ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンがトヨタ自動車系列企業と提携。そのIT戦略とは?
世界で最もポピュラーなゲームエンジンプラットフォームであるUnityは、ゲーム以外での活躍にもめざましいものがあります。先日、そんなUnityの提供を日本で実施しているユニティ・テクノロジーズ・ジャパンが、トヨタグループのIT戦略をサポートする、トヨタシステムズとのパートナーシップ契約を発表しました。
これまでもトヨタを含め、様々な企業に向けて技術を提供してきたUnityですが、このパートナーシップによってどのような変化があるのでしょうか。
今回は、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンがトヨタシステムズとパートナーシップを締結した背景や、そのIT戦略について見ていきます。
①ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンとトヨタシステムズの提携について
②Unityが持つリアルタイム3D技術のポテンシャルとは
③リアルタイム3D技術の強み
④Unity提携後のトヨタグループのIT戦略とは
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンとトヨタシステムズの提携について
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンとトヨタシステムズのパートナーシップ提携は、2021年4月に発表されました。両社は、トヨタグループにおけるモノづくりのデジタル化およびリアルタイム3D技術の活用に向けて、Unity製品の調達、導入・運用支援において協業を行うと取り決め、トヨタ自動車をはじめとするトヨタグループの全方面への技術提供が強化される見込みです*1。
Unityはこれまで、2D・3Dを問わないゲーム開発や、VR・ARコンテンツの提供を、スマホやPC、タブレットなどのあらゆるデバイスに向けてサポートしてきました。一方のトヨタシステムズは、トヨタグループ向けのITソリューションを立案し、各社に提供するといった業務を実施してきた会社です。
トヨタシステムズを通じて、Unityのソリューションがトヨタグループに最適化された形でスムーズに提供されるシナリオが想像できます。
Unityが持つリアルタイム3D技術のポテンシャルとは
Unityは汎用性の高いプラットフォームを提供しているだけでなく、世界でも稀に見る3D技術で他社を圧倒している企業でもあります。それがUnity独自のリアルタイム3D技術です。
ここでは、Unityのリアルタイム3D技術がどのようなポテンシャルを有しているのかについて、確認しておきましょう。
リアルタイム3D技術とは
Unityのリアルタイム3D技術は、あらかじめ用意された3Dをプログラム通りに動かすのではなく、現在の状況や環境を読み込みながら、その場で3Dを生成し、表現してしまうという技術です。
これまでの3D技術というのは、3Dアニメのようにあらかじめシナリオが用意されており、その通りに動かすことが限界でした。一方、Unityが実現しているリアルタイム3Dは、高精度な3Dをその場で生成し、挙動の計算もリアルタイムで行うというものです。
現実さながらのシミュレーションを実現するこの技術は、自動車業界はもちろんのこと、製造業や政府機関での活躍が期待されています。
圧倒的な没入感とインタラクティブを実現
リアルタイム3Dが特徴としているのは、圧倒的な没入感とインタラクティブの両立です。まるで本物のギアや精密機械を触っているような感覚で、仮想世界で生成したオブジェクトを操作することができるので、現実と見紛う体験を提供します。
また、リアリティのある仮想空間を実現しておきながら、そのコントロールはビデオゲームのように高い制御能力を備えています。自分が思い通りの挙動をリアルタイム3Dは実現してくれるため、非常にインタラクティブな体験を得られます。
リアルタイム3D技術の強み
リアルタイム3D技術のビジネス面での強みとしては、以下の4点が挙げられます*2。
コストの削減
まず、手軽に利用できるリアルタイム3Dを重用することで、高価な物理プロトタイプの利用機会を減らせます。また、設計とエンジニアリングの欠陥の早期捕捉にもつながるため、経済的・時間的コストの削減効果が見込めます。
市場投入の時間短縮
効率の良いシミュレーション技術によって、研究開発(R&D)のタイムラインを縮小し、自動化システムのトレーニングも効率よく行えます。その結果、製品の市場投入までの時間を短縮することが可能です。
製品利益率の向上
製品開発や製造に携わる人間の生産性が向上し、製品出荷後のアフターサービスの品質向上も実現します。その結果、確かな信頼性を獲得し、製品利益率の向上につなげられます。
販売の増加
従来のメディアよりもはるかに印象的なプレゼンテーションを実現できるため、製品に説得力を持たせられます。プレゼン効果の高まりを受け、販売数の増加へ直結する可能性もあるでしょう。
Unity提携後のトヨタグループのIT戦略とは
このように強力なメリットを持つUnityのリアルタイム3D技術ですが、トヨタ自動車をはじめ、トヨタグループのIT戦略はUnityとの協力関係から何を導くのでしょうか。
リアルタイム3D技術の活用機会増加
一つは、リアルタイム3D技術の全面的な活用です。現状、Unityの3D技術は多様な会社への提供が行われていますが、今回のパートナーシップ締結によって、Unityはトヨタグループへの関与が深まると考えられます。
リアルタイム3Dの提供もトヨタグループへ優先的に行われ、トヨタ自動車は競合よりも優れた3D技術活用の機会が得られるでしょう。
全方位的なDXの推進
トヨタグループが今回の提携で目指しているのは、グループ内におけるDXの全方位的な推進です。リアルタイムエンジン活用のノウハウを融合させ、製品開発や生産販売の全方位におけるDXを実現したいと述べており、トヨタシステムズはトヨタグループ向けの共通ソリューション事業の強化と拡張に取り組むとのことです*3。
日本企業は比較的DXが遅れているとされていますが、世界レベルの技術を有するUnityとの協業によって、今後数年間で抜本的な改革が進められるかもしれません。
おわりに
トヨタシステムズとユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのパートナーシップ締結は、日本の自動車産業の中でも先進的な取り組みと言えます。
お互いに世界最高峰の技術を持つもの同士のパートナー関係は、世界に先駆けて新しいIT戦略のあり方を提供してくれるかもしれません。
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参考:
*1 MONOist「トヨタグループのリアルタイム3D技術活用をUnityとトヨタシステムズが推進」
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2104/07/news036.html
*2 Unity「業界でのリアルタイム 3D 技術の説明」
https://unity.com/ja/solutions/automotive-transportation-manufacturing/rt3d-explained
*3 *1に同じ