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国土交通省の支援事例にみるBIM導入による効率化の成果

建設業界のハイテク化は、今や各社で取り組みが推奨されている喫緊の課題となっています。国土交通省もBIM導入に向けた支援を続けており、支援を受けた企業事例も増えてきました。

この記事では、そんな国交省の支援を受けた事例を参考にしながら、BIM導入によってどのような効率化が得られているのかについて、解説します。

目次:

  1. 国土交通省の「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」とは
  2. 公募事業の3つの応募形式
  3. 先導事業者型のBIM導入事例
  4. 中小企業BIM試行型の導入事例
  5. パートナー事業型の導入事例
  6. まとめ:BIM導入のポイント

国土交通省の「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」とは

国土交通省では、関連業界におけるBIM導入を推進するためのプロジェクトの一環として「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」を展開しています。この施策は、BIMを通じたデジタルデータの活用によって、建築業界における業務の効率化や生産性の向上、そしてデータ活用の文化を醸成することを推進することが目的です*1。

業務プロセスの中でBIM導入に取り組んだり、BIM導入の効果検証に取り組んだりする提案を応募した企業に対し、一部費用補助を行っています。応募企業が100%支援を受けられるわけではありませんが、毎年複数の企業が補助の対象となっているため、BIM導入を検討している企業は参考にしたい取り組みと言えるでしょう。

公募事業の3つの応募形式

「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」には、大きく分けて3つの応募形式が存在します*2。組織の形態や取り組みの内容に応じて、応募できる窓口が異なるのが特徴です。

先導事業者型

先導事業者型は、BIMの活用による生産性向上や、BIMを使ったサービスを創出することで得られる効果の検証、そしBIMデータの活用に伴う課題の連携などに携わる事業者向けに提供される制度です。

検証に必要な経費であれば、3,000万円以内なら補助金を受けることができます。

中小企業BIM試行型

中小企業BIM試行型は、中小事業者向けに提供されている補助金制度です。建築プロジェクトへのBIM導入と課題の分析、BIM活用の効果検証と改善策の検討、そして中小事業者のBIMの導入・活用ロードマップ素案を提示することが補助の条件です。

応募資格を満たした事業者なら、500万円以下の経費補助を受けられます。

パートナー事業型

パートナー事業者型は、補助金の発生しない応募項目ではありますが、応募した事業が採択されることで、自社の取り組みを政府経由で公表してもらうことができる応募枠です。

公募要件は先導事業者型とほぼ同様で、費用負担の軽減は得られなくても良いので公表の機会を求めている場合には、応募しておきたい取り組みです。

先導事業者型のBIM導入事例

それではここから、各応募形式ごとの実際の導入事例を解説します。

株式会社奥村組

株式会社奥村組では、技術研究施設におけるBIM モデルを用いた維持管理業務効率化等の検証を実施しました*3。従来はエクセルを使った修繕計画の策定などを実施していたこともあり、計画策定に多大な時間を要していました。一方、BIM導入を進めたことで、BIMモデルから数量を抽出し、7%もの業務削減を実現しています。

今後の課題としては、BIMモデル作成の詳細な取り決めを実施したり、維持管理 BIM システムの拡充には別途費用が発生したりする点に取り組む必要があるとしています。

大和ハウス工業株式会社/株式会社フジタ

大和ハウス工業株式会社と株式会社フジタは合同で、BIMを活用した建築生産や、維持管理プロセスの円滑化に向けたモデル事業を展開しました*4。プロジェクトにおける設計から維持管理まで、同社ができる限りのBIM導入を進めたことにより、概ね30%程度の作業効果が実証されたとのことです。

ISO19650に準拠した共通データ環境を構築し、情報管理の効率化にも取り組みましたが、データ承認が不明確であることや、連携ルールが曖昧なままにとどまったことなどを課題としてあげており、更なる情報活用の高度化が求められています。

中小企業BIM試行型の導入事例

続いて、中小企業BIM試行型の導入事例を見ていきます。

美保テクノス 他6社

美保テクノスと他6社は合同で、地域の設計業者を束ねたフルBIMモデル構築と、地方ゼネコンにおけるBIM規格の有効性確認や、効果検証に取り組みました。延床面積3,600平方メートルにも及ぶ公共施設にプロジェクトを適用し、フルBIMモデルを導入した結果、29.6%の時間短縮が実現したとしています*5。

ただ、当初設定していた30%の削減目標には届いておらず、その要因としてモデル作成に時間がかかったなどの課題が明らかになっています。BIM規格へのシフトを進めることで、解消可能な問題と言えるでしょう。

株式会社FMシステム/東京都立大学

株式会社FMシステムと東京都立大は合同で、設計や施工といった生産BIMから、維持管理BIMへのデジタル情報の引き渡し、そして運用について検証しました*6。

ハンドオーバーの手続きをデジタル化することにより、建物の維持管理をより正確かつ小さなコストで行えるようになった反面、管理コードが標準化されていないことで業務が煩雑になる懸念も課題として残っています。運用時のコード体系を整備すれば、さらなるデータ活用が進むとしました。

パートナー事業型の導入事例

最後に、パートナー事業型の導入事例です。

鹿島建設株式会社

鹿島建設株式会社は、BIMを活用した建物のライフサイクル情報管理と、デジタルツインやソフトウェア・エコシステムによる支援の検証を実施しました。高度な情報活用を広い範囲で活用できるよう、データベース構築などに注力した結果、手入力時と比べて半分近い業務削減などが進み、現場の生産性向上に寄与することがわかったということです*7。

一方、BIMの編集作業など、BIM運用に時間がかかってしまい、業務削減効果が相殺されるなどの課題も現れているため、改善に向けた施策の検討が必要としています。

東急建設株式会社

東急建設株式会社は、BIMを用いた建築生産や維持管理 プロセスの円滑化モデル事業を立ち上げました。既存建物のデジタル測量とBIMモデル作成を実施した結果、既存解体を含む、増築工事における的確な工事手順の確立、および生産性向上が生まれたということです*8。

無駄な資材の運搬を削減し、現場負担の削減やCO2排出を抑えることなどに成功した一方、運搬時の安定を図るために入れるスペーサー(石膏ボー ドの端材)が大量に必要になるなど、あたらしい作業負担が発生していることも指摘しています。

まとめ:BIM導入のポイント

BIM導入が進まない要因の一つとして、日本国内ではまだ一般に普及しておらず、導入事例が不足していることが挙げられます。BIM導入は費用のかかるDXの一環でもあり、中小企業では導入に足踏みしているケースもあるでしょう。

一方、政府はBIM導入によるDXを推進するべく、積極的な支援事業や事例の公開を進めています。上記のような導入事例を参考にしながら、BIM導入を前向きに検討しましょう。

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参考:
*1 令和4年度 BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業
https://r04.bim-jigyou.jp/concept/

*2 同上

*3 国土交通省「株式会社奥村組」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001476241.pdf p.110~111

*4 国土交通省「大和ハウス工業株式会社/株式会社フジタ」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001473088.pdf p.45

*5 国土交通省「美保テクノス 他6社」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001473103.pdf p.1

*6 国土交通省「株式会社FMシステム/東京都立大学」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001473118.pdf p.19~21

*7 国土交通省「鹿島建設株式会社(別 紙 様 式 2(継続事業者・先導事業者型・パートナー事業者型))」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001473093.pdf p.1

*8 国土交通省「東急建設株式会社」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001473097.pdf p.1

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