3DCAD用PCを買う前に知っておきたい!メモリ vs グラフィックカード|どちらを優先するべきか
1. はじめに
3DCAD用PCを選ぶ際、最初に頭を悩ませるのが「メモリ選び方」と「グラフィックカード選び方」のバランスです。2DCADと比べて、3Dモデリングやレンダリングなどの3DCAD作業はPCにかかる負荷が格段に大きくなります。複雑なBIMモデルを扱う場合や、高解像度でレンダリングするときには、CPUだけでなくメモリ(RAM)やグラフィックボード(GPU)の性能が作業効率を左右するためです。
また、3DCAD PC負荷はモデルのポリゴン数やテクスチャの詳細度、作業中のマルチタスクの度合いによって増減します。そうした負荷をこなすために、PCスペック選定には注意が必要ですが、実際には「3DCADメモリ推奨容量はどれくらい?」「3DCAD GPU推奨ってどう選ぶ?」といった疑問が多く、さらにコスト面も考慮しなければなりません。
この記事では「メモリ vs グラフィックカード、どちらを優先するべきか?」というテーマを軸に、3DCADでの用途別に押さえておきたいポイントを解説します。特にメモリとGPUのバランスをどう取るかが焦点です。仕事でAutoCADやSOLIDWORKSなどを使う方はもちろん、Fusion 360やRevitを扱う方にも役立つ情報をまとめています。
2. メモリ(RAM)が3DCAD作業に与える影響とは?
3DCADでは重いデータを扱うことが多く、メモリに余裕がないとファイル読み込みや移動、保存のたびに待機時間が長くなります。BIM用PCを使って大規模な建築モデルを扱う場合にも、メモリ不足が原因で作業がスムーズに進まないことがあります。そこで、まずはメモリの基本的な役割と3DCADとの関連について押さえましょう。
大規模モデルを開くときなどは、RAMの容量が足りないとPCがストレージを仮想メモリとして使う動作(スワップ)が頻繁に発生し、動作が極端に遅くなります。一度こうしたボトルネックに引っかかると、最悪の場合システムがフリーズしたり強制終了のリスクも出てきます。
では、どれくらいのメモリが必要なのか。大まかな推奨容量や、シーンごとの注意点を知っておくことで、作業環境に適した「メモリ選び方」を見極めやすくなります。
2.1. メモリの役割と基本的な重要性
メモリ(RAM)は、作業中のデータやプログラムの一時保管場所です。3DCADでも、回転や拡大縮小をしたり、オブジェクトを追加・修正するたびに大量のデータがやりとりされます。
例えば、設計中の3Dモデリングデータがメモリ内に十分収まらないと、読み書きのたびにストレージを参照しなければなりません。これが原因で処理速度が低下してしまいます。BIMのように膨大な要素を同時に管理・表示するソフトでは、メモリがひっ迫すると動作全体がカクつくなど、業務効率を一気に下げる要因になるのです。
つまり、メモリ容量が大きいほど、作業中のデータをスムーズにやり取りでき、PC性能と業務効率の向上につながります。また、アプリケーションが複数同時に稼働する現場では、メモリ不足対策は特に重要といえます。
2.2. 3DCADにおけるメモリの推奨容量
AutoCAD スペックやSOLIDWORKS スペック要件を見ても、最低でも8GB、作業の内容によっては16GBや32GB以上を推奨しているケースが多いです。とくにAutoCAD 3DやFusion 360 スペックの推奨を確認すると、複雑な設計をするなら32GB以上のメモリが望ましいとの記載も珍しくありません。
大手建築設計事務所でBIMを使う場合、マルチユーザーで大きなファイルを頻繁に操作するため、32GB程度では足りないこともあります。ペルソナである大規模プロジェクトの技術者なら、余裕をもって64GBクラスのメモリを検討しておくのも選択肢の一つでしょう。拡張性を考慮し、メモリスロットの空きに余裕のあるマザーボードを選ぶこともポイントです。
また、作業内容によってはレンダリングPCなど高負荷なシーンが多いケースがあるので、そこを踏まえてメモリ量を見極める必要があります。
2.3. メモリを重視すべきシーン
メモリが最優先になるシーンとして、まずは大規模モデル、特に建築全体を管理するBIMなどが挙げられます。さらに多数の部品を含むアセンブリを扱うSOLIDWORKSのようなCADでも、メモリ不足は重大な遅延を引き起こします。
また、図面数やコンポーネント数が多いファイルを同時に開いて作業する場合もメモリ負荷が増加します。設備系や機械系のCADを扱う現場だと、大量のコンポーネント管理が常態化することもあり、余裕のあるRAMが必要です。
加えて、レンダリングの際に別のアプリケーション(例えばBIMソフト+画像処理ソフトなど)を同時に立ち上げる場合もしばしばです。こうしたマルチタスクをこなす環境では、まずメモリに投資して不足を解消するのが安全策と言えます。
3. グラフィックボード(GPU)の役割と重要性
メモリが作業の土台であるのに対し、グラフィックカード(GPU)は描画や表示処理を専門的に担うパーツです。複雑な3Dモデリングをリアルタイムで回転させたり、陰影のある高精度ビューを得るためには、高性能なGPUが必要になります。特に3DCAD PC負荷はGPUも大きく関わるので、モデル表示がカクつかないかどうかは、GPUの性能に大きく左右されるのです。
ただし、「高級グラボにすれば何でも速くなる」という誤解も少なくありません。GPUを選ぶ際に重視すべきは、利用するCADソフトの推奨環境や、具体的な用途です。ゲーム用GPUとCAD用GPUでは、目的や最適化の方向が異なることもあります。
ここでは、GPUの基本的な役割やCAD用途に適した選び方、そして優先して投資したほうがよい場面を解説します。
3.1. GPUの基本的な役割と機能
GPU(グラフィックプロセッサ)は、3D空間の頂点やテクスチャを高速で処理してモニターに描画します。軽量な2D CADとは異なり、3DCADやBIMソフトでは高度な表示処理が必要になるため、GPUの性能が不足しているとモデルを回転させるたびに画面が止まるなどの不具合が出てきます。
また、アニメーション制作PCやVR対応PCでは、なおさらGPUに高い負荷がかかります。アニメーションやVRコンテンツはリアルタイムのフレーム描画が要求されるため、処理が間に合わないと映像がカクついて没入感が大幅に失われてしまいます。つまり、描画の滑らかさやリアルタイム性能を重視するなら、GPUは避けては通れないのです。
レンダリングPCとしての用途でも、GPUを活用することでCPUレンダリングよりも高速に仕上げられるケースがあります。3DモデリングPCとしての総合力を高めたいなら、GPUの性能はチェック必須です。
3.2. CAD用途に適したGPUの選び方
ゲーム用GPUとCAD用GPUの違いを理解するのは非常に重要です。例えば、NVIDIA GeForceシリーズやAMD Radeonのゲーミングカードは、ゲーム向けのドライバ最適化が行われています。一方、業務用GPU(例:Quadro GPUやRTX Aシリーズ)は、CADやBIMなどのプロ向けアプリケーションで安定動作するようドライバが調整されています。
AutoCADやSOLIDWORKSなどの公式推奨スペックを見ても、業務用GPUを推奨するケースが多いです。例えばSOLIDWORKS スペックやFusion 360 スペックを見ると、認定済みドライバによって不具合が起きにくくなるという利点があります。
ただし、中小規模の設計や個人ユースではゲーム用GPUでも十分な場合があります。コストパフォーマンスを重視するならゲーミングカードも選択肢に入りますが、大手設計事務所での長時間作業やトラブルリスクを考慮するなら、信頼性が高い業務用GPUが向いています。
3.3. GPUを優先すべきシーン
GPUを重視したいのは、まずレンダリング処理を頻繁に行う現場です。静止画レンダリングだけでなく、アニメーションを作成する場合は特にGPU性能が作業スピードや品質に大きく影響します。
また、表示ラグが業務効率に直結するケースもあり、GPU強化が必須です。例えばBIMモデルを複数人で同時に閲覧し、リアルタイムで確認しながら進める場合、遅延が生じるとミーティングや検討自体がスムーズに進まず、プロジェクト全体が遅れかねません。
さらに、VRを活用したプレゼンテーションや、アニメーション制作PCとして細かいモーションを確認する場合など、リアルタイム描画が必要な作業では高性能GPUを導入するメリットが非常に大きいです。
4. 主要3D CADソフトの推奨スペックを比較
・AutoCAD 3D ・メモリ要件: 32 GB ・GPU要件:推奨: 8 GB の GPU、帯域幅 106 GB/秒、DirectX 12 互換 「高速」表示スタイルを有効にするには、機能レベル 12_0 の DirectX 12 が必要です。ビデオ カード製造元の Web サイトにある最新のドライバを使用してください。 注: AutoCAD は、コンピュータのディスプレイ カードを使用して、表示の操作、線のスムージング、文字/線種の生成など、さまざまな基本的なグラフィックス操作を行います。 これらの操作を最適な速度でサポートするために、専用の VRAM を搭載したディスプレイ カードを使用することをお勧めします。 |
・SOLIDWORKS ・メモリ要件:16GB以上PDM Contributor / ViewerまたはElectrical Schematic:8GB以上 ・GPU要件:認定済みのカードとドライバ |
・Fusion 360 ・メモリ要件:32 GB+ ・GPU要件:8 GB以上のメモリ 専用グラフィックスDirectX11 (Direct3D 10.1 以上) プロフェッショナルな Fusion の使用に関して、オートデスクは AMD Radeon Pro WX、Intel Arc Pro、および Nvidia Quadro などの認定グラフィックス ハードウェアを推奨します。 愛好家の方々には、AMD Radeon RX 7000、Intel Arc A700、および Nvidia GeForce RTX 4000 シリーズなどのコンシューマ向けグラフィックスが一般に Fusion と互換性があるので推奨されますが、カードの製造元やオートデスクからのアプリケーションとの併用については検証されていません。 |
・Revit(BIM) ・メモリ要件:16GBのRAM通常、ディスク容量が最大約300MBまでの単一モデルの一般的な編集セッションには十分です。この推定値は社内テストとお客様からの報告に基づいています。個々のモデルによって、コンピュータリソースの使用量やパフォーマンス特性は異なります。以前のバージョンの Revit ソフトウェア製品で作成されたモデルでは、1 回限りのアップグレード プロセスにさらに多くの使用可能なメモリが必要になる場合があります。 ・GPU要件:最小:1280 x 1024(トゥルーカラー) 最大:超高解像度(4K)モニター |
5. よくある誤解と注意点
スペック選定でよくあるのが「メモリだけ増やせば大丈夫」「高級グラフィックカードさえつければOK」といった誤解です。たしかにメモリ不足は致命的ですが、同時にGPU性能も足りなければ、描画速度の遅さで作業効率が大幅に落ちるでしょう。
また「ゲーミングPCならCADにも最適」という認識も注意が必要です。確かにゲーム用GPUでもパワーのある製品は多いですが、CADソフトウェアの公式サポートの有無やドライバの安定性を考えると、業務で使う場合は安易に飛びつくのはリスクがあるかもしれません。
さらにノートPCとデスクトップPCでは、後からスペックを拡張できる自由度も違います。ノートPCはメモリ増設やGPU換装が制限されている場合が多いです。長期の運用を考えるなら、拡張性のあるデスクトップがより安全策と言えます。
6. まとめ
3DCAD作業には「メモリ」と「グラフィックカード」の両方が大切だとわかりました。メモリ不足によるフリーズは致命的ですし、GPU性能が足りないと表示やレンダリングのカクつきが問題となります。特に大手建築事務所のように大規模なBIMプロジェクトを運用する場合、メモリ32GB以上と高性能GPUの組み合わせでこそ安定したスピードと信頼性を実現できるでしょう。
ただし、すべてをいきなり最高スペックにするのはコストも高額になります。現場のニーズを鑑みて、まずはメモリを手厚くし、GPUに予算を回せる余裕があればCAD用途に適した製品を選ぶのが堅実な方法です。また、将来的な技術進化や案件の拡大を見越して、PC拡張性を確保しておくことも欠かせません。
最終的に、どのような3DCAD最適PC構成が“正解”になるかは業務内容やソフト要件によって異なります。重要なのは「メモリもグラフィックもどちらも欠かせないパーツである」という点をふまえながら、優先度のバランスを取ることです。そうすれば、快適な操作感と高い生産性を両立できるはずです。
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<参考文献>
・AutoCAD「AutoCAD 2026 including Specialized Toolsets の動作環境」
・SOLIDWORKS「SOLIDWORKS 動作環境(ソリッドワークス 動作環境) | 製品情報 | CAD Japan.com」
https://www.cadjapan.com/products/items/solidworks/spec.html
・Autodesk「Autodesk Fusion の動作環境」
・「System requirements for Revit 2026 products」