Subscribe with Googleがリリース!メディアプラットフォームとして進化するGoogleの戦略
Googleが4月にサブスクリプション支援ツールである「Subscribe with Google」を発表しました。これはさまざまなニュースサイトの登録を、Googleアカウントに通じた簡単な手続きだけで実行する新たなサービスです。今回の記事では、この影響について見ていきたいと思います。
悲鳴をあげているローカルパブリッシャー
インターネット以前に紙媒体で情報を提供していたパブリッシャーは、ネットに圧倒されその売上の減少を止めることができずにいます。それに伴い、広告主はインターネットにシフトしWEB広告が右肩上がりとなっています。それに比べて従来のマスメディアへの広告は減少の一方であり、存続さえ危ぶまれているところが多いという現状です。
こうした負のスパイラルから脱出するために、従来のメディアもWEBへの進出をしていますが新興勢力との競争に晒され、新たな有料での購読層を確保するのに苦労しています。今やある程度のニュースであれば、無料でかなり詳しい情報まで取得することが可能であるというのがその大きな理由であり、特にローカルパブリッシャーの場合は少ないパイの取り合いにもなるため、よほど特徴を出さない限り効果的な戦略が取りにくいのが実情です。
有料購読の登録作業がハードルとなることも
最近ではいくつかのWEBサービスを日常的に利用されている方も多いと思います。実は、一般の人にとって、このようなサービスの利用を開始する際のIDやパスワードなど関連情報の登録が最初のハードルになっていることも多いようです。ちょっと興味がある程度で登録作業を始めたものの、途中で面倒になって離脱という経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
登録から利用開始までを簡略化するGoogleのサービス
今回発表された「Subscription with Google」は、こうした登録作業を劇的に簡略化するサービスです。Googleのアカウントさえ持っていれば2クリックで登録作業が完了し、登録してある支払い情報(クレジットなど)から定期購読料が支払われる仕組みとなっています。
ローカルパブリッシャーにとってゲームチェンジャーになる可能性
全米の30のローカルサイトで地方新聞を発行しているマククラッチーは、サービスのローンチと同時にSubscription with Googleを運営するサイトに実装しました。マククラッチーの社長兼CEOであるクレイグ・フォアマン氏は「ローカルパブリッシャーにとってゲームチェンジャーとなり得るサービスだ」とコメントしています。それだけ、この新しい取り組みに対する期待が大きいということでしょう。
プラットフォームとしてのポテンシャルを最大化
フリーミアムモデルとして世界中に多くの利用者を確保し、WEB広告の大部分を握っているのがGoogleとFacebookです。プラットフォームとしての価値を利用し、他社のサービスとの連携を進め、それぞれのアカウントを個人認証がわりに使うというモデルが進んでいます。GoogleアカウントやFacebookアカウントさえ持っていれば、簡単に他のサービスへの登録ができるということは、利用者にとってはいくつものIDやパスワードを記録・保存する面倒から解放されます。サービスを提供するサードパーティにとっても登録へのハードルを低くすることができる上に、ある程度の情報は元の登録情報から取得できるというメリットもあります。
もともと、マスレベルでのWEB広告をGoogleとFacebookという二大巨人が牛耳ってしまったため、多くのWEBメディアは広告の確保に苦労するという図式になっていましたが、このサービスではGoogleという「信頼でき、多くの利用者がいるプラットフォーム」がローカルパブリッシャーにサービスを提供することで、逆に手を差し伸べるという形になっているのが面白いところです。
Facebookもジャーナリズム・プロジェクトを推進中
2017年からFacebookも「ジャーナリズム・プロジェクト」として『ニュース機関との共同製品開発』『読み込みが速い記事フォーマットであるインスタント記事の改善』『サブスクリプション製品のローンチ』などを目指しています。世界中で10億人を超えるアカウントを保有する巨大なネットワークを活かした、ジャーナリズムの適正化と収益化がその目的です。
今やなくてはならないGoogleアカウント
アマゾンでKindleを購入した時に個人アカウントの設定が完了していれば、以前に購入した音楽や電子Bookがすぐ利用できる状態で到着します。このような経験をした人であれば、もう他のサービスには移行できないぐらいの便利さを感じたと思います。Googleもアカウントを取得し、多くの他社サービスをGoogleアカウントで登録してしまえば、一度登録した人は全てを清算して別の方法に切り替えることは難しいのでないでしょうか。
Subscribe with Googleなどのような、プラットフォームとしての利用価値を最大化するとともに多くのメディアのサービスを取り込みながら、ローカルレベルでの広告費モデルについても絶大な影響力を持つ可能性のある新たなサービスは、Googleの世界戦略の一貫であると言えるでしょう。実は2010年代当初、Googleはローカルのポータルサイトを試験的に立ち上げていたことがあります。この時は、ポートランドなどのいくつかの都市で実験的に短い期間だけ公開されていましたが、その当時からローカル情報の効果的な拡散・利用にはそれなりの興味を持っていたようです。残念ながらポータルサイトの運営はクローズしたようですが、サブスクリプションのプラットフォームとして、ローカルパブリッシャーにターゲットを絞ったサービスで再登場したというのは非常に興味深い事実ではないでしょうか。
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