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Apple Watch Series 8に搭載された「皮膚温センサー」でアップルが提供するものは?

今回発売された新型Apple Watch。超高級モデルの登場で、何かと話題を集めていますが、スタンダードモデルである「Series 8」でも、OSの進化も伴いながらさまざまな機能が新しく搭載されていることに注目すべきでしょう。
今回の記事では、特に「皮膚温センサー」にフォーカスして見ていきましょう。

この記事でわかること

・新たに搭載された「皮膚温センサー」について
・体温測定ができる他のスマートウォッチとの違いについて
・皮膚温センサー以外の新たな機能について

Apple Watch Seiries 8で新たに搭載された「皮膚温センサー」とは何か

2022年9月にApple Watchの新シリーズが発売されました。
事前情報も含め、最も注目されたのは最上位機種の「Ultra」でしょう。水温センサーや100mまでの耐水性能などのダイバー仕様を搭載し、12万円オーバーという高級品です。

※Apple Watch Ultraに関してはこちらの記事を参照ください。

https://www.capa.co.jp/archives/41591
「Apple Watch Ultraにはどんな違いがある?ディスプレイなどの特徴について解説」

このUltraと同時に発売されたのが、機能を削ったエントリーモデルであるSEと、中間的な位置付けになったSeries 8です。
Ultaraの登場以前であればフラッグシップモデルとして、Apple Watchシリーズの中で最も注目を集めていた存在でしたが、今回はやや影が薄くなったようにも見えます。

しかし、ダイバー仕様を必要とせず一般的な使用を目的とするユーザーであれば、「Series 8」が実質的に「最上位モデル」であると言う位置付けは変わりません。
ダイバー仕様が必要でない場合、選択肢は「SEかSeries 8」になります。
Watch OSも9にバージョンアップし、ハード面でもソフト面でもより進化したSeries 8は、現時点でも魅力的で訴求力のあるプロダクトであることは間違いありません。

「Series 8」についてアップルの紹介文では

・女性の健康にとって大切な情報を読み取る皮膚温センサー
・緊急時に助けを呼べる衝突事故検出
・睡眠をより深く理解できる睡眠ステージ
・強化されたワークアウトアプリ内の新しいトレーニング方法

この4項目が特に強調されています。
中でも「皮膚温センサー」が最初に記述されていることからも、今回の目玉としていることがわかります。*注1

皮膚温センサーは、睡眠中に手首の温度を測定し、約5日間のデータを元に基準体温を判定します。その後は測定されたしきい値に対する変化を、毎晩計測していきます。
センサーは2つあり、5秒ごとにサンプリングしていく仕組みです。外部環境の影響を受けにくい位置にセンサーがあるため、精度の向上に貢献しています。

測定されたデータはAIによって処理され、皮膚温の変化による身体状態の推定などに活用されます。これは女性の月経周期などの推定をするのに適していることから、アップルもこの点を前面に出して紹介しています。

周期記録を使っている場合、過去に遡った排卵日の推定に役立ち、周期予測の精度も向上させることができます。
また心拍数や記録された周期のデータと組み合わせることで、より詳しい月経周期の情報を得ることが可能です。*注2

なお、基準となるデータを取得するための最初の5日間は、一定の時間きちんと睡眠を取る必要があります。
アップルでは「毎晩4時間以上は睡眠の集中モードを有効にしておく」と書かれていますが、実際に体験したユーザーの中には5日間ではデータが集まらず、1週間程度かかったという報告もあります。*注3

排卵の推定のための設定

Apple Watchで排卵の推定を受けるには、次の設定をしておく必要があります。

・「周期記録」で妊娠可能期間の予測を有効にし、進行中の周期要因の記録がない状態にしておく。
・「睡眠」を設定し、「Apple Watch で睡眠時間を記録」と「睡眠」の集中モードを有効にしておく。
・手首皮膚温のデータを正確に取得するため、5日間、毎晩4時間以上は「睡眠」の集中モードを有効にしておく。

排卵の推定が使用できるようになれば、Apple WatchやiPhoneに通知が来ます。
推定の精度を上げるためには、Apple Watchを正しく装着することや、周期記録で月経を正確に記録しておくことなどが必要となります。
現時点では女性用にフォーカスされた機能のようであり、これが男性にとってどのようなメリットがあるかは不明です。

もちろん、日常的な自分の平均体温を把握しておくことは、体調管理にとって役に立つと思われます。
しかしアップルによる説明を見ても、このような機能については明確に示されておらず、具体的なメリットについては定かではありません。

体温測定ができる他のスマートウォッチとの違いは

一つ注意するべきこととして、Apple Watchの測定も決して医学的に正確な体温を計測する事ができる訳ではないという点です。
通常体温を測定する場合、脇の下や口の中の温度を測定します。これは、外気温など外部の状況に左右されにくいことや、安定して一定の温度が測定できることなどが理由です。

一方で手首の温度は外気温の影響を受けやすく、測定するときの条件によっては体温を表すことが難しいという問題点があります。
また活動している時などは、腕時計のずれなどによって正確な測定ができない可能性もあり、一般的には「手首の温度」=「体温」とすることは難しいでしょう。

このようなこともあり、アップルは説明の中で「体温」という表現を使っていません。「皮膚温」という言葉を用いることで、医学的に正確な体温ではないことを明確に区別しています。
数千円クラスのスマートウォッチの中には「体温測定」と表現しているものも多く、この点に関してはアップルの方が誠実です。

他のスマートウォッチで「24時間測定」をうたっている機種についても、前述の点を考慮し決して正しい体温が表現されている訳ではないことに留意すべきです。

もちろん、データが増えればそれだけ実際の体温に近い数値を測定することはある程度可能でしょう。
しかし取得するデータの多くは、外気温の影響などで「信頼できない」数値であることも事実です。

そこでアップルが注目したのが、睡眠時の手首の温度です。
これであれば外気温の影響も受けにくく、安定した数値を取得する事ができるはずです。ユーザーが睡眠状態に入ったことを、「信頼できる体温測定」ができる条件として設定した訳です。
取得するデータが信頼できるものである以上、そこから推定される体温もより正確になるでしょう。

実はApple Watchに搭載されている「心電図データ解析・分類」、「心房細動(不整脈の一種)の通知」の機能は、国内でも医療機器として承認されています。
すでに内外の医療関係者が、Apple Watchを使った診断にどの程度の信頼性があるかの研究を進めています。

現時点では、本格的な医療機器ほどの精度は得られてないようですが、使用場面などを考慮すると十分に有用性が示されています。
医療機器は正確性は優れているものの、限られた場所や時間でしか使用できない事が多く、その点Apple Watchは、日常的に着用して継続的に計測できることに大きな優位性があります。

しかし、環境を整備した状態で計測する訳ではないことから、心房細動と判断されても実際は違うケースであったり、心房細動を検出できないケースなどもあります。
とは言え、Apple Watchが異常を検知した場合、改めて医療機関で診断を受けることで生命の危機を回避するチャンスが増えることはとても重要です。*注4

皮膚温センサー以外の新たな機能について

今回の記事では、皮膚温センサーを中心としてまとめていきました。
しかしSeries 8には、他にもいくつかの機能が追加されており、またOSの進化によって注目すべき機能が多くあります。
最後にこれらをまとめて列挙してみましょう。

◯低電力モードによるバッテリ駆動時間の長時間化
・通常18時間のバッテリ駆動時間が最大36時間へ
◯衝突事故を検知して自動で緊急通報サービスに発信する機能
◯新たにIP6X等級の防塵性能を搭載
◯セルラーモデルは国際ローミングにも対応
◯薬やサプリメントを飲む時間を通知する機能
◯より詳しい睡眠情報を確認できる睡眠ステージ機能
◯日本語キーボードなどの機能
◯ワークアウトモードの機能拡充
◯文字盤のデザイン追加

確実にプロダクトとしての、品質や使い勝手が向上しています。今回メインとして紹介してきた皮膚温測定機能を抜きにしても、日常的な使いやすさや信頼性は間違いなく良くなっています。*注5

【まとめ】

Apple Watchの進化が止まりません。
新たなプロダクトとして登場した当初は、iPhoneの周辺機器か少し高級なガジェットの類というイメージもありました。しかし、フィットネス分野でのニーズを確実に捉え、ユーザーへの訴求に成功し、新たなマーケットを創出したと言ってもいいぐらいの進化を遂げています。
ダイバー仕様のUltra。スタンダードモデルのSeries 8。エントリーモデルのSEという3カテゴリーで、ますます隙がないアップルの快進撃が続きそうです。

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■参考文献
注1 
Apple「Apple Watch Series 8」
https://www.apple.com/jp/apple-watch-series-8/
注2 
Apple「Apple Watch で就寝時の手首皮膚温の変化を記録する」
https://support.apple.com/ja-jp/HT213275
注3
YouTube Channel (Yuka Ohishi)「Apple Watch Series 8! 皮膚温測定試してみた。」
https://youtu.be/fM0IJDz9WSY
注4
Yahoo! NEWS「アップルウォッチ】慶応病院での臨床研究開始と海外で不整脈が見つかった実例(医師の視点)」
https://news.yahoo.co.jp/byline/fukudamemori/20210302-00225297
「Apple Watchは有用か?(循環器内科医の視点)」
https://news.yahoo.co.jp/byline/fukudamemori/20210226-00224529
注5 
PC Watch「毎日装着する意味が高まった「Apple Watch Series 8」。皮膚温センサーと衝突事故検出機能に価値を見いだせるか」
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/hothot/1447352.html

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