日本はシェアリングエコノミーが成立しやすいかも
昨年度は日本でも大きな注目を浴びたシェアリングエコノミー。ここまで日本でシェアリングエコノミーが拡大した背景には日本独自の要因があると見ています。今回はその要因について見ていきたいと思います。
そこでまずはシェアリングエコノミーをおさらいしていきましょう。
シェアリングエコノミーとは
「シェアリング・エコノミー」とは、典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。
(総務省、平成27年度版情報通信白書、
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc242110.html)
シェアリングエコノミーは個人が保有する遊休資産の貸し出しを仲介するサービスと定義されています。そのため、意見は分かれますが、本記事ではフリマアプリは対象から外したいと思います。
いつもテクノロジー関連を扱うメディアなどを見ていて思うのは、シェアリングエコノミーを提供する企業が次から次へと出てくることですね。
最近ですと旅行の荷物を預けて、手ぶら観光をするためのサービス「ecbo cloak」が、京都へ進出するというニュースを目にしました。京都の外国人宿泊客をターゲットにコインロッカー不足の解決を目指すと言います。
(参照:THE BRIDGE、荷物預かりの「ecbo cloak」が京都に進出、訪日外国人をターゲットに京町家や着物店でもサービスを提供 2017/04/26)
このようなスペースをシェアするサービスは、もはや日本でも数え切れないほど産まれていますね。
またそれだけではなく、出張トリミングサービスやネイティブとカフェで英会話レッスンが受けれるサービスなど、何かしらのスキルを持っている人の時間をシェアするサービスもたくさん出てきています。
シェアリングエコノミーが成立する条件
シェアリングエコノミーが成立する条件として、一般的には以下の二つが考えられるでしょう。
- シェアするモノの価値
- 貸す側と借りる側のモラル
当然ながら、まずは1. シェアするモノの価値をクリアしないとニーズがないということなので、サービスとして成立しませんよね。
そして難しいのが、2. 貸す側と借りる側のモラルだと言えます。
中国のシェアリングサイクル市場を例に見てみましょう。中国では、自転車シェアサービスが話題となっています。
上海と北京で展開されており、摩拜単車専用の自転車駐輪場が市中心部に数多く設置されています。レンタルした自転車は任意の専用駐輪場に返せばOKで、料金は30分1元(約15円)と低価格。
専用自転車のハンドルの中央部分にはQRコードがあり、スマートフォンをかざして専用アプリをダウンロードしたら、300元分をプリペイドで前払いする。アプリには近くの貸し出し可能な駐輪場と貸し出し可能台数を地図上に表示する機能もあり、そこから予約を入れることも可能です。
予約が済んだら先述のQRコードを読み込むとロックが解除される。最終的にどこかの専用自転車駐輪場に自転車を戻してロックをかけるまで、30分ごとに自動的に利用料を差し引かれるというもの。
しかしながら、中国における自転車シェアサービスは多くの問題を抱えています。
自転車を乱暴に扱うユーザーがいたり、QRコードを塗りつぶしてしまう不届き者がいたり、広告のシールを専用自転車に貼り付けたり……。
最初にサービスがスタートした上海では、1万台の自転車を投入したものの、2カ月間に150台が壊れ、100台のQRコードが塗りつぶされたり、破壊されたりしたといいます。また利用した際に、そのまま自転車を盗んだユーザーもいました。
さらに、ちょっとした買い物などで自転車を道路脇にとめたり、私有地にとめたりすると、清掃業者や「城管」と呼ばれる地域の管理者によって早々に撤去されるということも常態化しています。
(日経トレンディネット、中国で自転車版Uberが話題に! 2016/10/03)
このように、シェアするモノ自体に価値はあっても、モラルが欠けてしまうと問題が発生してしまうのです。
日本でもこのような自転者シェアサービスは提供されていますが、中国のような問題は発生していません。これはやはり日本だからこそなのかもしれませんね。
日本ではシェアリングエコノミーが成立する条件をうまく満たしているために、成立しやすい国と言えるでしょう。
ただ日本ならではの問題もあって、それはやはり法規制の問題ですね。法律の壁により、UberやAirbnbは海外のように自由に利用することはできていません。
そのため、規模の拡大は海外と比べると遅苦なりがちです。
モラルと規制緩和をうまく両立していけるかが、日本のシェアリングエコノミーのさらなる拡大のカギを握っていると言えるでしょう。