BIMが使いにくいと感じる理由は?活用メリットと運用時の課題点について
BIMは高度な生産性向上をもたらしてくれるツールとして知られている反面、一方で期待しているような成果が得られない、BIMが使いにくいために有効活用ができていないという声もあります。
この記事では、BIMは本来どのようなメリットを期待して導入すべきなのか、BIMが使いにくいと感じるのにはどのような理由が考えられるのかについて、解説します。
目次:
- BIMとは
- BIM導入のメリット
- BIM導入のデメリット
- BIMが使いにくいと感じる理由
- 効果的にBIMを活用する上でのポイント
BIMとは
BIMはBuilding Information Modelingの略称で、次世代の3Dモデリング技術を使った生産性向上が期待できる技術です。
BIMの特徴は、3Dモデルの中に全ての設計データを集約することで、業務効率化を進められるところにあります。必要に応じて3Dモデルから2Dデータをいつでも抽出して運用できるため、データ活用の有用性改善に効果的です。
国土交通省は2022年、直轄の事業においてはBIMを原則適用するルールをスタートさせました*1。事実上、BIM導入が関係企業において義務化されたことをきっかけに、ここ数年でBIM導入は各組織で急激に進みつつあります。
BIM導入のメリット
多くの企業がBIMを導入する上では、以下のようなメリットを期待できるためです。いずれも強力な強みとなり、競争力を高める上で欠かせない取り組みであることがわかります。
情報共有の円滑化
BIMの強みの一つが、関係者間の情報共有を行いやすくなる点にあります。BIMモデルに設計過程で必要な全てのデータを集約できるため、単一のデータのやり取りによって、必要な情報を過不足なく伝えることができます。
また、クラウドを介してBIMデータをやり取りすることにより、リアルタイムで情報を修正したりフィードバックを行ったりが簡単に行えます。複数のバージョンを作成し、最新のデータがどれかわからなくなるような事態も回避可能です。
業務の自動化
BIMを使うことによる、業務の自動化は強力なメリットの一つです。BIMを使っていると、多くの定型業務が発生するため手動作業の負担が大きく、業務効率化に限界を感じることもあります。
このような問題を、自動化ツールの活用によって解消可能です。業務の自動化は人間では不可能なレベルでの高速処理を可能にしたり、それでいてケアレスミスのない質の高い作業を実現できるでしょう。
高度なシミュレーションの実現
BIMは設計業務の効率化に加え、シミュレーションを実行することでより優れた設計データの作成に役立てられます。
構造物に関するあらゆる情報を内包したBIMモデルをシミュレーションにかけることで、現実世界で実施するのと変わらない実験結果を、仮想環境で実現可能です。
最小限のコストで、最大限のパフォーマンスを得られる便利なアプローチと言えるでしょう。
BIM導入のデメリット
BIM導入には多様なメリットが期待できる一方、事前に理解しておくべきデメリットも存在します。
導入コストがかかる
BIMを現場に導入するには、専用のソフトを購入しなければなりません。BIMソフトはいずれも高価な製品であるため、その予算を確保するのが難しいことから、導入を見送る企業もあります。
BIM導入に際しては、その費用対効果の正しい判断が求められるところです。
人材育成・獲得コストがかかる
BIMは従来のCADとは異なるスキルが必要になるため、BIM人材の育成や、外部からの人材確保が欠かせません。
BIMは現在、高い需要がある分野でもあり、専門スキルを持ったオペレーターの確保には、相応のコストの発生を踏まえておくことが大切です。
業務フローの刷新が必要になる
BIM導入に際しては、従来の設計プロセスではうまくそのポテンシャルを発揮することができない可能性もあります。
そのため、BIM導入に際して新しい業務フローを採用するケースもあるものですが、新しい働き方が現場に定着するまでは一時的な生産性の低下も懸念されるでしょう。
BIMが使いにくいと感じる理由
上述のようなデメリットを抱えていることもあり、必ずしもBIMはただ導入するだけで全てが良い方向へ向かうとは限らない問題を抱えています。
また、BIMを実際に使ってみた結果、それが使いにくいと感じる場合もあります。BIMが使いにくいと感じるのには、主に以下の2つの理由があるためです。
BIM活用の理解が十分に進んでいない
BIMを具体的にどう使えば生産性が高まるのか、その使い方やポテンシャルについての十分な理解が浸透していないと、BIMよりもCADの方が使いやすいと感じるでしょう。
BIMの強みは、3Dモデルにデータを集約し、効率的なデータ活用方法を実現できる点にあります。単純な設計効率においてもBIMが優れた成果を残すことはありますが、CADを使い慣れている人にとってはBIMが使いづらいと感じる場合もあるでしょう。
BIMソフト間の互換性が担保されていない
BIMの使いづらさを助長する原因の一つに、BIMソフト間の互換性が保たれていない問題が挙げられます。BIMは高い情報共有能力を有している反面、その能力はあくまで互換性が担保されている環境でのみ発揮されます。
BIMソフトにもいくつかの種類があり、場合によってはソフト間での互換性が保たれていないケースもあるものです。このような場合、BIMソフトは本来の情報共有能力を発揮できず、パフォーマンスが低下してしまうことがあります。
効果的にBIMを活用する上でのポイント
上述のようなBIMの使いにくさを払拭する上では、以下の2つのポイントを踏まえた活用アプローチを考えることが大切です。
既存環境との相性を踏まえてソフトを導入する
BIM導入に伴う互換性の問題は、優先的に対処すべきテーマです。既存のCADソフトや社内システムとの互換性はもちろん、関係組織で導入されているBIMソフトとの相性を踏まえた上で、BIMソフト導入は進めていくべきでしょう。
BIM活用に適した業務フローを構築する
BIMは従来の設計手法とは異なるアプローチで業務を進めていく方が効果的であるケースも多いものです。
BIM活用に際しては、フロントローディングのような新しい形態の業務の実装も視野に入れることで、BIMのパフォーマンスを最大限高めることができます。
まとめ
この記事では、BIMが使いにくいと感じるのにはどのような理由があるのか、BIMのパフォーマンスを最大限高めるためには何をすれば良いのかについて、解説しました。
BIMは強力なソリューションですが、ポテンシャルを正しく発揮できるための環境が整備されていないと、使いにくいと感じることもあります。
自社の環境におけるBIM運用課題を整理し、それらに一つずつ対処することで、適切な生産性向上効果を目指すと良いでしょう。
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出典:
*1 日経XTech「ぎこちなく始まったBIM/CIM原則化、全体最適の議論は棚上げに」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ncr/18/00190/061200001/