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メルセデスベンツが工場にデジタルツインを導入!自動車業界の先端事例を解説

日本では高級車メーカーとしても知られるメルセデスベンツですが、本国のドイツでは高度なデジタル化により、先進的な自動車開発や生産を実現している会社として注目を集めています。

メルセデスベンツが新たに導入したデジタルツインの技術は、3D技術の進展やセンシング技術の積極導入により実現していますが、具体的にどのような成果が導入によって期待できるのでしょうか。

この記事では、メルセデスベンツが新たに導入したデジタルツイン技術や、先端技術活用がもたらす効果などについて、解説します。

目次:

  1. メルセデスベンツのデジタルツイン導入について
  2. デジタルツイン導入に際して採用された技術
  3. デジタルツイン導入にメルセデスベンツが期待する効果
  4. 自動車業界におけるそのほかのデジタルツイン事例

メルセデスベンツのデジタルツイン導入について

2023年1月、メルセデスベンツは自社工場の設計や計画の効率化において、デジタルツイン技術を導入していることを明らかにしました*1。

デジタルツインとは、現実世界の設備や建築物などをデジタル化し、仮想空間にも精巧に再現することで、高度なシミュレーションの実施や、計画策定の精度向上などを実現する技術です。今回メルセデスベンツがデジタルツインを導入したのは、ドイツのラシュタットにある工場の、電気自動車用プラットフォームの生産プロジェクトです。デジタルツイン技術を同プロジェクトに導入することで、生産業務における高度なシミュレーション環境を実現しました。

今回、メルセデスベンツがデジタルツインの導入に至った背景として、自動車産業という巨大事業の持続可能性を従来よりも高めていく必要が大きくなっていることが挙げられます。自動車一台を組み立てるのに、何千という車両パーツと労働者が関与していることもあり、その一つに問題が発生してしまうと、膨大な損失を招く可能性があります。

また、新しいモデルの自動車を発表する場合、最新の設計に合わせた新しい工場のレイアウトも検討・実現しなければなりません。そこにかかる時間が長引くほど、会社の機会損失も大きくなってしまうでしょう。

このようなリスクを解消すべく、メルセデスベンツはデジタルファーストな計画プロセスの構築と、デジタルツインの導入を進めました。時代に応じた機敏な車両生産を、本国ドイツで実現するのはもちろん、世界中の同社の生産工場にも反映できるよう、今後はグローバルなネットワークを構築していくともしています*2。

デジタルツイン導入に際して採用された技術

メルセデスベンツは、今回のデジタルツインの実装に伴い、主に以下の2つのテクノロジーを同プロジェクトに採用しています*3。大手GPUメーカーとして知られるNVIDIAが提供する両技術は、今後自動車業界、あるいはそれ以外の業界も含めた、デジタルツイン実現の主要な軸となっていくかもしれません。

NVIDIA DRIVE Orin

NVIDIA DRIVE Orinは、自動車業界向けに提供されているNVIDIAのチップです。レベル 2 から完全自動運転のレベル 5 まで拡張可能という、高度な自動運転技術開発にも応用可能な同製品は、次世代の自動車設計には欠かせないテクノロジーとして注目が集まります*4。

仮想空間での高度なシミュレーションを行う上では、それに対応できる開発技術が不可欠ですが、同製品はそのニーズに最適なプロダクトと言えるでしょう。

NVIDIA Omniverse

NVIDIA Omniverseは、NVIDIAが提供する独自のメタバース空間構築用プラットフォームです。3Dの仮想空間と現実世界を連動させ、高度なデジタルツイン環境を整備できるだけでなく、高度な互換性を備え、あらゆる3D空間に相互互換性をもたらすことができます*5。

メルセデスベンツでは、そんな同サービスを使ったデジタルツイン空間を構築し、DRIVE Orinと連携することで、仮想空間上で高度なシミュレーションを実現しています。Omniverse上に構築されたシミュレーション環境が、AIを用いたインテリジェントな運転機能の実装、および生産設計に貢献するという仕組みです。

デジタルツイン導入にメルセデスベンツが期待する効果

メルセデスベンツでは、今回のデジタルツイン導入によって、以下のような効果を期待しているということです*6。

廃棄物の削減

廃棄物の削減は、自動車業界だけでなく、多くの企業が取り組んでいる課題でもあります。メルセデスベンツではデジタルツインの導入により、シミュレーションやプロトタイプ開発の際に発生していた廃棄物は、大幅に削減できると考えられます。仮想空間の設計やシミュレーションには、産業廃棄物が発生しないためです。

エネルギー消費の低減

プロトタイプの開発や廃棄の負担が減るということは、それだけエネルギー消費も低減すると考えられます。デジタルツイン技術を活用するための電気コストさえ賄えれば良いため、エネルギーコストは大幅に減少するでしょう。

品質の継続的な向上

デジタルファーストによる設計業務の実現は、データに基づく実用的な改善を行いやすい環境に移行することも指します。シミュレーションの結果は全てデータとして記録され、有効な改善アプローチの検討に役立てられるためです。

また、実製品の開発を伴うこともなくなるため、試行錯誤の回数を増やし、より正確かつ迅速にデータを集められることにも繋がります。結果、製品の継続的なクオリティ改善が実現するという考え方です。

自動車業界におけるそのほかのデジタルツイン事例

自動車業界では、メルセデスベンツ以外にもデジタルツインを段階的に活用する動きが盛んに見られます。

例えばトヨタ自動車では、ロボットとデジタルツインを活用して、生産性の向上に向けた実証実験が進んでいます。デジタルツインを使い、作業者と協働ロボットのコラボレーションを推進することで、効率的な「半自動化」プロセスを目指しています。

同社では実証実験の結果、システム導入前と比較して、生産性は最大15%の向上が見られ、作業者の負担についても約10%の軽減が得られたということです*7。

まとめ

この記事では、メルセデスベンツが取り組むデジタルツイン活用の概要や、デジタルツイン活用から得られるメリットなどについて、解説しました。ドイツでの工場運営に導入されたデジタルツイン技術は、今後世界中の工場でも採用される可能性が高く、世界の自動車メーカーに先駆けてデジタルファーストの環境整備が進んでいます。

日本でもデジタルツインを自動車業界で活用しようという動きは進んでおり、いずれの事例もこれからの自動車メーカーDXにおける、重要な指標となっていくでしょう。

 

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参考:

*1 ロボスタ「メルセデス・ベンツが生産工場にデジタルツインを導入 NVIDIA Omniverseでデジタルファーストを推進、世界中の工場を同期」

https://robotstart.info/2023/01/06/nvidia-mercedes-benz-omniverse.html

*2 上に同じ

*3 上に同じ

*4 NVIDIA「NVIDIA、自律マシン向けの先進のソフトウェア デファインド プラットフォーム、DRIVE AGX Orin を発表」

https://www.nvidia.com/ja-jp/about-nvidia/press-releases/2019/nvidia-introduces-drive-agx-orin-advanced-software-defined-platform-for-autonomous-machines/

*5 NVIDIA「NVIDIA Omniverse」

https://www.nvidia.com/ja-jp/omniverse/

*6 *1に同じ

*7 日本経済新聞「協働ロボと人の共同作業をデジタルツイン化、トヨタと実証で生産性15%向上」

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/07760/

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