CADシステムとは?導入するメリット・デメリット、製品を選ぶ際のポイントも解説
建設業のさまざまな職種で活用されているツールの1つが「CADシステム」です。
CADシステムによって、建築物や土木構造物の製図を効率良く行えるようになりました。
すでにCADシステムを導入している方もいる一方で、これから導入を検討している方や別のツールへの切り替えを検討している方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、CADシステムとは何かを詳しく解説します。
CADシステムを導入するメリット・デメリット、製品を選ぶ際のポイントも紹介します。
最後まで読み進めることで、CADの特徴や機能に関する理解が深まり、最適なCADシステムを選ぶポイントを押さえられるでしょう。
CADシステムの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
CADシステムの概要
CADシステムとは何かを解説します。
また、「CAD」「CAM」「CAE」「CAD/CAM」の違いについても押さえておきましょう。
CADとは
CADとは「Computer Aided Design」の略で、日本語に直すと「コンピューター支援設計」と呼ばれるツールです。
従来は、手作業で行っていた製図業務。
現在の製図業務は、CADシステムの使用が一般的です。
CADシステムによって、コンピューター上で製図業務ができるようになりました。
図面の修正対応もしやすくなるため、業務効率化の観点でもCADは必要不可欠のツールといえるでしょう。
国土交通省からは、3次元モデルに関する標準や要領が公表されています。
2020年(令和2年)3月に「3次元モデル表記標準(案)」、2021年(令和3年)3月に「3次元モデル成果物作成要領(案)」が公表されました。*1 *2
このように、建設業では3次元モデルの活用が推進されています。
2次元データを作成できる2D CADだけではなく、3次元データを作成できる3D CADの導入も進んでいます。
また、CADシステムが活用されているのは建設分野だけではありません。
製造・インテリア・機械・航空・アパレルなど、幅広い業界でCADシステムが使われています。
「CAM」「CAE」「CAD/CAM」との違い
「CADシステム」と混同されやすいツールが「CAM」「CAE」「CAD/CAM」です。
ここでは、それぞれのツールに関する理解を深めましょう。
「CAD」「CAM」「CAE」「CAD/CAM」の違いは、下表のとおりです。
【「CAD」「CAM」「CAE」「CAD/CAM」の違い】
CAD「Computer Aided Design」の略 | ・コンピューターで設計を支援する・コンピュータ上で2Dや3Dなどの製図業務ができるツール |
CAM「Computer Aided Manufacturing」の略 | ・コンピュータで製造を支援する・CADシステムで作成したデータを読み込み、材料を加工するツール |
CAE「Computer Aided Engineering」の略 | ・コンピュータで工学を支援する・CADシステムで作成したデータからシミュレーションを行うツール |
CAD/CAM | ・CADとCAMの両方の機能を持つ・コンピュータ上で、製図から製造までを行えるツール |
CADシステムを導入するメリット
CADシステムを導入するメリットは、以下のとおりです。
CADシステムを導入予定の方、CADシステムの切り替えを検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
業務効率化が実現できる
コンピューター上で製図業務を行えるのがCADシステムの魅力です。
従来は手書きで行っていた製図業務。
一方、CADシステムを活用すれば短時間で製図業務を進められるため、複数の建設プロジェクトを同時に進めることもできます。
2024年(令和6年)4月に働き方改革関連法の改正されたことで、建設業でも時間外労働の上限規制が適用となりました。*3
建設業では、さらなる業務効率化が求められます。
製図業務を効率良く行えるCADシステムは、建設業の業務効率化を実現できる効果的なツールといえます。
複数人でデータを共有できる
CADシステムは、複数人でデータを共有できます。
1人の技術者がすべての設計業務を担当するわけではないため、複数のメンバーで分業することもあるでしょう。
また、建設現場で調査や打ち合わせを行うことも多いため、社内にいても社外にいてもデータを確認できるシステムが必要です。
CADシステムなら、インターネットに接続されていれば誰でもデータを確認できます。
建設プロジェクトの進捗も把握しやすくなるため、トラブルの発生リスクも低減できるでしょう。
修正対応をスムーズに行える
建設プロジェクトでは、急な設計変更が生じることもあります。
紙媒体で製図を行うと、修正がある場合に柔軟に対応するのが難しいこともあります。
一方、CADシステムなら設計変更にも対応可能です。
紙媒体の図面の修正作業は、修正が必要な箇所まで消さなければならないことも。
CADシステムは必要な箇所だけを修正できるため、修正作業によるミスも防げます。
CADシステムを導入すれば、設計変更がある場合でも迅速に修正対応ができるようになります。
CADシステムを導入するデメリット
CADシステムを導入するデメリットは、以下のとおりです。
メリットだけではなくデメリットも理解した上で、CADシステムの導入を検討しましょう。
CADを使うために知識やスキルの習得が必要となる
業務でCADシステムを使用するためには、CADに関する知識やスキルの習得が必要です。
CADを使いこなせるようになるまでに、時間がかかる点がデメリットとしてあげられます。
業務でCADを活用できるように、勉強会や研修を行うのも良いでしょう。
導入するCADシステムによっては、勉強会やトレーニングプログラムが開催されることもあります。
CADシステムの知識やスキル習得において不明点がある方は、導入するCADシステムの公式ホームページから問合せをしてみましょう。
製品の導入コストがかかる
CADシステムは、導入コストがかかります。
CADシステムの中には無料で使用できるものもありますが、一部の機能しか無料で使えなかったり、使用するコンピューターのOSに対応していなかったりすることも。
また、無料の製品はサポートがないものも多いため、システムに関する問い合わせや不具合が生じた際に対応してもらえないこともあります。
CADシステムを導入するなら、使用制限がなくサポートが充実している有料製品を選ぶのがおすすめです。
ただし、製品によっては「買い切り」「月額課金制」のものがあります。
イニシャルコストだけではなくランニングコストも押さえた上で、どのCADシステムを導入するかを検討しましょう。
ここで、オートデスク株式会社(Autodesk, Inc.)を例に紹介します。
オートデスク株式会社(Autodesk, Inc.)が提供するCADシステムが「AutoCAD」です。*4
AutoCADの場合は「サブスクリプション」「Flex」の2種類があります。
AutoCADに関する詳しい情報は、オートデスク株式会社(Autodesk, Inc.)の公式ホームページをご覧ください。
CADシステムを選ぶ際のポイント
CADシステムを選ぶ際のポイントは、以下のとおりです。
ツール選びで後悔しないためにも、ポイントを押さえておきましょう。
主な機能を確認する
CADシステムの主な機能を確認した上で、ツールの導入を決めましょう。
製品によっては、使いたい機能がないものもあります。
特に、無料で使用できるCADシステムは、使用制限があるものもあります。
また、業務によって重視する機能は異なるため、対応する業務にあわせて適切なCADシステムを導入しましょう。
製品の初期費用と運用費用を考慮する
CADシステムを導入する際は、初期費用と運用費用を両方考慮することが重要です。
製品によっては買い切りのものもありますが、運用費用がかかるものもあります。
使用するライセンス数によって、費用が変わることもあります。
初期費用だけではなく運用費用もあわせて、どのCADシステムを導入するかを検討しましょう。
月額課金制で使用できるCADシステムの中には、さまざまなプランが用意されている場合もあります。
プランで迷った場合は、製品を提供する企業に問い合わせをすると安心です。
CADシステムに関するFAQ
CADシステムに関するFAQを厳選してご紹介します。
疑問点をなくしてから、CADシステムを導入しましょう。
CADが活かせる職種は何ですか?
CADが活かせる建設業の主な職種は、以下のとおりです。
【CADが活かせる職種(建設業)】
- 設計
- 施工管理
- CADオペレーター
- 技術営業
- 技術開発
建設業では、幅広い業務でCADを活用できます。
建設工事で使用するクレーンの架設計画を実施したり、発注者や住民への説明用に3Dモデルを作成したりするなど、設計業務以外にも活用されています。
CADの知識や技術の習得は難しいですか?
新しいツールを導入すると、知識や技術の習得に時間がかかるものです。
CADシステムも同様に、最初は操作方法に慣れない方もいるでしょう。
業務でスムーズにCADを操作できるように、勉強会や研修プログラムを実施するのがおすすめです。
各製品を提供する企業の中には、独自に勉強会を実施していることもあります。
企業に問い合わせをして、最適な勉強会や研修プログラムを受講しましょう。
また、CADに関する知識や技術を習得するために、資格を取得をするのも良いでしょう。
以下記事では、CADの資格を詳しく紹介しています。
CADの資格が気になる方は、こちらもあわせてご覧ください。
まとめ
今回は、CADシステムについて解説しました。
CADシステムを導入するメリット・デメリット、製品を選ぶ際のポイントも紹介したので、ツールに関する理解が深まったのではないでしょうか。
ただし、CADシステムごとに特徴や機能は異なります。
今回の記事で紹介したCADシステムを選ぶポイントも押さえた上で、最適なツールを導入しましょう。
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*1
参考)国土交通省「3次元モデル表記標準(案)令和2年3月」
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001334806.pdf
*2
参考)国土交通省「3次元モデル成果物作成要領(案)令和3年3月」
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001395713.pdf
*3
参考)厚生労働省「建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
https://www.mhlw.go.jp/content/001116624.pdf
*4
参考)オートデスク株式会社(Autodesk, Inc.)「Autodesk AutoCAD:自動化機能ですばやく作図できる業界最高クラスの 2D/3D CAD ソフトウェア」
https://www.autodesk.com/jp/products/autocad/overview?term=1-YEAR&tab=subscription