設備図面の4つの種類の概要|各施工段階における図面作成の手順も解説
建築物を設計するために重要な図面の1つに設備図面があります。設備図面とは建築物に設置する設備機器の情報を共有するために作成する図面です。図面は4つの種類に分かれており、記載されている情報は異なります。では、4つの図面にはどのような情報が記載されているのでしょうか。
本記事では設備図面の4つの種類と示されている内容を分かりやすく解説します。また、設備図面を含む建築図面を作成する手順をみていくため、ぜひ参考にしてください。
この記事を読むと以下のことが分かります。
1.設備図面の種類と概要
2.図面の作成手順
設備図面には4つの種類がある(*1)
建築物を設計するためには多種多様の図面を作成し、施工主との協議を行います。設備図は建築物の設計に欠かせない図面の1つです。設備機器のあらゆる情報を記載しており、具体的には次の4つの図面があります。
・ガス設備図
・給排水衛生設備図
・空調設備図
・電気設備図
建築物によって必要な設備機器が異なるため、設備図面は必ずしもガス設備図や給排水衛生設備図などの4つの図面で構成されているわけではありません。場合によって設備図面の種類は変動します。ここでは、4つの図面と場合によって作成される設備図の役割をみていきましょう。
ガス設備図
ガス設備図とは次のような情報が記載されている図面です。
・配管経路と引き込み経路
・配管の口径
・配管の接続方法
建築物の構造によって壁内や天井、床下など配管の経路は異なります。ガスは配管を通じて道路に埋没しているガス本管から引き込む仕組みです。図面では建築物の外側から内側までのガスの経路を確認できます。
給排水衛生設備図
給排水衛生設備図とは給水および排水、衛生設備の情報を示した図面です。具体的には配管経路や設備の配置位置が示されています。一般住宅や工場、商業施設、プラントなどは次のような用途で給排水設備を利用します。
・トイレ
・洗面
・飲料水
・温度や湿度の調整
・製品の冷却
加えて、トラップの位置や蛇口など詳細な情報も記載され、図面に書き込む経路も複雑になるため、図面を正確に書く・読み取る知識が必要です。
空調設備図
空調設備図には次の個数や配置、配管経路、換気能力などの情報が記載されています。
・エアコンの室外機および室内機
・換気扇
・ダクト
空調設備図は空調設備の配管経路だけでなく、換気能力を算出し記載している点が特徴です。空調設備平面図や空調設備系統図などと見比べ、空気の流れや配管経路を確認できます。
電気設備図
電気設備図は建築物に設置される電気設備の情報を記載する図面です。具体的には次のような情報を平面的に書き表します。
・分電盤から部屋につながる配線経路
・ブレーカーの位置
・コンセントの位置
・エアコン
・換気扇
・電話
・通信
・照明
・換気扇
一般的な電気設備図は照明器具とスイッチを線でつなぐ書き方を用いて、回路をシンプルに表現します。配線およびコンセントは記号で示すため、読み取るためには記号の知識が必要です。
その他
建築物によっては建築基準法や消防法に準拠した図面を作成しなければなりません。具体的にはエレベーター設備図や換気排煙設備図、消火設備図などが挙げられます。
図面 | 概要と役割 |
---|---|
エレベーター設備図 | ・昇降機の詳細を示した図面と各階の平面図を作成 ・民間の審査機関または所轄行政庁に提出する必要がある |
換気排煙設備図 | ・火災発生時に避難する時間を確保および防止するために必要な設備である換気配線設備と消火設備に関する情報を記載する ・申請書類も作成し、自治体の指示に従い提出する |
消火設備図 |
設備図面の作成手順
建築図面には多種多様の図面があり、設備図面は実施設計図に含まれます。実施設計図は意匠図・設備図・構造図の3つの種類に分かれ、建築士と施工会社との協議をするために作成されます。多くの図面を作成するため、各施工段階における図面の基本的な作成手順を把握しておくとよいでしょう。
各施工段階における図面の作成手順の一例は次のとおりです。
1.施工主と建築士との協議を行うために、基本設計図を作成する
2.建築士と施工会社との協議を行うために、実施設計図(設備図)を作成する
3.配置される設備機器の工事に携わる関係者間で情報を共有するために、施工図を作成する
4.設備機器の情報にミスがないかを確認する
5.建築物の図面を正確に作図し、竣工図を作成する
設備図面の作成はCADソフトを利用しよう
手作業で図面を作成すると時間や手間がかかり、負担に感じる方も少なくありません。図面に寸法のミスや記入漏れがある場合、修正工事や設備機器の発注など多方面に大きな影響を与えます。そのため、作図にはCADソフトを利用するのも選択肢の1つです。日本国内にはさまざまなCADソフトが販売されており、代表的なソフトにAutoCADなどが挙げられます。
AutoCADはAutodesk社が提供している2Dおよび3D作図に対応しているCADソフトです。図面の自動作成やチーム間での情報共有などさまざまな機能が搭載されており、作業効率を向上できるでしょう。1つの図面から情報を抽出し、他の図面に適合できます。図面間で寸法や製品の番号などの情報が異なってしまうといった問題が発生しにくくなります。
また、図面を関係者間で共有し、注釈を設定できる機能があります。万が一ミスや記入漏れを発見した場合、早期段階で修正が可能になるため、工事に大きな影響を与える可能性は低くなるでしょう。設備図などの図面作成の効率化を図りたい場合、CADソフトの利用を検討してみてください。
まとめ
本記事では建築における設備図の種類と図面作成手順の一例を解説しました。設備図には建築物に配置する設備機器の情報が示されています。具体的にはガス設備図、給排水衛生設備図、空調設備図、電気設備図の4つの種類に分かれ、ガス・給排水衛生・空調・電気に関連する設備機器の配置場所や配管経路が記載されています。
設備図を基に各設備機器の配置を確認したり、設備機器の発注を行ったりするため、重要な図面です。そのため、図面に誤った情報は記載できません。しかし、手作業で図面を作成する場合、記入漏れやミスが発生してしまう可能性も否定できません。
AutoCADなどのCADソフトでは建築図面の作成にかかる時間や手間を大幅に削減できます。また、作成した図面を関係者間でリアルタイムで共有できるため、問題が発生した場合でも早期的に解決に導けるでしょう。設備図を含む建築図面の作成工程を効率化したい場合、CADソフトの利用を推奨します。
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「東建コーポレーション|建築用語辞書|設備図(セツビズ)」
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