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iPhoneがもっと気軽に修理できるようになるかも‼「修理する権利」とは何か

 今は随分少なくなりましたが、以前はiPhoneの画面が割れたまま使っている人も多かったのではないでしょうか。
 iPhoneは高額なため簡単に買い替えがしにくく、いざ修理しようと思うと結構大変というイメージがあります。キャリアで簡単に修理することもできず、地方だと正規の修理代理店が隣の市まで行かないとない、、、なんてこともあります。
 もし、正規店じゃない店舗で修理を依頼すると、純正パーツを使っているかも怪しく、さらに補償の対象外になってしまうためなかなか修理ができませんでした。
 今回、そんなiPhoneユーザーの長年の悩みが解決するかもしれない!いう話題が飛び込んできました。

この記事でわかること
 ・「修理する権利」が米連邦取引委員会で可決された件について
 ・「修理する権利」で何が保証されるのか
 ・「修理する権利」に対するメーカーの反応

「修理する権利」が米連邦取引委員会で可決された件について

 iPhone12から採用されたセラミックシールドや防水性能の向上などで、現在のiPhoneは以前と比べハードウエア面ではかなり強固になってきました。とはいうものの、故障が皆無ということはあり得ませんので、万が一の時に気軽に修理できる方が良いに決まっています。

 しかし冒頭でも書いた通り、実はiPhoneの修理は結構手間がかかります。実際修理に出してみると、パーツの交換ではなく端末自体が交換されて戻ってくることも多々ありました。
 かといって、パーツを取り寄せて自分で修理してしまうと、一切の保証が受けられなくなってしまうというリスクがあります。

 街でよく見かける「iPhone修理」と書かれてあるショップであっても、正規のライセンスを持ってないところであれば保証の対象外です。それどころか純正パーツを使っているかどうかも怪しいものです。
 Appleのサポート自体はサービスの質も良く、信頼できるものではあるのですが、正規の代理店が少なく、ネットで修理すると数日間戻ってこないなど、どうしても「身近で気軽に頼めてスピーディ」とはいきません。

 このような不便を感じるユーザーは、日本だけではないようです。2021年7月21日に米連邦取引委員会(FTC)は、「修理する権利」に関する法律の施行を全会一致で可決しました。
 Apple製品だけでなく、あらゆる電子機器類や自動車などについても適用されるものであり、ユーザーが独自に修理をする権利を保証するものとなっています。*注1

 米連邦取引委員会(FTC)とは、日本の公正取引委員会のような組織であり、不公正な取引を取り締まる役割を持っています。米連邦取引委員会が、ユーザーに対して独自の修理を制限するようなシステムは不公正であり、是正するべきだと判断したということになります。

 アメリカ国内では以前から、消費者団体や修理キットなどを販売している企業などが「修理する権利」を主張していました。それに対して多くのメーカーは、安全性の担保などを理由として拒否の姿勢をとっていましたが、今回の決定はユーザー側に寄り添ったものとなりました。

具体的には「修理する権利」で何が保証されるのか

 では具体的にこの決定で、私たちユーザーは何を手にすることができるのでしょうか?メーカーを通さず、自分で勝手に修理をしても保証が得られるのでしょうか?
 メーカーとしては、修理にとどまらず勝手に改造などする可能性のある端末に対しては、当然保証することはできません。

 「修理する権利」とは、ユーザーが修理するのに必要な正確な情報と、正規のパーツを手に入れる権利を保証するというものです。
 具体的には、回路図や説明書などの情報・正規の工具や部品・ソフトウエアなどが対象となります。
 これまではメーカーが、このような修理に必要なリソースの一部または全部を独占的に所有し、提供しないことでユーザーの権利を侵害していると判断されました。

 実際iPhoneの例で見た通り、私たちユーザーはたとえ自分で修理する技術を持っていたとしても、それを実行する手段が著しく制限されています。iPhoneやMacの筐体を開けるために必要な星型レンチですら、身近にあるホームセンターでは入手できないこともあります。

 「IFIXIT」という団体は「タイヤ交換が違法だとしたら、それでも車を買いますか?」「チェーンの修理ができないのに、自転車を購入しますか?」というメッセージで「修理する権利」をアピールしています。
 比較的容易に交換・修理ができることであれば、ユーザーが自己責任でできることが望ましいというスタンスです。*注2

 「修理する権利」の決定にメーカーが従い、必要な情報と部品を供給するようになった場合、「町の修理屋さん」にとっても大きなメリットになるでしょう。
 「iPhone修理できます」という看板を出している「町の修理屋さん」をよく見かけますが、実は修理手順やマニュアルはAppleから提供されていません。それぞれのショップにおいて、経験や知識に基づいて独自に修理方法を模索しながら行っている状況です。

 私は現在iPhoneユーザーですが、バッテリーの交換ぐらいであればクローズドにせず簡単にできるようにしてほしいと思っています。
 自分ではできなくとも、近くのショップに正規品とマニュアルが提供されるのであれば、現在よりは安心して修理に出すことができるようになります。正規修理代理店に予約をとり本体を預けて、一週間ほどiPhoneがない状態で不便な想いをする現状よりは、ずいぶんと便利になるはずです。

 iPhoneとハード的な修理をメインに紹介してきましたが、今回の決定はもっと大きな範囲に影響を与えます。自動車メーカーや、Apple以外の電子機器メーカーも対象になります。
 またソフトウエアにも適用されるため、メーカーと正規ショップで占有されていた修理診断プログラムなども含まれることになります。このようなツールを広く一般が利用できることにより、最終的にはユーザーがメリットを享受できるようになります。

 とはいうものの、タイヤ交換のような正しい手順に従えば「特別に難しいわけではなく」「安全にも影響が少ない」ようなことばかりではないはずです。
 自動車で考えた場合、マニュアルやパーツを入手できたとしてもABSや自動運転プログラム、各種センサー類などを経験の浅い素人が扱ってもいいものでしょうか?
 またその結果として事故が発生したときに、事故の原因がユーザーの修理によるものか、他に原因があるのか特定できるものでしょうか?

 iPhoneについても、セキュリティ面において気になる点があります。以前よりは随分と安全面での問題が少なくなりましたが、リチウムイオンバッテリーも下手に扱うと爆発する危険がある繊細な部品です。
 単純な着脱だけならまだしも、知識が浅い素人がドライバーでバッテリーを突き刺す、なんてこともあり得ない話ではないでしょう。
 安全性について、今回の決定ではどのように保証されるのでしょうか?

 実は今回の決定では、あくまで「修理する権利」を確保するためメーカーへの情報や部品の提供を求めるだけとなっています。ユーザーが行った修理によって、引き起こされる危険については明確にはされてはいません。基本的には「自己責任」ということになるのでしょう。

「修理する権利」に対するメーカーなどの反応

 メーカーとしては、純正のパーツや正しいマニュアルを使った「正規」の修理で囲い込んでいたマーケットを、一般に解放することになってしまいます。
 しかしこの決定に従ったとしても、ユーザーの中には「町の修理屋さん」ではなく、正規のショップに持ち込む人も一定数いるでしょう。メーカーにとって、今回の決定は、それほど拘って守らないといけない部分なのでしょうか。

 たとえば、保証期間がとっくに過ぎてしまったiPhoneが故障したら皆さんはどうしますか?
 「どうする」と言われても、正規の方法で修理はできないし、もし仮にできたとしても高額の修理費用を請求されてしまいます。それなら、十分に元を取るぐらい使ってきたので、この機会に新機種に買い替えよう。おそらく、ほとんどの人がこのように思うはずです。

 それが今回の決定によって、保証期間が過ぎたような端末であっても、正しい修理方法と純正のパーツで修理できる可能性が出てきます。という事は、いつも使っていた愛着あるiPhoneの寿命を伸ばすことができます。
 これはメーカーにしてみれば、買い替え需要に対するブレーキとして作用してしまうため、あまり望ましいことではありません。

 Appleなどのメーカーは盛んにロビー活動を展開し、今回の決定へ反対を続けてきました。表向きは、安全性や信頼性の担保ができなくなるというのが理由となっていますが、それだけではないことは明らかでしょう。
 今後この決定に対して、Appleなどのメーカーがどのような対応をとっていくのか注目したいところです。

 なお、この決定に先立ってAppleは、独自の制度で「独立修理プロバイダープログラム」を実施しています。
 Appleが認定した技術者を設置することなどを要件として、専用工具や修理マニュアルを提供するプログラムです。ただし、ユーザーが個人でこのプログラムに参加することはできません。あくまで法人だけを対象としたプログラムとなっています。

<参考>
Appleが小規模店舗でもiPhoneを純正部品で修理できる「独立修理プロバイダープログラム」を日本にも拡大

 Appleの共同創業者であるスティーブ・ウォズニアックは、「修理する権利があったからこそ、Appleが創業できた」と語っています。
 初期のAppleを牽引した名機である「AppleII」は完全な回路図が付属してあったことで、当時のユーザーに受け入れられたことなどを例として紹介しています。
 しかしその後Appleは、クローズドな製品づくりを基本的なスタンスとして成功してきました。今回の決定を受けて、どの程度の歩み寄りを見せてくるのか、今後の対応が気になるところです。*注3

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注1
Yahoo! News(via Wired) 「米国で「修理する権利」を認める法律が可決、それでもメーカー側の反発は止まらない」
https://news.yahoo.co.jp/articles/55d0517879825c5be2cb349fcd11bc313e4218d3?page=1
注2
IFIXIT
https://jp.ifixit.com/Right-to-Repair/Intro
注3
Tech Crunch 「アップル共同創業者ウォズニアック氏が「修理する権利のおかげでアップルが創業できた」と明かす」
https://jp.techcrunch.com/2021/07/09/apple-co-founder-wozniak-right-to-repair/

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