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足羽川ダムの建設はCIMの積極活用で設計・施工の効率化を実現

福井県の足羽(あすわ)川ダムは、国内最大規模との治水ダムとして建設が進められています。
大規模な治水ダムである一方、地形が複雑だったことや多量の労働力が求められることから、設計効率化の方法の一手法としてCIMが採り入れられました。
この記事では足羽川ダムの概要とCIMをどのように活用しているのかについて紹介します。

足羽川ダムは建設中の治水ダム

まず足羽川ダムの概要についてご紹介します。
足羽川ダムは、福井県の九頭竜川水系の部子川に建設中のダムです。
建設の目的は治水管理で、足羽川、日野川、九頭竜川の下流を水害から守る効果が期待されています。

ダム建設については、2004年7月に豪雨があり、足羽川流域などで多くの世帯で浸水被害が発生したことも後押しとなり早くの完成が期待されているのです。(*1)

足羽川ダムは流水型の重力式コンクリートダム

※引用:国土交通省|目で見るダム事業2007(4)参考資料

ダムとは、川をせき止める構造物のうち、堤頂までの高さが15m以上のもので、地形条件、地質条件、洪水吐きの配置、景観などさまざまな観点から建築方式が決定されます。(*2)

足羽川ダムは、流水型の重力式コンクリートダムで堤高が約96m、総貯水容量が約2,870万立法メートルという開発規模で計画されています。

重力式コンクリートダムとは、ダムにかかる水圧をダム自体の重さで支える構造で、コンクリートダムの中で最も多い形式です。

横から見た場合に断面が三角形になっているのが特徴で、水の力をダムの重さで支えています。

また、ダムは、普段から水を貯めておくかどうかの意味で二つに分けられます。

・流水型ダム(治水目的):通常は水門が開かれているのでダムに水がほとんど貯まらず、流れてきた水がそのまま下流へ流れていきます。

集中的に雨が降った場合でも、一度に下流地域へ大量の水が流れないように流水量が管理されています。

・貯留型ダム(利水目的):貯めた水を利用する目的があり、通常時に一定量の水が貯まるように水門が閉じています。

洪水時には水門を開いてダムに貯まった水を放出することでダムの決壊を防ぎます。

足羽川ダムは流水型のダムのため、通常時は水の流れを妨げません。

もし台風や集中豪雨でダム付近に多くの水が集まった場合には、下流に流れる水量が調節可能となります。

<h3>足羽川ダムの建設は地形上の制約が大きい</h3>

足羽川ダムを建設するにあたり多くの課題があります。

ここでは課題の一例を紹介します。

<h4>完成までの期間が短い</h4>

足羽川ダムは2020年11月15日に本体建設工事起工式が開催され、 2026年度中の完成を目指しています。

BIMやCIMが本格的に活用され始める前は、一般的にダムの建設後期が10~20年とされていたため、かなり短納期で完成を目指していることがわかります。

<h4>足羽川ダム周辺の地形が狭く勾配がきつい</h4>

流水型ダムは、水を貯める必要がないため、貯留型ダムに比べるとダムの高さは必要ありませんが、水が流れ出るゲート設備は低い場所に設置しなければなりません。

しかし、足羽川ダムの場合は周辺の地形が谷状になっていて、低標高部が狭くなっているため、ゲート設備設置の難易度が高くなっています。

さらにダム工事に欠かせない工事用道路の整備についても、足羽川ダム周辺は急峻地でカーブも大きく、山の対岸に渡るための橋をかける時点から多くの課題がありました。

ダムには施設や堤体の打設が必要で作業スペースが不可欠です。しかし、対岸は切土部分の勾配が途中で変わっていくため、階段状に基礎を作ろうとすると人と工作機械が近すぎて接触のリスクがありました。

足羽川ダムの建設にはCIMの活用が便利

足羽川ダムはここまでお伝えしてきたように地形要件が厳しい場所に建設が予定されています。
また、施設と堤体のどちらも並行して作業する必要があったため、施工計画にも十分な検討が必要でした。

そのため、リフトのスケジュールに沿った打設シミュレーションや施工の最適化、リアルタイムな設計変更などに対応するべくCIMが大いに活躍したのです。

なおCIMを活用するメリットについては、別ページの「【土木業関係者必見】CIMは本当にメリットがあるの?概要とメリットを解説」でより詳しくご紹介しています。

足羽川ダムのCIMモデル作成

足羽川ダムの建設でCIMを用いるためには、まず地形モデルの新規作成が必要です。
CIMでモデルを作成する際は、初めに国土地理院が発行する標高点の情報をZ軸の値に設定したり、3次元測定の結果を読み込んでデータ化したりと状況によりいくつかの方法があります。

足羽川ダムでCIMデータを作成する場合には、レーザープロファイルなどにより現況の地形を3Dモデル化するところから始まりました。

堤体やコンクリート、型枠、法面処理工事、通廊、放流管ゲートを3Dで作成し、各々の統合モデルの干渉などを確認すると、ゲートの詳細設計が3Dで実施できます。

ダムの筐体は約2万か所のブロックに分けて設計されます。
さらに各々の部位のコンクリートを打設する日を設定する場合には、緻密な計算が欠かせません。
加えて配合区分や堤体の形状は日々の設計の進捗に伴い変更されるため、時間をかけ過ぎずに設計図面に落とし込むことと、複雑な形状を正確に図面化する作業が重要です。

CIMのモデルデータを設計効率化や手戻り防止に活用

従来のダム設計では、地形の測量図をもとに掘削線や堤体の形状などを含む横断図を一つ一つ作成していました。
また、断面の解析についても熟練技術者の経験が不可欠でした。

足羽川ダムの建設では、AutoCad Civil3Dで作成したモデルデータとVBAマクロを組み合わせてモデルをブロック毎、 スライス毎に分けられるようにしました。
CIMデータを作成すると3Dモデルを一つ作れば任意の場所で横断図が出力可能になります。
実際にCIMをもとに20ブロックに分けて100断面以上の横断図が作成されました。(*3)

このほかにも、CIMの3Dデータを用いて、数量計算部分を自動で処理することで数量計算や積算が最大限効率化するフローとしました。
またジョイントラインなど必ず必要な寸法線の作成も自動化したのです。

CIMモデル作成にかかった作業時間をまとめると、作業モデル作成には93.5時間、スライス図作成は29.5時間となりました。
一度CIMデータを作成したあとはモデルの合成、分割、数量計算、断面図の作成や修正で設計効率化が図れたことがわかります。

設計完了後にもCIMデータが活用可能

CIMで一度3Dモデルを作ると施工モデルへの流用も可能です。

CIMデータから動画やVRを作成すると、ゲート室の空間のスペースや作業性の確認、ゲート室の広さや進入時の動画などの確認が可能です。

また、ダムの完成状態が任意の視点から確認できるため、景観検討や地域住民への啓蒙や合意形成にも活用可能です。

まとめ

ダム作成において設計ミスや設計変更の修正漏れ、情報の転記ミスなどが発生すれば大きな手戻りになるリスクがあります。

足羽川ダム建設では、地形要件が厳しく従来の技術やノウハウに加えCIMを使った新しい技術も取り入れられました。
CIMデータは3Dモデル化に多くの時間が必要となるため、採用に抵抗がある場合もあります。
しかしCIMでモデルデータを作成することで、設計の一部を自動化が可能となり手戻りが抑制できました。
さらに動画作成やVRモデル作成などにCIMデータを活用することで全体の効率化も図られているのです。

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*1 https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kasen/asuwagawadam.html
*2 https://www.mlit.go.jp/river/pamphlet_jirei/dam/gaiyou/panf/dam2007/pdf/4.pdf
*3 https://www.n-koei.co.jp/rd/thesis/pdf/201903/forum27_006.pdf

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