展開図の役割とは?開発に用いる図面の種類を解説
建築設計やプロダクトデザインの現場では、多様な種類の図面を日常的に扱います。中でも展開図はオーソドックスな図面の一種であり、様々な業界で活躍している図面です。
この記事では、そんな展開図とはどのような役割を有した図面なのか、具体的な使い方や他の図面との違いについて解説しながら、その運用方法を紹介します。
目次:
- 展開図とは
- 展開図の役割
- 展開図活用のメリット
- 開発に活躍する図面の種類
- 展開図の読み方
- 展開図の描き方
展開図とは
展開図は、建物の内部の情報を平面に展開した図面です。立体構造を形成している各面を一つの平面に描画することで、構成している要素を詳細に把握する上で役に立ちます。東西南北の壁がどのようになっているのかを伝えられるなど、他の図面にはない強みが特徴です*1。
展開図のイメージは、空箱を解体して平たく地面に押し当てたような形です。文字通り空間を展開し、内部の情報を一目で把握できるように整理されています。
展開図を有効活用することにより、空間を感覚的に理解するだけでなく、どのような要素が空間に含まれているのかを丁寧に把握することが可能です。
展開図の役割
展開図の主な役割は、一般的な平面図では読み取ることのできない情報を把握することにあります。
例えば天井の高さです。上から見下ろす形で作成される平面図の場合、部屋の広さは把握することができますが、その空間がどれくらいの高さなのかについては図面だけではわかりません。
一方で展開図の場合、立体的な高さの概念を正確に図面の読み手へ伝えることができます。天井の高さがわかることで、壁の大きさや窓の位置、建具や家具についてもその位置を把握することができるでしょう。
平面図だけでは十分に伝えきれない情報がある場合、展開図の活用が開発において重要な役割を果たします。
展開図活用のメリット
展開図の活用は、開発業務において以下のようなメリットをもたらしてくれることが期待できます。
設計イメージを具体的に伝えられる
展開図を平面図と合わせて用いることにより、読み手に設計イメージを詳細に伝えることができるようになります。
平面図では表現しきれない情報が含まれることにより、具体性の高い完成イメージを伴いながら作業を進められるでしょう。
施工者と設計者のコミュニケーションを活性化できる
施工者と設計者のコミュニケーション負担を減らし、スピーディに業務を進めていくことができるのも展開図活用のメリットです。図面情報をリッチにして関係者間での確認事項を減らすことができ、円滑な情報共有に貢献します。
何度も修正や確認が発生して業務が滞るという場合、展開図に着目して開発プロセスを進めることで、業務改善が期待できるはずです。
明確な施工基準を設けられる
展開図と平面図を組み合わせれば、施工基準の標準化においても良い影響を与えます。図面という具体性の高い情報を施工基準として設け、実際の施行に際しての確認事項を減らしたりなどの業務効率化につながるでしょう。
開発に活躍する図面の種類
開発プロセスにおいては、様々な図面を運用することになります。ここではどのような図面が業務上必要になるのか、一度確認しておきましょう。
意匠図
意匠図は、建物のデザインを伝えることに重点を置いた図面です。意匠設計や建物の形態などを正確に伝えられるため、最終的な完成イメージを共有する際に役に立ちます。
意匠図には複数の図面が含まれますが、展開図はこの中の一種です。意匠図に含まれる図面には、他にも平面図や配置図、屋根伏図など15種類ほど存在しています。
それぞれの図面でその建物の意匠について、異なる情報を伝えていることから、正しく情報を読み取れるよう読み方を知っておくことが必要です。
設備図
設備図は、建物における設備の仕様や配置を伝えるための図面を指す言葉です。建物にどのような機能が備わっているか、それらがどのように機能するかを伝える上で、重要な役割を負っています。
設備図には電気設備図や空調設備図、ガス設備図などの種類があります。いずれの図面においても専用の記号を使って設備が描画されるので、感覚的に仕様を理解しやすい設計になっているのが特徴です。
構造図
構造図は、柱や壁といった建物を支える構造がどうなってるのかを正しく伝えるための図面です。意匠図においても壁の様子などを伝えますが、構造図の場合はどうやって建物を支えているか、成立させているかということに主眼を置いている点で異なります。
構造図には、伏図や軸組図、標準図や詳細図といった種類が存在します。
展開図の読み方
展開図を扱う場合、まず知っておきたいのが図面の読み方です。展開図から得られる情報には、
- 窓や建具の位置・種類
- 天井の高さ
- 冷暖房の位置
- 住宅設備の配置
といったものが含まれます。展開図を読む上では、そこからどんな情報が得られるのかを最初に理解しておくことが大切です。
実際の展開図においては、基本的に直線と点線、そして記号によってそれぞれの情報が示されます。展開図は主に東西南北の4面で構成されているため、まずはどの面がどの向きを指しているのかを理解するところからスタートすると良いでしょう。
また、展開図は他の図面と比べて、構成要素が非常に少ない点も特徴です。これは逆に言うとわざわざ覚えるべき要素が少ないとも言えるため、それぞれがどのような意味を持って配置されているのかを理解できれば、読み込めるようになっていくはずです。
様々な図面を読み込んでみることにより、だんだんと図面の意味するところがわかるようになるでしょう。
展開図の描き方
展開図への理解を深める上では、実際にその描き方を把握しておくことも重要です。展開図の作成プロセスは、
- 東西南北の図面を1枚ずつ用意する
- 開口部分を記入する
- 家具・設備機器を記入する
- スイッチ・コンセントを記入する
- 寸法を記入する
という手順です。
展開図は基本的に、東西南北の全4面で構成されている図面です。大枠となる図面を、先に完成させておきます。なお、複雑な構造を有している設計の場合、例外的に5面以上の図面を描くこともあります。
続いて、開口部分の作成を行います。窓や仕切り壁を記入して、図面の基本情報を定義していきましょう。
その次は、家具や設備機器の記入です。キッチンの配置などがわかるようになれば、建物の具体的なイメージが固まっていきます。
スイッチ・コンセントの位置も決まったら、最後に寸法を記入して展開図は完成です。
まとめ
この記事では、開発時には欠かせない展開図の役割や、その読み方・描き方について解説しました。平面図では得られない建物の詳細情報を、展開図では詳細に描画することができます。平面図などの他の図面と合わせて活用することにより、展開図は高い効果を発揮します。
展開図がどのようなシーンで活躍するのか、どんな情報を有しているのかを踏まえた上で、うまく図面を活用すると良いでしょう。
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出典:
*1 野口修アーキテクツアトリエ「展開図」
https://ki-no-ie.net/2021/02/18/%E5%B1%95%E9%96%8B%E5%9B%B3/