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IoTの潮流、製造業のインダストリー4.0とCADの関係

めざましい進展を遂げているIoT(モノのインターネット)。この技術は、生活はもちろん産業に影響を与えつつあります。

製造業では、IoTに関連して「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」というキーワードが2014年頃から注目されるようになりました。ドイツの国策から始まったムーブメントで「第4の産業革命」とも呼ばれています。

ある分野にバージョンをつけることは、流行語の常套手段です。古くは「Web2.0」に始まり、フィリップ・コトラーの「マーケティング3.0」、ダニエル・ピンクの「モチベーション3.0」などがあります。

そこでX.Xというバージョンを付加した言葉を聞いただけで、「またか」とうんざりする人もいるかもしれません。バズワードに終わって、実質がともなわない流行もあったからです。

インダストリー4.0に関しても、構想は素晴らしいのですが実現可能かどうか懸念する識者もいます。しかしながら、かつて日本を支えてきた製造業が、アメリカや中国などの脅威により優位性を失いつつある現在、製造業のIoT導入は無視できない時代の流れといえるでしょう。

そこで、インダストリー4.0とは何かという概要と、CADの分野との関わりを解説します。

ドイツで生まれたインダストリー4.0

インダストリー4.0は、インターネットを使った製造業における生産性向上の手法です。たとえば工場で部品が不足しそうな場合、センサーが部品数を感知して人工知能が適切量を判断した後に、インターネットを通じて自動的に外部協力会社に発注する「スマートファクトリー」の構想があります。人間が関わらないため、労働力のコスト削減を図れます。

このインダストリー4.0が産声を上げたのは、2011年にドイツで行われた世界最大規模の見本市ハノーヴァー・メッセでした。このイベントで、ドイツの連邦政府や経済や学界の代表者が共同声明を出しました。中心人物は、SAPの社長を務めたこともあるヘンニヒ・カガーマンです。

ERP製品のSAPはドイツの著名な企業のひとつですが、ドイツには他にも世界的に名前の知られた企業がたくさんあります。

IT関連ではシーメンス、自動車ではBMW、フォルクスワーゲン、ポルシェ、ファッションではアディダス、プーマなどがドイツの企業です。しかし、ドイツの経済は「ミッテルシュタント」と呼ばれる中小企業によって支えられています。

中小企業の次世代に向けた生き残り戦略として、ドイツはIoTによる産業革命を起こそうとしています。その意味では、日本も参考にすべきです。

CADと工場をつなぐ、消費者をつなぐ

従来の製造業の生産方式は、分業と大量生産による「ライン生産」、あるいは1人が担当する範囲を広げて少人数で行う「セル生産」が主流でした。しかしインダストリー4.0が標榜する「スマートファクトリー」では、IoTによるセンサーとインターネットによるリアルタイムの情報共有によって、多様な製品を必要な量だけ生産する「ダイナミックセル生産」をめざします。

スマートファクトリーのインターネットで接続するシステムは、現場の産業ロボットとMES(製造実行システム)だけではありません。受発注の行程で使われるERPやCRM、製品開発の行程で使われるCAD/CAM、あるいは物流管理のSCMなどを連携して、全体の工程を「最適化」します。

CADに関しては、生産現場のデータがセンサーで計測され、PLMなどを介して設計にフィードバックされることが重要です。

このことにより、実際に工場で計測されたデータを用いて、デザインや部品の設計上の問題をシミュレーションおよび検証できるようになります。CADのデザインを変更した場合、工程およびコストにこれだけ影響があるということを、コンピュータ上で仮想的な工場を稼働させて判断できます。

また、購入した製品の利用状況をIoTで収集することが可能になれば、製品がどれだけの頻度や時間で使われ、どんな故障が起きやすいか計測できます。モニターを募らなくても、消費者の利用実態が分かります。収集したデータをプロトタイプに反映させることで、利用実態に合わせた製品の改善を実現します

製造業のIoTは時間短縮やコスト削減にとどまりません。品質を向上させる意義もあります。CADの分野でも注目すべき技術動向です。

 

 

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