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橋梁におけるCIM活用事例2選|導入に必要な7項目もご紹介します

重要なインフラ設備の1つである橋梁。橋を架けることにロマンを感じる技術者も多いのではないでしょうか。橋梁工事をはじめ土木工事ではIT化が求められ、国は2025年までの「原則CIM化」を求めています。

今回は橋梁工事のCIM化について、国内でのCIM活用事例と知っておきたいガイドラインをご紹介します。

この記事を読むと、以下の3つの事がわかります。
1.橋梁で知っておきたいCIMガイドライン
2.国内のCIM事例
3.CIMの活用で知っておきたい7つの項目

橋梁施工で知っておきたいCIMガイドライン

CIMとはConstruction Information Modelingの略であり、2012年に国交省から提唱された取り組みです。海外でも導入が進むBIMと同じく、3次元モデルを中心にデータを共有して作業を効率化しようとする取り組みです。

2021年7月時点で、CIMには土木・河川・ダム・橋梁・トンネル・機械設備・下水道・地すべり・砂防・港湾と10項目にわかれたガイドラインがあります。つまり橋梁施工を行う際には、CIMガイドラインにおける橋梁編に則って進めていきます。(※1)

工事における調査・設計・施工のCIMモデルを維持管理に活用する際も、この橋梁編ガイドラインが必要です。

またCIMとは日本独自の表現で、主に橋梁やダムといった土木を指します。しかし今ではBIMと統合し、BIM/CIMという表現に移行しつつあります。

橋梁における国内のCIM活用事例2選

国内の橋梁工事ではCIMを活用した工事が増えており、参考になる事例が多くあります。今回はその中から2つの橋梁工事について、CIMの活用事例をご紹介します。

国道24号寺田拡幅

国道24号寺田拡幅工事は、京都府城陽市内など国道24号における交通混雑の緩和、交通安全の確保などを目的としています。(※2)

新名神高速道路と一体となり、約2.1㎞という長い道路を拡幅工事する事業です。国道24号寺田拡幅は23年度に開通予定であり、2021年7月現在ではまだ工事が続いています。

寺田拡幅工事では跨線橋(こせんきょう)があるため、桁高制限や架設時の制約、維持管理性向上に配慮した計画や設計が必要です。この跨線橋は約60mとスパンが長く、近鉄京都線に並走した城陽市道10号線、2361号線とも交差しています。そのため、CIMを活用して様々な面から効率化を図りました。(※3)

CIMモデルで協議を効率化

寺田拡幅におけるCIMモデルの作成は、Civil 3Dで構造物モデルを作り、Infraworksに落とし込み3次元地形データと合成して作成しました。Civil 3D もInfraworksも、BIM/CIMツールでお馴染みのオートデスク社のものです。

橋梁一般図や架空線配置図、歩道橋の一般図や1期線図面と合成して、より詳細なモデルを作成しました。CIMモデルは、以下の協議で活用して成果を出しています。

①NEXCO協議
新名神河川橋と新寺田橋の橋脚位置を合わせるべきかをCIMモデルを活用して検討。視覚的に多方面から橋梁全体を把握でき、早期合意に至る

②近鉄協議
架設工法を決定するために、送り出し架設工法とトラックレーン架設工法のCIMモデルを作成。関係機関の理解がスムーズになり、早期合意に至る。さらに移設する架空線計画図をCIM化したので上部工との間隔が見える化され、早期の移設計画決定にも貢献。

上記のように、CIMモデルは“見える化”に大きな力を発揮します。関係各位も図面を見せられるよりCIMモデルのほうが圧倒的にイメージしやすいので、早期の合意を得やすくなります。

CIMモデルは、対象となる橋梁の位置や形式が分かるレベル「詳細度200」で作成しており、作成日は約10日です。もしCIMモデルを配筋やボルト形状までモデル化する「詳細度400」で作成すると、その10倍以上かかると予想されています。

当然ですが、詳細度を上げて精巧なモデルを作成するにはツールを使っても時間がかかるのです。

付属物の取り合いの見える化

寺田拡幅では、橋脚に必要な付属物の取り合いもCIMモデル化しました。支承や下部工の検査路、排水管といった部分をCIMにすることで、確認がスムーズになりました。

また橋脚から常設足場への点検経路をより明確にするために、この部分のみ3Dプリンタで出力しCIMと併用しています。3Dプリンタの出力は手間がかかるものですが、即座に手に取って確認できるため、CIMと併用して効果を上げました。

施工図およびアニメーションの作成

CIMソフトで施工アニメーションを作成することで、錯綜工事での問題点を見える化して確認しました。寺田拡幅工事は新名神高架橋工事との錯綜工事になる予定でしたが、新名神高架橋の施工工程及び計画図が不明でした。そこでCIMモデルで新名神高架橋の橋脚が完成しているものと想定してCIMモデルを作成。さらにアニメーションをつけることで、錯綜工事の問題点を洗い出せるようにしたのです。

今後の展望

今回の寺田拡幅では、関係機関協議の円滑化を目的としているため橋の周辺構造物までをCIMで作成しました。つまり、測量や計画といった上流段階ではCIMを導入していません。そのため、今後はもっと包括的なCIMの導入を検討しています。さらに包括的な維持管理システム活用を目指し、CIMプラットフォームとして活用していく展望を持っています。

湖陵多岐道路多岐PC上部工事

島根県にある湖陵多岐PC上部工事(2019年1月完成)でも、CIMを活用して作業の効率化に大きな成果を上げました。次で詳しく解説していきます。(※4))

CIMを使ったフロントローディングの実施

フロントローディングとは初期の工程に時間をかけ、作業を前倒しで進めることを指します。前段階でじっくり正確に進めることで、後工程で大きな手戻りが発生しません。

湖陵多岐では、フロントローディングの段階からCIMを導入しています。発注時は二次元図面だったため、その図面を基にCIM専用ソフトを使って構造物の3Dモデルに変換。そこから次で紹介する4DCIMを作成し、工事計画のベースを作成しています。

4DCIMモデルによる作業内容の可視化で日数を12%短縮

湖陵多岐では、前述の3Dモデルに時間軸のある「施工工程」と橋体や付属物の「属性情報」の2つの情報を与えて4DCIMを作成しました。

この4DCIMによって、以下の4つの成果を上げています。

・排水管と検査路の干渉発見
・進捗管理の効率化
・周辺住民への工事説明会への活用
・見える化による安全性の確保

時間軸のある施工工程情報を持つ4Dモデルを基に施工計画を作成することで、表計算ソフトよりも進捗確認がより行いやすくなります。施工シミュレーションから施工条件までを見える化することで、生産性の向上に成功しました。事前に作業内容が見えるため、結果として全体施工日数を約12%も短縮できています。

さらに視覚的にわかりやすい4Dモデルは、そのまま周辺住民への説明にも活用できます。結果として、資料作成の手間を省きました。また湖陵多岐では揚重機スペースの確保、仮設桁と車道の間隔確認にも活用することで安全性確保の効率化にも貢献しています。

ドローンによる空撮で進捗確認

進捗確認は4DCIMモデルのほかに、定期的にドローンで空撮も行って確認しました。進捗遅れには作業員や機械といったリソースを再配置するなど早期対策ができ、進捗管理に大きく貢献しています。

MR技術を活用した配筋作業

配筋作業ではMR技術(複合現実)を使うことで、従来のマーキング作業と比べてアンカー位置出しの作業時間を20%削減できました。

湖陵多岐工事ではwindowsで動作するMRデバイスを使用しています。専用ソフトでCIMのモデルデータや位置・縮尺を合わせて現実空間に投影し、作業を効率化しました。また遠隔で3Dデータを共有するために、クラウド上で管理できるコンテンツマネジメントシステム(CMS)も使用しています。

トータルステーション(TS)とタブレット端末を連携させた測量

湖陵多岐工事ではTSとタブレット端末を連携させ、測量にも活用しました。結果として、従来のTS測量技術と比べて計測作業に必要な人および作業時間を約60%も削減できたのです。誤差も従来とほぼ変わらない精度を保っており、人が行わないことで精度が落ちることはありません。

CIM活用によって現地で位置出し作業をする必要がなくなり、2人必要であった計測作業を1人で行えるようになりました。

2021年7月時点で大野油坂道路「九頭竜川橋」上部工事も行っており、CIMの施行事例となるよう検証中です。CIMを使いこなす技術者不足などまだまだ課題が残りますが、今後も取り組みを続けていくと明言しています。

CIMの導入に必要な7つの項目

CIMでは3次元モデルを基にデータを共有し、生産システムを効率化したり高度化したりすることを目的としています。

国交省ではCIM活用において以下の7つの実施項目を公開していますが、その中から4つの項目を実施することが求められています。

a.契約図書化に向けた CIM モデルの構築
b.関係者間での情報連携及びオンライン電子納品の試行
c.属性情報の付与
d.CIM モデルによる数量、工事費、工期の算出
e.CIM モデルによる効率的な照査の実施
f.施工段階での CIM モデルの効果的な活用
g.その他【業務特性に応じた項目を設定】
引用:CIM JAPAN BIM/CIM 実施要件7項目への対応(案)より

中でもc.の属性情報の付与は必須ともいえる項目で、国交省が強く求めていることです。今回の事例でいえば湖陵多岐工事が属性情報を与えてCIMデータを作成しており、進捗管理の効率化に成功しています。

今まで職人の技術に重きを置いていた建築業界ですが、今では原則CIM化に向けてIT化が急速に進んでいます。突然デジタル化することは簡単ではありませんが、上記の7項目を踏まえ、自社で始められることを検討してみてはいかがでしょうか。

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※1 「CIM導入ガイドライン(案)」
※2 https://www.kkr.mlit.go.jp/kyoto/project/vitality/grt3670000002gg6.html
※3 https://www.kkr.mlit.go.jp/plan/happyou/thesises/2018/pdf05/ino2-19.pdf
※4 https://www.ihi.co.jp/ihi/technology/review_library/review/2020/_cms_conf01/__icsFiles/afieldfile/2020/06/30/15_ronbun7.pdf

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