IoTハウスの実証実験進む。家、人、情報が融合する時代へ
モノとインターネットつながるIoTは、住宅分野にも波及しつつあります。IoTハウスと呼ばれる新しいコンセプト住宅の研究が進められているのです。IoTハウスは、住宅の中に置いてある機器類をインターネットに接続して機能させるといった単純なものではありません。住宅、人、そして生活情報を融合させた新発想の住居です。新しい住環境を創造するIoTハウスとはいったいどんな住宅なのか、実証研究の最前線を取りあげます。
IoTハウスとは
IoTハウスとは、インターネットに接続したセンサーや情報機器を部屋中に備えつけて機能を持たせるように設計したwwqる未来型の住宅です。住宅内のさまざまな情報を常時収集して、住んでいる人に快適な生活を送れるようにするのがIoTハウスの狙いです。
これまで近未来型の住宅として、IT住宅が研究されてきました。IT住宅は、テレビや洗濯機、冷蔵庫、照明器具といった家の中に置いてあるあらゆる電化製品をインターネットに接続して、自動的に電源が入ったり外出先から遠隔操作したりできる機能をもたせました。IoTハウスはIT住宅をさらに発展させ、天候やドアの開閉回数、風呂やトイレの利用状況といった、住生活上のありとあらゆる事象をデータ収集して機能化させます。さらに、収集したデータを分析して、住んでいる人に快適な住環境をアドバイスできる情報も提供します。
住宅、人、情報の一体化こそが、IoTハウスの基本構想なのです。
機器の自動制御や住環境の見える化により暮らしの改善が可能に
IoTハウスは、センサーで収集した情報からさまざまな機器を動作できるだけでなく、住んでいる人の行動のパターンを分析して自動的に宅内の設備を制御できます。
たとえば、訪問者が玄関の呼び出しボタンを押すと自動的に防犯カメラが作動して備え付けのディスプレイに映像を表示したり、トイレを使用後に照明がつけっぱなしになっていたときにはセンサーが感知して照明を消すこともできます。気温が高く日差しが強いときは、室内の温度センサーが一定の温度以上になると換気のために窓を自動的に開けて、室内の照明を暗くすることもできるのです。
さらに、電気、ガス、水道それぞれの使用量をグラフ化して、住んでいる人に省エネ対策のアドバイスを提言する「生活状況の見える化」機能も備わっています。この見える化機能には、ほかにドアや棚につけたセンサーから開閉状況を集計して、家財道具の収納効率改善のヒントを提供することもできます。
これまで住宅内での行動は自分自身で意識しないと把握できませんでした。住宅内に取り付けられたセンサーが逐一情報を収集…蓄積してビッグデータ解析することで、日常生活で気がつかなかったムダを知り、生活向上に役立てられるのが、IoTハウスがもたらす大きな恩恵といえるでしょう。
住宅メーカーによる実証実験プロジェクトが進行中
未来の住生活をテーマとして、IoTハウスの研究に力を入れているのが、住宅設備や建材を手がけるLIXILです。LIXILは、2009年から研究用のIoTハウスを用意して実験実証プロジェクトを進めています。
プロジェクトではまず、住宅に設置するセンサーの最適な配置場所やデータの取得、分析手法、 住人に提供できる機能や情報サービスの選定といった基本検証から始めていきます。そして、実験用のIoTハウスに検証結果を取り入れ、社員がモニターとなって実生活を行う実験を行います。次に、実生活から得た結果をもとにコンセプトハウスを建設して、IoTを活用した理想的な住環境の構築に加え、プロジェクトに共同参画してくれるパートナー企業を募ります。最終段階として、IoTハウスの機能を拡充させて有効性を検証していきます。現在は、2017年のコンセプトハウスの着工に向けて実証実験を推し進めています。
IoTハウスは、住んでいる人のプライバシーを配慮しつつ行動パターンを情報収集する方法の確立など、住まい作りをする上でこれまでにはない課題がたくさんあります。人と家と情報を融合させるIoTハウスの実現に向けた取り組みは、今後さらに活発になっていくでしょう。