BricsCADのグループ化を徹底解説|ブロックとの違いと効率的な使い方
1. はじめに
BricsCADを使い始めたばかりの方にとって、作図中に複数のオブジェクトをまとめて扱う「グループ化」は、とても便利で覚えておきたい機能です。
図面作成に慣れていないうちは、線や図形が増えるにつれて、どの要素がどこにあるのか分かりづらくなりがちです。そんなとき、グループ化を使えば関連するオブジェクトをひとまとめにでき、選択や移動、編集がスムーズになります。結果として、図面整理や設計修正の効率が大幅に向上します。
さらにBricsCADには、同じく複数のオブジェクトをまとめる「ブロック」という機能もあります。
どちらも“まとめる”点では似ていますが、目的は異なります。ブロックは繰り返し使う部品を登録して再利用するための仕組みで、グループ化は一時的にオブジェクトを束ねて操作しやすくするためのものです。
本記事では、BricsCADにおけるグループ化の基本操作から、ブロックとの違い、そして作業効率を高める活用法までを分かりやすく解説します。
初めてCADを触る方でも理解しやすいよう、専門用語には補足説明を添えています。記事の最後には、トラブル対処や使い分けのコツも紹介していますので、ぜひ実務や学習の参考にしてください。
2. BricsCADでのグループ化の基本
2.1. グループ化の定義と基本操作
BricsCADの「グループ化」とは、複数のオブジェクトをひとまとまりの集合として扱う機能です。グループ化しておくと、選択・移動・回転といった操作を一括で行うことができ、毎回ひとつずつ選択する手間を省けます。その結果、編集や修正作業のスピードが大幅に向上します。
実際の操作は簡単です。コマンドラインで 「GROUP」 と入力するか、メニューから同等の操作を選択します。
次に、グループ化したいオブジェクト(線分・円・文字など)を選び、Enterキーを押すだけで完了です。必要に応じてグループに名前を付けることもでき、後から 図形グループ(Entity Grouping)ダイアログ で一覧確認や再編集が行えます。名前を付けておくことで、複数のグループを管理しやすくなるのも利点です。
グループ化した後に一部を編集したい場合は、PICKSTYLE の設定を確認しましょう。
この値によって、グループ全体を選択するか、個別オブジェクトを扱うかを切り替えることができます。たとえば、「1」ではグループ選択が有効、「3」ではグループと関連付けられたハッチの両方を選択可能です。初期値や環境によって動作が異なるため、必要に応じてBricsCADヘルプセンターで確認しておくと安心です。
グループを解除したい場合は、「UNGROUP」コマンド を使用します。
グループ化と解除を自在に切り替えることで、柔軟な編集が可能です。特に図面整理やレイアウト変更の作業中は、何度もグループを作成・解除する場面が出てきますが、BricsCADではこの切り替えがスムーズに行えるのが大きな魅力です。
2.2. グループ化のメリット
グループ化の最大の利点は、作業効率の向上です。複数のオブジェクトを一度に処理できるため、繰り返しの操作が大幅に減り、図面編集のスピードが上がります。特に、要素数の多い図面では時間短縮効果が非常に大きくなります。
また、誤操作の防止にも役立ちます。オブジェクトが増えると、意図しない図形を選択してしまうことがありますが、グループ化しておけば関連要素をまとめて動かせるため、編集ミスを防ぐことができます。必要な部分だけを確実に扱えるので、図面全体の安定性が高まります。
さらに、チームでの共同作業にも効果的です。
あらかじめ関連オブジェクトをグループ化しておけば、他のメンバーが図面を開いた際に構成が分かりやすくなり、どの範囲を編集すれば良いかが一目で把握できます。これは、BricsCADを用いたチーム設計において大きな利点です。
加えて、BricsCADでは選択セット(Selection Set) を保持できるため、途中で変更が発生しても、同じグループを素早く再選択して作業を続けられます。
たとえば、家具の配置や構造部材など、複数の要素をまとめて移動・調整する場面では、グループ化が作業時間の大幅な短縮につながります。
3. グループ化とブロックの違い
3.1. 機能的な違いと使用シーン
グループ化とブロックは、どちらも「複数のオブジェクトをひとつにまとめる」という点では共通しています。しかし、目的と性質は大きく異なります。
ブロックは「いつでも再利用できる標準部品」としての役割が強く、企業やプロジェクト単位で共通パーツとして登録・管理されることが一般的です。一方のグループ化は、「一時的にまとめて扱うための機能」であり、柔軟に編集や解除ができる点が特徴です。
たとえば、建築図面におけるドアや窓、家具など、繰り返し使う部品はブロックとして登録しておくと便利です。ブロックを活用すれば、同じ形状を何度も配置する際に効率的で、BricsCADにおけるブロック再利用は大幅な作業時間の短縮につながります。
一方で、「一時的に複数の要素をまとめて動かしたい」「少しだけ位置を調整したい」といった場面では、グループ化を使う方が手軽です。設定や登録の手間が少なく、すぐに解除もできるため、試行錯誤の多い作業工程に向いています。
ブロックは、図面ファイル内に正式な“定義”として記録されます。そのため、複数の場所で同じブロックを挿入・配置でき、ひとつを編集すれば全インスタンスに自動で反映されるという強力な特長があります。
対してグループは図面上に直接存在するだけで、複製や挿入といった概念はありません。あくまで「その図面内でだけ有効な集合」として扱われます。
つまり、ブロックは再利用性と定義管理のしやすさが強みであり、グループ化は編集や整理の柔軟さが魅力といえます。
どちらを使うか迷ったときは、「標準パーツとして今後も使いたいのか」「一時的にまとめて扱いたいのか」という目的を基準に選ぶと判断しやすいでしょう。
3.2. グループとブロックの比較
以下のように比較してみると、それぞれの使いどころが明確になります。
- 再利用性:グループは一時的、ブロックは何度でも再利用可能
- 編集方法:グループはPICKSTYLEや図形グループ(Entity Grouping)ダイアログを使って個別・全体編集が容易。ブロックはブロックエディタを使い、全インスタンスに共通する形状を編集
- 図面での扱い:グループは図面整理や作業の一時効率化に適し、柔軟に作成・解除できる。ブロックは共通テンプレートや標準部品としての管理に強い
たとえば、BricsCADでグループ編集を行う場合、グループ解除や追加操作で即座に変更できますが、ブロックの場合は定義そのものを修正する必要があります。すると、その定義を参照しているすべてのブロックが一斉に変更されるため、全体に影響が及ぶ可能性があります。
こうした違いを理解しておくことで、図面管理の混乱を防ぎ、BricsCADをより効率的に活用する設計作業が実現できます。
4. グループ化の効率的な使い方

4.1. 日常の作業でのグループ化の活用
日常の設計業務や学習の場面でも、グループ化は非常に役立ちます。特におすすめなのが、図面パーツの仮まとめとしての活用です。
たとえば建物の内装レイアウトを行う際、机や椅子などの複数の家具を一時的にグループ化しておけば、まとめて移動や回転を簡単に行えます。配置を何度も調整する場面では、こうしたグループ化が小さな手間を減らし、全体の作業効率を着実に高めてくれます。
また、注釈や寸法要素の整理にもグループ化は効果的です。文字や寸法線、引出線などが密集している場合でも、一度グループ化しておけば、まとめて退避・編集・再配置が可能です。注記の位置関係を確認しながら調整したいときなどに特に便利で、作業の正確性とスピードの両立に役立ちます。こうした使い方を重ねることで、BricsCADの操作感をより深く理解でき、編集スキルの向上にもつながります。
さらに、作業中にグループを頻繁に作成・解除することもあるでしょう。その際は、ショートカットの設定を活用すると一段と効率が上がります。
たとえば、GROUP コマンドや PICKSTYLE の切り替えを独自にショートカットキーへ割り当てておけば、コマンドラインを開いたりメニューを探したりする手間を省けます。小さな操作改善の積み重ねが、結果として大きな時間短縮につながるのです。
このようにグループ化を上手に使うことで、「オブジェクトを何度も選び直す」「位置合わせに時間を取られる」といった作業の無駄を減らすことができます。特に複雑な図面を扱う場合、その効果はより顕著に現れ、BricsCADによる作業効率化を実感できるでしょう。
4.2. ブロックとの併用テクニック
グループ化は、ブロック機能と組み合わせることでさらに威力を発揮します。
たとえば、ドアや窓などをあらかじめブロックとして登録しておき、必要に応じてそのブロック挿入物を一時的にグループ化し、図面上でまとめて移動や回転を行うといった使い方が可能です。これにより、ブロックは標準パーツの管理、グループは一時的な整理と調整という役割分担が明確になります。
このようにブロックとグループを使い分けることで、全体の設計プロセスがスムーズになります。
たとえばブロック自体を修正したい場合はブロックエディタで統一的に変更し、部分的に位置を調整したい場合はグループ化して操作する、といった二段構えの運用ができます。特に大規模な図面では、「チーム共通で扱うブロック」と「チーム内で自由に扱うグループ」を分けることで、作業の混乱を防ぎ、分業がしやすくなります。
また、ブロックを作成する前の段階でグループ化を使う方法も効果的です。まずは複数のオブジェクトをグループ化して位置関係やサイズを確認し、全体の構成を整えたうえで正式にブロック化すれば、誤りを減らしながら効率的に設計を進められます。いわば、「ブロック化前の下準備」としてグループを活用するイメージです。
さらに応用例として、既存のブロックを他の図形や補助線と一緒にグループ化する方法もあります。これにより、関連要素をまとめて表示・整理できるほか、他工程や他担当者との作業範囲を明確に示すことも可能です。
このような使い方は、BricsCADのベストプラクティスのひとつであり、効率的なチーム設計や情報共有を支える重要なテクニックといえるでしょう。
5. トラブルシューティング
5.1. グループが選択できない場合の対処法
グループ化したはずなのに、オブジェクト全体をまとめて選択できないことがあります。最も多い原因は PICKSTYLE の設定です。PICKSTYLE が 「0」 のときはグループ選択が無効になり、個別オブジェクトしか選べません。まずはコマンドラインで 「PICKSTYLE」 と入力し、値を 「1」または「3」 に変更しましょう。
「1」はグループ選択のみを有効化し、「3」はグループ選択に加えて関連付けハッチの選択も有効にします。操作自体は難しくないので、必要に応じて BricsCAD ヘルプセンターを参照しながら試してみてください。なお、Ctrl+H で PICKSTYLE をトグル切り替えできる点も覚えておくと便利です。
次に、図形グループ(Entity Grouping)ダイアログ の状態を確認します。管理リストから該当グループの名称が消えている、あるいは誤って削除してしまった場合は、当然ながら一体として選択できません。図面の編集履歴を振り返り、意図せず削除していないかをチェックしてください。
「一部だけが選択される」「グループのはずなのに一体で反応しない」といった症状では、途中で UNGROUP を実行してしまい、部分的に解除 されている可能性があります。こうした混乱を避けるため、グループの一覧や名称付けを活用し、どの集合が有効かを定期的に確認する習慣をつけると安心です。
最後に、チームで図面を共有している場合は、他のメンバーが PICKSTYLE の設定を変更してしまうケースもあります。作業環境の差異が原因になりやすいので、プロジェクトのルールとして設定値を統一しておくとトラブルを未然に防げます。
5.2. グループ解除の問題と解決策
ときどき、グループが思うように解除できないことがあります。とくに、グループの入れ子(ネスト) や 別グループとの重複所属、あるいは ブロックを含むグループ などでは挙動が分かりづらくなることがあります。まずは 図形グループ(Entity Grouping)ダイアログ で対象グループを特定し、どのオブジェクトが含まれているかを把握しましょう。
覚えておきたいのは、ブロックを含むグループでも「UNGROUP」コマンドでグループ関係だけを解除できるという点です。ブロック自体を分解(EXPLODE)する必要はありません。EXPLODE はブロック内部の図形をばらす操作であり、グループ解除とは目的が異なるからです。
ネスト構造になっている場合は、上位→下位の順で段階的に解除する必要があります。いきなり最下層から操作しようとすると、意図した結果にならないことがあるため、階層を意識して落ち着いて対処しましょう。
また、選択できない設定や レイヤロック が影響している場合もあります。BricsCAD には「グループそのもののロック」機能はありませんが、図形グループダイアログで 『選択可能』がオフ になっていたり、該当オブジェクトの レイヤがロック されていたりすると、編集や分解が制限されます。必要に応じて設定を戻し、再度 「UNGROUP」 を実行してください。なお、画面上で選択できない状態でも、ダイアログからは解除操作が可能な場合があります。
複数のグループを一度に解除しようとすると状況が複雑になりがちです。対象の特定 → 設定確認 → 段階的な解除 という順序で一つずつ手順を追えば、たいていの問題は解決できます。BricsCAD のトラブルシューティングで重要なのは、原因を切り分け、慌てず段階的に検証する姿勢です。
6. まとめ
6.1. グループ化の重要性と効率的な使い方の再確認
ここまで、BricsCADにおけるグループ化の基本操作から、ブロックとの違い、実践的な活用方法までを整理してきました。
グループ化は、複数のオブジェクトを一時的にまとめて扱うことで、編集作業の時短と図面整理の効率化を実現する便利な機能です。必要に応じてすぐに解除できる柔軟さもあり、実務でも学習でも活用しやすい点が大きな魅力といえるでしょう。
また、グループ化は誤操作の防止やチーム設計における図面の整理にも効果的です。要素が多い大規模な図面はもちろん、簡単なレイアウト変更など小規模な作業でも役立ちます。まさに、あらゆる設計レベルで応用できる基本スキルです。
操作面では、GROUP コマンドと UNGROUP コマンドの活用、そして PICKSTYLE 設定の理解が重要なポイントです。これらを正しく使い分けるだけで、グループ選択や解除に関する多くのトラブルを防げます。特に初心者の方は、グループ化を「オブジェクトを束ねるしくみ」と覚えておくと、感覚的に理解しやすいでしょう。
さらに、ブロック機能と組み合わせて使えば、BricsCADにおける編集作業の基礎力が一段と高まります。効率的なグループ運用を身につければ、作業スピードが上がるだけでなく、ミスの少ない安定した設計環境を構築できるはずです。
6.2. ブロックとの使い分けのポイント
最後に、グループ化とブロックの使い分けを改めて整理しておきましょう。
ブロックは「繰り返し使う標準パーツ」であり、グループ化は「一時的で柔軟に扱える集合」というのが基本的な考え方です。
ドアや窓、家具のように同じ形状を何度も配置する要素はブロック化しておくことで、再利用やテンプレート管理が容易になります。
一方で、ブロック化には定義や登録の手順が必要であり、すべてのインスタンスが連動して更新されるため、細かな調整が必要な場面では扱いづらいこともあります。
その点、グループ化は即座に作成・解除できる気軽さと柔軟性が魅力です。たとえば「一部の要素をさっとまとめて位置を変える」「大きな範囲を一時的に移動して調整する」といった作業には最適です。
反対に、「同じ部品を複数箇所で使う」「図面全体を軽く保ちたい」といった場面ではブロックが効果を発揮します。
このように、作業の目的を明確にして「繰り返し使うか」「一時的に扱うか」を判断基準にすることで、両者を最適に使い分けられます。
グループ化とブロックを状況に応じて使いこなすことで、図面の完成度や作業スピードが確実に向上します。
BricsCADをより快適に使いこなすためにも、日々の作業の中で少しずつ応用を重ね、公式ヘルプセンターや最新ドキュメントを参考にしながら、自分なりのベストプラクティスを築いていきましょう。
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❶データ活用方法
❷主要ソフトウェア
❸カスタマイズ
❹プログラミング
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<参考文献>
グループ化の操作 – BricsCAD Lite & Pro | Bricsysヘルプセンター
PICKSTYLE (EXCEPT OS X) – BricsCAD Lite & Pro | Bricsysヘルプセンター
-BLOCK [ブロック] – BricsCAD Lite & Pro | Bricsysヘルプセンター
https://help.bricsys.com/ja-jp/document/command-reference/b/-block-command
CADソフトウェア – 2D/3D CAD – Bricsys®







