Google Oneで提供されるVPNの使い方<日本未対応>
Googleの有料ストレージサービスである「Google One」。
無料で使えていたGoogleドライブにおいて、容量に制限がかかることが明らかになり、「Google One」への切替を検討した方も多いのではないでしょうか。
この「Google One」で、一定の条件を満たせばVPNが利用できることになり、ビジネスユースでも検討したいサービスとなりつつあります。
残念ながら日本国内での利用はまだできませんが、徐々に提供エリアを拡大しているようですので、今のうちにどんな内容なのか少し調べておきましょう。
この記事でわかること
・Google Oneについて
・VPNの仕組みと、Googleが提供するVPNの概要について
・iOSへの対応や提供地域について
Google Oneとは何か
まず初めに、「Google One」についておさらいしておきましょう。
検索サービスで多くのユーザーを持つGoogleは、無料のオンラインサービスをいくつか提供しています。
例えば、GmailやGoogleドライブなどが有名です。特にGmail登場当初は、「こんな高機能なメールサービスが無料で?」というぐらい衝撃的な出来事でした。
Gmailは、当時の最先端技術の一つである「Ajax(エイジャックス)」を取り入れ、都度保存しなくても書きかけのメールを自動保存してくれるなど、画期的な機能を搭載していました。
またGoogleらしく、メール内のワードでも即座に検索・抽出することができるなど、当時提供されていた他のWebメールサービスとは一線を画す高機能さが特徴となっていました。
Yahoo!メールやマイクロソフトの提供するOutlook(旧Hotmail)などに比べて、明らかに高性能で使いやすいため、多くのユーザーに受け入れられ徐々にシェアを拡大していきます。
近年ではAndroid端末の普及に伴ってさらに利用者が拡大しており、Webメールの代表格として圧倒的な存在感を示しています。*注1
さらに、Googleが提供するGoogleカレンダーやGoogleドライブなど、他のサービスとの連携も抜群です。
一度これらのサービスを使ってしまうと、元には戻れない。それぐらいの快適さが多くのユーザーを確保し、シェアを維持している最大の理由となっています。
このように、Googleが無料で提供しているサービスの一つに「Googleドライブ」というオンラインストレージサービスがあります。「Googleドライブ」自体は、オンラインストレージといくつかのWebアプリケーションを総称したものですが、ここではストレージに注目してみましょう。
「Googleドライブ」は、Gmailアカウントを持ってさえいれば誰でも無料で自由に利用ができ、一定の条件を満たせば容量無制限でデータをストックできる。そんな素晴らしく気前の良いサービスでした。
それが2021年6月からはGoogleフォト・Googleドライブなどを合わせて15GBまでという、容量制限がかかるようになってしまいました。
Googleによると、世界中で一日にアップロードされるデータ量は430万GBにもなるということですので、いくらなんでもこの先ずっと無制限にストレージを提供することは不可能であるという判断でしょう。
一定以上の容量を確保したいのであれば、有料サービスに移行するようにアナウンスされました。
こうして新たなサービスとして登場したのが「Google One」です。基本的には必要な容量に合わせて月額課金されるサブスクリプションであり、簡単に利用を開始することができます。
「Google One」の具体的なプランは次のようになっています。
・無料プラン 上限15GB
・ベーシックプラン 上限100GB・最大5人と共有・サポートあり 月額250円
・スタンダードプラン 上限200GB・最大5人と共有・サポートあり 月額380円
・プレミアムプラン 上限2TB・最大5人と共有・サポートあり 月額1,300円
これ以外にも2TBを超える契約も可能であり、段階的に料金が設定されています。
Google Oneを利用したい場合、スマホ用のアプリから簡単に申し込みができます。
1)「Google One」アプリを起動
2)「設定」>「メンバーシップにアップグレード」を選択
3)メンバーシップのオプションから各プランを選択
4)定期購入に使う支払い条件を選択
これで設定は完了です。
現在のプランが、選択したグレードに切り替わったことを確認できればOKです。
基本的にはストレージ容量を増加させるだけのサブスクリプションサービスですが、いくつか特典がついて来ることがあります。
いつもという訳ではありませんが、Google Playで利用できるギフトがプレゼントされたり、ホテルを特別料金で利用できるなどの特典が過去には実施されていました。*注2
オンラインストレージが主なサービスとなる「Google One」ですが、前述した通りAndroidユーザーがモバイル環境で利用する状況に対応するため、セキュリティを確保できるVPNサービスの提供が2020年に開始されました。
当時アメリカ国内だけだった提供エリアも順次拡大されており、直近ではiOSにも対応開始となりました。*注3
VPNの仕組みと、Googleが提供するVPNの概要
インターネットを使ってどこかのサイトにアクセスしている時、私たちはさまざまな情報をやりとりしています。
このような情報は「パケット」という単位に分割され、誰もが利用できる一般公衆回線によって送受信されます。誰もが使えるからこそ、よからぬ目的を持ってさまざまな情報に不正アクセス(ハッキング)できてしまうことが、セキュリティ上の課題となっています。
不正アクセス対策として、インターネット普及当初よく利用されていたのが「専用線」でした。限定されたユーザーだけが使える「専用の回線」を設置することで、ハッキングを防止することができます。
しかし、専用線は高額なコストがかかることがネックであり、気軽に一般の人が使えるという訳ではありませんでした。
そこで、一般公衆回線を利用しながら「SSL」などの暗号化技術を導入することで、安全を確保する方法へと進化してきました。VPNもこのような暗号化技術の一つであり、基本的には一般公衆回線を使いながら、まるで専用線を使っているようなセキュリティを確保できるというものです。
VPNに利用されている代表的な技術は「トンネリング」・「カプセル化」・「暗号化」の3つです。
「トンネリング」は、パケットが通過する仮想的な通信経路を確保することで、セキュアな通信を実現する技術です。一般公衆回線の中に、専用線を仮想的に構築したようなイメージと考えれば良いでしょう。
さらに、そのパケット自体を特別な通信プロトコルで包み込むのが「カプセル化」です。このことにより「カプセル化」が解除されない限り、第三者が中のデータにアクセスすることができません。安全な鎧を身につけているイメージですね。
最後に本体のデータ自体を「暗号化」することで、例え何らかの方法でデータにアクセスすることが出来たとしても、その内容を読み取れないように保護します。
インターネット上に安全な経路を確保し、暗号化されたデータを鎧で包み込んで送受信するという、三重の守りを固めているのがVPNという仕組みです。*注4
※ここまで紹介したVPNの仕組みは「インターネットVPN」というものです。VPNにはもう一つ「IP VPN」というのもありますが、今回の記事とは関係が薄いのため説明を割愛しました。
※VPNは「Virtual Private Network」の略で、日本語では「仮想的な専用回線」を意味します。
Googleが提供するVPN
Googleは、有料ストレージサービス「Google One」のプレミアムプラン(2TB)以上の契約者に対して、2020年からVPNの提供を開始しました。
当初アメリカ国内のみの提供でしたが、現在では18カ国へと地域を拡大しています。残念ながら現時点で日本はエリアから外れていますが、いずれ利用できるようになることを十分に期待して良いでしょう。
注意点として、VPNだけをGoogle Oneと切り離して利用することはできません。あくまでGoogle One利用者に対する「特典」として提供されているという位置付けになります。
Googleは、VPNサービスを提供する業者ですら信用できないと宣言しています。
実際にVPNサービスそのものに脆弱性があったり、ユーザーデータに対して不要なアクセスを要求したり、ユーザーが保護しているデータを販売するなどといった例があげられています。*注5
Googleは自身の提供するVPNの特徴として
1)パフォーマンスを過度に低下させない
2)セキュリティ・プライバシー保護を強化
3)ユーザーのオンラインアクティビティの識別もログの記録もできない
4)クライアントのオープンソース化で透明性を確保
などをアピールしています。
どんなにVPNで第三者からの攻撃を防いでも、VPN提供業者自体はアクセスできるため、信頼できない業者を利用するのは危険です。
そこでGoogleブランドを背景として、オープンソース化することでクライアントアプリを世界中のエンジニアが常時チェックできる仕組みを導入し、最高レベルのセキュリティを確保できるというのがウリとなっています。納得せざるを得ない説得力があります。
iOSへの対応や提供地域について
提供エリアはサービスリリース当初から順次拡大され、現在(2022年2月現在)以下の18カ国となっています。
<VPN提供エリア>
オーストリア・ベルギー・カナダ・デンマーク・フィンランド・フランス・ドイツ・アイスランド・アイルランド・イタリア・メキシコ・オランダ・ノルウェー・スペイン・スウェーデン・スイス・英国・米国
日本への提供予定時期などに関するアナウンスは、現在のところ見当たりません。できるだけ早く提供されることを願うばかりです。
また、提供エリア内であっても利用可能なデバイスはAndroidだけであり、iOSは未対応となっています。
しかしデバイスについては、順次対応していくことが「今後の展望」としてアナウンスされています。
「Google One VPN の仕組み」ホワイトペーパーから引用
https://one.google.com/about/vpn/howitworks
Google は、使いやすく、機密性と性能の高い VPN はユーザーのオンライン上のプライバシーとセキュリティ向上に大きく貢献すると考えています。それを踏まえ、VPN のテクノロジーをできるだけ多くのユーザーにお届けすることを目指しています。
まずは Android 向けにサービス提供を開始し、いずれは iOS、Chrome OS、Windows、Mac などその他のプラットフォームにも拡大していく予定です。
iOSへの対応については、2022年2月1日にGoogleから正式にリリースのアナウンスがありました。iPhone・PadユーザーでGoogle Oneを利用している人にとっては、待望のニュースとなりました。*注6
この事以外にも、リリース当初からの機能面での充実が順次行われています。
1)VPNアクティブ時のみインターネット接続できる「Safe Disconnect」
2)指定したアプリのみVPNを介さず、通常のつ接続を利用する「App Bypass」
3)VPNを一時的に無効化する「Snooze」
などがAndroid版アプリに実装され、利便性が日に日に拡大しています。
ますます「一度手にしたら、手放せない」サービスへと進化しているようです。*注7
アプリ上でのVPNの設定はとても簡単です。
Google OneのアプリでVPNをオンにするだけで、すぐに利用が開始できます。
1)Googleアカウントでログイン
2)各デバイスでGoogle Oneアプリを開く
3)上部にある「特典」をタップ
4)VPN特典を見つけて、「詳細を表示」をタップ
5)「VPNを有効にする」をオンにする
たったこれだけで、セキュアなモバイルインターネット環境を手にすることができるようになります。
インターネットとモバイル端末の普及に伴い、今や「ユビキタス・コンピューティング」が、意識せずに日常生活の中で実現しています。
しかし同時にセキュリティへの脅威も高まっており、信頼できるVPNサービスは一般人にとっても重要な選択肢となりえるでしょう。
Googleが提供する有料ストレージサービスは、このようなVPNなどの「特典」をつけることで、料金に見合うものとして魅力を増していることは確実となっています。
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注1
Business Journal 「気が付けば「みんなGmail使ってる」現象の秘密…突出して使い勝手が良いワケ」
https://biz-journal.jp/2020/12/post_194440.html
注2
arrows Life 「Google Oneとはどんなサービス?プランや特典について紹介!」
https://arrowslife.fcnt.com/guide/article92.html
注3
9TO5 Google ”Google One VPN rolling out now to iPhone and iPad with 2TB+ plans “
https://9to5google.com/2022/02/01/google-one-vpn-ios/
注4
IT spice 「VPNの仕組みを理解しよう!その種類から構築に必要な機能をわかりやすく解説」
https://www.ctcsp.co.jp/itspice/entry/087.html
注5
Gogle 「Google One VPN の仕組み」
https://one.google.com/about/vpn/howitworks
注6
Google “VPN by Google One comes to iOS”
https://blog.google/products/google-one/vpn-by-google-one-ios/
注7
engadget 「Google OneのVPN機能がiOSでも利用可能に。提供地域も拡大」
https://japanese.engadget.com/google-one-vpn-ios-031059129.html