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海外におけるBIM導入の事例から学ベる活用方法

日本の建設業界においては徐々に導入が進んでいるBIMですが、海外の事例に比べると見劣りする部分もあります。

先進国・発展途上国を問わず、現在BIMは様々な国で普及が進み、すでに多くの事例も誕生しています。

今回はアジア・ヨーロッパ地域といった海外のBIM導入事例に注目し、導入の背景や方法について、一つずつ見ていきましょう。

目次:
①建設ラッシュの最中にあるアジア地域でのBIM運用
②公共物件の建設が多いイギリスは政府主導のBIM運用
③現場の人間が積極的にBIMデータを共有するフィンランド

アジアにおけるBIM活用の事例

まずは、日本の周辺地域に当たるアジアの諸外国におけるBIMの活用方法についてです。

中国におけるBIMの運用方針

ここ十数年、世界で最も建設ラッシュが続いている中国においては、積極的なBIMの導入が進んでいます。

中国国内における膨大な建設需要に応えるため、効率的な建設技術の積極的な導入は、もはや必須と呼べるでしょう。

例えば北京市に本社を構えるTaikong Technology(タイコン、太空)では、中国全土をカバーする技術チームを有し、建設業界におけるBIM関連サービスを提供しています。

公式サイト:http://www.taikongkeji.cn/

タイコンは中国で唯一BIMの支援を行なっている会社で、独自のクラウドプラットフォームである「isBIM」を用い、ソリューションの提供に当たっているのが特徴です*1。

「isBIM」はオートデスクが提供するクラウドサービス、「BIM360」に似たような使用感となっています。

中国企業は「isBIM」を用いることで、Revitをベースとした数量計算やBIMデータの共有、情報管理などを、国産サービスで完結させることができます。

また、BIM運用に関連したサービスを提供する企業も存在しており、金融分野で実績を挙げてきたのが Glodon(グロードン)です。

公式サイト:https://www.glodon.com/en/

積算代行業務を創業当時から行いながら、現在ではBIM関連の現場への多様なソリューションも提供するようになりました*2。

日本の大林組もGlodon社の数量計算ソフト「Glodon Takeoff for Rebar」を採用し、BIMモデルの効率的な活用を進めています*3。

今後も中国製ソフトが国内の現場で使用されるケースは、増えていくことになるでしょう。

シンガポールにおけるBIM運用

近年経済成長が著しい東南アジアですが、中でもシンガポールはBIMの運用も早期から進んでいる、建設先進国の一つでもあります。

シンガポールにおいては2009年ごろよりBIMデータを活用した電子申請が行われてきましたが、この地でBIM運用を主導してきたのがシンガポール建築建設庁です*4。

通称BCA(Building and Construction Authority)と呼ばれるこの組織は、BIM導入に際しての資金面の支援、人材育成、実務支援という3つの柱を提供してきました。

資金面では、ソフトウェアおよびハードウェアの購入費用や、コンサル費用、トレーニング費用など、BIMに関わる様々な費用の支援を行なっています。

人材面では、BCA独自の教育機関であるBCAアカデミーがトレーニングを行い、BIMモデルの設計やその運用などに関する専門家の育成に努めています。

実務支援においては、効率的なBIM運用を進められるよう、BCAと企業が合同でソフトウェア開発を行うなど、二人三脚での業務を行なっています。

また、シンガポールには独自の建設基準制度であるBuildability Scoreと呼ばれるスコアが設定されています*5。

BIMを運用した建設物でも滞りなくこのスコアをクリアすべく、BCAはeBDAS BIMというアドオン機能をソフトに追加しています。

この機能の導入により、国内におけるBIM運用が一層進むことが期待されているのです。

ヨーロッパにおけるBIM活用の事例

アジアほどの建築ラッシュが発生しているわけではないものの、先進国が集うヨーロッパにおいても、BIMへの注目度は高まっています。

イギリスのBIM運用について

ヨーロッパにおけるBIMの捉え方として特徴的なのは、BIMに確実な実利と環境問題の解決を期待している点です。

欧州はアジアほどの建設需要は存在しないものの、年間1兆3,000億ユーロもの市場が存在しています。

仮にBIMの導入によって建設業に10%のコスト削減が生まれた場合、この市場には1,300億ユーロもの価値がさらに追加され、景気の上昇につながるとされています*6。

ヨーロッパにおいて特に政府主導でBIM導入が進められているのが、イギリスです。

2016年にはすべての公共物件の建設においてBIMの導入を義務付け、2025年にはプロジェクト関係者全員が、一つの統合モデルのみで設計を行う目標を掲げています*7。

この国では、建設事業の約40%が公共物件であるため、政府による積極的なBIM導入施策が展開されています。

イギリスにおいてトップダウンで制度改革が行われるのは、BIMの運用が国益に直結するという理由があってこそです。

フィンランドのBIM運用

公共事業におけるBIM運用の例としては、フィンランドの路面鉄道計画も注目が集まった事例の一つです。

2017年より着工した「Tampere Tramway Project」は、既存の道路に鉄道を開通するプロジェクトです*8。

発注者・施工会社・設計会社・施工管理会社は、共通のクラウド上で同様のデジタルデータを共有し、BIMの専門家も交えて工事が進んでいます*8。

実際の建設現場においても、日々の施工状況はリアルタイムでクラウド上に共有され、情報伝達に遅れがない環境を実現しています。

竣工後も見据え、共有されるデータの中には土木施工管理に活用できる、埋設物の位置データなども埋め込まれている点も、先進的な取り組みと言えます。

また、重機オペレーターも「finBIM」と呼ばれる独自のBIMシステム向けのコードを用い、共有データとして送信しています。

管理者だけでなく、現場の人間も直接情報共有に参加するケースは、世界でも先進的な取り組みと言えるでしょう。

おわりに

BIMデータの活用が顕著なのは、建設需要が高いアジア地域です。民間企業を主体とした建設業界のイノベーションの様子は、日本にも通じるものがあります。
一方、ヨーロッパにおいては公共事業におけるBIM運用のケースが目立っており、政府主導で具体的なBIM運用に取り組んでいる様子が見られます。
アプローチは違えど、いずれの事例においても学べるポイントが多い施策が並んでいると言えそうです。

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出典:

*1 日本建設業連合会「中国におけるBIM/CIMの現状についての視察(2019年3月)」p.12
http://www.jacic.or.jp/etc/kokusaidoboku/pdf/kokusaidoboku_6_s5.pdf

*2 同上 p.17

*3 日経Xtech「5Dへの挑戦も!BIMワークフロー最大化を目指す大林組」p.4
https://xtech.nikkei.com/kn/atcl/knpcolumn/14/546679/040600027/?P=4

*4 NTTファシリティーズ総研「シンガポールにおけるBIMの現状と将来展望」p.1
https://www.ntt-fsoken.co.jp/ehs_and_s/overseas_report/pdf/2015_1.pdf

*5 同上 p.2

*6 国土交通省「欧州公共事業によるBIM導入の手引き」p.4
https://www.mlit.go.jp/common/001224383.pdf

*7 日経XTech「英国「BIMレベル3」が示す成長の条件」p.1
https://xtech.nikkei.com/kn/atcl/bldcolumn/14/660654/090800013/

*8 BUILT「フィンランドのICT施工事例、建設機械のオペレーターがBIMデータを活用」p.3
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1909/16/news004_3.html

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