Autodesk Vaultマイグレーション完全ガイド|手順・事前準備・トラブル対策まで徹底解説
1. はじめに:Vaultマイグレーションの重要性と基本概要

中規模製造業で活用されるAutodesk Vaultは、CADデータ管理やバージョン管理、チーム協働といった機能を提供する大切なシステムです。
Vaultを適切に運用することで、設計情報の一元管理や迅速なファイル検索が実現し、業務効率の向上を図ることができます。
しかし年を追うごとに、サーバー移行やバージョンアップが必要となる場面が増えます。たとえばサーバー老朽化や新環境への移行を求められるケースは少なくありません。
このマイグレーションを成功させるためには、計画力と事前調査が不可欠です。アドインやSQL Serverバージョンとの整合性を守りながら、ミスなく安全に移行を進めるためのポイントを、本記事で詳しく解説していきます。
2. Vaultマイグレーションの必要性とタイミング
Vaultのマイグレーションは、バージョン整合性やシステム最適化、そして企業の成長スピードに合わせた柔軟なITインフラを実現する重要な手段です。
サーバー老朽化が進んだり、Vault BasicからWorkgroup・Professionalへの移行を考えたりする際、多くの場合で円滑な移行手続きが求められます。
このタイミングを見誤ると、業務が止まるリスクが高まり、設計チームの作業効率にも大きく影響するでしょう。
必要性に気付いた段階で早めの準備を進めることで、システムダウンを最小限に抑えながら、バージョンアップによる新機能活用も同時に図ることができます。
2.1. Vaultの役割とマイグレーションの必要性
Vaultは、CADデータ管理の要です。設計ファイルのバージョン管理やチーム協働が円滑に行われることで、プロジェクトの進行がスピードアップします。
また、ライフサイクル設定によって設計データの状態を明確化できるため、承認段階の混乱を減らすことにもつながります。
しかし、常に新しい機能や互換性更新がリリースされるため、古いバージョンを使い続けると既存の設計ソフト(InventorやAutoCADなど)と噛み合わなくなる恐れがあります。
そこで、Vaultのアップグレードやサーバー移行といったマイグレーションが必要となり、システムの安定稼働と新たな機能活用を両立させるわけです。
2.2. マイグレーションが必要になる主なケース
代表的な例としては、サーバー老朽化によるサーバー移行があります。ハードウェアの耐用年数が過ぎ、動作不安定になる前に移行を検討するのは賢明です。
さらに、Vault BasicからWorkgroupまたはProfessionalへの移行によって、より細かいユーザー権限管理や高度なバージョン管理を実現したいケースも存在します。
また、PLM 連携や自動化ツールの活用を見据えている場合、互換性を保つためには新環境への移行が必要となるでしょう。
これらの要因が重なり始めたら、マイグレーションを検討する最適なタイミングといえます。
3. Autodesk Vaultマイグレーションの種類と特徴
マイグレーションとひと口に言っても、同一バージョンのままサーバーを切り替えるケースや、バージョンアップを同時に行うケースなど複数のパターンがあります。
さらにエディション間の移行のように、BasicからWorkgroup、WorkgroupからProfessionalへの段階的なアップグレードも少なくありません。
どのパターンを選んでも、データベース互換性や外部システムとの連動状態を細心の注意で確認する必要があります。
ここでは、それぞれの特徴を踏まえた上で、自社に適したマイグレーション方法を選ぶ際の指針を見ていきましょう。
3.1. 同一バージョンでのサーバー移行とそのメリット
同一バージョンでのサーバー移行の最大の利点は、バージョンアップに伴う不整合を回避できる点です。
サーバー老朽化によって新しいハードウェアに切り替える場合、OSバージョンやSQL Serverバージョンの確認こそ必要ですが、データそのものの大幅な更新は発生しません。
移行後の検証範囲が比較的狭いので、チーム協働の流れを止めにくいメリットがあります。
とはいえ、移行作業中のダウンタイムは避けられないため、あらかじめ計画力を発揮してスケジュール管理を行いましょう。
3.2. バージョンアップを伴うマイグレーションの詳細
Vaultのバージョンアップには、必ず事前調査が欠かせません。InventorやAutoCADとの互換性はもちろん、SQL Serverバージョンの対応を誤ると、ADMS Console上で復元エラーなどが起きるおそれがあります。
このマイグレーションは新機能を活用できる利点が大きく、CADデータ管理の効率化やチーム協働をさらに強化するチャンスでもあります。
ただし、データ量が増えている場合はアップグレード作業に時間を要するため、バックアップ品質を確保しつつ段階的に行うのが安全策です。
十分な期間を確保し、バージョン整合性を常に意識して、確実にバージョンアップを実施してください。
3.3. Vaultエディション間の移行と注意点
Vault BasicからWorkgroupへの移行や、WorkgroupからProfessionalへの移行を検討する企業も多いです。ワークグループレベルのより細かいユーザー権限管理や、Professional版の詳細なライフサイクル設定などを手にすることで、運用スケールが広がります。
一方、エディション間のライセンス体系は異なるため、移行手順を誤るとライセンス認証が通らないトラブルが発生します。
また、エディション固有の機能を利用するには、クライアント側のアドインや自動化ツールのアップデートが必要です。
十分な下調べとバージョン管理を行い、最適な環境へとステップアップしていきましょう。
4. Vaultマイグレーション前の準備
バージョンアップやサーバー移行を成功させるには、入念な準備が欠かせません。早めに必要事項を洗い出して実行すれば、想定外のトラブルを大幅に減らせます。
ここでは、現状のシステム調査からバックアップ作成、使用中の外部システム確認など、準備段階のポイントを順に解説します。
準備が不十分だと移行後にファイルストアエラーやデータベース互換性の問題が起きる可能性がありますので、慎重に取り組んでください。
では、手順ごとに具体的な取り組み方を見てみましょう。
4.1. 現状環境の調査と評価
まずは現在のバージョンやSQL Serverバージョンを確認し、データ容量やバックアップの頻度もチェックします。
OSやセキュリティパッチの状態、サーバー負荷状況なども併せて調査し、問題点がないか洗い出してください。
たとえば、CADソフト(InventorやAutoCAD)のバージョンとVaultの組み合わせが適切でなければ、アドインの動作不良が起きるかもしれません。
この現状把握が、マイグレーションに向けて最初に行うべき重要なアクションとなります。
4.2. 必要なバックアップの作成
万が一に備えて、バックアップ作成は必ず行いましょう。ADMS Consoleを利用する場合は、ファイルストアとデータベースの両方が揃った完全バックアップを取得することが重要です。
特に大規模データを扱う企業であれば、バックアップ品質を高めるために複数回のバックアップテストを推奨します。
バックアップファイルは基本的に別のストレージやクラウドに保存し、リストアテストも同時に実施しておくとより安全です。
「いざというときに復元ができるか」を確認しておくことが、マイグレーションの最大の保険となります。
4.3. 使用中アドインと外部システムの確認
VaultはPLM 連携や自動化ツールなど、多様な外部システムとつながっていることが多いです。たとえばERPシステムと連動させてBOM情報を管理しているケースもあります。
マイグレーション時、これらの連携先が使っているAPIやアドインの対応バージョンをチェックし、バージョンアップ前にアップデートが必要かどうか調べてください。
互換性がとれていないまま移行すると、データ更新が止まったりエラーが発生したりと業務への支障が大きくなります。
迅速な復旧を目指す上でも、事前にすべての連携環境を把握しておくことが大切です。
4.4. ダウンタイムの計画と管理
Vaultのサーバー停止は、設計チームの業務に直接影響を及ぼします。できるだけ影響範囲を狭めるためにも、ダウンタイムを最小限に抑える計画が求められます。
夜間や休日にバックアップ作成やデータ移行を行うことが多いですが、その際は担当者の負荷や、何かトラブルが起きた場合の対処体制なども想定内に入れておきましょう。
また、計画通りに進まないリスクもふまえ、余裕を持ったスケジュールを設定するのが望ましいです。
短時間ですべてを完了するほどリスクも高まるため、確実な手順を一歩ずつ踏むことが結果的に安全を保証します。
5. Autodesk Vaultマイグレーションの具体的な手順

ここからは、マイグレーションをどのように実施すれば良いか、手順を順を追って説明します。
大まかな流れとしては、まずVaultの停止とバックアップ取得を行い、新環境を用意してからデータの復元・ライセンス設定へと進んでいきます。
各段階でしっかりと検証を行えば、後々のファイルストアエラーや権限トラブルを防ぎやすくなるでしょう。
それでは、一連の流れを4つのステップに分けて見ていきます。
5.1. Vaultサーバーの停止とバックアップ取得
移行に入る前に、まずVaultサーバーを正しい順序で停止します。IISやAutodeskサービス、SQL Serverの順番に留意するのが一般的です。
その後、ADMS Consoleを使ってVault バックアップ作成を行います。ファイルストアとデータベースが同じバージョンでまとまっているかを確認してください。
バックアップを安全な場所に複数保管するのを忘れずに行い、本番移行時にスムーズな復旧ができるよう準備を整えましょう。
移行当日の慌ただしさを緩和するためにも、事前にテスト環境で停止や復元をシミュレーションしておくと安心です。
5.2. 新環境へのインストールとデータ復元
次に新しいサーバー環境へVault ServerとSQL Serverをインストールします。エディションやバージョンがVaultと整合しているかをチェックしてください。
その後、ADMS Consoleでバックアップデータを復元します。データ量が大きいと時間がかかりますが、焦って途中で処理を中断するとトラブルのもとです。
最終的にVaultが正常に起動し、ファイルにアクセスできる状態になるまで確認を怠らないようにしましょう。
新しいサーバーOSならではの設定差異(IISのモジュールなど)にも気を配り、エラーや警告がないかログを丹念にチェックしてください。
5.3. ライセンス設定とクライアントの更新
データ復元に成功したら、必要に応じてライセンス設定を行います。Network Licenseの場合はFlexLMが最新版かどうか、旧ライセンスファイルが利用可能かなどを確認しましょう。
次にクライアントをインストールまたは更新し、サーバーとバージョンを合わせます。InventorやAutoCADのVaultアドインも同時に更新し、バージョンアップ後の動作を確かめると安心です。
このステップが漏れた場合、クライアント側でログインエラーが生じたりVault機能が部分的に利用できなくなったりすることがあります。
正しいライセンス設定とクライアント更新こそが、新環境への移行を円滑に進める決め手となるのです。
5.4. 動作確認とテストの実施
システムが立ち上がったら、ダミーデータやテスト用アカウントを使って入念にチェックします。ファイルのチェックイン・チェックアウト、検索機能、ライフサイクル設定などを一通り試してみてください。
この段階で最も気をつけたいのは、データベース互換性のエラーやインデックス状態の問題が発生していないかどうかです。
大規模なデータを扱うほどテストは徹底すべきであり、時間をかけて確認することで後々のトラブル回避に大きく貢献します。
最終的に、すべての主要機能が正常に動作することをチーム全体で確認してから移行作業完了としてください。
6. よくあるトラブルとその対処法
マイグレーションでは、SQL Serverバージョンやファイルストア参照などの不一致が原因で、思わぬ障害が起きる可能性があります。
さらにクライアントのアドインが表示されない、ライセンス認証がうまく進まないなど、細かいトラブルも無視できません。
新環境への移行が完了した後でも、十分に注意を払い続けることで、業務への影響を最小限に抑えることができるでしょう。
ここでは代表的な問題点と対策方法を紹介しますので、事前にチェックしておいてください。
6.1. SQL Serverバージョンの不一致と解決策
Vaultの推奨SQL Serverバージョンが守られていないと、インストール時点や復元時点でエラーメッセージが出ることがあります。
まずはAutodeskの公式ドキュメントを参照し、どの組み合わせがサポート対象か確認することが大切です。
もしバージョンが合わない場合は、既存のSQL Serverをアップグレードするか、Vault対応のSQL Serverを新規に導入するなどの手段を検討してください。
事前に調整を済ませ、スムーズなバックアップリストアの段取りを組むことがトラブル回避の基本となります。
6.2. ファイルストア参照エラーの修正
Vaultでは、ファイルストアへ正しくアクセスできないと、設計データを開こうとした際にエラーが発生します。
よくある原因としては、UNCパスの設定ミスや、サービスアカウントに十分な権限が与えられていないことが挙げられます。
管理者権限を付与した状態でパスを再設定し、正しくデータがやりとりできるかをテストしましょう。
こうした対策を講じることで、ライフサイクル設定時のチェックイン不良やファイル遅延などが起こりにくくなります。
6.3. クライアントでのVaultアドイン問題
マイグレーション後、クライアントのインストールやAutoCAD・Inventorとのバージョンが一致しないと、アドインが表示されなくなったり一部機能が動作しなかったりします。
対処には、まずクライアント側のVaultソフトとアドインをサーバーと同一バージョンに合わせることが基本です。
また、アドインのロード状況やプラグインの有効化設定を見直し、必要に応じて再インストールや修復を行ってください。
このように手間をかけて問題を洗い出すことで、CADデータ管理が途切れるリスクを最小限にとどめられます。
7. 移行後の最終チェックリスト
移行が完了したら、Vaultの主要機能が正しく働いているかどうか最終点検をしましょう。
ここで発見した不具合をすばやく修正できれば、日常業務への影響を大きく抑えられます。
ユーザー権限やインデックス状態、さらにはデータの検索速度などを確認し、Vault上での運用を再開できるか最終的に見極めましょう。
以下にはチェックすべき重点項目を挙げていますので、移行直後のぬかりない対応を実践してください。
7.1. ユーザー権限とライフサイクル設定の確認
ユーザー権限管理が正しく機能していないと、必要のないユーザーが機密情報にアクセスできたり、逆に必要な権限が足りない状況が発生します。
新環境で作業開始前に、管理者アカウントでプロジェクト単位やユーザー単位の権限をしっかり見直しましょう。
また、ライフサイクル設定がマイグレーションによって崩れていないかも念入りにチェックします。設計承認のフローが正常に機能するかテストすると安心です。
これらを早急に確認することが、スムーズな運用再開のための必須のステップとなります。
7.2. 検索機能とインデックスの状態検証
Vaultの検索機能は設計業務の効率を左右する大きな要素です。インデックス状態に問題があれば、検索速度が極端に落ちたり正確な検索結果が得られない可能性があります。
必要に応じてインデックスの再構築を行い、レスポンス改善を図ってください。特にデータ量が多いほど、定期的なメンテナンスが効果的です。
検索スピードが改善されているかをテストし、運用中に支障がないかどうかを検証しましょう。
この一連の確認作業を経て、マイグレーションの仕上げとして全体の最適化を狙うことが大切です。
8. 自社で行うか専門業者に依頼するかの比較ガイド
マイグレーションを自社で完結するか、外部パートナーに委託するかは大きな判断ポイントです。
内製メリットとしてはコストを抑えられ、自社固有の環境を深く理解しているため柔軟な対応が取りやすい点が挙げられます。
一方、トラブル時の復旧ノウハウが足りない場合などは、移行作業に紐づくリスクを大きく背負うことにもなるでしょう。
専門業者に依頼すれば、各種バージョンアップや複雑なライセンスの取り扱いについてプロのサポートを受けられ、ダウンタイムを短縮できるメリットも期待できます。
9. まとめ:Vaultマイグレーション成功のための重要ポイント
マイグレーションは、サーバー老朽化や新環境への移行だけでなく、CADデータ管理を強化して業務効率化を推進するための絶好の機会です。
成功のカギは、しっかりした事前調査と緻密な計画力にあります。バックアップ品質を高め、バージョン整合性を確保して初めて、マイグレーションの恩恵を最大限に受けられるでしょう。
また、作業後の最終チェックリストを丁寧に踏むことで、インデックス状態やユーザー権限管理の不備を早期に発見できます。
バージョンアップやサーバー移行を無事に完了させ、チーム協働のさらなる効率化を目指して、今後の運用を堅固なものにしてください。
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<参考文献>
・Autodesk Vault | Vault 2026 の価格と購入
https://www.autodesk.com/jp/products/vault/overview
・Vault サーバを新しいバージョンにアップグレード/マイグレートする方法





