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アップルのiPhone次期モデルにソニーの新型センサーが搭載予定

Nikkei Asiaの記事によると、iPhoneの次期モデル(iPhone15)に、ソニーが開発した新型イメージセンサーが搭載されることが決定したようです。
2022年末にはティム・クックCEOがソニーの熊本工場を訪問するなど、緊密な連携が報じられていました。
今回はこの新型イメージセンサーについて、ソニーの成長戦略を交えながら、見ていくこととしましょう。*注1

この記事でわかること

  1. 次世代iPhoneに搭載予定の新型イメージセンサーとは何か
  2. ソニーの成長戦略について
  3. 日本の半導体業業界の今後について

次世代iPhoneに搭載予定の新型イメージセンサーとは

iPhoneのカメラについては、すでに2011年からソニー製が搭載されています。
以前から分解レポートなどで、ソニー製であることが指摘されていましたが、最近になってティム・クックCEOがツイートでその事実を認めています。
このような背景から次世代イメージセンサーについても、ソニー製が採用されるのは当然の流れと言えるでしょう。

しかしアップルは、期待する性能が提供できないサプライヤーについては、簡単に「切る」ことも多い企業です。
その意味では、ソニー製の新型イメージセンサーは、iPhone15にふさわしい性能を持っていることが容易に推察されます。

新型イメージセンサーは「2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサー」と呼ばれています。
今までのイメージセンサーの主力であったCCDに代わり、現在ではCMOSセンサーが主流となっています。製造コストが安いことや、技術革新によりCCDと遜色ない性能を発揮できるようになったことが大きな要因です。

CMOSは、光を検出するフォトダイオードとスイッチの役割を果たす画素トランジスタが、1つの画素に組み込まれた構造となっています。
従来のCMOSでは、この2つが同じ層に形成されていましたが、ソニーの新型センサーでは積層(二重構造)にすることで、単位面積あたりの受光能力を2倍にすることに成功しています。

CCDに比べCMOSは、画素ごとにそれぞれフォトダイオードと画素トランジスタを必要とする、やや複雑な構造になっていたことから、小型化が難しいという課題がありました。その課題を積層することで解決したのが、ソニーの開発した新型センサーです。

今回新型センサーが搭載されることで、低照度下および逆光下での写真画質の向上などが期待できます。具体的な画素数については明らかになっていませんが、iPhone15ではおそらくiPhone14と同等の1200万画素であり、Proモデルではクアッドピクセルセンサーを搭載し4800万画素になると思われます。

画素数だけをカタログスペックで比較した場合、Android搭載の中には1億画素を実現しているモデルも存在しているため、単純な画素数ならiPhoneは決して業界最高水準ではありません。
しかしソフト面での処理能力向上や、今回のソニー製新型センサー搭載などで、確実にクオリティを向上させています。*注2

iPhone15については、Proモデルの筐体にチタン素材を採用することや、Thunderbolt 3の採用などが噂されています。
他にも光学10倍の望遠を実現するペリスコープが採用されるとの予測もあり、標準モデルとの差別化が一層加速すると思われます。*注3

ソニーの成長戦略

これまでの記事では、このようなニュースが報じられた際は、アップル側の視点に立って背景などを詳しく解説していました。
当然読者の多くは、次期iPhoneに対する関心が高いと思われますので、このようなスタンスをとっていましたが、今回の記事ではサプライヤーであるソニー側について少し詳しく見ていくこととしましょう。

ソニーは今、何の会社だと思いますか?
ソニーの2021年3月期決算を見ると、売上高「8兆9,993億円」、純利益も「1兆1,717億円」となっており、純利益率は「13.0%」と非常に好調です。
前期と比べ増収増益となっており、一時期業績不振に苦しんでいたソニーですが、近年になって見事なV字回復を達成しています。

ソニーの事業部門は、大きく6つのセグメントがあります。ゲーム・音楽・映画・家電・半導体・金融がその内訳です。
一般的なソニーに対するイメージとしては、コンピューターのVAIOやカメラのαシリーズ、TVのブラビアなどのブランドではないでしょうか?

しかしこのような家電分野はコモディティ化が進み、収益を確保するのが難しくなっています。
VAIOはすでに売却されTVも分社化するなど、すでにソニー本体の手から離れてしまっています。家電部門の売り上げ自体は、構成比率は高いものの価格競争に晒されており、薄利多売になってしまっています。

現在、ソニーの売り上げ・利益ともに大きく貢献しているのは「ゲーム部門」であり、それについで「金融部門」「音楽部門」が続いています。
「音楽部門」では「鬼滅の刃」で、Lisaが歌った主題歌や挿入歌が大ヒットしたり、Youtubeでの「The First Take」の運営が注目を集めるなど、新たな市場を開拓することで順調に収益に貢献しています。

「金融部門」においては、生保・損保・証券・銀行などがあり、高い収益率と安定した売り上げで事業全体を下支えしています。ゲームや音楽のように「大ヒット」を出すことはありませんが、今後も安定した利益が見込まれます。

こうしてみると、家電部門でのブランドイメージが強いソニーですが、現在は「金融」と「ゲーム・エンタメ」の会社であると見るのが正しいのかもしれません。
そのような中、今回の記事で取り上げたイメージセンサーなどを製造する「半導体部門」はどのようなポジションなのでしょうか?

かつてCCDなど、いくつかの半導体製品を製造していたソニーですが、現在はCMOSに資源を集中しています。スマホの多眼化や車載用のセンサーなど、今後の市場拡大が期待できる分野として、イメージングとセンシングの両方で販売を拡大すべく、投資を続けています。

ソニーグループの2021年度経営方針説明会では、5,000億円を超える大型の投資も発表されています。さらに経済産業省の後押しを受け、台湾TSMCと合弁する形で、約1兆円を超える新型工場の建設が報道されるなど、半導体分野での躍進が期待できる状況となっています。

金融分野で安定した収益を確保しながら、ゲームと半導体が今後の成長分野ということになりそうです。
かつて電子立国とも言われた日本の半導体業界は、現在見る影もないほど低迷していますが、唯一ソニーだけがイメージセンサー分野で、世界をリードする存在へと成長しています。*注4

日本の半導体業業界の今後

2021年時点において、日本国内半導体企業で売上高トップはキオクシアです。
国内企業で唯一100億ドルを超えているものの、世界のメモリ製造メーカーの中ではAMDに抜かれて順位を落としており、さらにNAND専業であるため他のメーカーに比べて、やや低めの成長率にとどまっています。

フラッシュメモリーの市場は拡大しているものの、DRAMを製造していないことやメモリ市場自体が競争の厳しい成熟分野であることから、今後も同程度の水準に止まる可能性が高いでしょう。
かつて日本のDRAMをリードしていたエルピーダメモリが、急激な円安を受けて業績が低迷し、さらに金融機関の協力が打ち切られたことで、あっという間に倒産したことがあります。

巨額の先行投資を必要とする半導体製造にとって、資金の調達は非常に重要です。今世界各国では、政府主導で大規模な投資が実施されており、半導体産業の育成を国策として強化しています。
やや遅れ気味ではあるものの、日本でもTSMCの熊本新工場、キオクシアとウエスタンデジタルによる三重の合弁工場、マイクロンテクノロジーの広島工場などに補助金が出ています。

日本国内企業だけでなく、実績と開発力を持つ外資系企業を誘致することで、世界市場で戦うことができる製品の製造をめざしていることがわかります。
家電や自動車、コンピューターなどに利用される半導体製品が、海外に依存しているのは大きなリスクと言えます。
やはり国内で調達できる拠点を整備していくことが、今後の日本の重要課題となってくるでしょう。

2021年時点での売上高では、ソニーはルネサスエレクトロニクスに続いて3位になっています。アップルへ安定した製品の供給を確保しているものの、Huaweiがアメリカの制裁を受けたことで低迷しました。
1社に大きなウェートがかかるような販売状況であると、それが失われた時の影響が甚大になることから、今後は販売チャネルを拡大していくことが重要となります。

売上高ベースで見ると、キオクシア・ルネサス・ソニーの上位3社のボリュームが大きく、4位以下をかなり離しています。世界市場で戦えるのは、現在この3社だけと言って良いでしょう。
その中でもソニーは、イメージセンサー分野で世界トップのシェアをキープしており、他社の追い上げを受けてはいるものの、アップルへの新型センサー搭載も好材料であり、さらなる飛躍が期待できます。

前述した通り、国内での政府主導による半導体業界への後押しも追い風となり、ソニーが国内メーカーの中で重要なポジションを担うことは確実でしょう。
しばらく低迷の時期が続いていた日本の半導体産業ですが、投資も活発となってきた今、大きな成長が期待できます。*注5

【まとめ】

今回の記事では、アップルへの新型センサーの搭載が決まったソニー側について、少し詳しく見ていきました。
かつて「電子立国」と呼ばれ、世界をリードしてきた日本の半導体製造は、しばらく低迷の時期を続けていましたが、ようやく明るい材料がいくつか見えるようになってきました。今後のソニーの躍進に目が離せません。

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■参考文献
注1
Nikkei Asia ”Sony to supply Apple with advanced image sensor for next iPhone”
https://asia.nikkei.com/Business/Electronics/Sony-to-supply-Apple-with-advanced-image-sensor-for-next-iPhone

日本経済新聞 「ソニー、新型センサーをAppleに納入 次期iPhone向け」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC201SF0Q2A920C2000000/

注2
PC Watch 「iPhone用カメラセンサーは2011年からソニー製。ティム・クックCEOがツイート」
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/yajiuma/1463526.html

ケータイWatch 「iPhone 14シリーズのカメラはどこが変わった?」
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1438270.html

エンジニアブログ 「CCD,CMOSイメージセンサとは?種類と原理を分かりやすく解説します。」
https://engineering-university.yamasee-otto.com/ccdcmos-imagesensor/

EE Times Japan 「開発担当が語る、ソニーの2層トランジスタ画素積層型CIS」
https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2202/01/news075.html

アイアール技術者教育研究所 「3分でわかる技術の超キホン フォトダイオードの原理と使い方を解説!フォトトランジスタとの違いは?」
https://engineer-education.com/photodiode/

iPhone Mania 「iPhone15シリーズがソニー製の新型イメージセンサー搭載と報道」
https://iphone-mania.jp/news-506739/

注3
Yahoo! ニュース 「「iPhone 15」はカメラをさらに強化、ソニー新型センサーでダイナミックレンジ向上か」
https://news.yahoo.co.jp/articles/44d32ff8b4533e8c10de921842e0e203824627ac

注4
BUSINESS INSIDER 「ソニーG吉田社長「1兆円の半導体工場」報道否定せず…2021年方針は「DTC」と「知財IP」へ戦略投資」
https://www.businessinsider.jp/post-235548

東洋経済オンライン 「ソニー「急回復」でも見えない5年後の稼ぎ方」
https://toyokeizai.net/articles/-/101920?page=3

注5
semiconportal 「日本半導体企業ランキング: 首位はキオクシア、2位はソニー逆転のルネサス」
https://www.semiconportal.com/archive/blog/insiders/hattori/220412-japansemiconductors.html

NHK NEWS WEB 「日本の半導体産業はどこへ 試される底力」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221019/k10013863081000.html

朝日学情ナビ 「半導体の世界需要急増 日本メーカーの巻き返しに注目!【業界研究ニュース】」
https://asahi.gakujo.ne.jp/research/industry_topics/detail/id=3407

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