、快適な居住環境を実現する上でも重要な役割を果たします。
例えば、建物の空調の効率性についてです。
季節を問わず快適で過ごしやすい建物であるためには、くまなく空調が行き届き、それでいてエリアごとの寒暖差がゼロに等しい環境であることが求められます。
部屋の隅っこだけ熱が溜まってしまう現象や、逆に部屋の一部だけエアコンが効きすぎてしまうということは、できる限り避けたいものです。
そんな時にもT-BIM® Environmentは役立ちます。
BIMデータから作成した3D建物空間と、空調効果の解析結果を融合し、空調がどの程度均一に作用しているかを評価できるようにすることができます。
その結果、どのようにオフィスデスクなどを配置し、従業員が快適に働けるかをあらかじめ検討し、満足度の向上に努めることができます。
また、必要以上に空調を強くする必要もないため、エコフレンドリーな環境構築にも役立つのです。
「T-BIM® Environment」で得られるもの
このような環境解析の優れた特性を、T-BIM® Environmentによって、以前よりも格段にクライアントへ提供しやすくなりました。
最後に、この効率化が生むメリットについても見ておきましょう。
多様な建築物の評価の迅速化
一つは、多様な建築物の評価を、迅速に行えるようになったことです。
T-BIM® Environmentは、BIMデータがあれば、あらゆる建築物の環境解析を短時間で行うことができます。
これまで前例のない複雑な建築物においても、一般的な建物と同様のスピードで環境解析を行うことができるため、従来の手法に比べればその恩恵は大きいと言えるでしょう。
顧客との合意形成の迅速化
環境解析を、一つのシステムで一挙に仕上げることができるようになったことで、顧客との合意形成も素早く行うことができるようになります。
これまではバラバラだった解析結果を、一度一つにまとめて、わかりやすくクライアントに説明する必要がありました。
しかし、T-BIM® Environmentを使えば、同システムの中でデータをまとめて共有することができるため、クライアントへの説明もスムーズになります。
建設決定期間の短縮
クライアントとの意思疎通が迅速に行うことができれば、建設決定にかかる期間も大幅に短縮することができます。
環境要素の解析と、結果の統合にかかっていた時間が大幅に短縮されたことで、結果的に建設開始までの期間を早め、効率の良いスケジュールで工事を進めていくことができます。
環境解析を求めるクライアントが増えているため、その効果は非常に大きいと言えるでしょう。
おわりに
BIMデータを活用し、データ解析にかかる時間を短縮することは、大幅なコストパフォーマンスの向上につながるだけではありません。
工事にかかる費用や、時間を最低限度に抑えることで、建設に伴う公害の発生を抑え、社会の省エネ化も実現することができます。
環境問題への対策を求められる現場においても、BIMデータの活用は積極的に行われているのです。
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