BricsCADで始める3D設計入門|AutoCADユーザーにもやさしいモデリングの基本
1. はじめに|2Dから3Dへ、BricsCADで無理なくステップアップ
2D CADの経験があっても、3Dに踏み出すと最初は戸惑いがちです。Z軸の考え方や、作業面を切り替えるUCS(ユーザー座標系)など、2Dにはなかった操作を覚える必要があるからです。とはいえ、設計の高度化・スピード化が求められる今、3Dの基礎を押さえることは避けて通れないステップになっています。
そこで有力な選択肢が BricsCAD。AutoCADに近い操作感と高いDWG互換で、2Dの知識をそのまま活かしながら3Dへ移行しやすいのが特長です。さらに、サブスクリプションに加えて永久ライセンスも選べるため、導入しやすく運用コストも抑えやすい。用途に合わせて Pro / Mechanical / BIM といったエディションを選べるので、個人から企業まで幅広いニーズに対応できます。
3D化のメリットは明快です。干渉チェックで部品の当たりを事前に検証でき、3Dスキャンデータの取り込みや検証もスムーズ。機械・建築・土木の各分野で、設計から製造・施工までの意思決定が速く、確かになります。AutoCAD互換を維持しつつ3Dを活用できる点は、既存資産を持つチームにとって大きな武器です。
本記事では、BricsCADの基本と3D機能の要点、主要なモデリング手法(ソリッド/サーフェス/メッシュ)、そして導入時のつまずきポイントと対処法を、初学者にもわかりやすく解説します。読み終えた頃には、BricsCADで3D設計を始めるための具体的な一歩が見えるはずです。
2. BricsCADとは?3D設計にも対応した多機能CAD
BricsCADは、2Dから3Dまで幅広い設計に対応できる多機能CADです。最大の特徴は、AutoCADと高い互換性を持つDWGファイルをネイティブに扱える点にあります。2D設計で身につけた知識をそのまま活かせるため、AutoCADユーザーであれば初めてでもすぐに操作に慣れるでしょう。
また、BricsCADの画面構成やコマンド体系は直感的で、3D CAD入門にも適した設計となっています。AIによる自動化支援機能や、Push/Pull(コマンド名:DMPUSHPULL)などの便利な編集ツールを搭載し、パラメトリック設計にも標準で対応。設計者の使いやすさを第一に考えた構造が特徴です。さらに、年間契約と永久ライセンスのどちらも選択できる柔軟な料金体系により、コストを抑えながら導入・運用が可能です。
ここからは、BricsCADがどのような理念のもとに開発され、なぜAutoCADユーザーにも親しまれているのかを詳しく見ていきましょう。
2.1. BricsCADの概要と特徴
BricsCADは、ベルギーのBricsys社(現在はHexagonグループ)が開発・提供しているCADソフトです。描画・編集コマンドの多くがAutoCADと共通しており、既存のDWG資産をそのまま利用できる点が大きな魅力です。そのため、AutoCADからの移行もスムーズで、既存の業務フローを崩さずに導入できます。
BricsCADの特長のひとつは、動作の軽快さと安定性です。ソフトウェア全体がコンパクトに設計されており、大規模な3Dモデルや重い図面データを扱っても、動作が遅くなりにくい傾向があります。さらにDWG形式をネイティブに扱うため、他形式への変換エラーや読み込み不具合が起きにくく、トラブルを最小限に抑えられます。
もうひとつの特徴は、BIMや機械設計への拡張性です。建築・土木分野ではBricsCAD BIMを活用することで、壁・柱・開口部といった要素を効率的に作成できます。一方、機械設計向けのBricsCAD Mechanicalでは、パラメトリック設計やアセンブリ構築などの機能が強化されており、製造業でも高く評価されています。
2.2. AutoCADとの互換性と操作のシンプルさ
CADを切り替える際に最も気になるのが「既存データをそのまま扱えるかどうか」です。BricsCADは、開発当初からAutoCADとの高い互換性を重視しており、これまで作成したDWGファイルをほぼそのまま開くことが可能です。
さらに、コマンド構造やショートカット操作もAutoCADと非常に似ているため、移行時の学習コストが少なく済みます。たとえば、押し出し操作には「EXTRUDE」、回転には「REVOLVE」といった同名コマンドが使えます。これにより、2D操作に慣れたユーザーでも自然な流れで3Dモデリングを始められます。
インターフェースも、リボンメニューを中心に整理されており、見た目の切り替えや表示スタイル変更が直感的に行えます。結果として、AutoCADからBricsCADへの移行は驚くほどスムーズであり、教育コストを最小限に抑えながら3D設計環境を構築できます。
2.3. エディション別の3D機能とコストメリット
BricsCADは、用途に応じて複数のエディションが用意されています。一般的な2D/3D機能を備える「BricsCAD Pro」、機械設計に特化した「BricsCAD Mechanical」、そしてBIM(Building Information Modeling)対応の「BricsCAD BIM」です。いずれもソリッドモデリングやサーフェスモデリングに標準対応し、必要に応じて高度なパラメトリック設計を行うことができます。
また、ライセンス形態も柔軟で、サブスクリプション契約と永久ライセンスの両方を選択可能です。AutoCADのようにサブスク限定ではなく、初期費用を払って長期的に所有できる「買い切り型」を選べる点が大きな魅力です。長期運用を前提とする企業では、コスト削減につながるケースも多いです。
具体的には、BricsCAD Proで基本的な2D作図と3Dモデリングが利用可能。より複雑なアセンブリ設計や爆発図、パラメトリック機能を活用したい場合はMechanical、建築や土木設計を行うならBIMが最適です。
なお、BricsCAD Liteは2D専用エディションであり、3Dモデリングには対応していません。3D設計を行う場合は、Pro以上のエディションを選択しましょう。
3. BricsCADでできる3Dモデリングの種類
BricsCADは、幅広い3Dモデリング手法に対応した柔軟なCADソフトです。具体的には、ソリッドモデリング、サーフェスモデリング、そしてメッシュモデリングの3種類のアプローチを使い分けることができます。目的や設計分野に応じて適切な手法を選択することが、効率的で精度の高い設計につながります。
ソリッドモデリングは、機械設計などで精密な立体形状を作成する際に有効です。サーフェスモデリングは、自由曲面を扱う外観重視の建築や工業デザインなどに適しています。そして3Dスキャンデータの処理や地形表現など、現実の形状を忠実に再現するのに強いのがメッシュモデリングです。いずれの手法もBricsCADの標準機能または追加モジュールでスムーズに扱えるため、初心者でも段階的に学びながら習得できます。
ここでは、それぞれのモデリング手法について、どのような特徴があり、どんな場面で使われるのかを詳しく見ていきましょう。
3.1. ソリッドモデリング:基本から応用まで
ソリッドモデリングとは、押し出し・回転・ブーリアン演算などの操作を組み合わせて立体形状を作成する方法です。ブロックのように形状を加えたり削ったりする感覚で扱えるため、実際の加工や製造プロセスに近いモデリングが可能です。
たとえば、機械部品を設計する場合、まず2D断面を描き、押し出し(EXTRUDE)や回転(REVOLVE)コマンドで3D形状に変換します。必要に応じて、ブーリアン演算(UNION/SUBTRACT/INTERSECT)を使い、穴あけや切削などの加工を加えていきます。まるでプラモデルを組み立てるような感覚で構築できるため、3D初心者にも理解しやすいモデリング手法です。
さらに、ソリッドモデリングでは寸法拘束(Constraints)を利用してパラメトリック設計を行うことも可能です。寸法を変更すると自動でモデル全体が再計算されるため、設計変更やバリエーション設計を効率よく行えます。製品開発や部品設計など、寸法変更が頻繁に発生する業務では特に有効です。
3.2. サーフェスモデリング:自由曲面の作成
サーフェスモデリングは、形の美しさや曲線の滑らかさを重視した設計に適しています。建築の外観デザイン(ファサード)や自動車・家電などの意匠設計において、多様な曲面形状を扱う際に活躍します。ソリッドモデリングとは異なり、薄い膜のような「面」を操作するため、複雑で自由度の高い形状を表現できます。
BricsCAD Proにはサーフェス関連機能が標準搭載されており、トリム(切断)、オフセット、スイープ、ロフトなどの多様な操作が可能です。これらを組み合わせることで、思い描いた輪郭線から滑らかな面を生成したり、複雑なカーブを自在に編集したりできます。操作自体はシンプルで、感覚的に形を作っていけるのも魅力です。
また、サーフェスモデリングは建築だけでなく機械設計にも応用されます。外装パネルやカバー、空力特性を考慮した曲面設計など、機能とデザインを両立させる場面で威力を発揮します。見た目と機能性を両立させたい設計者にとって、欠かせないモデリング手法といえるでしょう。
3.3. メッシュモデリング:3Dスキャンデータの活用
メッシュモデリングは、多数の三角形や四角形の面(ポリゴン)で形状を構成するモデリング手法です。現実の物体を3Dスキャンして得られる点群データをもとに形を再現したり、3Dプリンティング向けのデータ調整を行う際に使われます。複雑な形状を短時間で再現できるのが大きな利点です。
たとえば、既存の部品をスキャンして得た点群データをメッシュ化し、それをCAD上で編集して再設計を行う「リバースエンジニアリング」の場面で活用されます。BricsCADには、メッシュをソリッドへ変換する SOLIDIFYコマンド などが用意されており、メッシュモデルを後工程のモデリングや解析にスムーズに引き継ぐことが可能です。
さらに、土木・建設分野でもメッシュモデリングは有効です。地形データをメッシュ化することで、起伏のある地表を立体的に視覚化でき、地形に沿った設計や施工計画の検討が容易になります。
なお、メッシュの編集やソリッド化などのモデリング処理はBricsCAD Pro以上が対象機能です。Liteエディションでは表示・閲覧が中心となるため、3D設計を行う場合は上位版の導入をおすすめします。
4. 3Dモデリングの基本操作|初心者が最初に覚えるべきステップ

BricsCADで3Dモデリングを始める際は、まず基本的な操作の流れを理解することが重要です。3D設計の基礎は、2Dスケッチの作成 → 押し出し・回転による立体化 → ブーリアン演算での形状加工 → UCSや表示スタイルの活用という一連のステップで構成されています。これらの操作を組み合わせることで、シンプルな部品から複雑な構造物まで効率よくモデリングできます。
この基本操作を一通りマスターすれば、日常的な機械部品の設計や建築の簡易モデルをスムーズに作成できるようになります。慣れてきたら、パラメトリック設計やサーフェス・メッシュモデリングといった上級機能に挑戦し、BricsCADの持つ3D設計ツールを最大限に活用してみましょう。
以下のサブセクションでは、初心者がまず覚えておくべき基本操作を具体的な流れに沿って解説します。実際に何度も手を動かしながら、自分のペースで理解を深めることが上達への近道です。
4.1. 2Dスケッチからの押し出しと回転
まず最初に、2Dのスケッチ(輪郭線)を作成します。その後、押し出し(EXTRUDE)を使って高さ方向に厚みを与えれば、瞬時に立体モデルが完成します。たとえばポリラインや円を描き、押し出すだけでブロックや円柱などの基本形状を簡単に生成できます。
次に、回転操作(REVOLVE)を使うと、回転軸を基準に断面形状を回して立体化できます。これにより、ボトル、円錐、パイプ、ホイールなど、回転対称の部品を効率よく作成可能です。断面形状と軸線を指定するだけで、精密な回転体が自動的に生成されます。
この「2Dから3Dへ立体化する流れ」を身につけることで、設計を立体的に捉える力が養われ、モデリングの全体像がぐっと理解しやすくなります。
4.2. ブーリアン操作で形を加工
ブーリアン演算は、ソリッドモデリングにおける中心的な技術です。主に3種類の演算があり、
- UNION(結合):複数のソリッドを1つにまとめる
- SUBTRACT(減算):一方の形状を他方から削り取る
- INTERSECT(交差):重なった部分だけを残す
といった操作を組み合わせて、複雑な形状を自在に作り上げることができます。
たとえば押し出しで作成した立方体から円柱をSUBTRACTして穴をあけたり、別の形状をUNIONして一体化したりと、試作段階でも柔軟に形を変えられます。これらを組み合わせることで、立体造形のほとんどを再現できると言っても過言ではありません。
また、2D図面では気づきにくい細部の形状や干渉も、3Dモデリングであれば視覚的に確認できます。これにより、設計段階でのミスや手戻りを大幅に減らすことが可能です。
4.3. UCSの理解と表示スタイルの活用
3Dモデリングでは、作業基準となるUCS(ユーザー座標系)の理解が欠かせません。2Dでは常に平面上で作業しますが、3Dでは空間の中に複数の面が存在するため、「どの面を基準に作業しているのか」を常に意識する必要があります。
BricsCADでは、UCSコマンドを使って作業平面を任意の位置・角度に切り替えることができ、複雑な形状でも正確にスケッチやモデリングを行えます。
さらに、表示スタイルの切り替えを活用することで、作業効率が向上します。ワイヤフレーム、シェーディング、リアル表示などを状況に応じて選ぶことで、形状の確認や見栄えの調整が容易になります。特に、SECTIONPLANE(断面作成) や VIEWBASE/VIEWSECTION(図面化用ビュー作成) は、内部構造を確認したり、2D図面へ展開したりする際に非常に便利です。
UCS操作と表示スタイルの切り替えに慣れておくことで、作業の正確性とスピードが格段に向上します。これらは、より複雑な3D設計を行ううえでの「基礎体力」とも言える重要なスキルです。
5. AutoCADユーザーが知っておきたいBricsCAD 3Dの違い
BricsCADは、AutoCADとの高い互換性を前面に打ち出しているため、初めて触れた際には「違いがほとんどない」と感じる方も多いでしょう。しかし実際には、動作の軽快さやPush/Pull(DMPUSHPULL)といった独自機能など、BricsCADならではの強みが数多く存在します。
また、ライセンス体系の柔軟性も大きな魅力です。Autodesk製品はサブスクリプション形式のみの提供が一般的ですが、BricsCADではサブスクリプションと永久ライセンスのどちらも選択可能です。長期運用を前提とする場合には、ランニングコストを抑えられる可能性が高く、企業規模を問わず導入しやすい点が評価されています。
ここでは、BricsCADとAutoCADの違いを、コマンド構造・操作性・データ互換性・動作パフォーマンスの観点から詳しく見ていきましょう。特に、既存の2D〜3DワークフローをBricsCADに移行する際の検討材料として役立つ内容です。
5.1. コマンド構造の類似点と独自機能
BricsCADは、AutoCADと共通のコマンド体系を多数採用しています。たとえば、押し出し操作には「EXTRUDE」、回転操作には「REVOLVE」といった同名コマンドを使用するため、AutoCADユーザーであれば操作の感覚をそのまま引き継ぐことができます。こうした設計思想により、BricsCADへの移行時に新たな学習コストを最小限に抑えられます。
一方で、BricsCAD独自の機能として注目されるのがPush/Pull(DMPUSHPULL)です。これは、立体の面をドラッグ操作だけで押し出したり削り取ったりできる直感的な編集機能で、AutoCADには存在しません。試作段階で形状を頻繁に調整する場合や、複雑なモデルの微修正を行う際に非常に有効です。
さらに、BricsCADにはAIベースの設計支援機能も搭載されています。たとえば、類似した形状やパターンを自動的に検出・変更するなど、繰り返し作業の効率化を実現する仕組みが整っています。こうした機能を活用することで、AutoCADでは難しかった高速かつ柔軟な3Dモデリングが可能になります。BricsCADを使うことで、新しい設計アプローチを発見できるでしょう。
5.2. データ互換と操作の軽快さ
BricsCADは、DWGやDXFなどのAutoCADネイティブ形式をそのまま扱えることが大きな特徴です。既存の2D/3D図面データを変換なしで開けるため、過去の資産をそのまま引き継ぐことができます。レイアウト、レイヤー構造、ブロック定義、外部参照(Xref)などの互換性も高く、移行期間中に両方のソフトを併用しても整合性を保ちやすい設計です。
(※特殊な拡張属性や独自プラグインを使用している場合は、事前検証が推奨されます。)
もう一つの大きな利点は、動作の軽快さです。BricsCADはプログラム構成がコンパクトで、インストールサイズやメモリ使用量が比較的少ないため、同等のハードウェア環境でもスムーズに動作します。特に、大規模な3Dモデルを扱う際には、動作の安定性と処理速度のバランスが良く、快適に作業を続けられます。
このように、BricsCADは互換性とパフォーマンスの両立を実現しています。AutoCADユーザーにとっては、既存の操作感を保ちながらも、より軽快で効率的な3D設計環境へ移行できる点が大きな魅力です。結果として、学習コストの低さに加え、設計プロセス全体の生産性向上も期待できるでしょう。
6. 3D設計を効率化する便利機能とTips
BricsCADには、3D設計を効率化するための多彩な機能が搭載されています。なかでも代表的なのが Push/Pull(DMPUSHPULL) 機能です。面をドラッグするだけで形状を押し出したり削ったりできる直感的な操作は、設計スピードを飛躍的に高めます。
さらに、コンポーネント化や拘束機能(Constraints)といった高度な仕組みを活用すれば、複数人での設計作業や大規模プロジェクトでも高い生産性を維持できます。
こうした機能を理解しておくと、普段の作業効率が格段に上がります。たとえば、断面ビューを自動生成して図面化をスムーズに行ったり、寸法拘束を設定してモデルをパラメトリック化したりと、応用範囲は非常に広いです。
本章では、BricsCAD特有の便利な機能と活用のヒントをいくつか紹介します。どれも初心者でも使いこなしやすいものばかりなので、実際に試しながら自分のワークフローに合った方法を見つけてみてください。
6.1. Push/Pull(DMPUSHPULL)と拘束による編集
Push/Pull(DMPUSHPULL) は、BricsCADを代表する3D編集機能です。対象の面を選択し、マウス操作でドラッグするだけで、押し出しや切り取りを直感的に行うことができます。数値入力を行わずに形状を調整できるため、試行錯誤の多い設計初期段階でもテンポよくモデルを修正できます。寸法の微調整や垂直方向の押し出し、平行移動もスムーズに行えるため、作業効率が大幅に向上します。
また、BricsCAD Mechanical では「拘束(Constraints)」を活用したパラメトリック設計が可能です。寸法拘束を設定しておけば、数値を変更するだけで関連部品の寸法や位置が自動的に更新されます。これにより、設計変更時の手戻りや図面の更新漏れを防ぎ、設計精度を高く維持できます。
さらに、Push/Pullと拘束を組み合わせることで、曲面や干渉部位などの複雑な形状修正も容易になります。こうした直感的かつ高機能な編集環境が、多くの設計者がBricsCADを選ぶ大きな理由となっています。
6.2. 断面ビューの活用とコンポーネント化
コンポーネント化 とは、複数の要素をひとつのまとまった部品として登録・管理し、他の図面やプロジェクトで再利用できるようにする仕組みです。建築分野ではドアや窓、家具などの繰り返し使うパーツ、機械設計ではボルトやナット、ギヤなどの標準部品をコンポーネント化することで、作業時間を大幅に短縮できます。チーム全体で共通のパーツを使えば、設計の一貫性や品質も向上します。
一方、断面ビューは、モデル内部の構造確認や分解図の作成に欠かせない機能です。BricsCADの SECTIONPLANE コマンドを使えば、任意の断面を設定して内部をリアルタイムで可視化できます。これにより、複雑な構造体でも干渉箇所や設計ミスを早期に発見できます。建築や土木分野のようにスケールの大きいモデルでも、視覚的に分かりやすく確認できる点が大きな利点です。
これらの機能を組み合わせることで、モデルの見やすさ・再利用性・修正効率が飛躍的に向上します。結果として、チーム全体の作業時間を短縮し、教育コストや設計ミスの削減にもつながるでしょう。BricsCADを活用すれば、3D設計の現場をよりスマートに、より実践的に進化させることが可能です。
7. BricsCADで3D設計を導入するメリット
数あるCADソフトの中でも、BricsCADは「AutoCAD互換」「3D機能の充実」「低コスト」という3つの強みを兼ね備えたバランスの取れた製品です。導入ハードルが低く、直感的な操作ができるため、これから3D設計を始めたい方にとって非常に取り組みやすい選択肢といえます。
さらに、BricsCADには利用目的に応じた複数のエディションが用意されています。基本構成のBricsCAD Proをはじめ、機械設計に特化したBricsCAD Mechanical、建築や土木設計に対応するBricsCAD BIMなど、多様な業種・用途をカバーしています。これらのエディションを組み合わせることで、将来的にBIM対応や3Dプリンティングへの発展もスムーズに行えるのが魅力です。
ここでは、BricsCADを導入することで得られる「コスト」「操作性」「汎用性」の3つの観点から、具体的なメリットを解説します。
7.1. コスト面と操作性の優位性
BricsCADは、一般的にAutoCADよりも年間のコストを抑えやすい傾向にあります。運用期間や台数にもよりますが、永久ライセンス方式を選べば、長期的な利用でサブスクリプションよりも費用を低減できるケースが多いです。BricsCADでは「サブスクリプション契約」と「買い切り型ライセンス」の両方から選択できるため、自社の運用方針や更新サイクルに合わせて最適な導入形態を選べます。
また、操作性の面でもBricsCADはAutoCADとの高い互換性を維持しています。キーコマンドやツールバーの配置がほぼ共通しているため、AutoCAD経験者であればほとんど違和感なく移行可能です。これにより、導入時の教育コストを最小限に抑え、すぐに実務で活用できる点は大きな利点といえます。
さらに、BricsCADへの移行は3D設計導入の第一歩としても有効です。既存の2D資産をそのまま活かしながら3Dモデリング環境へ移行できるため、ソフトの切り替えリスクを低減しつつ、設計プロセス全体の効率化を実現できます。コストと学習負担の両面から見ても、非常に費用対効果の高い選択肢といえるでしょう。
7.2. 汎用性と拡張性の評価
BricsCADは、機械設計・建築設計・土木設計のいずれにも対応できる汎用性の高いCADプラットフォームです。たとえば、製造部門でBricsCAD Mechanicalを使い、同じ企業の建築部門でBricsCAD BIMを活用する場合でも、共通のDWG形式でデータをやり取りできるため、部門間連携がスムーズです。
また、IFC・STEPなどの標準フォーマットとの互換性にも優れており、他社ベンダーとのファイル交換や共同設計にも柔軟に対応できます。これにより、設計・施工・製造の各フェーズをまたいだ情報共有が容易になり、プロジェクト全体の整合性が高まります。
さらに、BricsCADは1つのソフトで複数分野のモデリングが可能な点も特筆すべきです。異なる分野の知識を統合しながら設計を進められるため、エンジニアや設計者のスキルを横断的に育成しやすい環境が整います。
近年ではBIMやデジタルツインの活用が進み、3Dモデルを中心とした情報共有が当たり前になりつつあります。BricsCADはこの流れに対応する柔軟性を持ち、業界の進化に合わせて確実に機能を拡張してきました。今後も、コスト効率と拡張性を両立した“実務的な3D設計環境”として、ますます存在感を高めていくことが期待されています。
8. よくある質問(FAQ)
BricsCADで3Dモデリングを始めようとする方から寄せられる質問には、いくつかの共通点があります。特に多いのが、AutoCADとの違いや、パソコンの必要スペック、体験版の機能制限に関するものです。これらを事前に理解しておくと、導入から操作習得までをスムーズに進めることができます。
ここでは、初心者が特に気になりやすい代表的な質問をピックアップし、分かりやすく解説します。同じ疑問を抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
また、BricsCADには公式チュートリアルや操作ガイド、動画教材、コミュニティフォーラムなど、学習を支援するリソースが豊富に用意されています。実務での運用を見据えて学びたい場合は、これらの資料やサポート窓口を活用することで、より理解を深められるでしょう。
8.1. BricsCADとAutoCADの互換性
Q:BricsCADで作成した3Dデータは、AutoCADでも問題なく開けますか?
A: はい、基本的には問題ありません。BricsCADはAutoCADと同じDWGファイル形式を採用しており、図面や3Dモデルをそのまま開くことが可能です。たとえば、BricsCAD特有のBIM情報や属性データはAutoCAD側では認識されない場合がありますが、形状データそのものは正確に表示されるケースがほとんどです。
ただし、高度なパラメトリック設計機能を利用している場合などは、AutoCAD側で編集できない場合もあるため、重要なデータはあらかじめ互換性を確認しておくと安心です。
8.2. 無料体験版と必要スペック
Q:無料体験版でも3D機能を使うことはできますか?
A: はい。BricsCADの30日間体験版では、Pro・Mechanical・BIMといった上位エディションを機能制限なしで利用可能です。試用期間中に、自分の用途に合ったエディションを実際に触って比較できる点が魅力です。
Q:3Dモデリングには高性能なパソコンが必要ですか?
A: 高いグラフィック性能があるほど快適ですが、最新のハイエンドPCでなければ動かないというわけではありません。一般的な目安としては、RAM16GB以上、DirectX/OpenGL対応のミドルレンジGPU(ワークステーションやモバイル向けGPUを含む)を備えていれば、ほとんどの3D作業に十分対応できます。
ただし、正式な動作要件はバージョンやOSによって異なるため、導入前にBricsys公式サイトで最新のシステム要件を確認しておくことをおすすめします。
8.3. 3DデータのレンダリングとBIM活用
Q:BricsCADで作成した3Dモデルをリアルにレンダリングできますか?
A: はい。BricsCADにはRedway3Dエンジンをベースとしたレンダリング機能が標準搭載されており、マテリアルや照明を設定することでリアルな質感表現が可能です。よりフォトリアルなビジュアライゼーションを行いたい場合は、TwinmotionやLumionなどの外部レンダリングソフトと連携させることで、さらに高品質な映像表現を実現できます。
Q:BIM対応としてはどの程度活用できますか?
A: BricsCAD BIMでは、IFC形式など国際標準規格に準拠しながら、壁・柱・窓などの構造要素をシステム的に管理できます。建築・土木分野では、3Dモデルを基に施工計画や数量拾い、干渉チェックを行えるため、実務レベルでも十分活用可能です。BIMワークフローを支える機能が豊富に揃っているため、将来的なプロジェクト連携やデジタルツインへの発展も見据えた運用が行えます。
9. まとめ|BricsCADで3D設計を始めてみよう
本記事では、BricsCADによる3Dモデリングの基本操作から、AutoCAD互換の特長、エディションごとの違い、効率化のための便利機能までを体系的に紹介しました。2D図面では把握しづらかった構造や干渉を3Dで可視化することで、設計精度の向上と作業スピードの両立が可能になります。これにより、設計・製造・施工のあらゆるフェーズで意思決定を迅速に行えるようになります。
特に、AutoCADからの移行を検討している方にとって、BricsCADは非常に親和性の高い選択肢です。DWG形式の互換性が高く、コマンド構造や操作体系も似ているため、学習コストを最小限に抑えて移行できます。さらに、永久ライセンスとサブスクリプションの両方を選べる柔軟なライセンス体系により、長期運用でもコストを抑えながら安定した環境を維持できるのも大きな魅力です。
まずは、無料体験版でBricsCAD Pro、BricsCAD Mechanical、BricsCAD BIMのいずれかを試してみましょう。押し出し(EXTRUDE)や回転(REVOLVE)、ブーリアン演算、UCS操作といった3Dの基本を体験すれば、2D設計との違いや3D化による効果を実感できるはずです。そこにパラメトリック設計や3Dスキャンデータの活用を組み合わせることで、より高度で実践的な3D設計環境が整います。
BricsCADは、コスト・互換性・機能性のバランスに優れた3D CADとして、個人設計者から企業まで幅広く支持を集めています。これから3D設計を始めたい方や、既存のCAD環境を見直したい方は、BricsCADを導入してその可能性をぜひ体感してみてください。
2Dから3Dへのステップアップは、設計の新しい視点を開く第一歩になるでしょう。
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<参考文献>
CADソフトウェア – 2D/3D CAD – Bricsys®
BricsCAD無料トライアルを入手 -業界をリードするCADソフトウェア
https://www.bricsys.com/ja-jp/bricscad-download
BricsCAD – BricsCAD Lite & Pro | Bricsysヘルプセンター






