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無事IPOを果たしたUnityの業績について、ちょっと調べてみた件

 ゲームエンジン分野で市場の50%以上のシェアがあると言われる「Unity」が、昨年IPOを果たしました。Unreal Engineの「Epic Games」と激しい競争を続けるUnityが、IPOでの資金調達に成功し、今後の動向が注目されています。
 IPOに際してUnityの財務状況が初めて明らかになりましたので、今回はその内容について少し調べてみたいと思います。

この記事でわかること
 ・Unityの業績と財務状況について
 ・UnityとUnreal Engineの今後について
 ・ゲームエンジンの可能性について

IPOで明らかになったUnityの業績と財務状況

 まずは、IPO準備の際に示された「Unity」の過去の業績と財務状況について、見ていきましょう。

 では「売上」から見ていきましょう。

■Unityの売上 *注1
 ・2018年 3億8000万ドル
 ・2019年 5億4000万ドル

 順調に伸びていますね。年間で42%を超える伸びを記録しています。
 Unityは2004年に、コペンハーゲンでゲーム開発を目的として創業しました。
残念ながら最初にリリースしたゲームはうまくいかず、その後ゲームエンジン開発の方にシフトチェンジしています。
 クロスプラットフォームで手軽に開発できることや、ちょうどiPhoneの発売(2007年)をきっかけとしたモバイル端末向けのゲーム開発と、タイミングがぴったりだったことから急速に業績を伸ばしていきます。

 とはいうものの、単に一社の売上だけを見てみても、これがどのくらいのボリュームなのか全くわかりませんよね。試しにゲームエンジンで、Unityと人気を二分しているUnreal Engineを作っている「Epic Games」と比べてみましょう。*注2

■Epic Games の売上
 ・2019年売上 42億ドル

 ダブルスコアどころか、桁が違いました。
 実は、Epic GamesはUnityと違い、自社でフォートナイトという人気のオンラインゲームを作っています。このゲームの売上も含まれるため、単純な比較をしてもあまり意味がなさそうです。
 ではゲームエンジンだけの売上はどの程度か?というのが気になる点ですが、Epic Gamesは非上場であることから、具体的な数値を見つけることができませんでした。

 Epic Gamesは、AppleからBANされる前の2018年に、年間30億ドルの利益を上げたとか、iOSプラットフォームだけで毎月4800万ドルの売上があった、という推計が出されています。*注3

 どちらにしても、フォートナイトの売上が圧倒的に同社の業績を牽引しているのは間違いなさそうです。
 一応、Unityのライバル社として比較しようとしましたが、どうやらビジネスの構造が違うことと、Epic Gamesの財務状況がはっきりしないことなどもあり、あまり比較しても意味がなさそうです。

 では、次にUnityの利益をみていきましょう。同じくIPO申請時のS-1で提出されたレポートから数値を抜き出してみます。いずれも2019年の数値です。

■Unityの利益(2019年)
 ・Gross Profit     4億2000万ドル
 ・Loss from Operations ▲1億5000万ドル
 ・Net Loss       ▲1億6000万ドル

 Gross Profitは日本だと「売上総利益(粗利益)」になります。売上から、製品の製造に直接必要な経費を引いたものです。
粗利率77%というのは、このようなIT系企業の場合、結構普通のようです。一般の製造業とか小売業では考えられないぐらいの利益率ですね。羨ましいことです。
 これだけの高い利益率を持っているため、一発ヒットすれば膨大な利益を得ることができます。
粗利率については、売上のボリュームが増加しても、それほど大きな変動はないはずですので、売れれば売れるほど利益が残る仕組みになっています。
 
 実はIT系企業で問題になるのは、開発費の方です。開発費が影響している項目が「Loss from Operations」です。日本であれば「営業利益」という項目に相当します。
 4億2000万ドルの粗利から、研究開発費・広告宣伝費・一般管理費を引いた残りが「Loss from Operations(営業利益)」ですが、2019年はマイナスになっています。

経費の内訳は以下のようになっています。

■Unityの経費内訳(2019年)
 ・Research and development(研究開発費)  2億6000万ドル
 ・Sales and marketing(広告宣伝費) 1億7000万ドル
 ・General and administrative(一般管理費) 1億4000万ドル

 一般管理費とは、水光熱費・通信費・人件費(間接)・家賃など、雑多な経費を指します。これらは企業として生産活動を維持するために必要な経費であり、売上のボリュームに対して比例するものではありません。
 広告宣伝費は、”Sales and Marketing”という科目になりますが、販促費の方がイメージにあってるかもしれません。出来上がった製品を広く販売するために必要な経費です。

 普通にビジネスが成立しているかどうかは、粗利から広告宣伝費と一般管理費を引いた金額を見るとわかります。
Unityの2019年決算では、ここが1億ドル以上のプラスとなっていますので、十分収益性のあるビジネスであることがわかります。
 研究開発費はいわば「未来への投資」ですから、別枠で考えた方が良いでしょう。スタートアップ企業では、売上のボリュームに対してこの「開発研究費」の金額が大きくなり、利益を飛ばしてしまうことはよくある話です。

 ここまで眺めてきた結果、Unityの経営状態について次のようなことがざっくりとわかります。

 1 順調に売上を伸ばしている(成長軌道に乗っている)
 2 研究開発費を除けば、利益を十分に確保できている(ビジネスの収益性はある)
 3 将来に対する投資も積極的に行なっている(将来性に期待が持てる)

 IPOの資料から現時点では、将来性もあり実績も上げている超優良企業と判断して良さそうです。
 

UnityとUnreal Engineの今後について 注目すべきポイント

 ゲームエンジンは、ゲーム開発に必要となる共通要素を、一つのパッケージにして使えるようにしたものです。
特に開発に膨大な労力を要する3Dゲームなどでは、一からこのような要素を作っていては大変ですので、優秀なゲームエンジンの活用が進んでいます。
 以前はハードウエアメーカーが、自社のプラットフォーム用として開発者に提供していたものや、ゲーム開発会社が自社で独自に開発したものなどが個別に存在していました。

 UnityやUnreal Engineは、一般に広く利用できる形でライセンス供給しているゲームエンジンとして、多くの開発者に利用されています。ほぼ2強と言っていい状態であり、まさにライバルといえます。
 2社の特徴として、Unityはクロスプラットフォームでの開発が容易で、比較的ライトユーザー向けのゲームに使われています。Unreal Engineは、超高精細な3D画像が生成できることから、ハイエンド向けとなっています。

 つまり、ある程度ゲーム開発分野で競合するところはあるものの、住み分けができているため、どちらかが他の一方を完全に制圧するような感じにはならないようです。
 アナリストの中にはこの2社が共存して発展できるぐらい、ゲーム分野は十分な市場規模を持っていると分析している人もいます。*注4

 Unreal Engineの開発元であるEpic Gamesは、Appleと手数料の問題で壮大なバトルをしている最中です。主力ゲームであるフォートナイトがApple App Storeから排除され、iOSユーザーに激震が広がったのが昨年の話です。
 一時は、Appleがフォートナイトだけでなく、Unreal Engineを使ったゲームアプリ全てをBANするのでは?なんて噂も耳にしましたが、流石にそれは現実離れしています。

 IT界を支配するApple帝国に反旗をあげた反乱軍Epic Games、というイメージで語られることもあったこの事件。しかし、Epic Gamesのバックには中国の巨大IT企業である「Tencent」がついていますので、決して「無力な新興企業」ではありません。
 Tencentと言えば、四半期で約2兆円の売上、毎日66億円の利益を叩き出し、いまだに成長を続けているという化け物企業です。トランプ政権での、中国IT企業に対する制限の影響も大したことではなかったようです。

 Epic Games対Appleは訴訟合戦が続いていますが、ゲームエンジンのセールスにそれほど大きな影響はまだないようです。Epic Games側に味方する企業も、多く参戦してきていることもあり、ある程度経過したらApple側も多少の妥協をしながら、無難に決着がつくのではないかと見られています。*注5

 一方Unityは、IPOも成功しAppleとの手数料トラブルにも巻き込まれず、順調に成長路線に乗っているように見えます。今後の注目すべきポイントとしては、次のようなところでしょうか。

■Unityの注目ポイント

 1 トップクラスのゲームでシェアを取れるか
 2 Unity Ads事業での収益が今後順調に伸びるか
 3 ゲーム以外の分野で利用が広がるか

 ゲーム業界では、トップクラスのゲームアプリが市場全体の売上のほとんどを持っているような構造になっています。そのため、Unityのシェアが全体の50%だとしても、その中にトップクラスのゲームが含まれてないと意味がありません。
 また、それなりに課金をするようなヘビーユーザーが利用する高精細3Dゲームでは、Unreal Engineのシェアが高い状況であり、それをどうやって打破していくかが今後の鍵になりそうです。

 次にUnityの売上の構造を見ていく必要があります。Unityは、大きく3つの事業部門に別れています。
 一つは、Unityの使用料で成立している部門(Create Solutions)です。Unityは、基本無料で使用できますが、拡張機能を使ったり、Unityで製作したゲームの売上が一定以上になることによって、課金されるモデルによる収益になります。

 実は全体売上の中で締める割合は、Create Solutions部門よりも次に紹介するOperate Solutions部門が高いようです。
 Operate Solutionsとは、より高度なゲーム開発支援とゲーム内広告表示で収益を上げるモデルです。ゲーム内広告が収益の柱となっているようですが、ここが今後順調に伸びるかどうかが、大きなポイントとなります。

ゲームエンジンの可能性について

 3つ目のポイントとしてあげた「ゲーム以外の分野で利用」は、Unityが特に力を入れて取り組んでいる分野でもあります。
 具体的には、自動車分野・医療分野・建築分野など、ゲーム業界以外での3D画像処理を中心としたアプリケーションの開発になります。VR/AR技術などとも連動しながら、ゲームエンジンを活用したコンテンツ製作に期待されています。

 ただし現時点では、まだそれぞれの分野での市場ボリュームは小さく、すぐに大きな収益に結びつくというものでもありません。また専門的な分野では、開発者がゲームエンジンに相当する部分も自作する傾向が強いため、うまくUnityがマッチするように進化するかどうかも未知数といったところです。
 何か、エピックメイキングになるようなキラーコンテンツでもできれば、右にならえで一気に広がる可能性はあるかもしれません。

【まとめ】
 今回はUnityの業績分析という、普段の記事ではあまり書かない内容にチャレンジしてみました。IPOしたての企業であることや、市場が世界的にコロナの影響を受けた異常な状況にあることなど不確定要素が多いため、現時点での業績だけで将来を見通すのは非常に困難だと言えます。
 また、ライバルのEpic GamesとAppleとのバトルも気になることろです。ただUnityは、現時点において十分な収益性を持ち、市場への訴求力も高く、将来への投資も万全な優良企業であることは間違いありません。
 ポケモンGOに続くような、世界中が夢中になれるゲームがUnityで、今後も作られていくことを期待しています。

■参考文献
注1
Unity Software Inc. Form S-1
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1810806/000119312520227862/d908875ds1.htm
注2
Venture Beat ”Epic Games seeking to sell stake for $750 million at $17 billion valuation”
https://venturebeat.com/2020/06/15/epic-games-shareholders-seeking-to-sell-stake-for-750-million-at-17-billion-valuation/
注3
Tech Crunch 「Epic Games、今年の利益30億ドルか――『フォートナイト』のヒットで絶好調」
https://jp.techcrunch.com/2018/12/28/2018-12-27-epic-fortnite-3-billion-profit/
注4
Tech Crunch 「ゲームエンジンのUnityはIPOを控えて業績好調」
https://jp.techcrunch.com/2020/08/25/2020-08-24-unitys-ipo-numbers-look-pretty-unreal/
注5
Tencent 「2020 THIRD QUARTER RESULTS PRESENTATION」
https://www.tencent.com/attachments/3Q20_earnings_presentation.pdf

 


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