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建築物の維持管理にBIMを活用するメリットとは?現状と課題を解説

BIM運用の重要性に注目が集まり、実際の導入企業も増加傾向にありますが、まだ十分に普及、活用されているとは言えないのが現状です。特に建築物の維持管理におけるBIM活用は、高いポテンシャルを秘めていると言われながら、運用ケースはわずかにとどまっています。

この記事では、そんな建築物の維持管理にBIMを活用するメリットや、BIM運用の課題について、政府が掲げる理想的なBIM活用のビジョンと共に解説します。

目次:

  1. BIM導入の主な目的
  2. 建築物の維持管理における課題
  3. 建物の維持管理にBIMを活用するメリット
  4. BIM活用の現状と課題
  5. 政府が掲げる理想的なBIM活用のビジョン

BIM導入の主な目的

BIMはBuilding Information Modelingの略称で、3Dモデルに多くの情報を付与し、従来よりも柔軟な3Dモデル活用を推進できる技術です。

BIMモデルの最大の特徴は、3Dモデルの中に設計図面に必要な情報を全て内包することで、情報共有を円滑にしたり、その質を向上したりすることができる点です。従来の現場では、紙の図面と3Dモデルを別々に運用したり、工程ごとに図面を作り直すなどの作業が発生していたため、情報共有にかかる手間が多くかかっていました。

このような現場にBIMを導入することで、図面作成の手間を初回のみで完結させ、何度も図面を作ったり、図面を修正したりする手間を大幅に削減することができます。BIMモデルが一つあれば、設計から施工、そして維持管理に至るまで、全ての業務における図面ニーズをカバー可能です。

建築物の維持管理における課題

建築物の維持管理の領域では、そもそもどのような課題が問題視されているのでしょうか。最大の問題は、維持管理にかかるコストです。耐用年数は建物によって異なりますが、現状の維持管理のプロセスは、施工の際に用いられた図面は維持管理にまでは共有されず、維持管理向けに新たに図面などの情報を揃えているケースが一般的です。

そのため、維持管理のための図面作成コストが発生するだけでなく、施工時の図面とは都合が変わってしまい、材質などの詳細情報が正しく共有されず、点検や補修工事の際、余計な費用がかかってしまうケースが見られます。

その結果、建物の維持管理負担は必要以上に大きくなり、本来必要のなかったコストが上乗せされ、建物の健全な運営を阻害している事態に発展しているのが現状です。

また、コストが割高にかかっていながら、正しく点検や補修工事が行われない余地を残してしまっていることも考えられます。本来想定していた耐用年数を下回ってしまったり、期待されていたような状態を維持できなくなったりすることも起こりうるでしょう。

建物の維持管理にBIMを活用するメリット

このような問題を解消するため、導入を進めるべきとされるのがBIMです。BIMを建築物の維持管理に導入することで、維持管理のコストを大幅に削減することができます。

BIMモデルは、設計や施工はもちろん、竣工後の維持管理にも使うことができます。デジタルデータとして保管・共有するだけで、維持管理における図面作成のコストや、調査コストを削減可能です。

また、共有されるBIMモデルは設計時に使われるものと全く同じなので、極めて正確な情報を維持管理部門に引き継ぐことができます。従来では共有されてこなかった部材情報などが引き継がれるので、補修時に不要な材料費がかかったりする問題を回避可能です。

維持管理業務の効率化を実現し、少ない人数やコストでも効果の高い業務遂行を推進します。デジタルデータなので図面の保管スペースを圧迫することはありませんし、維持管理業務に伴うログを適宜記録し、維持管理の現状把握を高いレベルで実行可能です。

BIM活用の現状と課題

BIMを有効活用できれば、企業は優れた業務効率化を実現できますが、一方でBIMの活用についてはまだまだ消極的であるのが現状です。国土交通省が2021年に発表したデータによると、BIM活用を進める企業や、関心を持つ企業は徐々に増えているものの、BIMの活用事態は部門ごとにとどまっており、一貫してモデルを活用しようという動きは消極的とのことです*1。

BIM運用は作成したモデルを一環活用することで、高い成果を残すことができるものですが、そういった運用体制が整備されていない点は、早急に改善を進めたいと言えるでしょう。

また、BIM運用へと踏み切れる企業が大企業に限定されている点も問題と言われていますが、これにはBIMソフトを購入するには多額のライセンス料金がかかることや、運用のためのマシン環境の整備、あるいは人材の教育、確保にお金がかかることも背景にあります。

中小企業向けの経済的支援を拡大するなどして、BIM活用をより広めることが、一貫したBIM活用の推進にもつながると期待されます。

政府が掲げる理想的なBIM活用のビジョン

日本政府は建設分野におけるBIM活用に大きな期待を抱いており、理想的なBIM活用のビジョンを共有することで、広く技術を普及することを促しています*2。

政府が掲げるBIM活用のビジョンには、

  • 高品質・高精度な 建築生産・維持管理の実現
  • 高効率なライフサイクルの実現
  • 社会資産としての建築物の価値の拡大

という3つの要素が含まれます。質が高く、精度にも優れる建築生産を実現し、維持管理に至るまでクオリティファーストでいられる環境の整備はもちろん、無駄な工程を排除して迅速に竣工にたどり着ける仕組みづくりが可能になるとしています。

また、BIMによって建物のデータ化を推進し、客観性の高い建築物の評価を実現することで、資産価値の向上や建物活用の可能性を広げることが実現するとしているのが特徴です。

共通認識としてこのようなビジョンが広がり、正しいBIM活用の文化を浸透させることができれば、BIMの利用価値も高まっていくと期待できます。

まとめ

この記事では、建築物の維持管理におけるBIM活用の可能性について、解説しました。維持管理分野でのBIM活用は、既存の維持管理における課題解決を促すことが期待される反面、導入面などに課題を抱えています。

中小企業や個人向けのBIMの普及が進めば、一貫したBIM運用に繋がり、さらなる経済成長が実現するでしょう。

 

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参考:
*1 国土交通省「建築分野におけるBIM推進-「維持管理BIM」の取組みと課題-」
http://www.nilim.go.jp/lab/bbg/koen2021/pdf/%E4%BD%8F%E5%AE%85%E7%A0%94%E7%A9%B6%E9%83%A8%E9%95%B7.pdf p.3

*2 国土交通省「建築分野におけるBIM活用促進」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/sankankyougikai2019/infrastructure/dai3/siryou4.pdf p.3

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