AutoCADのライセンス割り当てに失敗しない!よくあるトラブルと解決法
1. はじめに:AutoCADのライセンス割り当てでつまずかないために
AutoCADは、建築・製造・インフラなど、さまざまな業界で広く使われている設計ソフトです。そんなAutoCADをスムーズに使いこなすためには、ライセンスの正しい「割り当て」がとても重要です。
近年のAutodesk製品では、クラウドベースの「Named Userライセンス(ユーザー単位ライセンス)」が主流になっており、利用するユーザーごとにライセンスを紐づける必要があります。もし割り当てが正しく行われていないと、「AutoCADが起動しない」「ライセンスがありません」などのエラーが表示され、作業ができなくなることもあります。
さらに、ライセンスの誤管理は、使用契約の違反につながるリスクもあるため、コンプライアンスの観点でも注意が必要です。
特に、はじめてライセンス管理を任された担当者や、突然AutoCADが使えなくなって困っている方にとって、ライセンスの仕組みや割り当て方法を理解しておくことは大きな助けになります。
本記事では、AutoCADのライセンス割り当てに関する基本的な知識から、よくあるトラブルの原因とその対処法まで、初心者にもわかりやすく解説します。事前にポイントを押さえておくことで、トラブル発生時にも落ち着いて対応でき、作業の遅延や業務の停滞を最小限に抑えることができます。
また、ライセンス管理をスムーズに行うための運用のヒントや、トラブルを未然に防ぐための予防策も紹介しています。
これからAutoCADを導入する方、ライセンス管理に不安がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
2. AutoCADライセンスの種類と割り当ての基本
AutoCADのライセンスにはいくつかの種類があり、利用目的や組織の運用体制によって最適な選択が求められます。かつてはマルチユーザー(ネットワーク)ライセンスも一般的でしたが、現在ではAutodeskによるクラウドベースの「Named Userライセンス(ユーザー単位ライセンス)」が主流となっています。
ライセンスを正しく割り当てるには、まず自社がどの種類のライセンスを使用しているかを正しく把握することが大切です。それぞれの特徴を理解したうえで、適切な方法で管理・運用することがトラブル回避の鍵となります。
実際の割り当て作業には、「Autodesk Admin Console(アドミンコンソール)」という専用のウェブ管理ツールを使用します。このツールを通じて、ユーザーの追加・削除、製品の割り当てや解除などの操作を行います。管理者はここで各ユーザーへのライセンスの付与状況を確認し、必要に応じて調整が可能です。
スタンドアロンタイプ(個人用)である「シングルユーザーライセンス」の場合は、PCとAutodeskアカウントをひも付け、クラウド認証によってライセンスをアクティブにします。一方、マルチユーザーライセンス(ネットワークライセンス)は、社内のライセンスサーバーを介して複数のユーザーが同時利用できる方式でしたが、現在では新規契約が打ち切られているか、限定的な更新のみとなっています。
ここからは、AutoCADライセンスの種類と選び方、そして実際の割り当て手順について、もう少し詳しく見ていきましょう。自社に合ったライセンスを選定し、正しく運用することで、不要なトラブルを未然に防ぐことができます。
2.1 各ライセンスの特徴と選び方
AutoCADライセンスには主に次の3つのタイプがあります。それぞれに特徴があるため、導入前に違いを理解し、自社に合ったものを選ぶことが重要です。
■Named Userライセンス
1つ目は「Named Userライセンス(ユーザー単位ライセンス)」です。これは、契約者が保持するAutodeskアカウントに製品ライセンスをひも付け、ユーザーがサインインして使用する方式です。ユーザーごとにライセンスが割り当てられるため、誰が使っているかを明確に管理できるのが特長です。Autodeskが現在推奨している主流の形態でもあります。
■ネットワークライセンス
2つ目は「ネットワークライセンス(旧マルチユーザーライセンス)」です。この方式では、社内のライセンスサーバーにライセンスを一括で配置し、同時利用数の上限内で複数人が使用できる仕組みです。特定の人にライセンスを固定せず、必要な人が交代で利用できる柔軟性があり、コスト面でも一部の企業には有効でした。しかし、Autodeskはこのタイプの新規契約をすでに終了しており、現在は原則として更新継続のみが可能な状態です。
■教育機関向けライセンス
3つ目は「教育機関向けライセンス」です。こちらは、学生や教員が教育・学習目的でAutoCADを利用するためのライセンスです。正規の教育機関に所属し、一定の条件を満たすことで、ライセンスを利用することができます。学習目的以外での使用や商用利用は認められていないため、用途に応じた適切な利用が求められます。
ライセンスの選び方としては、利用人数やプロジェクトの規模、運用管理の手間を基準に考えるのがよいでしょう。たとえば、小規模なチームやフリーランスであればNamed Userライセンスが最も扱いやすく、ライセンスの無駄も起こりにくい選択です。一方、大規模な組織で既にネットワークライセンスを導入している場合は、そのまま更新して継続利用するケースも見られます。ただし、今後はAutodeskの方針により、すべてのライセンスがNamed User形式に一本化されていくと予想されるため、今のうちに移行を検討しておくことも大切です。
2.2 ライセンス割り当ての手順と注意点
ライセンスの割り当て作業は、基本的に「Autodesk Admin Console」を使って管理者が行います。その操作は比較的シンプルですが、いくつかの注意点を押さえておかないとエラーにつながる場合があります。
まずは管理者が自身のAutodeskアカウントにサインインし、左側メニューから「ユーザー管理」画面を開きます。次に、「ユーザーを追加」ボタンを使って、ライセンスを割り当てたいユーザーのメールアドレスを入力します。この際、メールアドレスの入力ミスやドメイン違いには特に注意しましょう。よくあるミスとして、全角文字が含まれていたり、@マーク以降が社内ドメインと異なっていたりすると、招待メールが届かず割り当てが失敗します。
ユーザーを正しく追加できたら、次は製品の一覧から「AutoCAD」を選び、対象ユーザーにライセンスを付与します。このとき、割り当て可能なライセンスが一覧に表示されていない場合は、現在契約中のライセンスが別の管理アカウントにひも付いていないか、契約上の制限がないかを確認する必要があります。
割り当てが完了すると、対象ユーザーのAutodeskアカウント上にライセンスが反映され、AutoCADを起動してサインインすれば使用できるようになります。ただし、ライセンス情報の反映には時間がかかることがあり、すぐに使用できないケースもあります。そうした場合は、数分から十数分ほど待ってみる、あるいは一度サインアウトしてから再度ログインしてみると解決することがあります。
割り当てに問題がある場合は、エラーメッセージやライセンスエラーコードが表示されます。そうした場合には、もう一度メールアドレスが正しいか、ライセンス数が上限に達していないか、契約が有効な状態かなど、確認項目を丁寧に見直すことが大切です。ちょっとした確認ミスが、大きな作業遅延につながることもあるため、日頃からチェックリストを用意しておくと安心です。
3. よくあるトラブルとその原因
ライセンスの割り当てを行っても、何らかのトラブルが原因でAutoCADが起動できない、あるいは使用できないといった事態が発生することがあります。こうした問題は、一見すると複雑に見えるかもしれませんが、実際にはいくつかの典型的な原因に分類できます。
主なトラブルの原因は大きく分けて3つあります。まず1つ目は、そもそもユーザーにライセンスが割り当てられていない、あるいは割り当てに失敗しているというケースです。2つ目は、ライセンス情報やアプリケーション側の設定に不整合がある場合です。そして3つ目は、ネットワーク環境やサーバー設定に問題があるケースです。
これらの原因によって現れる症状には、「ライセンスがありません」「使用できません」といったメッセージが表示されるものから、AutoCAD自体が立ち上がらないなど、さまざまなパターンがあります。
本章では、それぞれのトラブルが発生する背景や代表的な症状を整理し、原因を早期に特定して対処につなげるための視点を提供します。
3.1 ライセンスが割り当てられていない場合の対処法
AutoCADのライセンスに関するトラブルで、最もよく見られるのが「ユーザーにライセンスが正しく割り当てられていない」という状況です。この場合、ユーザーがサインインしてもソフトウェアが利用できず、「ライセンスがありません」「アクセス権がありません」といったエラーメッセージが表示されます。
たとえば、新入社員やプロジェクトメンバーを管理者が追加する際に、メールアドレスの入力を間違えて招待してしまうと、正しくライセンスを受け取れません。また、メールアドレスが正しくても、追加後に製品ライセンスを選択して付与する操作を忘れていると、割り当ては完了していないことになります。
このような場合、まずはAutodesk Admin Consoleにアクセスし、対象ユーザーが登録されているかどうかを確認することが第一歩です。登録が正しくされていても、製品が割り当てられていなければ意味がありません。製品一覧からAutoCADを選び、そのユーザーにライセンスが付与されているかを再確認し、必要に応じて手動で割り当てを行います。
また、ライセンス数に余裕がないと、「ライセンスの空きがありません」と表示されて割り当て自体ができないこともあります。この場合は、使っていないユーザーからライセンスを解除するか、契約ライセンス数を見直す必要があります。
加えて、割り当てが完了していても、反映に少し時間がかかることがある点にも注意が必要です。ユーザー側でAutoCADを起動してもすぐにライセンスが有効にならない場合は、一度サインアウトしてから再度ログインするか、PCを再起動するなどの操作を試してみましょう。また、ブラウザのキャッシュや一時ファイルが干渉して反映が遅れることもあるため、これらをクリアしてみるのも有効な手段です。
3.2 ライセンスエラーとその解決策
ライセンスの割り当てが完了していても、AutoCADの起動時に「ライセンスがありません」「ライセンスが無効です」「AutoCADの使用が許可されていません」といったエラーメッセージが出ることがあります。これらは、アカウントやバージョン、環境設定の不一致によって発生するケースが多く、一見するとライセンスが正しく付与されているのに使えない、といった混乱を招きます。
よくある原因のひとつが、ログインしているAutodeskアカウントが、実際にライセンスを付与されたものと異なっているケースです。たとえば、個人のメールアドレスでログインしていても、企業アカウントに付与されたライセンスは利用できません。複数のアカウントを使い分けている場合は、必ず割り当て対象となっているアカウントでログインしているかを確認しましょう。
もうひとつの原因は、AutoCADのバージョンとライセンスの互換性です。たとえば、契約上AutoCAD 2024の使用が許可されているのに、PCにはAutoCAD 2019がインストールされていると、ライセンスが認識されない、あるいは不正と判断されて使用できないといったエラーが出ることがあります。ライセンスの有効バージョン範囲は「最新+過去3バージョン」が一般的ですが、それ以前のバージョンは非対応の可能性が高いため注意が必要です。
さらに、ライセンス数が上限に達していたり、サブスクリプションの更新が滞っていたりする場合にも、使用不可となることがあります。こうした場合には、「ライセンスエラーコード(例:1001など)」が表示されることが多く、その内容を確認することで原因の手がかりになります。
対応策としては、まず正しいアカウントでログインしているかを再確認し、サインアウト・再ログインを試すこと。次に、AutoCADのインストールバージョンが契約内容に適合しているかをチェックし、必要に応じてソフトのアップデートや再インストールを行います。また、管理者にライセンス数や支払い状況を確認してもらうことで、契約上の問題がないかも調べるとよいでしょう。
3.3 ネットワークやサーバー関連のトラブル
AutoCADを使用するうえで意外と見落とされがちなのが、ネットワーク環境やサーバー設定による影響です。Autodesk製品は、ライセンス認証や同期の際にクラウドと通信を行うため、オフィスや組織のネットワーク構成によってはトラブルの原因となることがあります。
たとえば、企業のセキュリティポリシーによりファイアウォールやプロキシサーバーが強く制限されていると、AutoCADがAutodeskの認証サーバーにアクセスできず、ライセンスを取得できない状態になることがあります。また、VPNを使用している場合や、インターネット接続が不安定な環境下でも、ライセンスの認証に失敗することがあります。
ネットワークライセンス(旧マルチユーザーライセンス)を運用している企業では、社内ライセンスサーバーが正しく動作していないことが原因で、ユーザーがライセンスを受け取れないケースもあります。具体的には、サーバーのサービスが停止している、ライセンスファイルが期限切れになっている、あるいはサーバー自体が再起動を必要としていることなどが考えられます。
こうしたトラブルに対処するには、まず管理者がライセンスサーバーの状態を確認する必要があります。ネットワークライセンスを利用している場合は、「LMTOOLS」などのライセンス管理ツールでライセンスサーバーのステータスやログをチェックすることができます。特に、Autodesk製品に必要な通信ポート(TCP 443など)がブロックされていないか、セキュリティ設定を見直すことも重要です。
また、Named Userライセンスであっても、インターネット経由でライセンス認証を行うため、短時間でも通信が途切れると認証が完了せず、使用できなくなることがあります。この場合は、一度ネットワークを再接続する、別の回線に切り替えるといった方法で改善が見込める場合があります。
ネットワークやサーバーまわりの問題は、一見するとソフトの不具合に見えることもあるため、原因を特定するには管理者と連携しながら、システム全体の状態を確認する視点が必要です。
4. トラブルシューティング:具体的な解決手順
AutoCADのライセンス関連のトラブルには、管理者でないと解決できないものも多くありますが、ユーザー側でも対応可能な対処法はいくつか存在します。特に、どこに問題があるのかを見極めるためには、整理された手順で順番に確認していくことが重要です。
この章では、「管理者が確認すべきポイント」と「ユーザーが対応できる方法」の両方を整理し、実際の現場で役立つ具体的なトラブルシューティング手順をご紹介します。また、サポート窓口に問い合わせる前に準備しておくと良い情報についてもあわせて解説します。
4.1 管理者のためのチェックリスト
ライセンスに関するトラブルが発生した場合、まず最初に確認すべきは、管理者がAutodesk Admin Consoleで正しく操作できているかどうかです。以下の項目をチェックリストとして活用すると、割り当てミスや管理上の見落としを防ぐことができます。
- 対象ユーザーがAdmin Console上に正しく追加されているかを確認する
メールアドレスや氏名に入力ミスがあると、招待メールが届かなかったり、ライセンスが付与されなかったりします。全角文字やスペースにも注意が必要です。 - ライセンスの割り当てが完了しているかを再確認する
ユーザーが登録されていても、製品の割り当て操作が完了していなければAutoCADは使用できません。割り当て状況は「ユーザー」タブから確認できます。 - ライセンス数の上限に達していないかをチェックする
契約数を超えるユーザーに割り当てることはできません。不要になったユーザーからライセンスを解除するなどの調整が必要です。 - 支払い状況や契約の有効期限を確認する
サブスクリプション契約が切れていたり、支払いが滞っていたりすると、ライセンスが無効になってエラーが発生することがあります。契約更新日や請求情報も定期的に確認しましょう。 - サーバーやネットワークの状態を見直す
ネットワークライセンスを使用している場合は、ライセンスサーバーが正常に稼働しているか、またNamed Userライセンスでも、インターネット接続やファイアウォール設定によってライセンス取得が妨げられるケースがあります。必要に応じてネットワーク管理者に確認しましょう。
このように、管理者の操作ひとつで多くの問題は解決できます。日常的な点検と複数人による管理体制を整えておくことで、人的ミスによるトラブルを減らすことにもつながります。
4.2 ユーザーのための対応策
ライセンス割り当てが完了していても、ユーザー側の設定や操作に原因があってAutoCADが使用できないこともあります。この場合は、以下のポイントを順に確認することで、自分で問題を解決できる可能性があります。
- 正しいAutodeskアカウントでログインしているかを確認する
会社から付与されたメールアドレスではなく、個人のアカウントでサインインしていると、ライセンスが正しく反映されません。使用中のアカウント情報を一度確認しましょう。 - サインアウトとライセンスキャッシュのクリアを試す
一度サインアウトしてから再ログインすることで、ライセンス情報が再取得されることがあります。また、PCに残っているライセンスキャッシュが干渉している場合もあるため、キャッシュファイルの削除を行うと改善するケースがあります。削除方法はOSやAutoCADのバージョンによって異なるため、Autodesk公式サポートページを参照してください。 - ネットワーク接続やプロキシ設定を確認する
AutoCADのライセンス認証にはインターネット接続が必要です。VPNやプロキシ設定が原因で通信が遮断されていると、ライセンスが取得できません。接続環境を一時的に変更する、ネットワーク管理者に相談するなどの対応が必要です。 - インストールされているAutoCADのバージョンを確認する
契約しているライセンスが対応しているバージョンより古いAutoCADを使用していると、ライセンスが無効とみなされて起動できないことがあります。付与されたライセンスが使用可能なバージョンと一致しているか確認し、必要に応じて最新版へアップデートしましょう。
これらの対応策を順に実行することで、多くのトラブルはユーザー側でも解決が可能です。特に、アカウントの取り違えやキャッシュの影響によるエラーは頻発しやすいため、定番の確認ポイントとして覚えておくと安心です。
4.3 サポートに問い合わせる前の準備
ユーザー側でも管理者側でも対応を試みたものの、どうしてもトラブルが解決しない場合は、Autodeskのカスタマーサポートへ問い合わせることを検討しましょう。ただし、サポートをスムーズに受けるためには、事前に準備しておくべき情報があります。
以下は、問い合わせ時に伝えるとスムーズに対応が進む代表的な情報です。
- エラー発生時の画面キャプチャやエラーコード
たとえば「AutoCAD エラーコード 1001」など、表示されたメッセージを正確に記録しておくことで、サポート側が原因を特定しやすくなります。 - 使用中のPC環境やソフトのバージョン情報
OSの種類(例:Windows 11)、AutoCADのバージョン(例:AutoCAD 2024)、契約プランの種類(例:Named Userライセンス)を伝えると、問題の切り分けが迅速になります。 - ネットワーク構成や制限の有無
プロキシサーバーやVPNの有無、社内のファイアウォール設定など、通信環境に関する情報は非常に重要です。特に企業内のセキュリティポリシーが厳しい場合、ライセンス認証に影響する可能性があります。 - すでに試した対処内容とその結果
たとえば「サインアウト・再ログイン済み」「キャッシュ削除を試したが改善しなかった」など、どこまで対処を試したかを伝えることで、サポート担当者は無駄な手順を省いて対応に集中できます。
こうした情報を事前に整理しておくことで、サポートとのやり取りがスムーズに進み、問題の早期解決につながります。また、場合によってはライセンスの追加購入や契約内容の見直しも必要になるため、その場で判断できるよう準備しておくことも大切です。
5. ライセンス割り当てをスムーズに行うためのヒント
AutoCADのライセンス割り当ては、日々の業務における基本的な管理業務のひとつですが、あらかじめ適切な運用体制を整えておくことで、トラブルの発生を大きく減らすことができます。ライセンスの誤割り当てや無駄な支出を防ぐためにも、計画的かつ継続的なライセンス管理が重要です。
ここでは、日常的にライセンスを管理・活用している管理者の方々に向けて、よりスムーズな運用を実現するためのヒントやベストプラクティスをご紹介します。これからライセンス管理に携わる方はもちろん、現在の運用体制を見直したい方にも参考になる内容です。
5.1 効果的なライセンス管理のベストプラクティス
AutoCADのライセンスを適切に管理するうえで最も大切なのは、誰がどのライセンスをいつ使っているかを「見える化」することです。Autodesk Admin Consoleを活用すれば、ユーザーとライセンスの割り当て状況を常に把握することができます。特に、ユーザーの追加・削除が頻繁に発生するプロジェクト環境では、この可視化が運用効率に大きく影響します。
たとえば、部署異動や退職によって使われなくなったライセンスが放置されているケースは珍しくありません。そういったライセンスを速やかに解除しておくことで、新たに入社したスタッフや新プロジェクトのメンバーに対して、スムーズに再割り当てができるようになります。
また、管理者の役割を一人に集中させるのではなく、複数名で分担する体制をとることも、安定した運用には効果的です。担当者の休暇や不在時にも対応できるように、割り当て手順やライセンス状況をチーム内で共有しておくと安心です。特にトラブル対応時には、迅速な連携が問題解決の鍵となります。
こうした基本的な運用ルールをあらかじめ定めておくことで、日々の管理が煩雑にならず、結果的に業務効率も向上します。シンプルで透明性のあるライセンス運用こそが、トラブルを未然に防ぐ最大のコツです。
5.2 定期的なライセンスの監査と更新
ライセンス管理においてもう一つ重要なのが、定期的な監査と契約更新の見直しです。AutoCADはプロジェクト単位や季節によって利用状況が変動することがあり、数か月間まったく使用されていないライセンスが放置されていることもあります。これを放置すると、実際には使われていないライセンスに対してもコストが発生してしまいます。
そこで有効なのが、半年に一度や四半期ごとのタイミングで、Admin Console上の使用状況をチェックする「ライセンス棚卸し」です。使用頻度の低いユーザーや退職済みのアカウントがないかを見直し、不要なライセンスがあれば解除して他のユーザーに割り当て直す、あるいは契約数を見直すことでコストの最適化につながります。
さらに、契約更新の直前には「このライセンスは本当に必要か?」「追加・削減すべきライセンスはあるか?」という視点で改めて検討することが大切です。更新日ギリギリになって慌てて対応すると、無駄な契約をそのまま継続してしまうリスクがあります。
リマインダーを活用したスケジュール管理や、更新に関する情報の社内共有も欠かせません。たとえばGoogleカレンダーやタスク管理ツールに更新時期を登録し、担当者に通知が届くよう設定しておくと、忘れを防ぐことができます。こうした小さな工夫の積み重ねが、ライセンス管理の精度を高めていく鍵になります。
5.3 トラブルを未然に防ぐための予防策
AutoCADのライセンス管理においては、トラブルが発生してから対処するよりも、あらかじめ予防策を講じておくことが最も効果的です。特に、社内に複数のユーザーが存在する場合や、新人の導入が頻繁にある現場では、少しの工夫で大きなトラブルを回避できます。
まず、管理者はAutodeskのライセンス運用ルールやサインインの仕組みについて、社内でしっかり共有しておくことが大切です。新しくAutoCADを使うユーザーには、アカウントの作成方法やログイン手順を簡単にまとめたマニュアルを配布するだけでも、誤操作の防止に大きく役立ちます。
ネットワーク関連でも注意が必要です。たとえば、VPN接続やプロキシ設定、ファイアウォールの構成などが原因で、クラウドとの通信が遮断されることがあります。AutoCADはライセンス認証の際にインターネットとの接続を必要とするため、これらの設定は定期的に見直しておくべきポイントです。
また、AutoCAD本体のバージョンアップを行った際には、ライセンスとの互換性が確保されているかどうかも確認が必要です。特に、旧バージョンのライセンスが有効でなくなっている場合は、再割り当てや契約プランの変更が必要になることもあるため、アップデートと同時にチェックリストを活用すると安心です。
さらに、突発的なトラブルへの備えとして、Autodesk Knowledge Networkやユーザーフォーラムなど、信頼できる情報源を定期的にチェックする習慣も有効です。普段から情報収集をしておけば、問題が発生したときにも素早く対応策を探し出すことができます。
6. まとめ:ライセンス管理の重要性
AutoCADを安定して活用するうえで、ライセンスの割り当てとその管理は、決して軽視できない重要なプロセスです。特に近年では、Autodeskのライセンス体系が「Named Userライセンス(ユーザー単位)」を中心としたクラウド管理方式へと移行し、各ユーザーごとに確実にライセンスをひも付けることが必須となっています。
本記事では、ライセンス割り当ての基本的な仕組みから、よくあるトラブルの原因とその対処法、そしてライセンス管理をスムーズに進めるためのヒントまでを解説してきました。なかでも、メールアドレスの誤入力やアカウントの取り違え、ネットワーク設定による通信障害など、実務で起こりやすいトラブルにどのように対応すればよいかについて、実践的な視点から紹介しました。
こうした知識をあらかじめ備えておくことで、ライセンスエラーが発生した際にも冷静に対処でき、業務の停滞を最小限に抑えることができます。また、定期的なライセンスの棚卸しや管理体制の整備によって、無駄なコストの削減や、社内のライセンス運用の効率化にもつながるでしょう。
今後は、ライセンス契約の更新時期を見逃さないようにしたり、新しく入社したスタッフに迅速にライセンスを割り当てられるような準備体制を整えたりと、日々のちょっとした工夫が組織全体の生産性向上に直結していきます。
AutoCADを継続的かつ効果的に使い続けるためには、ソフトウェアそのものだけでなく、こうしたライセンスの見えない部分にまで目を配ることが必要不可欠です。これからライセンス管理を始める方も、すでに運用している方も、ぜひ今回ご紹介した内容を参考に、自社に合ったライセンス管理体制を見直してみてください。
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<参考文献>
Autodesk Account
https://manage.autodesk.com/login
オートデスク管理者 | ユーザ管理 | 製品へのアクセス権の割り当て
https://www.autodesk.com/jp/support/account/admin/users/assign-access
サポートと問題解決 | Autodesk
https://www.autodesk.com/jp/support
アカウント管理 | 概要 | オートデスク サポート
https://www.autodesk.com/jp/support/account
ライセンス モデル、サーバ、要件 | 管理者 | オートデスク サポート
https://www.autodesk.com/jp/support/download-install/admins/network-deploy/setting-up-license-server