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ダッソーシステムズのCADビューワー、eDrawingsとは?【無料版も】

はじめに

近年、設計現場ではマルチCAD環境が当たり前になっており、CADデータの共有や設計データ閲覧の効率性が求められています。そんな中で、CADファイルビューワ全般の役割はますます重要になっており、eDrawingsはその代表的存在として多くのCAD技術者向けに活用されつつあります。

ダッソーシステムズが提供するCADファイルビューワであるeDrawingsは、主にSOLIDWORKSをはじめとする多様な形式の2D・3Dデータビューワとして利用できる点が大きな特徴です。無料CADツールとして無償版が用意されているうえ、有償CADソフトウェアとしてさらに高度な機能を利用できるeDrawings Professionalも存在するため、個々のニーズに合わせて柔軟に選択できます。eDrawingsを導入することで、自社内外のメンバーが簡単にCADデータを共有でき、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)などの機能でリアルタイムに設計状況を確認し合うことも可能になります。また、CADデータの測定やCADデータのアニメーション、断面表示など、3次元のビジュアルを駆使して関係者へ分かりやすく情報を届けられるのも魅力です。

画像引用: ダッソーシステムズ「eDrawingsインタフェース」

https://help.solidworks.com/2020/Japanese/eDrawings/c_eDrawings_Viewer_Interface.htm

本記事では、CAD ViewerとしてのeDrawingsの概要と機能、そしてバージョンごとの違いや具体的な活用シナリオ、技術的に知っておきたいポイントなどを順を追って解説します。この記事を読むことで、設計開発や製品レビューにおいて効率的なコラボレーションを実現し、最終的に時間とコストを削減する具体的なヒントが得られるでしょう。実務ですぐに使える情報として、無償版eDrawings Viewerと有償版eDrawings Professional、さらにeDrawings PublisherやeDrawings Mobileなど関連システムの違いにも触れていきますので、ぜひ自社の設計環境に合った方法を検討してみてください。

eDrawingsとは何か?

eDrawingsは、ダッソーシステムズが提供するCADファイルビューワであり、主にSOLIDWORKSのネイティブファイルをはじめ、さまざまな2Dデータビューワおよび3Dデータビューワとして機能します。名前こそ「eDrawings」となっていますが、単なる図面閲覧にとどまらず、3Dモデル表示からアニメーション、マークアップ、断面表示など、多彩な機能を備えているのが特徴です。近年、設計現場ではCADデータの共有が重要視されており、それぞれが異なるCADシステムを使っている場合でも、マルチCAD環境に対応したビューワを使うことでスムーズなコラボレーションを実現できます。eDrawingsでは、CADファイルの圧縮やCADファイルの変換が容易で、より軽量化されたファイルを関係者間で使うことができるため、メールやオンラインストレージを通じてのやり取りもシンプルになるでしょう。

さらに、eDrawingsは2D図面を単に閲覧するだけではなく、3D空間での直感的な操作も可能にしています。たとえば、アセンブリ内の部品を動かしたり、分解図をアニメーション表示したり、測定やマークアップを行うことで、設計意図を簡単に共有できます。マークアップ機能は特に設計者同士、あるいは設計者と顧客間で意思疎通を図るうえで有用で、また使用時に別途高価なCADソフトを必要としない点も評価ポイントです。eDrawings Viewerと呼ばれる無償のツールでは、単なる閲覧にとどまらず多くの機能を利用できますが、より高度な機能を求める場合は有償版のeDrawings Professionalを使えば、AR(拡張現実)・VR(仮想現実)への対応やAPI利用など、さらに先進的な活用シナリオを展開できるでしょう。こうした柔軟な選択肢があるおかげで、個人ユーザーから企業規模のプロジェクトまで、幅広いニーズをカバーできるのがeDrawingsの大きなメリットです。

eDrawingsの主要な機能

eDrawingsの機能は大きく分けて、閲覧系とコラボレーション支援系に分類されます。閲覧機能としては、3Dモデルの回転、拡大縮小、断面表示、部品リストの表示、コンフィギュレーションの切り替えなどが挙げられ、2D図面に関してはレイヤーの切り替えや複数シートの表示も簡単に行えます。これらの機能により、複雑な形状を直感的に把握することが可能で、画面上で複数の角度からモデルを観察できます。また、CADデータの断面表示によって内部構造を確認したり、必要に応じてパーツを分解図で可視化したりできる点も、設計レビューツールとして非常に便利です。

コラボレーション支援機能としては、マークアップ機能や寸法測定、コメント機能が実用的です。特に、設計者同士が同一ファイルに注釈を追加したり、スタンプを使って特定の工程や内容を示すことができたりするため、それぞれが別のツールや環境を必要とせずコミュニケーションを完結させられます。さらに、有償版のeDrawings Professionalでは、ブラウザで開けるHTML形式への出力や、VR表示に対応した点が大きなアドバンテージとなります。設計データのレビューを仮想現実空間で行うことで、実際の使用環境に近い形でモデルを調べることができるため、デザインの可否や空間的な制約をいち早く認識しやすくなります。

以上のように、eDrawingsの機能群は製造業界や製品開発のワークフローを大幅に効率化する要素に満ちています。実際の業務では2D図面の迅速なやりとりから、3D空間での詳細な検証まで一貫してサポートできるため、関係者全員が必要な情報を短時間で共有し、正確な判断に基づくフィードバックを返すことが容易になります。こうしたメリットが最終的には市場投入のスピードと品質向上につながり、企業競争力の強化にも寄与すると考えられます。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる今の時代、AR・VR機能との親和性も含めて、eDrawingsは魅力的な選択肢となるでしょう。

eDrawingsのバージョン比較

eDrawingsには、代表的なものとして無償版のeDrawings Viewerと有償版のeDrawings Professional、そしてCAD編集環境でeDrawingsデータを書き出せるeDrawings Publisher、モバイル向けに最適化されたeDrawings Mobileがあります。基本的にはどのバージョンも、CADファイルビューワとしての役割を果たしつつ、設計コラボレーションを容易にするうえで欠かせない機能を備えています。しかし、それぞれのエディションで使える機能の範囲が異なるため、自分の業務に最適なバージョンを選ぶことが重要です。無償版は単純な閲覧機能中心ですが、ファイル作成元が有償版の場合は、いくつかの拡張機能も無償版で実行できます。この仕組みにより、受け取る側が常に全員有償版を持っていないといけない、という状況を回避できるのが魅力です。

有償版のeDrawings Professionalは、3Dデータビューワとしての機能に加え、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、API連携などさらに先進的な機能が搭載された製品です。製品設計においては、実寸大を想定した表示方法・インタラクションが可能になるため、試作品を作る前に多角的な検証ができます。設計担当者が複数拠点に分かれている場合や、グローバルに展開しているプロジェクトであれば、遠隔地同士でVR空間を共有しながらレビューできるなど、円滑なコミュニケーションに寄与します。一方で、CAD技術者向けの環境でネイティブファイルを書き出す場合はeDrawings Publisherが必要となり、マルチCAD環境での運用が視野に入る大企業やサプライチェーン全体のコラボレーションを見据える場合によく使われます。以下では、それぞれのバージョンやシステムでできることを詳しく解説します。

無償版eDrawings Viewerの特徴

eDrawings Viewerは、名前のとおり無料CADツールといえるビューワで、ユーザー登録を行うことで誰でもダウンロード・使用が可能です。特別なライセンス費用をかけずに、SOLIDWORKSファイルをはじめとした各種2D・3Dデータの閲覧ができ、印刷や基本的な操作(回転、拡大縮小、パーツの表示・非表示など)にも対応しています。加えて、フリードラッグによりモデルを任意に動かす機能や、構成部品(アセンブリ)の移動と分解図のアニメーションなど、閲覧にとどまらない直感的な操作感を得られるのもポイントです。

参考: ダッソーシステムズ「eDrawingsのダウンロード」 

https://www.edrawingsviewer.com/ja/download-edrawings

画像引用: ダッソーシステムズ「eDrawings-Viewer」 

https://www.edrawingsviewer.com/ja/product/edrawings-viewer

また、断面表示により部品の内部構造を可視化できるなど、設計情報を深く理解するために役立つ機能が複数盛り込まれています。2D図面については、シートやレイヤーを切り替えながら必要な情報のみを表示することが可能となり、過度に煩雑なビューを操作するストレスから解放されます。設計データ閲覧の機能としては非常に充実しているため、社内や取引先・外部協力会社とデータをスムーズに共有したいと考える場面で重宝します。

さらに、ファイルサイズが大きい3D CADデータでも、高圧縮されたeDrawings形式に変換して送信・共有できるのがeDrawings Viewerの強みのひとつです。たとえば、メールでやり取りする際にも転送時間や受信側の負担を抑えられるため、シームレスなコミュニケーションが実現します。実務での活用方法としては、デザイナーやエンジニアだけでなく、購買担当者や営業担当者など、CADソフトを扱わない立場のメンバーが設計内容を確認する用途に適しており、プロジェクト全体の生産性を高めるうえで欠かせないツールとなっているのです。

有償版eDrawings Professionalの追加機能

eDrawings Professionalは、有償CADソフトウェアとして無償版の上位に位置づけられ、さらに踏み込んだコラボレーションや表示機能を提供します。例えば、測定ツールやマークアップ機能が強化されており、ファイルに対して数値的な寸法測定を加えたり、コメントや図形を追記したりといったインタラクティブなやり取りが可能になります。これにより、詳細な設計レビューを効率的に進められ、意見交換をドキュメント化しやすくなる利点があります。また、有償版で作成されたデータを開封するだけであれば、受け取り側が無料版のeDrawings Viewerを使用しても一部の拡張機能を利用できる設計になっており、データ共有時のハードルを下げる工夫も特徴です。

さらに、eDrawings ProfessionalではAR(拡張現実)やVR(仮想現実)に対応している点が特筆されます。AR機能では、現実空間に3Dモデルを重ね合わせる形で表示できるため、試作を行わずして空間的な干渉やサイズ感をチェックできます。VRに関しては、ヘッドセットを装着することでモデル内を自由にのぞき込み、実際に製品があるかのように観察・検討ができるので、設計の完成度を高めるうえで非常に有効です。こうした先進的な機能は、特に複雑な製品開発や大規模プロジェクトにおいて、開発スピードの向上とリスク低減に寄与すると考えられます。

画像引用:ダッソーシステムズ「eDrawings Professional 新しいVRモード、いつ見られるの?」 

https://blogs.solidworks.com/japan/solidworks-blog/product/190814/

そしてもうひとつ大きいのが、eDrawings ProfessionalがもつWeb HTML出力機能です。HTML形式にエクスポートされたデータは、標準的なWebブラウザで開くだけで3Dオブジェクトを確認できるようになるため、専用ビューアがインストールされていない環境でも簡単にレビューを行えます。このように、有償版ならではの高い表現力と拡張性が備わっていることから、グローバル規模のチームでの導入や、設計コンサルタントとして世界中のクライアントとやり取りするケースなどで威力を発揮します。

CADデータを軽量化して共有するeDrawings Publisher

eDrawings Publisherは、各種CAD環境からeDrawings形式のデータをパブリッシュ(書き出し)するために用いられる追加ソフトウェアです。SOLIDWORKS以外のCADソフト、たとえばAutoCADやCATIA、Inventor、Solid Edgeなどにも対応しており、多様なCADデータをeDrawings形式へ変換し、コンパクトなファイルとして配布することが可能になります。このマルチCAD環境対応は、サプライチェーンが複数のCADシステムを使用しているケースで特に威力を発揮し、企業同士での設計コラボレーションが容易となるのが最大の特徴です。

具体的な運用例を挙げると、自社がInventorを使って設計したデータをeDrawings Publisherで書き出し、協力会社がCATIAを使ってレビューを行う状況でも、eDrawingsファイルとして統一することで、受け取り側がどのCADシステムを使っているかを気にせずに共有できます。こうした一貫された標準ビューワ環境は、プロジェクト全体のコミュニケーションロスを抑え、CADデータのレイアウトを適切に関係者に共有するための有力な手段となっています。

また、CADファイルの圧縮技術が優れている点も、大きな利点といえます。一般に3Dモデルデータは容量が大きくなりがちですが、Publisherで作成したeDrawingsファイルは極めてコンパクトに圧縮されるため、メール送付やオンラインストレージによる配布がスムーズです。さらに、測定やアノテーションを加えて保存することも可能なため、単なる閲覧以上に実務のコミュニケーションを支える役割を担います。大規模な製品開発プロジェクトほど、煩雑になりやすいデータやり取りをどう整理するかが課題となりますが、eDrawings Publisherで一元的に管理すれば、各拠点・各チームとの意思疎通がよりスピーディに進みます。

iOS/Androidで利用可能なeDrawings Mobile

eDrawings Mobileは、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイス上で設計データを閲覧できるアプリです。iOSとAndroidの両プラットフォームに対応しており、PCを開けない環境でも手軽に3Dモデルを回転・拡大縮小し、部品やアセンブリの状態を確認できる点が大きな魅力です。外出先で急に設計レビューをする必要が生じたり、取引先や顧客先で製品コンセプトをプレゼンしたりする場合にも、モバイル端末だけでコミュニケーションが完結するため、作業効率が格段にアップするでしょう。

特に面白いのがAR機能の存在です。専用のARマーカーを利用するか、またはモバイル端末のカメラを通して、現実世界の映像に3Dモデルを重ね合わせる形で表示が可能になります。実際の使用現場を想定した空間配置や干渉チェックなど、デスクトップ環境のみでは得られないリアリティのある評価が可能です。たとえば、工場の現場で配管や装置のレイアウトを検討するときに、3Dモデルをカメラ越しに投影すれば、設計ミスを早期に発見できる手がかりになります。

また、モバイル版eDrawingsはファイルの読み込みや描画性能が最適化されているため、大容量データでも比較的スムーズに操作できるよう配慮されています。クラウドストレージと組み合わせて運用すれば、オフィスにいなくても新しいデザインをすぐに共有し、修正点を確認し合えるのも利点です。この柔軟性こそが設計コラボレーションの幅を広げる鍵であり、チームの多様な働き方に合わせた使い方が可能になります。現在では、リモートワークや出張先でのやり取りが当たり前となったエンジニアも多いですから、モバイル端末から素早くアクセスしてレビューを進められる意義は非常に大きいと言えるでしょう。

画像: iOS対応のeDrawings Mobile

画像引用:ダッソーシステムズ「eDrawings Mobile」 

https://www.edrawingsviewer.com/ja/product/edrawings-mobile

eDrawingsの利用シナリオ

eDrawingsは単なるCAD Viewerという枠を超え、製品開発や設計レビュー、さらには購買や製造現場などの幅広い領域で活用できます。たとえば、開発初期段階では3Dモデル表示を使って概要検討を行い、意匠や機能面の大枠を固めるときに威力を発揮するでしょう。その後の詳細設計フェーズでは、断面表示や測定機能を活用しながらパーツの干渉チェックやコストダウン検討を進められます。こうした複数の工程において、同じビューワツールが利用できれば、データの受け渡しがスムーズになるだけでなく、チームとしての操作習熟度も高まり、コミュニケーションに無駄が生じにくくなります。

また、製品が完成に近づいてきたら、eDrawingsを協力会社や顧客と共有する段階がやってきます。ここではマルチCAD環境でも対応可能なeDrawings Publisherで書き出したファイルが重宝します。通常であれば、CADシステムが異なる相手先とデータ互換をとる作業には手間がかかりますが、eDrawings形式を仲立ちにすることで、レビューの前準備が簡単になります。さらに、有償版のeDrawings Professionalを使うことで、モデルをVRで検証したり、ARを用いた実機設置シミュレーションを行ったりして、最終段階での不具合発生を防ぐことができます。こうした一連の運用シナリオは、製品開発の効率化という顕在ニーズにしっかり応えてくれるはずです。

設計レビューとコラボレーション

設計レビューにおいては、複数人が同時またはタイムラグを伴ってファイルにアクセスし、コメントを相互に交わすことが不可欠です。eDrawingsを使えば、まず設計者がCADデータをeDrawings形式に変換し、メンバーが無償版eDrawings Viewerを利用して開くことができます。測定機能やマークアップ機能を活用すれば、具体的なサイズの問題点や構造上の疑問点をファイル上で可視化し、履歴を残したまま議論を進められるでしょう。ただし、一部の機能は有償版のeDrawings Professionalを利用して発行したファイルでないと開けない場合があるため、レビュー側により深い検証を求めるのであれば、設計者が有償版を使用してデータを書き出すのが効果的です。

また、海外拠点を含むグローバルなプロジェクトでは、言語や時差の壁を越えて設計情報を共有する試みも増えています。eDrawingsの軽量化されたファイルはネットワーク負荷を抑えてやり取りできるため、リモート会議システムやクラウドストレージと組み合わせることで即座にレビューの準備が整うのです。たとえば、アセンブリの構成部品数が多い大型機械装置などを取り扱う際は、データ量が膨大になりがちですが、eDrawingsのファイル圧縮機能を用いれば遠隔地との協同作業を円滑化できます。こうしたコラボレーション環境を整備することで、リアルタイムフィードバックが得られやすくなり、設計の手戻りを最小限に抑えることが可能となるでしょう。

さらに、設計会議では口頭やメールのみで説明するよりも、3Dモデル表示を交えた視覚的なプレゼンテーションが格段にわかりやすいため、関係者の理解を加速します。eDrawingsの3次元ポインタや断面表示を使いながら、議論のポイントを具体的に示すことで齟齬を減らし、プロジェクト全体の完成度を高めることにつながります。こうした機能は、特に新しい設計手法をすぐに取り入れたい企業や、既存の開発フローに革新を求める企業にとって不可欠です。

モバイルとVRでの利用

近年は、設計データをモバイル環境やVR環境でも積極的に活用するケースが増えています。eDrawings Mobileを使えば、外出先や工場フロアなど、デスクトップPCのない場所でも設計段階のモデルを確認し、コメントを伝えられます。たとえば、現場の作業員が実機の図面を手元で参照しながら、細部を3Dモデルでチェックし、気づいた点を写真やメモと一緒に送信することも可能です。これにより、設計と製造現場のギャップを早期に解消でき、試作回数の削減やミスの未然防止につながります。特に複雑な製品の組み立て手順を理解する際には、アニメーション表示で工程をなぞりながら可視化できるため、作業者への教育にも役立ちます。

一方で、VR機能を使うと、空間的な制約やサイズ感をリアルに体験しつつ、製品の構造的課題を洗い出すことができます。実際にヘッドセットを装着して、モックアップを用意せずとも製品内部や外観を没入感をもって検証できるため、従来方法では気づきにくかった干渉やレイアウト上の問題を早期に発見しやすくなります。たとえば、大きな産業機械や複雑な配管設備などは杭打ちや据付の段階で現場でのトラブルが起こりやすいですが、eDrawings ProfessionalのVR対応を活用すれば、事前にモデルを3D空間で動かしながら問題点を洗い出せるのです。こうした工程を踏むことで、想定外の干渉や工事時間の伸びを未然に防ぐ手立てにもなるでしょう。

AR(拡張現実)機能と合わせて利用する場合、論理的な設計図面上はクリアしていても、実際の設置現場や使用環境と照合してみると、予期せぬ問題点が浮上することがあります。それを実機がない段階でビジュアル的にチェックし、その場で修正案を検討できるメリットは計り知れません。特に、プロダクトデザインや筐体設計の現場では仕上がりのイメージが重要視されるため、AR/VRシミュレーションを駆使することでクライアントや他部門への説得材料として活かしやすくなるでしょう。

eDrawingsの技術的詳細

eDrawingsは、単にファイルを読み込んで表示するだけの平易なビューワではなく、設計開発のワークフロー全体に組み込める情報伝達プラットフォームとして設計されています。この背景には、数多くのファイル形式への互換性や、高度なビジュアライゼーション機能が備わっていることが大きく関係しています。実際、いかに優れたCADソフトウェアを使っていても、招集されたメンバー全員が同じCAD環境を用意できるとは限らないため、データ共有時の環境差異は開発プロジェクトの進行を阻む要因となり得ます。そこで、eDrawingsを介したシンプルかつ強固な情報共有基盤を構築することが、多くの企業にとって有力な選択肢になるというわけです。

ファイル形式と互換性

eDrawingsは、SOLIDWORKSのネイティブファイル(.sldprt、.sldasm、.slddrw)だけでなく、DXFやDWGなどの2Dデータ、STEP、IGESなどの中間ファイルにも対応できます。加えて、AutoCADやInventor、CATIA、Pro/ENGINEER、Solid Edgeなどの複数のCADシステムからデータを書き出す方法が用意されているため、マルチCAD環境においても柔軟に運用可能です。たとえば、CAD技術者向けに特化したハイエンドソフトで作成したアセンブリデータを、eDrawings Publisherを通じて軽量化しつつ、レビュー担当者は無償のeDrawings Viewerで細部まで確認するといったフローが一般的に利用されています。

また、データサイズが大きくなりがちな3Dモデルを大幅に圧縮して出力できるため、ネットワーク越しのやり取りが格段にラクになるのも特筆すべき点です。容量の大きいアセンブリデータをメール送付するときに時間がかかったり、相手先が受信ボックスの容量制限にひっかかったりする問題が発生しにくくなります。特に、大企業では部門間の取り扱いファイルサイズ制限が厳しい場合がありますが、eDrawings形式はそうした制約を回避しやすく、開発プロセスのスピードアップにも寄与します。

さらに、ファイル形式の互換性が高いだけでなく、一部の拡張子ではメタデータの保持が可能な点も評価されます。たとえば、部品固有の属性情報や、SOLIDWORKS上で作成したアノテーション・寸法などが正しく伝達されるため、簡易ビューアでありながらきちんと製品の意図を汲み取れるのです。これらの情報が欠落しないことは、設計意図の伝達ミスを防ぎ、コミュニケーションロスを減らすうえで非常に重要になります。

高度なビジュアライゼーション機能

eDrawingsの強みの一つに、リアルタイムに近い形で3Dモデルを自由に操作できる高い描画能力があります。金属の光沢や透明素材など、マテリアル表現をある程度再現しながらモデルを回転・拡大縮小できるので、外観検討にも有用です。さらに、分解図アニメーションや動的な断面表示によって、部品の内部構造や組み立て手順を視覚的に理解しやすくしています。設計段階で把握しておかなければならない要素が多い大型装置や複雑なメカニズムを含む製品では、これらの3Dアニメーション機能が特に重宝されます。

また、eDrawings ProfessionalではAPIが公開されているため、独自のワークフローに合わせてカスタマイズが可能です。たとえば、自社専用のプラグインや自動解析スクリプトを組み込み、内部的に解析結果をeDrawingsファイルとして生成・参照することも考えられます。大規模なプロジェクトでは、設計解析結果(SimulationやStress分析など)を部門間で共有することが求められますが、すべてのユーザーが高価なシミュレーションツールをインストールするのは現実的ではありません。そこで、eDrawingsのAPIと連携して簡易的に結果を可視化・検証する仕組みを作ることで、チーム全体の理解度を均一化し、設計検討に割く時間やコストを大幅に削減できます。

さらに、ARやVRなどの新技術を積極的に取り入れている点も見逃せません。リアルな製品スケール感を得たい場面だけでなく、単純に2D図面ではイメージがつかみにくい複雑形状を評価したいときにも、VR上で自由に覗き込むことができるのは非常に便利です。製品の完成度を高めるうえで、こうした視覚化技術は大きなアドバンテージとなるでしょう。

eDrawingsを活用するメリット

eDrawingsを導入するメリットとして、まず挙げられるのは設計プロセス全体の効率化とコミュニケーションの円滑化です。CADデータの測定やCADデータのマークアップといった機能はもちろん、クラウド環境やモバイル端末を利用することで、エンジニアやデザイナーがいつでもどこでも確認・レビューできるワークフローを実現します。また、ActiveXコントロールとしてウェブブラウザに埋め込むことや、HTMLエクスポートでツール非依存のレビューを行うことも可能なので、社内外の関係者が同じ情報を共有・検討しやすい状況を作り出せるのです。こうした導入効果は、製品開発のスピード向上だけにとどまらず、最終的な完成品の品質向上にも寄与すると考えられます。

設計プロセスの効率化

プロジェクトを進めるうえで、CADファイルの変換ミスや、データのやり取りに伴うトラブルは珍しくありません。しかし、eDrawingsによって事前に統一されたビューワ環境とファイル形式を使用すれば、そうしたやり取りのロスを減らし、必要な人が必要なタイミングでデータを確認できるようになります。たとえば、設計者や解析担当者、製造現場、外部パートナーなど、立場の異なるメンバーが毎回異なるフォーマットで図面やモデルを依頼し合う手間を省けるのは大きいでしょう。表示速度や操作性の面でも軽快さが保たれているため、大容量のアセンブリを扱う現場においても作業効率が大きく向上することが期待されます。

さらに、eDrawingsを活用すれば、設計段階でのレビューが迅速化されます。従来は紙の図面に手書きで修正箇所を描き込んだり、スクリーンショットを撮って赤字を入れたりといった方法しかなかったかもしれません。しかし、eDrawingsのマークアップ機能を使えば、リアルタイムに画面上へ注釈を記録したり、コメントをファイルに埋め込んで保存したりできます。こうした情報がすべて一つのデータとして管理されるため、後から振り返って理由や経緯を確認するのも容易です。結果として、再確認や再議論の回数が減り、工程の見直しや手戻りを最小限にとどめられます。

これらのメリットは、最終的には「プロジェクトの市場投入期間を短縮できる」という期待する効果にも直結します。レビューや修正のサイクルが高速化されるだけでなく、リモートワークや外部委託など柔軟な体制でも設計フローが安定稼働するようになるため、企業の競争力も高まるでしょう。短縮された期間を使って、より多くの改善や試作を重ねられれば、品質向上にもつながる可能性が大いにあります。

コミュニケーションの向上とエラー削減

設計において最も多い失敗ケースのひとつに、コミュニケーション不足から起こる仕様の行き違いが挙げられます。口頭で伝えていた内容と実際の操作や寸法がずれていたり、テキストだけの連絡では伝わりきらない空間的要素などが原因となることもあります。eDrawingsを使えば、CADデータそのものにマークアップやコメントを付与できるため、言葉だけでなく視覚的な形で正確に情報をやり取りできます。複雑な3Dモデル飛び交う場面でこそ、このビジュアルコミュニケーションの利点が顕著に現れます。

また、ARやVRといった先進的な機能を用いると、紙ベースや2D図面の読み取りに依存しない説明や検証が可能になるため、設計上の微妙な取り回しや外観ボリューム、干渉などをより具体的にイメージできます。これによって、エラーや設計ミスを増幅させる要因を早期に摘み取ることができ、結果として開発期間の短縮と品質向上が見込まれます。特に重厚長大な設備やモジュール構成が複雑な電子機器などでは、紙面だけでは把握しきれない要素が多様に絡み合うため、3Dモデル表示を通じて関係者間のギャップを減らすことは何より重要です。

実際の運用では、開発プロジェクトの立ち上げ段階から、eDrawingsをチームに展開しておくのがおすすめです。すぐに実践できる方法としては、まず無償版のeDrawings Viewerを全員に導入し、社内資料や会議で使用する設計データをeDrawings形式に統一するというステップが考えられます。より高度なレビューが必要なときには、有償版のeDrawings Professionalを利用してファイルを発行すれば、断面や測定、注釈機能をさらに活かしやすくなります。こうした運用フローを標準化すれば、図面確認のミスやコミュニケーションの滞りが減り、大きな手戻りも防げるようになるでしょう。

まとめと次のステップ

eDrawingsは、ダッソーシステムズが提供する優れたCADファイルビューワとして、SOLIDWORKSをはじめとする複数のCADフォーマットを一元的に扱えるのが最大の特徴です。無償のeDrawings Viewerを使えば、基本的な閲覧やマークアップに加えて、3Dモデル.displayや2Dデータの確認が誰でも簡単に行えます。一方で、有償のeDrawings Professionalを活用すれば、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、さらにAPIを使ったカスタマイズなど、先進的な機能で設計コラボレーションを拡張し、設計開発の土台をより強固にできます。マルチCAD環境に適応するeDrawings Publisherや、外出先でも操作可能なeDrawings Mobileといった関連ツールもあるので、さまざまな企業規模・ワークフローに柔軟に対応できる点は大きな魅力です。

これらのシステムを組み合わせることで、CAD技術者向けの高度なコラボレーションから、簡易なレビューを行いたい初心者向けの操作まで、幅広い対応が可能になります。特に設計現場では、顕在ニーズである「多様なファイルを簡単に閲覧したい」「3Dデータビューワで形状を直感的に把握したい」といった面を満たしつつ、潜在ニーズである「施工・製造現場でARやVRを使って検証したい」「設計プロセスの効率化、エラー削減を目指したい」という要望にも応えられるでしょう。結果として、製品の市場投入期間を短縮し、より高い品質を追求しながらプロジェクトを進行させる効果が期待されます。

今後のステップとしては、まずチーム内で無償版の導入を試して使い勝手を確かめるのがよいでしょう。直感的なインターフェースで導入ハードルが低いため、新規のメンバーにもスムーズに展開できます。そのうえで、より高度な測定・断面機能やAR/VRなどの機能を活かしたいプロジェクトが出てきた際に、有償版のeDrawings Professionalを含むライセンスを検討すれば、着実かつ無駄のない導入が可能です。将来的には、eDrawingsをプラットフォームとして製造現場から顧客、サプライヤーまでをシームレスにつなぎ、製品ライフサイクル全体で効率的な作業が行える体制を整えてみてください。eDrawingsの活用が進むほど、コスト削減や品質向上といったメリットを肌で実感しやすくなるはずです。

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参考情報:

ダッソーシステムズ「eDrawings-Viewer」 

https://www.edrawingsviewer.com/ja/product/edrawings-viewer

ダッソーシステムズ「eDrawingsのダウンロード」 

https://www.edrawingsviewer.com/ja/download-edrawings

ダッソーシステムズ「eDrawingsで2次元設計と3次元設計をレビュー」 

https://www.edrawingsviewer.com/ja

ダッソーシステムズ「eDrawings Professional」 

https://www.edrawingsviewer.jp/ed/eDrawings-professional.htm

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