大ブーム「バーチャルYoutuber」でも使われている音声合成ソフトウェアの秘密
2017年終わりから2018年にかけて「バーチャルYoutuber」と呼ばれる、3DモデリングやLive 2D技術を動画に取り入れたYoutuberが爆発的に大ヒットしました。
バーチャルYoutuberでナンバーワンの知名度を誇るキズナアイ氏のメインチャンネル「A.I.Channel」のチャンネル登録者数は198万人を突破し、その勢いは留まるところを知りません。
さて、盛り上がるバーチャルYoutuber界で、ひそかに注目を浴びているのが「ボイスチェンジャー」や「読み上げ用音声合成ソフト」です。
これらのソフトウェアは「仮想空間で女性アイドルとして活躍したい」と考える男性配信者の需要にマッチしたことで、新たな人気の兆しが見えています。男性声を女性声に変換するソフトウェアとしては「恋声」というフリーソフトがよく使われます。
一方で「音声合成」という別のアプローチで、声を手に入れたバーチャルYoutuberもいます。ここでは音声合成ソフトの代表格、VOICEROIDをご紹介します。
音声合成ソフトウェア「VOICEROID」の新しい需要
VOICEROID(ボイスロイド)は株式会社エーアイの音声合成エンジン「AI Talk」を元に開発された読み上げ用音声合成ソフトウェアです。
VOICEROIDではただ文章を読み上げさせるだけでなく、言葉のイントネーションや、抑揚のつけ方、話速や声の高さなどを細かく調整することができます。また、最新版では喜怒哀楽の感情を切り替えて読み上げさせる機能が製品に追加されています。
もともとは動画にナレーションをつけたり、原稿の校正時に文章を読み上げさせてチェックをしたり、ゲーム実況で視聴者からのコメントを読み上げさせたりする用途で使われることの多いソフトでした。
しかし最近になって「バーチャルYouTuberの声としてVOICEROIDを使う」といった活用法が関心を集めるようになりました。
実例として、バーチャルYoutuberとしてご活躍されている、のらきゃっと氏は、VOICEROIDを自身の声として動画配信・生放送配信をされています。
(参考)のらきゃっとチャンネル – YouTube
初めて動画をご覧になった方は、音声合成ソフトウェアが非常に流暢に聞き取りやすく言葉を話すこと、そしてこれをリアルタイムの生配信で可能にしている事実に驚かれるかもしれません。
配信者の声をリアルタイムに、音声合成ソフトウェアの声へと切り替える。その技術にはVOICEROIDに加えて「Google音声認識システム」の技術が活用されています。有志の方が作成した支援ツールにより、Google音声入力で認識された文章をVOICEROIDに送信し、同時に音声合成で発話させることを可能にしています。
また、VOICEROID音声合成の元となる声は、声優の方が担当をしています。VOICEROIDは製品ラインナップごとに担当声優が異なり、性質も個性豊かであるのが特徴です。
音声合成技術のこれから
ところで音声合成エンジンの開発を手がける株式会社エーアイは2018年6月に東証マザーズに上場し、公開価格の3.5倍にまで株価が高騰したことが話題になりました。これはひとえに、音声合成技術が市場からも高い関心を集めていることの現れであるとも言えます。
もしもリアルタイムで、自分の声を自由自在に変えることができたなら、どのような世界が広がるでしょうか。活用の幅はバーチャルYoutuberだけに留まりません。コールセンターでの活用も考えられますし、アニメ業界においてもひとつの変革をもたらすことでしょう。
今はまだ、音声の誤認識やタイムラグ発生の問題があり、即時的に声を変換するのにもさまざまな課題が残っています。
しかし今後もバーチャルYoutuberの世界が発展してゆくのであれば、やがては名探偵コナンが使う「蝶ネクタイ型変声機」のような、夢のような製品が出てくる未来も決して遠くはないでしょう。
ファッションと同じような感覚で、自分のお気に入りの声とアバターを手に入れて、仮想世界を生きられる。そんなSFチックな時代がもうすぐそこにやってきているのです。
(※ チャンネル登録者数等の情報は2018年7月現在のものです)
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