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MMSで取得した三次元点群データの活用方法とは

三次元座標値(X, Y, Z)と色の情報(R, G, B)を持たせられる三次元点群データを使えば、物体をデジタルデータとして保存したり、人の立ち入りが困難な場所のデータを取得したりすることができるので、建築のDX化には欠かせません。三次元点群データを取得するためにはレーザースキャナーを使用しますが、今回は移動型の三次元計測であるMMSとその活用事例、メリットについてご紹介します。

この記事を読むと以下の3つのことがわかります。

  1. MMSとは
  2. MMSの強みと活用分野について
  3. 国交省のMMSでよる三次元点群データの配布について

MMSとは

MMS(Mobile Mapping System:モービルマッピングシステム)とは、三次元レーザー計測機とデジタルカメラによって、道路面および道路周辺の三次元座標データと連続カラー画像を取得する車両搭載型測量システムです。*1
車両を運転させながら三次元スキャンを行いますが、スキャナーやカメラで得られるのは相対座標になります。そこで搭載されたGNSSアンテナ(全球測位衛星システム, GPSなどの衛星測位システムの総称)とIMU(慣性計測装置)を組み合わせることによって連続的に車両の姿勢情報と絶対位置を計測しながら、スキャナーを適宜管理することで正確な三次元座標を取得します。さらに搭載された高精度カメラで撮影した画像をすり合わせることで道路空間を効率的に測量します。
 

MMSの強みと活用分野について

点群データの取得方法として、他にはドローンや無人航空機を活用したものや測量機器を地上に静止させたものがあります。MMSがそれらに対して優れている部分や活用事例について紹介します。 

  • 効率よく正確で大量のデータを取得可能

道路上の計測をするとき、今までは交通規制をして作業員の安全確保をしながら、作業員が*2メジャーで計測をしていました。しかしMMSを使えば1日で50kmの道路空間情報を取得()することも可能で、交通規制が不要なので安全性、データの取得効率も向上します。さらにこうして得られたデータは上で述べたように車両上に搭載された機器のおかげで非常に正確なものとなっています。

  • 現場での計測忘れということが起きない

車で対象の道路を走行するだけで自動的にデータが集められるので計測忘れといったことが起きません。さらに現場で作業すると計測忘れの確認作業に時間を取られますが、そのようなロスもありません。

  • 目視による点検をデジタル化

カメラで撮られた高精細な画像で、色彩や模様が細部まで判別可能で、今までだと現地でしかできなかった目視レベルの点検(電信柱のひび割れなど)がパソコン上で完結します。

  • 路面のオルソ画像(電子国土基本図)を正確に作成

普通、航空カメラで撮影した空中写真は中心から周縁部に向かうにしたがって位置のずれが大きくなります。例えば、建物は上から見ると屋上しか見えないはずですが、画像の端に写っているビルは、屋上だけでなくその側面まで写っているでしょう。
オルソ画像とは、写真上の位置ズレをなくし、空中写真を地図のように、真上から見たような傾きのない、正しい大きさと位置に表示される画像に変換したもののことです。
MMSで取得した画像と三次元点群データを連続的につなぎ合わせることで、車両が入っておらず、トンネルや樹木で覆われた道路の様子がはっきりとわかる路面のオルソ画像を生成できます。
これによって地図の基本となる道路敷および道路骨格データを手軽に作成できます。

  • 道路情報の正確な取得

速度規制やレーン白線、横断歩道マークといった道路標示物や、マンホール形状、位置等の高精度な調査・計測に利用できたり、占用申請に活用する平面図を容易に作成できたりします。正確で精密な現況把握ができるのでガードレールや電柱電線、マンホールなどの道路施設や設備の管理で現地作業をする際の道路占用時間を削減することも期待できます。
風力発電用の風車の羽根や鉄道車両といった非常に長いものを輸送する際にはルートの検討が必須ですが、歩道橋や電線などの道路空間情報を網羅した三次元点群データから作成した三次元道路空間データとシミュレーションした車両走行軌跡を仮想空間上で比較することで干渉の確認を行うことができます。その結果、通行許可申請の手続きは省力化され、より安全に輸送されます。

MMSを使った災害対策

MMSは災害対策分野で重要な役目を果たします。

  • 法面点検

二つの時期の三次元点群データの差分から落石ネットや吹付モルタルなどの、目視では気づきにくい形状の変化を自動で抽出し、道路法面の点検は効率的になります。また、崩れ落ちそうな岩塊を把握したり、スキャナーの反射輝度を活用して、土砂崩れの原因となる流水・地下水の流出箇所を認識したりすることができます。

  • 河川堤防点検

車両に搭載しているレーザースキャナーとカメラを昇降式にし、堤防に沿って走ることで広範囲にわたる堤防の様子を三次元測量できます。目視点検では発見できなかったわずかな変化を把握できます。

  • トンネル点検

点群データから交通規制をかけずにトンネルの断面を算定し、凹凸量を把握できます。熱赤外線を併用することで壁の内部の変化を可視化することもでき、トンネルは一層安全になることでしょう。

  • 浸水シミュレーション

仮想空間に道路の勾配や凹凸などの詳細な形状を表現した、現実と同様の道路モデルを作り上げることができます。そこで浸水時のシミュレーションを行えば、具体的な被害がわかりやすいハザードマップを作成できることでしょう。

MMSによる3次元点群データ配布について

MMSを行うには高性能な設備が必要で、手を出しづらい事業者も多いと思いますが、2022年8月、国土交通省がMMSによる三次元点群データ等の提供事業を開始しました。国土交通省は2018年からMMSによる三次元点群データの収集と活用に取り組んできました。
道路交通上の諸課題の解決に向け、国土交通省が収集した三次元点群データ等を広く公開し、民間企業等による多様なアプリケーション開発の促進を図ることとしています。*3

配布されるデータの概要

1,000mあたり5,100円で販売しています。2022年8月の報道発表時点では提供されるデータは9,000kmにすぎませんでしたが、2023年1月時点では提供しているデータは約30,000kmに拡大しており、今後も増えていく予定です。

まとめ

MMSを使うことで効率よく、道路とその周りの正確で精密な三次元点群データを取得することができます。そしてMMSで取得した膨大な量の三次元点群データを処理したり、実用的な形に加工したりするアプリケーションは次々と開発、製品化されています。また、このような技術は国土交通省による三次元点群データの配布によって、ますます発展していくことでしょう。

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■参考文献
*1 PASCO 「MMS(モービルマッピングシステム)で道路周辺の3次元測量」
https://www.pasco.co.jp/products/mms/

*2 NTT Infranet 「空間マネジメント|MMS(Mobile Mapping System」
https://www.nttinf.co.jp/service/mms/

*3 国土交通省 「MMSによる三次元点群データ等の提供事業を開始」
https://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_001577.html

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